炎のゴブレット
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🐦⬛───────
クリスマスの少し前、ロンがフラーに衝撃的なダンスの申込みをした直後のことだった。
ハリーとロンが去った後、ナマエはアンソニーたちと合流して大広間に向かっていた。
「──フラー、よかったら僕とダンスパーティに行かない?」
次に聞こえてきた夢見心地な声は、レイブンクローのクィデッチ・キャプテン、ロジャー・デイビーズのものだった。ナマエはロンの悲劇を思い出して、思わず目を逸らした。
「──あそこのひーと、相手がいまーすか?」
フラーの声だ。アンソニーがちょいちょいとナマエの袖を引っ張った。
「何?」
ナマエがフラーたちの会話に聞き耳を立てながらアンソニーに言うと、マイケルとテリーもナマエを見ていた。
「──へ?ナマエ?」
ロジャーが素っ頓狂な声でナマエの名を読んだ。ナマエが振り返ると、フラーがナマエに指をさしていた。
「え?」
「あなーたでーす。ユールボールの相手はいまーすか?」
「いない……」
ナマエはたじろぎながら答えた。
「では、わたーしはこのひーとと、踊りまーす」
「えっ?」
今度はナマエだけでなく、その場にいたみんなが思わず声を出した。
「わたーしも、相手を決めていませーん。でも、あなーたに決めまーした!」
フラーは満足そうに笑った。高慢ちきだが、美しい笑顔だった。
クリスマスの朝、ナマエは、ベッドからのそりと起き上がり、足元に積まれたプレゼントを見た。そして、眠気が吹っ飛んだ。ウィーズリー家と友人たちからのプレゼントに混じって、思いがけないものを見つけたのだ。
「ウワ……」
シルクの灰色のリボンをかけられた小さな正方形の箱があった。カードが添えてある。──「メリークリスマス。父より」と、短い言葉が綴られていた。
「──マーリンの髭!」
驚きのあまりナマエは叫んだ。今までのことを思えば考えられないほど、父親が自分に歩み寄っていた。
「どうしたの?」
アンソニーがプレゼントを開ける手を止めてナマエを見た。
「親父からクリスマスプレゼントが届いた──」
ナマエはおそるおそるリボンを解いて箱を開けた。中には、黒曜石のような艶々と輝く黒い宝石が二粒入っていた。
「綺麗だね、耳飾り?」
アンソニーが言った。
「たぶん……これ、どうやってつけるんだ?──わっ」
ナマエが耳飾りを取り出し、手のひらに乗せようとすると、二つの石はひとりでに宙を彷徨い始めた。そして、ナマエの目の前に浮かぶと、突然ナマエに向かって素早く飛んだ。
「ウワッ──イタッ!」
ナマエが思わず目をつむると、耳にチクっと痛みが走った。ピアスが耳に突き刺さったのだ。
「びっくりした──なんだよ、もう……」
「あはは、似合ってるよ」
ナマエは文句を言いつつ、鏡を見た。小さな黒く輝く石が、両方の耳たぶに飾られていた。アンソニーの言葉通り、我ながら似合っているように思った。思いがけない贈り物に、戸惑いと喜びを隠せなかった。
いよいよユールボールが今夜に迫っていた。ホグワーツはこれまでになく見事に飾り付けられ、ダンブルドアが「妖女シスターズ」の出演を予約したとの噂で、生徒たちは興奮していた。城にも、校庭にも、深々と雪が降っていた。
「こんばんは、ナマエ!」
昼食を終えて外に出ると、ハーマイオニーに呼びかけられた。目をやると、ハーマイオニーとハリー、ロン、そしてドラコがこちらを見ていた。ナマエは駆け寄った。
「よう──また何かつっかかってたんじゃないだろうな?」
「別に、お前に関係ないだろう」
ナマエがドラコを咎めるように見ると、ドラコは不服そうに顔を逸らした。
「あら、私のこと、なんと言ったかしら──たしか、『出っ歯』で──」
「こいつを誘う男なんかいないって、そう言ったんだ」
ハーマイオニーが言い終える前にドラコが遮った。ナマエは喉がひくつくのを抑えて言った。
「──それははずれだな。ここにいるんだし」
ドラコはあんぐり口を開けた。ハーマイオニーの相手はナマエだと思っての驚きだろうと思うと、虚しいやらおかしいやらでナマエは乾いた笑い声を上げた。
「あはは!でも、パートナーは別だ。俺の相手を聞きたいか、ドラコ──」
ナマエはドラコの首に肩を回して、強引にその場を去った。ダンスを申し込んで、断られたのだと、これ以上自分の口から説明するのはいたたまれなかった。しかも、申し込んだ本人の前でなんて。
「馴れ馴れしい、やめろ」
