炎のゴブレット
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「隠れ穴!」
煙突飛行粉 が緑色に燃え上がった。久しぶりの煙突飛行だった。ナマエはしばらくしてから地面に着地し、煤を払い落として暖炉から出た。「隠れ穴」に着いたのだ。
ナマエが見回すと、洗い込まれた白木のテーブルに、ロンとハリーが座り、ほかにもナマエの知らない赤毛が二人座っていた。すぐに誰だか察しがついた。ビルとチャーリー、ウィーズリー家の長男と次男だ。
「やあ、いらっしゃい」
一人が立ち上がって、ナマエに穏やかに微笑みかけた。
「ビルだよ、よろしく」
ナマエとビルは握手を交わした。ビルは背が高く、髪を伸ばしてポニーテールにしていた。片耳に牙のようなイヤリングを垂らし、服装はマグルの若者のようで──かっこよかった。ビルと挨拶をしていると、ハリーの目線を感じた。
「──ハリー、見惚れてたんだろう」
ナマエがハリーを茶化すと、ロンが笑った。ナマエはチャーリーとも握手を交わした。ルーマニアでドラゴンの仕事をしているチャーリーは、頑丈そうながっしりした体格で、手はタコや水膨れで固くなっていた。チャーリーは快活に笑った。
「ハリーが君に見惚れるのもわかるよ」
「あー、俺はビルのことを言ったんだ」
「──ちゃんと君のことも見てたよ」
ナマエが照れ臭くなって答えると、ハリーがにやっとして付け加えた。そのとき、キッチンの入口に女の子が二人現れた。一人はたっぷりした栗色の髪、前歯がちょっと大きい女の子──ハーマイオニー・グレンジャー。もう一人は、小柄な赤毛で、ロンの妹、ジニーだ。二人ともナマエに笑いかけ、ナマエもニッコリ笑い返した。ジニーは次にハリーに目線を移し、顔を真っ赤に火照らせた。ナマエが見る限りジニーは、初めて会った日からハリーにお熱だった。
「こんにちは、そちらは?」
ハーマイオニーはナマエの足元に立っているシノビーを見た。ナマエは一瞬、虚をつかれた。
「──え?ああ、シノビーだ。俺の家の屋敷しもべだよ」
「こんにちは、ハーマイオニーよ。よろしく」
ハーマイオニーがにっこり笑って手を差し出した。シノビーは驚き目を見開いて、ナマエの顔を見た。ナマエは顎で握手を促すと、シノビーはナマエのトランクを置いて、恐る恐る手を差し出した。
「──ナマエさま以外の魔法使いに挨拶をされるのは、シノビーは初めてです。ハーマイオニーさま」
「まあ、そうなの?」
「そうかもな──シノビー、こっちはロンとハリー──」
ナマエの言葉を遮って慌ただしく入ってきたのは双子のフレッドとジョージだった。そのあとすぐに、ウィーズリー夫人が恐ろしい剣幕でやってきた。
「話は終わっていませんよ!まだW・W・W を続けているのなら──あら、ナマエ!」
夫人はナマエの姿に気がつくと、怒りを引っ込めてにっこりと笑いかけた。
「ゆっくりしてってちょうだいね」
「ありがとうございます」
ナマエは笑顔を返した。双子がその場をそっと離れようとしているのに気がついた夫人は、再び声を荒げた。
「待ちなさい!いったい何を考えているの!」
喧騒を眺めていたハーマイオニーは意味ありげにナマエたちに目配せした。
「ナマエを案内してあげて、ロン。荷物を運ばないと」
ロンもピンときたようだ。
ロン、ジニー、ハーマイオニー、ハリー、ナマエの順にそろそろとキッチンを出た。ナマエはシノビーに手を差し出した。
「シノビー、自分で持ってくよ」
「ナマエさま、シノビーは何のお仕事をすればよいですか?」
シノビーはナマエのトランクを手渡しながら尋ねた。
「ああ……うーん、そうだな。双子以外の言うことは聞いてくれ。とくにモリーさん──赤毛の女性だ、わかるだろ?モリーさんの手伝いをしてくれ」
ナマエが答えていると、ロンが振り返って言った。
