炎のゴブレット
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ナマエは、夏休みはいつものように、ほとんどシノビーと二人きりでがらんどうの屋敷で過ごしていた。チチオヤは初日に会ったきり、一度も家に帰っていなかった。
ナマエは父親の意図をはかりかねていた。
「──『気をつけろ』って、何をだよ……」
チチオヤがマグルを必要以上に遠ざけていたのは、単純な差別心ではなく、ハハオヤのように巻き込んでしまうことを恐れているのだろうか。
──いや、両方かもしれない。
ナマエはため息をついた。夏休み中、自宅に缶詰状態なのだ。外に出ようとすると、父に命じられたというシノビーがすっ飛んできて「街に出てはいけません!」と、キーキー喚いた。
たまにヘドウィグやアンソニーたちのフクロウがやってきて近況を知らせてくれた。ハリーは、いとこのダドリーのダイエットのとばっちりを食らってろくな食べ物を食べられないと嘆いていた。ナマエはシノビーが作ったパウンドケーキをヘドウィグに持たせて送り返した。
ナマエは夏休みの宿題をすでに終えていた。しまいには、「フローリシュ・アンド・ブロッツ」から取り寄せた新しい本や、学校の図書館で借りた本も全て読み尽くして──ついにやることがなくなってしまった。
ナマエは自室を出て中庭に降りた。夏の日差しが眩しく降り注いでいた。壁際にプランターが並べられて、ゼニアオイ、ハナハッカ、ニワヤナギ、満月草──ナマエが植えた植物は、学校にいる間じゅうシノビーが世話をしてくれて、すくすくと生い茂っていた。庭の真ん中には、潮の満ち引きがある不思議な池があり、水面下ではえら昆布がゆらゆら揺れていた。
ナマエが杖を振ると、魔法薬草が次々に枝や茎を離れて宙を舞った。ナマエがポケットから瓶をいくつか取り出して並べると、薬草は乾いたり、粉になったり、あるいはそのままで、あるいは水につけられた状態でそれぞれ瓶に収まった。ナマエが採集した小瓶を満足そうに眺めていると、パチンと音がしてシノビーが現れた。
「ナマエさま、お手紙です」
「ありがとう」
シノビーは二通の手紙を渡すと深々とお辞儀をして消えた。
一通目はハーマイオニーからだった。父親がいない今は、ハーマイオニーからの手紙も捨てられる心配がなかった。ナマエは、夏休みの終わりにハーマイオニーとロンドンに行く約束をしていたので、それまでにはなんとしてもこの屋敷を出る算段を立てる必要があった。
ナマエは手紙をその場で読み始めた。
─────────
ナマエへ
ロンのお父様のご厚意で、今度の休暇はウィーズリーさんの家に泊まらせていただくことになったの。今朝、隠れ穴に着いたところよ。
ロンのお父様は、あなたのお父上もクィディッチのワールドカップにいらっしゃるはずだから、ナマエも会場に来るはずだっておっしゃってたわ。そうよね?
またワールドカップで会いましょう。
ロンドンに行く日をハリーたちも楽しみにしているわ。
ハーマイオニーより
─────────
ナマエは羨ましい気持ちでため息をついた。夏休みをウィーズリー家でみんなで過ごすだなんて……。「隠れ穴」はナマエの家とは全く違っていた。清潔でがらんどうのナマエの家に対して、「隠れ穴」は物で溢れかえり、雑然としていて、家のあちこちが魔法で補強されて──なんというか、賑やかだった。あの家で寂しい夏休みを過ごすことなんてないだろう。ナマエは自分の現状と比べてがっくりとうなだれた。──それに、ロンドンへだって本当を言うと、ハーマイオニーと二人だけで行きたかったのだ。
気を取り直して便箋をめくると、二通目はロンからだった。
急いで書きつけたのか、ところどころインクが滲んでいた。
─────────
ナマエへ
やあ、君もワールドカップに行くんだろう?うちもだよ!家族全員で行く。
ハーマイオニーは昨日、ハリーは今日きたんだ。二人も一緒に行くんだ。
パパが、君のパパの許可があれば、ナマエも来ないかって!
