昔話
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ドラコの誕生会はいつも盛大だった。この日も、マルフォイ家の屋敷に父親、母親の親族や友人が集まり、ドラコと同年代の子供たちも招かれていた。大人たちが口々にドラコに祝いの言葉を浴びせるこの日を、ドラコは機嫌よく過ごしていた。
ドラコは屋敷しもべが用意した豪華な食事を終え、誕生日プレゼントの一つである子供用の箒を携えて中庭に出た。
思い思いに遊ぶ子供たちや談笑する大人から離れた場所で、一人不安げに座り込んでいる少女が目に入った。剪定されたゴールドクレストの並木に隠れるように膝を抱えて座り込んで、膝と胸の間に分厚い本を挟んでいた。ドラコは母親に尋ねた。
「──母上、あの子は?」
「ああ……ミョウジさんのところのご子息よ」
「ふぅん」
ドラコは母親の話を聞きながらその少年を遠くから見つめた。さらさらのおかっぱ頭のそいつは、どう見ても可愛い女の子にしか見えなかったが、ナルシッサが言うには男の子だそうだった。そして、「二人とも覚えていないだろうけれど」と前置きして、誰も聞いていないことを確認してからひそひそと続けた。
「あなたたちは会ったことがあるのよ、二歳の時に。その時は、二人で仲良く遊んでいましたよ」
ドラコは疑わしげな気持ちで少年に近づいた。ドラコの気配に気がつくと、少年はパッと顔を上げた。所在なさげで不安に満ちた表情で、やはり少女というほうがしっくりきた。
「──ドラコ」
少年はぽつりとドラコの名を呼んだ。ドラコは驚いた。
「ぼくを知ってるのか」
「きみの誕生日会だろ。おめでとう」
少年は言葉とは裏腹にぶっきらぼうな声で言った。
「きみは?」
「ナマエ」
「そう、ナマエ……プレゼントはないのかい?」
ドラコは茶化すつもりで言ったが、ナマエはポケットを弄ってからはっとして顔を伏せた。
「アー……父上が。父上が用意してるから余計なことはしなくていいって……」
ドラコは煮え切らない態度にむっとして手を突き出した。
「用意があるなら受け取ってやる」
「……」
ナマエは逡巡してドラコを見た。そして、ポケットから小さな封筒を取り出し、ドラコに差し出した。ドラコが受け取ると、それは何の変哲もない誕生日カードだった。
「……開けて」
ナマエが促した。ドラコが眉を上げて封を開くと、途端に中から色とりどりの花が育ち、咲き乱れた。封筒だった紙は綺麗に花をラッピングするように巻き付いて、あっというまに花束に変わった。
「……祝いって、花しか思いつかなくて」
「ふん、悪くない。ぼくの部屋に飾らせよう」
ドラコが満足げに言うと、ナマエは花も綻ぶような笑みを浮かべた。
次の年の誕生日会にも、ナマエは現れた。ナマエは父親の後ろを不安そうに歩いていたが、ドラコの顔をみると安心したように笑った。
ドラコは他の招待客に挨拶をしたり、食事をして過ごしてからナマエの姿を探すと、また以前のように隅で本を抱えていた。なんとなく哀れに思ったドラコはナマエに近づいた。
「そんなに本が面白いのかい?パーティよりも?」
「……もう読んじゃったから、退屈してるところ」
ナマエはわざとらしいため息をついて本を閉じた。
「誕生日おめでとう、ドラコ」
ナマエはそう言ってもう一度本を開いた。本に挟まっていた栞紐がするりと浮かび、本はたちまちふくれあがってたくさんの風船になった。ナマエは風船の紐の束を握ってドラコに突き出した。
「──子供だましだ」
ドラコはわざと、がっかりしたような顔をした。
「あんたも子供だろ」