「庭小人の駆除をしてくれない?僕、今朝もかかとに噛みつかれたんだ」
「かしこまりました」
シノビーはパチンと指を鳴らして消えた。ロンは満足そうに笑った。
ハーマイオニーはなぜか眉間にしわを寄せてナマエを見た。
「ねえ、ナマエ……シノビーにもっと良い制服を与えるべきよ」
ナマエは困って眉を下げた。屋敷しもべ妖精に着るものを与えるのは、主人が屋敷しもべを解雇する時だけだ。
「俺は主人じゃない。シノビーが契約してるのは俺の父親だし……」
五人は狭い廊下を渡り、ぐらぐらする階段を上の階へ、ジグザグと上っていった。
「それよりさ、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズって、何?」
階段を上りながらナマエが聞いた。ロン、ジニー、ハリーは笑い出したが、ハーマイオニーは笑わなかった。
「ママがね、フレッドとジョージの部屋を掃除してたら、注文書が束になって出てきたんだ」
ロンが声をひそめた。
「二人が発明した物の価格表で、ながーいリストさ。悪戯おもちゃの。『だまし杖』とか、『ひっかけ菓子』だとか、いっぱいだ。すごいよ」
「昔っからずっと、二人の部屋から爆発音が聞こえてたけど、何か作ってるなんて考えもしなかったわ。あの二人はうるさい音が好きなだけだと思ってたの」とジニーが言った。
「それに、ね、あの二人、ホグワーツでそれを売って稼ごうと計画してたんだ。ママがカンカンになってさ。もう何も作っちゃいけませんって二人に言い渡して、それなのに──」
ハリーがクスッと笑って続きを引き取った。
「僕を迎えにきた時、ダドリーの前で『ベロベロ飴』をうっかり落としちゃったのさ。食べるとベロが伸びるんだ」
「ママったら、その前からあの二人にさんざん腹を立ててたんだ。二人の『O・W・L試験』が落第ギリギリだったからさ。ママは二人にも魔法省に入って欲しかったんだ──」
ちょうどそのとき、二つ目の踊り場のドアが開き、角縁メガネをかけて、迷惑千万という顔がひょこっと飛び出した。
「やあ、パーシー」ナマエが挨拶した。
「ああ、しばらく、ナマエ」パーシーが言った。
「誰がうるさく騒いでいるのかと思ってね。僕、ほら、ここで仕事中なんだ──魔法省の仕事で報告書を仕上げなくちゃならない。──階段でドスンドスンされたんじゃ、集中しにくくってかなわない」
「ドスンドスンなんかしてないぞ」ロンがイライラした。
「僕たち、歩いてるだけだ。すみませんね。魔法省極秘のお仕事のお邪魔をいたしまして」
何の仕事なのか、と聞きかけてナマエは口をつぐんだ。パーシーはふん、と鼻を鳴らして部屋のドアをバタンと閉めた。ナマエ、ハリー、ハーマイオニー、ジニーがロンのあとについて、そこからまた三階上まで階段を上がっていくと、下のキッチンからガミガミ怒鳴る声が上まで響いてきた。
家のいちばん上にロンの寝室があり、ナマエが前に泊まったときとあまり変わってはいなかった。ロンの老ネズミ、スキャバーズはもうここにはいない代わりに、灰色の豆ふくろうがいた。小さい鳥籠の中で、飛び上がったり飛び下りたり、興奮してさえずっていた。
「静かにしろ、ピッグ」
部屋に詰め込まれた四つのベッドのうち二つの間をすり抜けながら、ロンが言った。
「フレッドとジョージがここで僕たちと一緒なんだ。だって、二人の部屋はビルとチャーリーが使っているし、パーシーは仕事をしなくちゃならないからって自分の部屋を独り占めしてるんだ」
「俺は床でもいいよ、どこでも寝られるし」
ナマエは言った。二年前にここに来た時はハリーと一緒のベッドで寝ていたが、二人ともずいぶん背が伸びていた。それでも、ロンほどではないが。
「ヘドウィグとクルックシャンクスは?」
ナマエはハリーとハーマイオニーに聞いた。
「クルックシャンクは庭だと思うわ。庭小人を追いかけるのが好きなのよ。初めて見たものだから」