ドラコはそう言って、鬱陶しそうにナマエの腕を振り払った。
「あんたは誰と行くんだよ」
「……パンジー・パーキンソン」
「ああ、あの子か……あんたといると、俺を睨んでくる」
ドラコはふん、と笑った。
「女の子に嫌われるのは堪えるかい?」
ナマエはむすっとして、ドラコから離れた。ドラコはナマエを言い負かしたことに満足したようにニヤっと笑って、そのまま雪の積もった中庭を横切ろうと歩き出した。その背中に、ナマエが呼びかけた。
「ドラコ!──クリスマスプレゼントだ!」
ドラコが振り返ると、ドラコの頭で雪玉が勢いよく弾けた。ナマエは大笑いした。すると、その口を目掛けてドラコの雪玉の反撃が炸裂した。ナマエがむせ返ったので、今度はドラコが笑った。
それから二人はしばらく杖も使わず雪合戦に興じた。と言っても、ナマエの玉が命中したのは初めの一球だけだった。一方、ドラコの玉はほとんどナマエに当たって弾け、最後にはナマエだけがぐしょぐしょになって、ぜいぜい喘ぎながら両手を挙げた。
「っくしゅん!……はあ、待て……降参──降参!」
「はあ、はあ……そんな腕前で僕に挑むなんて……身の程知らずもいいとこだ」
二人は雪遊びを切り上げ、それぞれの寮に戻った。ナマエはびっしょり濡れた制服を乾かして、自室でドレスローブに着替えた。同室のみんなと階下に降りていくと、談話室は色とりどりの服装で溢れ返り、いつもとは様子が違っていた。
「ナマエ!」
パドマがナマエに声をかけた。明るいトルコ石色のローブを着て、長い黒髪を三つ編みにして金の糸を編み込み、両手首には金のブレスレットが輝いていて、とびきり可愛かった。
「ウワ、パドマ。すごく似合ってる」
「ありがとう。──ねえ、あなたそのまま行くつもり?」
ナマエの頭をじろじろ見ていた。いつものように適当にひっつめた頭だったが、まだ少し濡れていた。
「え、変?」
「変じゃないわ。でも、もっと良くしてあげる」
パドマはうきうきと櫛を取り出し、ナマエを椅子に座らせた。ナマエはありがたいやら、恥ずかしいやらで眉を下げた。
「……俺と話す女の子はみんな、俺のことを女友達だと思ってる」
「それって、ハーマイオニー・グレンジャーの話?」
「別に──そういう意味じゃ、ない」
パドマが意味ありげな笑みを浮かべたので、ナマエは咄嗟に否定した。パドマのおかげで、ナマエの頭は浮き毛のない綺麗な三つ編みに結い上げられた。
「……そういえば、パドマは誰と行くんだ?」
「あら、ようやく気になりはじめたの?」
「アー……」
「──ふふ、冗談よ、ロン・ウィーズリーと行くの」
「ロン?」
ナマエは驚いてパドマを見た。
「い、意外だ」
「そう?パーバディはハリーと行くのよ」
驚いて目を見開いているナマエを尻目に、パドマは櫛をしまって手を叩いた。
「さ、行かなきゃ!待たせちゃうわ」
玄関ホールも生徒でごった返していた。大広間のドアが開放される八時を待って、みんなうろうろしていた。ナマエはすぐにフラーを見つけた。シルバーグレーのサテンドレスを着たフラーは輝かんばかりで、周囲の男子生徒はのぼせ上がった視線を送っていた。
「あなーたより、わたーしの方が、背が高いでーす」
「そんなの、見ればわかるよ」
開口一番のフラーの言葉に、ナマエは少しむくれた。フラーは小馬鹿にするように笑って、杖を振った。
「すこーし、背伸びさせて、あげましょう」
フラーが言うなり、ナマエの目線が高くなって、フラーの目と同じくらいの位置になった。──背が伸びたのだ。この魔法にはナマエも思わず感心した。
「うわ、すごい──でも、転びそうだ」
「がんばって、くださーい」
フラーは今度は楽しそうにクスっと笑った。
マクゴナガル先生に引率され、代表選手がパーティ会場の真ん中に集められた。人垣がさっと割れ、四組の生徒が前に進み出た。
セドリックとチョウが楽しそうに話しながらやってきた。チョウはナマエと目が合うとにっこりした。
ナマエは今度はクラムを見た。いや、正しくは、パートナーのハーマイオニーを探した。
ナマエは何度か辺りを見渡して、ようやく理解した──ハーマイオニーは、いつもとまったく別人のようだった。普段のたっぷりした髪や猫背ではなく、すらっと背筋を伸ばして、癖のないつややかな髪を後ろでまとめ上げていて、かすかにいい匂いがした。ハーマイオニーはナマエを見つけて、にっこり笑った。
「こんにちは、ナマエ!あなた、すてきね!」
「あ……あんたも」
ハーマイオニーがまったく違う女の子のように見えて、ナマエは落ち着かなかった。