君の家と僕の家の煙突は繋げておくから、いつでも来ていいよ。
返事か、君が来るのを待ってるよ。
ロン
追伸 君のパパと僕のパパは、昔からの知り合いみたいだ。
─────────
ナマエは読み終わらないうちに叫んだ。
「シノビー、シノビー!」
「はい、ナマエさま!」
シノビーが現れた。掃除中だったのか、手に羽ぼうきを持っていた。ナマエは気に留めずに続けた。
「ウィーズリー家に行きたいんだ、煙突飛行粉 をしまっただろう?どこにある?」
「いけません、ナマエさま!シノビーはナマエさまのお世話を仰せつかっております!」
シノビーは甲高い声で叫んだ。ナマエはシノビーの前にしゃがみ込んで、哀れっぽく顔を覗き込んだ。
「なあ、頼むよシノビー」
「ナマエさま、旦那さまのご命令です!──ナマエさま!」
ナマエはシノビーのふしくれだった手を両手で包み込んで、指先にキスをした。シノビーは恐縮して目を見開いた。
「シノビー、父上の居場所を知ってるだろう?お願いだよ。俺を連れてって。説得するから」
シノビーは畏れ多いと言わんばかりに頭をブンブン振ってから、目をギュッと閉じて掠れ声を絞り出した。
「──わかりました、でもナマエさまをお連れしてはいけないのです。シノビーが旦那さまにお伝えします──それで駄目だとおっしゃられたら、ナマエさまはどこへも行ってはいけないのです!」
「ありがとう!」
シノビーは覚悟を決めたようなしかめっつらで指を鳴らし、姿を消した。
ナマエは慌ただしく自室に戻り、手当たり次第のものをトランクに詰め込んだ。すぐにでもあの「隠れ穴」に行きたかった。
もし駄目だと言われても、ハリーの時みたいに空飛ぶ車で無理やり連れ去ってほしいくらいだった。
荷造りが終わり、そわそわと首元のメダイを撫でながら待っていると、シノビーが現れた。
シノビーは呆然とした様子だった。ナマエは急かした。
「どうだった?親父はなんて?」
「ナマエさま、旦那さまは……ナマエさまがシノビーと共になら行ってもよいとおっしゃいました……」
シノビーは信じられないといった表情だった。ナマエも同じように驚いた。
「本当?──お前、信頼されてるんだな」
ナマエがシノビーの頭を撫でると、シノビーは縮こまった。
「ああ、シノビーはお屋敷の掃除をしなければなりませんのに、ナマエさま──」
シノビーはひどい仕打ちだと言わんばかりの泣き声だった。
「『隠れ穴』の掃除の方が絶対にやりがいがあるぜ。行こう、シノビー!煙突飛行粉 を持ってきて!」
ナマエは明るく言って、トランクを持ち上げた。シノビーはおずおず頷いて、パチンと指を鳴らした。
ナマエは父親の意図をはかりかねていた。
「──『気をつけろ』って、何をだよ……」
チチオヤがマグルを必要以上に遠ざけていたのは、単純な差別心ではなく、ハハオヤのように巻き込んでしまうことを恐れているのだろうか。
──いや、両方かもしれない。
ナマエはため息をついた。夏休み中、自宅に缶詰状態なのだ。外に出ようとすると、父に命じられたというシノビーがすっ飛んできて「街に出てはいけません!」と、キーキー喚いた。
たまにヘドウィグやアンソニーたちのフクロウがやってきて近況を知らせてくれた。ハリーは、いとこのダドリーのダイエットのとばっちりを食らってろくな食べ物を食べられないと嘆いていた。ナマエはシノビーが作ったパウンドケーキをヘドウィグに持たせて送り返した。
ナマエは夏休みの宿題をすでに終えていた。しまいには、「フローリシュ・アンド・ブロッツ」から取り寄せた新しい本や、学校の図書館で借りた本も全て読み尽くして──ついにやることがなくなってしまった。
ナマエは自室を出て中庭に降りた。夏の日差しが眩しく降り注いでいた。壁際にプランターが並べられて、ゼニアオイ、ハナハッカ、ニワヤナギ、満月草──ナマエが植えた植物は、学校にいる間じゅうシノビーが世話をしてくれて、すくすくと生い茂っていた。庭の真ん中には、潮の満ち引きがある不思議な池があり、水面下ではえら昆布がゆらゆら揺れていた。
ナマエが杖を振ると、魔法薬草が次々に枝や茎を離れて宙を舞った。ナマエがポケットから瓶をいくつか取り出して並べると、薬草は乾いたり、粉になったり、あるいはそのままで、あるいは水につけられた状態でそれぞれ瓶に収まった。ナマエが採集した小瓶を満足そうに眺めていると、パチンと音がしてシノビーが現れた。
「ナマエさま、お手紙です」
「ありがとう」
シノビーは二通の手紙を渡すと深々とお辞儀をして消えた。
一通目はハーマイオニーからだった。父親がいない今は、ハーマイオニーからの手紙も捨てられる心配がなかった。ナマエは、夏休みの終わりにハーマイオニーとロンドンに行く約束をしていたので、それまでにはなんとしてもこの屋敷を出る算段を立てる必要があった。
ナマエは手紙をその場で読み始めた。
─────────
ナマエへ
ロンのお父様のご厚意で、今度の休暇はウィーズリーさんの家に泊まらせていただくことになったの。今朝、隠れ穴に着いたところよ。
ロンのお父様は、あなたのお父上もクィディッチのワールドカップにいらっしゃるはずだから、ナマエも会場に来るはずだっておっしゃってたわ。そうよね?