「ヘドウィグは、手紙を届けてるんだ。あの──えーと」
ハリーがジニーをチラリと見た。ナマエははっと気がついた。──ヘドウィグはきっと、シリウスに手紙を届けているのだろう。そして、ジニーはシリウスの一件を知らないのだ。ナマエは大袈裟に「ああ!」と声をあげた。
「俺の家にも来た。ハリー、ヘドウィグがケーキを届けただろ?」
ナマエは話題を変えようとしたが、ジニーはハリーに質問したくてうずうずしていた。ハーマイオニーがさっと立ち上がった。
「どうやら下での論争は終わったみたいね」
「アー、この人数だから夕食は庭で食べるって言ってたな」
ロンも言った。ジニーは不服そうだったが、ハリーも立ち上がったので、みんな一緒に部屋を出た。しかし、ナマエはその場にとどまった。
「ハーマイオニー、ちょっと」
ナマエはハーマイオニーにちょいちょいと手招きして部屋に引き止めた。ハーマイオニーは不思議そうに立ち止まった。ナマエはポケットから細長い箱を取り出して言った。
「ハーマイオニー、もうすぐ誕生日だろう──その、九月に」
「ええ。でも、少し気が早いわよ」ハーマイオニーは嬉しそうに笑った。
「一番最初に渡したくて──ほら、開けてみて」
ナマエは箱を差し出した。ハーマイオニーが手に取ると、リボンはひとりでにするりとほどけ、箱がふわりと開いた。ハーマイオニーは箱の中身を見て首を傾げた。
「これは、羽根?」
中身はカササギの風切り羽だった。ナマエは頷いた。
「そう、そうなんだけど──持ってみて」
ハーマイオニーは戸惑いながら手に取ると、羽根はふわりと風に靡くように光を放ち、羽軸の先に銀色のペン先が現れた。ハーマイオニーは歓声を上げた。
「わあ──すごく綺麗な魔法だわ!ナマエが作ったの?」
ナマエは満足げにこくりと頷いた。
「この羽ペン、インクが要らないんだ!ほとんど永遠に」
「ありがとう、ナマエ!大切にするわ」
ハーマイオニーは嬉しそうにナマエをぎゅっと抱きしめた。ナマエが両腕をハーマイオニーに回すべきか悩んでいるうちに、階下から二人を呼ぶ声がした。
ナマエが見回すと、洗い込まれた白木のテーブルに、ロンとハリーが座り、ほかにもナマエの知らない赤毛が二人座っていた。すぐに誰だか察しがついた。ビルとチャーリー、ウィーズリー家の長男と次男だ。
「やあ、いらっしゃい」
一人が立ち上がって、ナマエに穏やかに微笑みかけた。
「ビルだよ、よろしく」
ナマエとビルは握手を交わした。ビルは背が高く、髪を伸ばしてポニーテールにしていた。片耳に牙のようなイヤリングを垂らし、服装はマグルの若者のようで──かっこよかった。ビルと挨拶をしていると、ハリーの目線を感じた。
「──ハリー、見惚れてたんだろう」
ナマエがハリーを茶化すと、ロンが笑った。ナマエはチャーリーとも握手を交わした。ルーマニアでドラゴンの仕事をしているチャーリーは、頑丈そうながっしりした体格で、手はタコや水膨れで固くなっていた。チャーリーは快活に笑った。
「ハリーが君に見惚れるのもわかるよ」
「あー、俺はビルのことを言ったんだ」
「──ちゃんと君のことも見てたよ」
ナマエが照れ臭くなって答えると、ハリーがにやっとして付け加えた。そのとき、キッチンの入口に女の子が二人現れた。一人はたっぷりした栗色の髪、前歯がちょっと大きい女の子──ハーマイオニー・グレンジャー。もう一人は、小柄な赤毛で、ロンの妹、ジニーだ。二人ともナマエに笑いかけ、ナマエもニッコリ笑い返した。ジニーは次にハリーに目線を移し、顔を真っ赤に火照らせた。ナマエが見る限りジニーは、初めて会った日からハリーにお熱だった。
「こんにちは、そちらは?」
ハーマイオニーはナマエの足元に立っているシノビーを見た。ナマエは一瞬、虚をつかれた。
「──え?ああ、シノビーだ。俺の家の屋敷しもべだよ」