ハリーはパーバディと現れた。いつもとあまり変わらない姿のハリーを見て、ナマエは急にほっと気が緩み、危うくフラーの足をひっかけるところだった。
いよいよ代表選手のダンスが始まった。ナマエが跪いて、フラーの手の甲におずおずとキスを落とした。フラー本人から、そうするようにと説明されたのだ。──しかし、いざやってみると、フラーは突然手を引いて、驚いたように手の甲を見た。
「な、何?」
「……すみませーん、ちょっと──くすぐったかったでーす」
「そう……」
ナマエは居心地の悪さに曖昧に笑った。ダンスは散々だった。フラーについて行くのに必死で、自分たちを見ている人々や、他の組を気にかける余裕はなかった。ようやく食事の時間になり、フラーとナマエはテーブルについた。ナマエはちらりとそばにいるハーマイオニーとクラムを見た。二人は夢中で話し込んでいて、食事にすら気づいていないようだった。
「──あなーた、親戚にヴィーラがいまーすか?」
出し抜けにフラーが言った。ナマエはきょとんとして、ポークチョップから口を離した。
「え?たぶん、いないと思うけど──どうしてそんなことを?」
「わたーしの、祖母はヴィーラでーす。あなーたが、わたーしの手にキスをしたとき、すこーし、魔法を感じたような気が、しまーした」
ナマエは心臓の音が大きくなるのを感じた。──魅了の呪い。非人道的な愛の強制──ムーディが話してくれた、父が創り上げたという闇の魔術のことを思い出していた。しかし、ヴィーラは雄の生物を惑わせるだけだ。ナマエは頭を振った。
「──けど、俺は魔法なんて使ってない」
「なぜか、あの瞬間だけ、あなーたが魅力的にみえまーした」
「何だそれ、今は?」
ナマエは思わず半笑いで言った。フラーは鼻で笑った。
「全然でーす。あなーたはハンサムでーすが、子供っぽーいです。それに、ダンスがひどい」
「初めてなんだから、しょうがないだろう」
「ほら、コムサ !子供っぽーい。……でも、ガブリエールはあなーたを気に入っていまーす」
フラーはちらりと振り返った。フラーの妹のガブリエルが、ボーバトンの年上の生徒たちに囲まれて食事をしているところだった。
フラーはガブリエルの話をよくした。まだ幼いのに応援のために代表団に着いていくと言って聞かなかったことや、クリスマスプレゼントに何を贈ったかなどを話した。そのときばかりは、いつもの傲慢な態度がやわらいで見えた。
ナマエは、フラーが自分をダンスに誘ったのは、ガブリエルにとってナマエがわるい虫かどうか品定めする気だったのかもしれないとふと思った。
ほどなくして、フラーはロジャーと二人で踊ることに決めたらしく、手持ち無沙汰のナマエはハリーたちを見つけて駆け寄った。しかし、ロンの機嫌が異常に悪く、そそくさとパドマとともにその場を離れた。
「パドマ、ロンはなんで機嫌が悪いんだ?」
ナマエが尋ねた。パドマはぷりぷりして言った。
「知らないわ!あの人、信じられない!ずっとあの調子なのよ?」
「……俺が当てつけにフラーに申し込んだと思ってるのかな」
「まあ……気にしなくていいわ。あなたたち、とっても素敵だったもの」
パドマはフラーよりもナマエにダンスを合わせてくれたので、ナマエも足を踏み外すことなく踊ることができた。天文学のシニストラ先生と踊っているムーディに近づいた時、ムーディはナマエに「いい耳飾りだな」と声をかけた。ナマエは笑みを返す余裕もあったほどだった。
「──私、あなたが誘ってくれるかと思ってたのに」
曲が終わると、パドマが言った。ナマエが考えてもみなかったことだった。
「えっ、でも──テリーが断られてたし──相手がいるのかと」
「あの人、パーバディと私を間違えたのよ?」
「うわ、最低」
二人は思わずぷっと笑った。
ナマエはへとへとだったが、パドマはまだまだ踊り足りないようで、パーバディと二人でボーバトン生を捕まえて、再びダンスフロアに戻って行った。ナマエはぼんやり会場を眺めた。
審査員席にはクラウチ氏が居らず、かわりにパーシーが座っていて、ハリーと何かを話していた。テリーは年下の女の子と踊り、アンソニーはハッフルパフの上級生と踊っていた。マイケルは──なんと、ロンの妹のジニー・ウィーズリーと楽しそうに話し込んでいた。
ふと、人がまばらなテーブル席に目をやると、ハーマイオニーが一人でテーブルについていた。ナマエは思わず駆け寄った。
「ハーマイオニー」
ハーマイオニーは顔を上げた。目が真っ赤で、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。ナマエはギョッとした。