ナマエはニヤッと笑った。ナマエは以前よりも男の子っぽい仕草をするようになっていた。
「ナマエ、きみのママは来ないのかい?」
ドラコが出し抜けに尋ねると、ナマエの顔に影が落ちた。
「……さあ、わからない。会ったことないから」
ナマエはそう言うと、ぱっと風船から手を離した。風船は思い思いの方向にふわふわと飛んで風に流されていった。
ドラコが奇妙な表情でナマエを見ていると、ナマエは曖昧に笑った。ナマエの表情に、ドラコはなんとなく罪悪感を覚えた。
「そうだ、ナマエ。中庭で、みんなクィディッチごっこをしてるんだ。きみも来い」
ドラコは明るい声で言ったが、ナマエは首を横に振った。
「──おれはいいよ。ドラコみたいにまだ箒に乗れないし」
「……じゃあ、僕もやめた」
ナマエは目をぱちくりさせた。ドラコは続けた。
「二人で遊ぼう、何をする?それとも、ぼくが箒の乗り方を教えてあげようか。きみは純血なんだから、すぐに乗れるさ」
ナマエはドラコの顔を不思議そうに見てから、ちらりと大人たちの方に目線を向けた。
「ありがとう、でも……気を使わなくていいよ、ドラコ。みんなと遊んできて。おれは一人でも大丈夫」
ドラコは、自分の誘いに乗らないナマエに苛立った。
「──ああそう。じゃあ、ずっとひとりぼっちでいればいい!」
ドラコはそう吐き捨てて踵を返した。次の年から、誕生日会にナマエは来なかった。
「どうして聖マンゴはこんなマグル臭いところにあるんだろうね?おばあさまの体に障るよ」
赤煉瓦のみすぼらしいデパートの前で、ドラコが言うと、父ルシウスは機嫌よく笑った。祖母が入院している聖マンゴ魔法疾患傷害病院に、家族で見舞いに来たのだ。デパートのショーウィンドウにはあちこち欠けたマネキンが数体、曲がった鬘をつけて、てんでんばらばらに立っている。埃だらけのドアというドアには大きな看板が掛かり、大通りにはマグルが何人か能天気に歩いていた。
「──文句があるなら帰れよ」
水を差すような声の主は、ナマエだった。ショーウィンドウの隅にもたれかかって、本を片手に携え、足元には山のような荷物が置いてあった。数年ぶりに見たナマエは、昔のようにおどおどして不安そうな様子はなく、代わりに反抗心が色濃く見えた。
「これはこれは……」
ルシウスがナマエに気がついて丁寧にお辞儀をした。
「ミョウジ氏も移設も提案しているようですがね?わざわざマグルの目に我々の姿を晒す危険を冒す必要もない場所の方が好ましいと。──さて、お父上はどこかな?」
「──知りません」
ナマエはルシウスを睨みつけて、ぼそりと返した。ルシウスは鼻で笑って、ナルシッサとともに院内に入っていった。ドラコはゆっくりとその後に続きながら、ナマエに顔を向けた。
「君も上流の家庭の出なんだから、それなりの言動を心得たほうがいい」
ドラコは薄ら笑いで言った。しかし、本心でもあった。ナマエがいつも居心地が悪そうな顔をしているのが不思議でならなかった。もっと要領良く、大人たちに気に入られる振る舞い方をすれば良いのに、そうできる立場にあるのに、なぜしないのか不思議だった。
ナマエはドラコの言葉を無視して、曇った汚いショーウィンドウにもたれかかって、また本に目を落とした。ドラコはナマエの足元の荷物に目を落とした。きっと入学準備の買い物をしてきたのだろうと思った。ドラコはナマエの態度に腹を立てた。
「ああ、そうか。生まれといえば、君は誰から生まれたかもわからないんだったな」
ドラコが言うと、ナマエはぴくりと眉を上げた。子供ながらにドラコは、父親と一緒に社交場に出ることで、誰に親切にすべきか──そして、そうでないものを傷つけるにはどうやるのが適切かをよく理解していた。