「こんにちは、ハーマイオニーよ。よろしく」
ハーマイオニーがにっこり笑って手を差し出した。シノビーは驚き目を見開いて、ナマエの顔を見た。ナマエは顎で握手を促すと、シノビーはナマエのトランクを置いて、恐る恐る手を差し出した。
「──ナマエさま以外の魔法使いに挨拶をされるのは、シノビーは初めてです。ハーマイオニーさま」
「まあ、そうなの?」
「そうかもな──シノビー、こっちはロンとハリー──」
ナマエの言葉を遮って慌ただしく入ってきたのは双子のフレッドとジョージだった。そのあとすぐに、ウィーズリー夫人が恐ろしい剣幕でやってきた。
「話は終わっていませんよ!まだ
夫人はナマエの姿に気がつくと、怒りを引っ込めてにっこりと笑いかけた。
「ゆっくりしてってちょうだいね」
「ありがとうございます」
ナマエは笑顔を返した。双子がその場をそっと離れようとしているのに気がついた夫人は、再び声を荒げた。
「待ちなさい!いったい何を考えているの!」
喧騒を眺めていたハーマイオニーは意味ありげにナマエたちに目配せした。
「ナマエを案内してあげて、ロン。荷物を運ばないと」
ロンもピンときたようだ。
ロン、ジニー、ハーマイオニー、ハリー、ナマエの順にそろそろとキッチンを出た。ナマエはシノビーに手を差し出した。
「シノビー、自分で持ってくよ」
「ナマエさま、シノビーは何のお仕事をすればよいですか?」
シノビーはナマエのトランクを手渡しながら尋ねた。
「ああ……うーん、そうだな。双子以外の言うことは聞いてくれ。とくにモリーさん──赤毛の女性だ、わかるだろ?モリーさんの手伝いをしてくれ」
ナマエが答えていると、ロンが振り返って言った。
「庭小人の駆除をしてくれない?僕、今朝もかかとに噛みつかれたんだ」
「かしこまりました」
シノビーはパチンと指を鳴らして消えた。ロンは満足そうに笑った。
ハーマイオニーはなぜか眉間にしわを寄せてナマエを見た。
「ねえ、ナマエ……シノビーにもっと良い制服を与えるべきよ」
ナマエは困って眉を下げた。屋敷しもべ妖精に着るものを与えるのは、主人が屋敷しもべを解雇する時だけだ。
「俺は主人じゃない。シノビーが契約してるのは俺の父親だし……」
五人は狭い廊下を渡り、ぐらぐらする階段を上の階へ、ジグザグと上っていった。
「それよりさ、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズって、何?」
階段を上りながらナマエが聞いた。ロン、ジニー、ハリーは笑い出したが、ハーマイオニーは笑わなかった。
「ママがね、フレッドとジョージの部屋を掃除してたら、注文書が束になって出てきたんだ」
ロンが声をひそめた。
「二人が発明した物の価格表で、ながーいリストさ。悪戯おもちゃの。『だまし杖』とか、『ひっかけ菓子』だとか、いっぱいだ。すごいよ」
「昔っからずっと、二人の部屋から爆発音が聞こえてたけど、何か作ってるなんて考えもしなかったわ。あの二人はうるさい音が好きなだけだと思ってたの」とジニーが言った。
「それに、ね、あの二人、ホグワーツでそれを売って稼ごうと計画してたんだ。ママがカンカンになってさ。もう何も作っちゃいけませんって二人に言い渡して、それなのに──」
ハリーがクスッと笑って続きを引き取った。
「僕を迎えにきた時、ダドリーの前で『ベロベロ飴』をうっかり落としちゃったのさ。食べるとベロが伸びるんだ」
「ママったら、その前からあの二人にさんざん腹を立ててたんだ。二人の『O・W・L試験』が落第ギリギリだったからさ。ママは二人にも魔法省に入って欲しかったんだ──」
ちょうどそのとき、二つ目の踊り場のドアが開き、角縁メガネをかけて、迷惑千万という顔がひょこっと飛び出した。
「やあ、パーシー」ナマエが挨拶した。