「どうしたんだ、ハーマイオニー。クラムは?──あいつに、何か言われたのか?」
「──ゔぉくが、どうかしましたか?」
ナマエの後ろから、両手にドリンクを持ったクラムが現れた。クラムはナマエを睨んで、ハーマイオニーを覗き込んだ。
「ハーミィニー、彼に何かされた?」
「なっ──」
ナマエが何か言い返そうとすると、ハーマイオニーは笑って立ち上がった。
「ふふっ、違う、違うわ二人とも。大丈夫──ビクトール、彼はレイブンクローのナマエよ。友達なの──ナマエ、確かブルガリア語が話せるのよね?」
「それゔぁ、すごいです」
クラムが素直に感心して見せた。ナマエは、ハーマイオニーがクラムをビクトールと呼んでいることに少なからずショックを受けた。
「えっと──でも、いや、ほんの少しだけ。父が……ダームストラング出身なんだ」
クラムはハーマイオニーにドリンクを手渡した。
「ゔぉく、飲み物を持ってきたけど──もう一つ持ってきます」
「えっ、構わないのに──」
クラムはすぐにドリンクを取りに戻ってしまった。ナマエは毒気を抜かれたように立ち尽くした。
「……いいヤツそうだな」
「ええ、とても」
ハーマイオニーが目でクラムを追っていた。ハンサムでもなんでもないと、ハーマイオニー自身がそう評した、仏頂面のクラムを。ナマエはハーマイオニーの横顔を見ていると、たまらない気持ちになった。
「──俺がクラムより先に申し込んだら、受けてくれた?」
ナマエは声に出した途端、はっと後悔した。口に出すつもりはなかったのに。ずっと考えてはいた、しようのないもしもの話だった。ハーマイオニーは驚いてクラムから目を離した。自分を見るハーマイオニーの困ったような顔を見て、ナマエは急にみじめな気持ちになった。
「フィニート、フィニート!今のなし……忘れて。……あと、クラムにありがとうって言っておいて……俺はもう行くよ」
ナマエはそう言い残して、そそくさとその場を離れた。顔が火照っているのが触れなくてもわかった。ダンスフロアの端を歩き、玄関ホールに出ようとすると、扉の影でチョウとセドリックが手を繋いで話しているのに遭遇した。
「──やあ」
セドリックがナマエに気がついて声をかけた。ナマエは気まずく笑った。チョウが言った。
「あら──ナマエ、一人なの?フラーは?」
「知らない、俺はダンスが酷くて子供っぽいんだってさ」
ナマエが不服そうに言うと、チョウがその通りだと言わんばかりに笑った。
「ふふっ。──あ、私……少しお手洗いに行ってきてもいいかしら」
「もちろん、気をつけて」
セドリックが答えると、チョウが行ってしまった。ナマエもその場を去ろうとすると、セドリックがナマエの手首を掴んだ。
「何?」
「君に聞きたいことがあるんだけど」
ナマエは振り返ると、セドリックは声を低めて深刻そうな顔をした。
「あのさ……チョウは──君の話をよくするんだけど──君とチョウは──」
ナマエはまじまじとセドリックを見て、拍子抜けした。ダンスのパートナーにもなっているのにそんな心配事があるなんて、信じられなかった。
「──ただの友達だ。それに……チョウは俺が男の子だって気づいてないと思う」
ナマエは面倒になって、投げやりに言った。セドリックはからかうように笑って、また話し出した。
「はは、そう。君みたいな妹がいたらいいって言ってたな……それと──君、ハリーと仲がいいよね?」
「うん?」
ナマエは予想外の言葉にきょとんと聞き返した。セドリックは続けた。
「ハリーは──第二の課題の謎を解いたか?」
ナマエは怪訝な顔をした。どうやらこちらがセドリックの本題だったようだ。
「さあ──聞いてないけど……宿題は後回しにする方だな」
「そうか──なら、ハリーに伝えてくれ。風呂の中で考えるといいって。監督生の風呂場がある、場所は──」
「ちょっと待て、なんでそんなことを?ライバルなのに」
ナマエが不審そうに聞き返すと、セドリックはニコッと笑った。
「ハリーに借りがあってね」
そう言って歯を見せたセドリックは、評判に違わずハンサムで、セドリックにパートナーがいなかったら、フラーはきっとセドリックと踊りたがったろうと思った。
「わかった、伝える」
「ありがとう」
チョウが戻ってくるのが見えたので、ナマエはさっさとその場を後にした。ダンスフロアに戻る気は起こらなかった。トイレに向かうふりをして、一人早めにレイブンクロー塔に帰った。階段を上りながらも、わんわんと楽しげな音楽が背後についてきた。ナマエにとっては、今夜は楽しいパーティーとは言い難い夜だった。