「不貞の子か、最悪、母親は穢れた血かい?君の父君が隠したくなるのも無理は──」
「黙れ」
ナマエは音を立てて本を閉じ、ドラコを見た。声が怒りで震えているようだった。
「そうでなければ、こんなところで何をしてるんだい?パパに会いにきたんだろう?中に入ればいいじゃないか」
「……そのマネキンは俺を入れてくれない。父上が俺に会いたくないから」
ナマエは諦めたように、しかし存外素直に言うのでドラコは虚をつかれた。すると、ナマエのほうも立ち止まったドラコに怪訝な顔を向けた。
「……さっさと行けよ、俺はしもべ妖精が戻ってくるのを待ってるだけだ。親父が急にしもべを呼び出したから、俺は帰れないんだよ」
ナマエはどかっと店の前に座り込み、あぐらをかいて荷物を漁り、今度は別の本を広げた。「イギリスにおける、マグルの家庭生活と社会的慣習」という表紙が目に入った。
「ドラコ!おいでなさい!」
母が自分を呼ぶ声がした。ドラコはフンと鼻を鳴らしてその場を去った。
次にナマエを見かけたのは、ホグワーツ入学の日、9と4分の3番線のホームだった。ナマエはすでにホグワーツ特急の中だった。窓にもたれかかっていつものように暗い表情で1人きりだった。腫れた頬を見るに、また不毛な反抗を繰り返しているのだろうと呆れたような、哀れなような気持ちになった。
ドラコはそばにいた友人に話しかけた。
「クラッブ、ゴイル!あいつ、知ってるだろう?ミョウジ家の子だ。昔、僕の屋敷に遊びに来ていた──」
「あんな女の子、いたっけ?」
「知らない」
ドラコは二人の答えを聞いて鼻で笑った。やはりナマエには友達がいないんだろうと確信した。無理もない、昔から塞ぎ込んで愛想のない奴だった。おまけに、純血でありながらマグルに興味を持つような魔法使いの面汚しだ。
もし、向こうから頼んでくるなら──その時は、人付き合いというものを教えてやってもいい──そう思った。
ドラコは屋敷しもべが用意した豪華な食事を終え、誕生日プレゼントの一つである子供用の箒を携えて中庭に出た。
思い思いに遊ぶ子供たちや談笑する大人から離れた場所で、一人不安げに座り込んでいる少女が目に入った。剪定されたゴールドクレストの並木に隠れるように膝を抱えて座り込んで、膝と胸の間に分厚い本を挟んでいた。ドラコは母親に尋ねた。
「──母上、あの子は?」
「ああ……ミョウジさんのところのご子息よ」
「ふぅん」
ドラコは母親の話を聞きながらその少年を遠くから見つめた。さらさらのおかっぱ頭のそいつは、どう見ても可愛い女の子にしか見えなかったが、ナルシッサが言うには男の子だそうだった。そして、「二人とも覚えていないだろうけれど」と前置きして、誰も聞いていないことを確認してからひそひそと続けた。
「あなたたちは会ったことがあるのよ、二歳の時に。その時は、二人で仲良く遊んでいましたよ」
ドラコは疑わしげな気持ちで少年に近づいた。ドラコの気配に気がつくと、少年はパッと顔を上げた。所在なさげで不安に満ちた表情で、やはり少女というほうがしっくりきた。
「──ドラコ」
少年はぽつりとドラコの名を呼んだ。ドラコは驚いた。
「ぼくを知ってるのか」
「きみの誕生日会だろ。おめでとう」
少年は言葉とは裏腹にぶっきらぼうな声で言った。
「きみは?」
「ナマエ」
「そう、ナマエ……プレゼントはないのかい?」
ドラコは茶化すつもりで言ったが、ナマエはポケットを弄ってからはっとして顔を伏せた。
「アー……父上が。父上が用意してるから余計なことはしなくていいって……」
ドラコは煮え切らない態度にむっとして手を突き出した。