「ああ、しばらく、ナマエ」パーシーが言った。
「誰がうるさく騒いでいるのかと思ってね。僕、ほら、ここで仕事中なんだ──魔法省の仕事で報告書を仕上げなくちゃならない。──階段でドスンドスンされたんじゃ、集中しにくくってかなわない」
「ドスンドスンなんかしてないぞ」ロンがイライラした。
「僕たち、歩いてるだけだ。すみませんね。魔法省極秘のお仕事のお邪魔をいたしまして」
何の仕事なのか、と聞きかけてナマエは口をつぐんだ。パーシーはふん、と鼻を鳴らして部屋のドアをバタンと閉めた。ナマエ、ハリー、ハーマイオニー、ジニーがロンのあとについて、そこからまた三階上まで階段を上がっていくと、下のキッチンからガミガミ怒鳴る声が上まで響いてきた。
家のいちばん上にロンの寝室があり、ナマエが前に泊まったときとあまり変わってはいなかった。ロンの老ネズミ、スキャバーズはもうここにはいない代わりに、灰色の豆ふくろうがいた。小さい鳥籠の中で、飛び上がったり飛び下りたり、興奮してさえずっていた。
「静かにしろ、ピッグ」
部屋に詰め込まれた四つのベッドのうち二つの間をすり抜けながら、ロンが言った。
「フレッドとジョージがここで僕たちと一緒なんだ。だって、二人の部屋はビルとチャーリーが使っているし、パーシーは仕事をしなくちゃならないからって自分の部屋を独り占めしてるんだ」
「俺は床でもいいよ、どこでも寝られるし」
ナマエは言った。二年前にここに来た時はハリーと一緒のベッドで寝ていたが、二人ともずいぶん背が伸びていた。それでも、ロンほどではないが。
「ヘドウィグとクルックシャンクスは?」
ナマエはハリーとハーマイオニーに聞いた。
「クルックシャンクは庭だと思うわ。庭小人を追いかけるのが好きなのよ。初めて見たものだから」
「ヘドウィグは、手紙を届けてるんだ。あの──えーと」
ハリーがジニーをチラリと見た。ナマエははっと気がついた。──ヘドウィグはきっと、シリウスに手紙を届けているのだろう。そして、ジニーはシリウスの一件を知らないのだ。ナマエは大袈裟に「ああ!」と声をあげた。
「俺の家にも来た。ハリー、ヘドウィグがケーキを届けただろ?」
ナマエは話題を変えようとしたが、ジニーはハリーに質問したくてうずうずしていた。ハーマイオニーがさっと立ち上がった。
「どうやら下での論争は終わったみたいね」
「アー、この人数だから夕食は庭で食べるって言ってたな」
ロンも言った。ジニーは不服そうだったが、ハリーも立ち上がったので、みんな一緒に部屋を出た。しかし、ナマエはその場にとどまった。
「ハーマイオニー、ちょっと」
ナマエはハーマイオニーにちょいちょいと手招きして部屋に引き止めた。ハーマイオニーは不思議そうに立ち止まった。ナマエはポケットから細長い箱を取り出して言った。
「ハーマイオニー、もうすぐ誕生日だろう──その、九月に」
「ええ。でも、少し気が早いわよ」ハーマイオニーは嬉しそうに笑った。
「一番最初に渡したくて──ほら、開けてみて」
ナマエは箱を差し出した。ハーマイオニーが手に取ると、リボンはひとりでにするりとほどけ、箱がふわりと開いた。ハーマイオニーは箱の中身を見て首を傾げた。
「これは、羽根?」
中身はカササギの風切り羽だった。ナマエは頷いた。
「そう、そうなんだけど──持ってみて」
ハーマイオニーは戸惑いながら手に取ると、羽根はふわりと風に靡くように光を放ち、羽軸の先に銀色のペン先が現れた。ハーマイオニーは歓声を上げた。
「わあ──すごく綺麗な魔法だわ!ナマエが作ったの?」
ナマエは満足げにこくりと頷いた。
「この羽ペン、インクが要らないんだ!ほとんど永遠に」
「ありがとう、ナマエ!大切にするわ」
ハーマイオニーは嬉しそうにナマエをぎゅっと抱きしめた。ナマエが両腕をハーマイオニーに回すべきか悩んでいるうちに、階下から二人を呼ぶ声がした。