クリスマスの少し前、ロンがフラーに衝撃的なダンスの申込みをした直後のことだった。
ハリーとロンが去った後、ナマエはアンソニーたちと合流して大広間に向かっていた。
「──フラー、よかったら僕とダンスパーティに行かない?」
次に聞こえてきた夢見心地な声は、レイブンクローのクィデッチ・キャプテン、ロジャー・デイビーズのものだった。ナマエはロンの悲劇を思い出して、思わず目を逸らした。
「──あそこのひーと、相手がいまーすか?」
フラーの声だ。アンソニーがちょいちょいとナマエの袖を引っ張った。
「何?」
ナマエがフラーたちの会話に聞き耳を立てながらアンソニーに言うと、マイケルとテリーもナマエを見ていた。
「──へ?ナマエ?」
ロジャーが素っ頓狂な声でナマエの名を読んだ。ナマエが振り返ると、フラーがナマエに指をさしていた。
「え?」
「あなーたでーす。ユールボールの相手はいまーすか?」
「いない……」
ナマエはたじろぎながら答えた。
「では、わたーしはこのひーとと、踊りまーす」
「えっ?」
今度はナマエだけでなく、その場にいたみんなが思わず声を出した。
「わたーしも、相手を決めていませーん。でも、あなーたに決めまーした!」
フラーは満足そうに笑った。高慢ちきだが、美しい笑顔だった。
クリスマスの朝、ナマエは、ベッドからのそりと起き上がり、足元に積まれたプレゼントを見た。そして、眠気が吹っ飛んだ。ウィーズリー家と友人たちからのプレゼントに混じって、思いがけないものを見つけたのだ。
「ウワ……」
シルクの灰色のリボンをかけられた小さな正方形の箱があった。カードが添えてある。──「メリークリスマス。父より」と、短い言葉が綴られていた。
「──マーリンの髭!」
驚きのあまりナマエは叫んだ。今までのことを思えば考えられないほど、父親が自分に歩み寄っていた。
「どうしたの?」
アンソニーがプレゼントを開ける手を止めてナマエを見た。
「親父からクリスマスプレゼントが届いた──」
ナマエはおそるおそるリボンを解いて箱を開けた。中には、黒曜石のような艶々と輝く黒い宝石が二粒入っていた。
「綺麗だね、耳飾り?」
アンソニーが言った。
「たぶん……これ、どうやってつけるんだ?──わっ」
ナマエが耳飾りを取り出し、手のひらに乗せようとすると、二つの石はひとりでに宙を彷徨い始めた。そして、ナマエの目の前に浮かぶと、突然ナマエに向かって素早く飛んだ。
「ウワッ──イタッ!」
ナマエが思わず目をつむると、耳にチクっと痛みが走った。ピアスが耳に突き刺さったのだ。
「びっくりした──なんだよ、もう……」
「あはは、似合ってるよ」
ナマエは文句を言いつつ、鏡を見た。小さな黒く輝く石が、両方の耳たぶに飾られていた。アンソニーの言葉通り、我ながら似合っているように思った。思いがけない贈り物に、戸惑いと喜びを隠せなかった。
いよいよユールボールが今夜に迫っていた。ホグワーツはこれまでになく見事に飾り付けられ、ダンブルドアが「妖女シスターズ」の出演を予約したとの噂で、生徒たちは興奮していた。城にも、校庭にも、深々と雪が降っていた。
「こんばんは、ナマエ!」
昼食を終えて外に出ると、ハーマイオニーに呼びかけられた。目をやると、ハーマイオニーとハリー、ロン、そしてドラコがこちらを見ていた。ナマエは駆け寄った。
「よう──また何かつっかかってたんじゃないだろうな?」
「別に、お前に関係ないだろう」
ナマエがドラコを咎めるように見ると、ドラコは不服そうに顔を逸らした。
「あら、私のこと、なんと言ったかしら──たしか、『出っ歯』で──」
「こいつを誘う男なんかいないって、そう言ったんだ」
ハーマイオニーが言い終える前にドラコが遮った。ナマエは喉がひくつくのを抑えて言った。
「──それははずれだな。ここにいるんだし」
ドラコはあんぐり口を開けた。ハーマイオニーの相手はナマエだと思っての驚きだろうと思うと、虚しいやらおかしいやらでナマエは乾いた笑い声を上げた。
「あはは!でも、パートナーは別だ。俺の相手を聞きたいか、ドラコ──」
ナマエはドラコの首に肩を回して、強引にその場を去った。ダンスを申し込んで、断られたのだと、これ以上自分の口から説明するのはいたたまれなかった。しかも、申し込んだ本人の前でなんて。
「馴れ馴れしい、やめろ」
ドラコはそう言って、鬱陶しそうにナマエの腕を振り払った。