「用意があるなら受け取ってやる」
「……」
ナマエは逡巡してドラコを見た。そして、ポケットから小さな封筒を取り出し、ドラコに差し出した。ドラコが受け取ると、それは何の変哲もない誕生日カードだった。
「……開けて」
ナマエが促した。ドラコが眉を上げて封を開くと、途端に中から色とりどりの花が育ち、咲き乱れた。封筒だった紙は綺麗に花をラッピングするように巻き付いて、あっというまに花束に変わった。
「……祝いって、花しか思いつかなくて」
「ふん、悪くない。ぼくの部屋に飾らせよう」
ドラコが満足げに言うと、ナマエは花も綻ぶような笑みを浮かべた。
次の年の誕生日会にも、ナマエは現れた。ナマエは父親の後ろを不安そうに歩いていたが、ドラコの顔をみると安心したように笑った。
ドラコは他の招待客に挨拶をしたり、食事をして過ごしてからナマエの姿を探すと、また以前のように隅で本を抱えていた。なんとなく哀れに思ったドラコはナマエに近づいた。
「そんなに本が面白いのかい?パーティよりも?」
「……もう読んじゃったから、退屈してるところ」
ナマエはわざとらしいため息をついて本を閉じた。
「誕生日おめでとう、ドラコ」
ナマエはそう言ってもう一度本を開いた。本に挟まっていた栞紐がするりと浮かび、本はたちまちふくれあがってたくさんの風船になった。ナマエは風船の紐の束を握ってドラコに突き出した。
「──子供だましだ」
ドラコはわざと、がっかりしたような顔をした。
「あんたも子供だろ」
ナマエはニヤッと笑った。ナマエは以前よりも男の子っぽい仕草をするようになっていた。
「ナマエ、きみのママは来ないのかい?」
ドラコが出し抜けに尋ねると、ナマエの顔に影が落ちた。
「……さあ、わからない。会ったことないから」
ナマエはそう言うと、ぱっと風船から手を離した。風船は思い思いの方向にふわふわと飛んで風に流されていった。
ドラコが奇妙な表情でナマエを見ていると、ナマエは曖昧に笑った。ナマエの表情に、ドラコはなんとなく罪悪感を覚えた。
「そうだ、ナマエ。中庭で、みんなクィディッチごっこをしてるんだ。きみも来い」
ドラコは明るい声で言ったが、ナマエは首を横に振った。
「──おれはいいよ。ドラコみたいにまだ箒に乗れないし」
「……じゃあ、僕もやめた」
ナマエは目をぱちくりさせた。ドラコは続けた。
「二人で遊ぼう、何をする?それとも、ぼくが箒の乗り方を教えてあげようか。きみは純血なんだから、すぐに乗れるさ」
ナマエはドラコの顔を不思議そうに見てから、ちらりと大人たちの方に目線を向けた。
「ありがとう、でも……気を使わなくていいよ、ドラコ。みんなと遊んできて。おれは一人でも大丈夫」
ドラコは、自分の誘いに乗らないナマエに苛立った。
「──ああそう。じゃあ、ずっとひとりぼっちでいればいい!」
ドラコはそう吐き捨てて踵を返した。次の年から、誕生日会にナマエは来なかった。
「どうして聖マンゴはこんなマグル臭いところにあるんだろうね?おばあさまの体に障るよ」
赤煉瓦のみすぼらしいデパートの前で、ドラコが言うと、父ルシウスは機嫌よく笑った。祖母が入院している聖マンゴ魔法疾患傷害病院に、家族で見舞いに来たのだ。デパートのショーウィンドウにはあちこち欠けたマネキンが数体、曲がった鬘をつけて、てんでんばらばらに立っている。埃だらけのドアというドアには大きな看板が掛かり、大通りにはマグルが何人か能天気に歩いていた。
「──文句があるなら帰れよ」
水を差すような声の主は、ナマエだった。ショーウィンドウの隅にもたれかかって、本を片手に携え、足元には山のような荷物が置いてあった。数年ぶりに見たナマエは、昔のようにおどおどして不安そうな様子はなく、代わりに反抗心が色濃く見えた。