またワールドカップで会いましょう。
ロンドンに行く日をハリーたちも楽しみにしているわ。
ハーマイオニーより
─────────
ナマエは羨ましい気持ちでため息をついた。夏休みをウィーズリー家でみんなで過ごすだなんて……。「隠れ穴」はナマエの家とは全く違っていた。清潔でがらんどうのナマエの家に対して、「隠れ穴」は物で溢れかえり、雑然としていて、家のあちこちが魔法で補強されて──なんというか、賑やかだった。あの家で寂しい夏休みを過ごすことなんてないだろう。ナマエは自分の現状と比べてがっくりとうなだれた。──それに、ロンドンへだって本当を言うと、ハーマイオニーと二人だけで行きたかったのだ。
気を取り直して便箋をめくると、二通目はロンからだった。
急いで書きつけたのか、ところどころインクが滲んでいた。
─────────
ナマエへ
やあ、君もワールドカップに行くんだろう?うちもだよ!家族全員で行く。
ハーマイオニーは昨日、ハリーは今日きたんだ。二人も一緒に行くんだ。
パパが、君のパパの許可があれば、ナマエも来ないかって!
君の家と僕の家の煙突は繋げておくから、いつでも来ていいよ。
返事か、君が来るのを待ってるよ。
ロン
追伸 君のパパと僕のパパは、昔からの知り合いみたいだ。
─────────
ナマエは読み終わらないうちに叫んだ。
「シノビー、シノビー!」
「はい、ナマエさま!」
シノビーが現れた。掃除中だったのか、手に羽ぼうきを持っていた。ナマエは気に留めずに続けた。
「ウィーズリー家に行きたいんだ、
「いけません、ナマエさま!シノビーはナマエさまのお世話を仰せつかっております!」
シノビーは甲高い声で叫んだ。ナマエはシノビーの前にしゃがみ込んで、哀れっぽく顔を覗き込んだ。
「なあ、頼むよシノビー」
「ナマエさま、旦那さまのご命令です!──ナマエさま!」
ナマエはシノビーのふしくれだった手を両手で包み込んで、指先にキスをした。シノビーは恐縮して目を見開いた。
「シノビー、父上の居場所を知ってるだろう?お願いだよ。俺を連れてって。説得するから」
シノビーは畏れ多いと言わんばかりに頭をブンブン振ってから、目をギュッと閉じて掠れ声を絞り出した。
「──わかりました、でもナマエさまをお連れしてはいけないのです。シノビーが旦那さまにお伝えします──それで駄目だとおっしゃられたら、ナマエさまはどこへも行ってはいけないのです!」
「ありがとう!」
シノビーは覚悟を決めたようなしかめっつらで指を鳴らし、姿を消した。
ナマエは慌ただしく自室に戻り、手当たり次第のものをトランクに詰め込んだ。すぐにでもあの「隠れ穴」に行きたかった。
もし駄目だと言われても、ハリーの時みたいに空飛ぶ車で無理やり連れ去ってほしいくらいだった。
荷造りが終わり、そわそわと首元のメダイを撫でながら待っていると、シノビーが現れた。
シノビーは呆然とした様子だった。ナマエは急かした。
「どうだった?親父はなんて?」
「ナマエさま、旦那さまは……ナマエさまがシノビーと共になら行ってもよいとおっしゃいました……」
シノビーは信じられないといった表情だった。ナマエも同じように驚いた。
「本当?──お前、信頼されてるんだな」
ナマエがシノビーの頭を撫でると、シノビーは縮こまった。
「ああ、シノビーはお屋敷の掃除をしなければなりませんのに、ナマエさま──」
シノビーはひどい仕打ちだと言わんばかりの泣き声だった。
「『隠れ穴』の掃除の方が絶対にやりがいがあるぜ。行こう、シノビー!
ナマエは明るく言って、トランクを持ち上げた。シノビーはおずおず頷いて、パチンと指を鳴らした。