「あんたは誰と行くんだよ」
「……パンジー・パーキンソン」
「ああ、あの子か……あんたといると、俺を睨んでくる」
ドラコはふん、と笑った。
「女の子に嫌われるのは堪えるかい?」
ナマエはむすっとして、ドラコから離れた。ドラコはナマエを言い負かしたことに満足したようにニヤっと笑って、そのまま雪の積もった中庭を横切ろうと歩き出した。その背中に、ナマエが呼びかけた。
「ドラコ!──クリスマスプレゼントだ!」
ドラコが振り返ると、ドラコの頭で雪玉が勢いよく弾けた。ナマエは大笑いした。すると、その口を目掛けてドラコの雪玉の反撃が炸裂した。ナマエがむせ返ったので、今度はドラコが笑った。
それから二人はしばらく杖も使わず雪合戦に興じた。と言っても、ナマエの玉が命中したのは初めの一球だけだった。一方、ドラコの玉はほとんどナマエに当たって弾け、最後にはナマエだけがぐしょぐしょになって、ぜいぜい喘ぎながら両手を挙げた。
「っくしゅん!……はあ、待て……降参──降参!」
「はあ、はあ……そんな腕前で僕に挑むなんて……身の程知らずもいいとこだ」
二人は雪遊びを切り上げ、それぞれの寮に戻った。ナマエはびっしょり濡れた制服を乾かして、自室でドレスローブに着替えた。同室のみんなと階下に降りていくと、談話室は色とりどりの服装で溢れ返り、いつもとは様子が違っていた。
「ナマエ!」
パドマがナマエに声をかけた。明るいトルコ石色のローブを着て、長い黒髪を三つ編みにして金の糸を編み込み、両手首には金のブレスレットが輝いていて、とびきり可愛かった。
「ウワ、パドマ。すごく似合ってる」
「ありがとう。──ねえ、あなたそのまま行くつもり?」
ナマエの頭をじろじろ見ていた。いつものように適当にひっつめた頭だったが、まだ少し濡れていた。
「え、変?」
「変じゃないわ。でも、もっと良くしてあげる」
パドマはうきうきと櫛を取り出し、ナマエを椅子に座らせた。ナマエはありがたいやら、恥ずかしいやらで眉を下げた。
「……俺と話す女の子はみんな、俺のことを女友達だと思ってる」
「それって、ハーマイオニー・グレンジャーの話?」
「別に──そういう意味じゃ、ない」
パドマが意味ありげな笑みを浮かべたので、ナマエは咄嗟に否定した。パドマのおかげで、ナマエの頭は浮き毛のない綺麗な三つ編みに結い上げられた。
「……そういえば、パドマは誰と行くんだ?」
「あら、ようやく気になりはじめたの?」
「アー……」
「──ふふ、冗談よ、ロン・ウィーズリーと行くの」
「ロン?」
ナマエは驚いてパドマを見た。
「い、意外だ」
「そう?パーバディはハリーと行くのよ」
驚いて目を見開いているナマエを尻目に、パドマは櫛をしまって手を叩いた。
「さ、行かなきゃ!待たせちゃうわ」
玄関ホールも生徒でごった返していた。大広間のドアが開放される八時を待って、みんなうろうろしていた。ナマエはすぐにフラーを見つけた。シルバーグレーのサテンドレスを着たフラーは輝かんばかりで、周囲の男子生徒はのぼせ上がった視線を送っていた。
「あなーたより、わたーしの方が、背が高いでーす」
「そんなの、見ればわかるよ」
開口一番のフラーの言葉に、ナマエは少しむくれた。フラーは小馬鹿にするように笑って、杖を振った。
「すこーし、背伸びさせて、あげましょう」
フラーが言うなり、ナマエの目線が高くなって、フラーの目と同じくらいの位置になった。──背が伸びたのだ。この魔法にはナマエも思わず感心した。
「うわ、すごい──でも、転びそうだ」
「がんばって、くださーい」
フラーは今度は楽しそうにクスっと笑った。
マクゴナガル先生に引率され、代表選手がパーティ会場の真ん中に集められた。人垣がさっと割れ、四組の生徒が前に進み出た。
セドリックとチョウが楽しそうに話しながらやってきた。チョウはナマエと目が合うとにっこりした。
ナマエは今度はクラムを見た。いや、正しくは、パートナーのハーマイオニーを探した。
ナマエは何度か辺りを見渡して、ようやく理解した──ハーマイオニーは、いつもとまったく別人のようだった。普段のたっぷりした髪や猫背ではなく、すらっと背筋を伸ばして、癖のないつややかな髪を後ろでまとめ上げていて、かすかにいい匂いがした。ハーマイオニーはナマエを見つけて、にっこり笑った。
「こんにちは、ナマエ!あなた、すてきね!」
「あ……あんたも」
ハーマイオニーがまったく違う女の子のように見えて、ナマエは落ち着かなかった。