「これはこれは……」
ルシウスがナマエに気がついて丁寧にお辞儀をした。
「ミョウジ氏も移設も提案しているようですがね?わざわざマグルの目に我々の姿を晒す危険を冒す必要もない場所の方が好ましいと。──さて、お父上はどこかな?」
「──知りません」
ナマエはルシウスを睨みつけて、ぼそりと返した。ルシウスは鼻で笑って、ナルシッサとともに院内に入っていった。ドラコはゆっくりとその後に続きながら、ナマエに顔を向けた。
「君も上流の家庭の出なんだから、それなりの言動を心得たほうがいい」
ドラコは薄ら笑いで言った。しかし、本心でもあった。ナマエがいつも居心地が悪そうな顔をしているのが不思議でならなかった。もっと要領良く、大人たちに気に入られる振る舞い方をすれば良いのに、そうできる立場にあるのに、なぜしないのか不思議だった。
ナマエはドラコの言葉を無視して、曇った汚いショーウィンドウにもたれかかって、また本に目を落とした。ドラコはナマエの足元の荷物に目を落とした。きっと入学準備の買い物をしてきたのだろうと思った。ドラコはナマエの態度に腹を立てた。
「ああ、そうか。生まれといえば、君は誰から生まれたかもわからないんだったな」
ドラコが言うと、ナマエはぴくりと眉を上げた。子供ながらにドラコは、父親と一緒に社交場に出ることで、誰に親切にすべきか──そして、そうでないものを傷つけるにはどうやるのが適切かをよく理解していた。
「不貞の子か、最悪、母親は穢れた血かい?君の父君が隠したくなるのも無理は──」
「黙れ」
ナマエは音を立てて本を閉じ、ドラコを見た。声が怒りで震えているようだった。
「そうでなければ、こんなところで何をしてるんだい?パパに会いにきたんだろう?中に入ればいいじゃないか」
「……そのマネキンは俺を入れてくれない。父上が俺に会いたくないから」
ナマエは諦めたように、しかし存外素直に言うのでドラコは虚をつかれた。すると、ナマエのほうも立ち止まったドラコに怪訝な顔を向けた。
「……さっさと行けよ、俺はしもべ妖精が戻ってくるのを待ってるだけだ。親父が急にしもべを呼び出したから、俺は帰れないんだよ」
ナマエはどかっと店の前に座り込み、あぐらをかいて荷物を漁り、今度は別の本を広げた。「イギリスにおける、マグルの家庭生活と社会的慣習」という表紙が目に入った。
「ドラコ!おいでなさい!」
母が自分を呼ぶ声がした。ドラコはフンと鼻を鳴らしてその場を去った。
次にナマエを見かけたのは、ホグワーツ入学の日、9と4分の3番線のホームだった。ナマエはすでにホグワーツ特急の中だった。窓にもたれかかっていつものように暗い表情で1人きりだった。腫れた頬を見るに、また不毛な反抗を繰り返しているのだろうと呆れたような、哀れなような気持ちになった。
ドラコはそばにいた友人に話しかけた。
「クラッブ、ゴイル!あいつ、知ってるだろう?ミョウジ家の子だ。昔、僕の屋敷に遊びに来ていた──」
「あんな女の子、いたっけ?」
「知らない」
ドラコは二人の答えを聞いて鼻で笑った。やはりナマエには友達がいないんだろうと確信した。無理もない、昔から塞ぎ込んで愛想のない奴だった。おまけに、純血でありながらマグルに興味を持つような魔法使いの面汚しだ。
もし、向こうから頼んでくるなら──その時は、人付き合いというものを教えてやってもいい──そう思った。
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