ハリーはパーバディと現れた。いつもとあまり変わらない姿のハリーを見て、ナマエは急にほっと気が緩み、危うくフラーの足をひっかけるところだった。
いよいよ代表選手のダンスが始まった。ナマエが跪いて、フラーの手の甲におずおずとキスを落とした。フラー本人から、そうするようにと説明されたのだ。──しかし、いざやってみると、フラーは突然手を引いて、驚いたように手の甲を見た。
「な、何?」
「……すみませーん、ちょっと──くすぐったかったでーす」
「そう……」
ナマエは居心地の悪さに曖昧に笑った。ダンスは散々だった。フラーについて行くのに必死で、自分たちを見ている人々や、他の組を気にかける余裕はなかった。ようやく食事の時間になり、フラーとナマエはテーブルについた。ナマエはちらりとそばにいるハーマイオニーとクラムを見た。二人は夢中で話し込んでいて、食事にすら気づいていないようだった。
「──あなーた、親戚にヴィーラがいまーすか?」
出し抜けにフラーが言った。ナマエはきょとんとして、ポークチョップから口を離した。
「え?たぶん、いないと思うけど──どうしてそんなことを?」
「わたーしの、祖母はヴィーラでーす。あなーたが、わたーしの手にキスをしたとき、すこーし、魔法を感じたような気が、しまーした」
ナマエは心臓の音が大きくなるのを感じた。──魅了の呪い。非人道的な愛の強制──ムーディが話してくれた、父が創り上げたという闇の魔術のことを思い出していた。しかし、ヴィーラは雄の生物を惑わせるだけだ。ナマエは頭を振った。
「──けど、俺は魔法なんて使ってない」
「なぜか、あの瞬間だけ、あなーたが魅力的にみえまーした」
「何だそれ、今は?」
ナマエは思わず半笑いで言った。フラーは鼻で笑った。
「全然でーす。あなーたはハンサムでーすが、子供っぽーいです。それに、ダンスがひどい」
「初めてなんだから、しょうがないだろう」
「ほら、
フラーはちらりと振り返った。フラーの妹のガブリエルが、ボーバトンの年上の生徒たちに囲まれて食事をしているところだった。
フラーはガブリエルの話をよくした。まだ幼いのに応援のために代表団に着いていくと言って聞かなかったことや、クリスマスプレゼントに何を贈ったかなどを話した。そのときばかりは、いつもの傲慢な態度がやわらいで見えた。
ナマエは、フラーが自分をダンスに誘ったのは、ガブリエルにとってナマエがわるい虫かどうか品定めする気だったのかもしれないとふと思った。
ほどなくして、フラーはロジャーと二人で踊ることに決めたらしく、手持ち無沙汰のナマエはハリーたちを見つけて駆け寄った。しかし、ロンの機嫌が異常に悪く、そそくさとパドマとともにその場を離れた。
「パドマ、ロンはなんで機嫌が悪いんだ?」
ナマエが尋ねた。パドマはぷりぷりして言った。
「知らないわ!あの人、信じられない!ずっとあの調子なのよ?」
「……俺が当てつけにフラーに申し込んだと思ってるのかな」
「まあ……気にしなくていいわ。あなたたち、とっても素敵だったもの」
パドマはフラーよりもナマエにダンスを合わせてくれたので、ナマエも足を踏み外すことなく踊ることができた。天文学のシニストラ先生と踊っているムーディに近づいた時、ムーディはナマエに「いい耳飾りだな」と声をかけた。ナマエは笑みを返す余裕もあったほどだった。
「──私、あなたが誘ってくれるかと思ってたのに」
曲が終わると、パドマが言った。ナマエが考えてもみなかったことだった。
「えっ、でも──テリーが断られてたし──相手がいるのかと」
「あの人、パーバディと私を間違えたのよ?」
「うわ、最低」
二人は思わずぷっと笑った。
ナマエはへとへとだったが、パドマはまだまだ踊り足りないようで、パーバディと二人でボーバトン生を捕まえて、再びダンスフロアに戻って行った。ナマエはぼんやり会場を眺めた。
審査員席にはクラウチ氏が居らず、かわりにパーシーが座っていて、ハリーと何かを話していた。テリーは年下の女の子と踊り、アンソニーはハッフルパフの上級生と踊っていた。マイケルは──なんと、ロンの妹のジニー・ウィーズリーと楽しそうに話し込んでいた。
ふと、人がまばらなテーブル席に目をやると、ハーマイオニーが一人でテーブルについていた。ナマエは思わず駆け寄った。
「ハーマイオニー」
ハーマイオニーは顔を上げた。目が真っ赤で、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。ナマエはギョッとした。
「どうしたんだ、ハーマイオニー。クラムは?──あいつに、何か言われたのか?」
「──ゔぉくが、どうかしましたか?」
ナマエの後ろから、両手にドリンクを持ったクラムが現れた。クラムはナマエを睨んで、ハーマイオニーを覗き込んだ。
「ハーミィニー、彼に何かされた?」
「なっ──」
ナマエが何か言い返そうとすると、ハーマイオニーは笑って立ち上がった。
「ふふっ、違う、違うわ二人とも。大丈夫──ビクトール、彼はレイブンクローのナマエよ。友達なの──ナマエ、確かブルガリア語が話せるのよね?」
「それゔぁ、すごいです」
クラムが素直に感心して見せた。ナマエは、ハーマイオニーがクラムをビクトールと呼んでいることに少なからずショックを受けた。
「えっと──でも、いや、ほんの少しだけ。父が……ダームストラング出身なんだ」
クラムはハーマイオニーにドリンクを手渡した。
「ゔぉく、飲み物を持ってきたけど──もう一つ持ってきます」
「えっ、構わないのに──」
クラムはすぐにドリンクを取りに戻ってしまった。ナマエは毒気を抜かれたように立ち尽くした。
「……いいヤツそうだな」
「ええ、とても」
ハーマイオニーが目でクラムを追っていた。ハンサムでもなんでもないと、ハーマイオニー自身がそう評した、仏頂面のクラムを。ナマエはハーマイオニーの横顔を見ていると、たまらない気持ちになった。
「──俺がクラムより先に申し込んだら、受けてくれた?」
ナマエは声に出した途端、はっと後悔した。口に出すつもりはなかったのに。ずっと考えてはいた、しようのないもしもの話だった。ハーマイオニーは驚いてクラムから目を離した。自分を見るハーマイオニーの困ったような顔を見て、ナマエは急にみじめな気持ちになった。
「フィニート、フィニート!今のなし……忘れて。……あと、クラムにありがとうって言っておいて……俺はもう行くよ」
ナマエはそう言い残して、そそくさとその場を離れた。顔が火照っているのが触れなくてもわかった。ダンスフロアの端を歩き、玄関ホールに出ようとすると、扉の影でチョウとセドリックが手を繋いで話しているのに遭遇した。
「──やあ」
セドリックがナマエに気がついて声をかけた。ナマエは気まずく笑った。チョウが言った。
「あら──ナマエ、一人なの?フラーは?」
「知らない、俺はダンスが酷くて子供っぽいんだってさ」
ナマエが不服そうに言うと、チョウがその通りだと言わんばかりに笑った。
「ふふっ。──あ、私……少しお手洗いに行ってきてもいいかしら」
「もちろん、気をつけて」
セドリックが答えると、チョウが行ってしまった。ナマエもその場を去ろうとすると、セドリックがナマエの手首を掴んだ。
「何?」
「君に聞きたいことがあるんだけど」
ナマエは振り返ると、セドリックは声を低めて深刻そうな顔をした。
「あのさ……チョウは──君の話をよくするんだけど──君とチョウは──」
ナマエはまじまじとセドリックを見て、拍子抜けした。ダンスのパートナーにもなっているのにそんな心配事があるなんて、信じられなかった。
「──ただの友達だ。それに……チョウは俺が男の子だって気づいてないと思う」
ナマエは面倒になって、投げやりに言った。セドリックはからかうように笑って、また話し出した。
「はは、そう。君みたいな妹がいたらいいって言ってたな……それと──君、ハリーと仲がいいよね?」
「うん?」
ナマエは予想外の言葉にきょとんと聞き返した。セドリックは続けた。
「ハリーは──第二の課題の謎を解いたか?」
ナマエは怪訝な顔をした。どうやらこちらがセドリックの本題だったようだ。
「さあ──聞いてないけど……宿題は後回しにする方だな」
「そうか──なら、ハリーに伝えてくれ。風呂の中で考えるといいって。監督生の風呂場がある、場所は──」
「ちょっと待て、なんでそんなことを?ライバルなのに」
ナマエが不審そうに聞き返すと、セドリックはニコッと笑った。
「ハリーに借りがあってね」
そう言って歯を見せたセドリックは、評判に違わずハンサムで、セドリックにパートナーがいなかったら、フラーはきっとセドリックと踊りたがったろうと思った。
「わかった、伝える」
「ありがとう」
チョウが戻ってくるのが見えたので、ナマエはさっさとその場を後にした。ダンスフロアに戻る気は起こらなかった。トイレに向かうふりをして、一人早めにレイブンクロー塔に帰った。階段を上りながらも、わんわんと楽しげな音楽が背後についてきた。ナマエにとっては、今夜は楽しいパーティーとは言い難い夜だった。