炎のゴブレット
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フリットウィック先生の「呪文学」の授業が終わろうとしている時だった。先生は小さな背をシャキッと伸ばした。
「皆さんにお話があります。ユールボール・クリスマス──ダンスパーティが近づきました!三大魔法学校対抗試合の伝統でもあり、外国からのお客様と知り合う機会でもあります。さて、ユールボールは四年生以上が参加を許されます──下級生を招待することは可能ですが──」
女の子たちがクスクス笑いを始めた。
「パーティ用のドレスローブを着用なさい」
フリットウィック先生の話が続いた。
「大広間で、クリスマスの夜八時から始まり、夜中の十二時に終わります。しかし、レイブンクローに恥じぬ態度を忘れないように──よいですね!では──授業は終わり!」
ベルが鳴った。みんながカバンに教材を詰め込んだり、肩にかけたり、いつもの慌ただしいガヤガヤが始まった。
「どうする?誰を誘おうか」
マイケルがニヤニヤしながら言った。ナマエは肩をすくめた。
「ダンスなんて──踊ったことないのに」
「いいのか?グレンジャーがハリーと踊るかもよ?」
テリーが茶化した。ナマエは思わずハリーとハーマイオニーが手を取り合って踊る想像をしてしまった。頭を殴られたようなショックを受けて、自分でも驚いた。
アンソニーが仲裁するように話しかけた。
「まあ、まあ……そういうテリーは誰を誘うつもり?」
「パドマ・パチルを誘う!見てろよ」
テリーが言うと、マイケルが笑った。
「学年一の美女だぜ?争奪戦だ──」
教室を出て大広間に向かって歩くと、明らかに今までと違った雰囲気だった。今年のクリスマスは、四年生以上は全員が学校に残るようだった。そして、全員がダンスパーティのことで頭がいっぱいのようだった。女子生徒は廊下でクスクス笑ったり、ヒソヒソ囁いたり、男子生徒がそばを通り過ぎるとキャアキャア笑い声を上げたり、クリスマスの夜に何を着ていくかを夢中で情報交換していた。
ナマエたち男子生徒も雰囲気にのまれ、すっかり落ち着きをなくしてしまった。
夕食を食べながら、ナマエたちのそばで──おそらく聞こえるように──女子生徒が「男子に申し込むか、誘われるのを待つかどうか」という作戦会議を始めた。
ナマエは、誰と行きたいか自分ではよくわかっていた。むしろ、それ以外の人が思いつかなかった。
「──俺、ハーマイオニーを誘う」
ナマエは、すっかりお気に入りになったブイヤベースを食べながら、決意した。テリーは「いいぞ!」と囃し立てた。
「じゃ、さっさと行ってこい!」
ナマエはハーマイオニーが図書館に返す本を持っているのを見た。夕食後、意を決して図書館に向かった。図書館の扉の前で、深呼吸した。──問題ない、いつものように話すだけだ。ドアノブに手をかけようとすると、ナマエが触れる前に扉が開いた。ハーマイオニーが出てくるところだった。ハーマイオニーはなぜか口元を緩ませて頬をピンクに染めていた。やや遅れて、ハーマイオニーがナマエに気がついた。
「──ナマエ!あら、図書館?」
ハーマイオニーがきゅっと口元を元に戻した。ナマエは不安な気持ちになったが、ふうと息をついて、覚悟を決めた。
「ハーマイオニー、あの──ダンスパーティ、俺と一緒に行かない?」
ハーマイオニーは目を丸くして、さっきよりも赤くなった。ナマエは顔が熱くなり、自分も赤くなっているのだろうと思った。そして、ハーマイオニーが目を伏せて、申し訳なさそうに絞り出した。
「ナマエ──ごめんなさい、本当にたったいま──ほかの人に誘われて、『オーケー』って言ったの」
「えっ」
ナマエは急に内臓が空っぽになったような気がした。なぜだか無自覚な自信があった。断られることは想定していなかったのだ。ナマエはふとテリーが言った言葉を思い出した。「グレンジャーがハリーと踊るかもよ……」と。
「あの、えっと、誰に──?」
ハーマイオニーは少し迷ってから、ナマエに耳打ちした。
「あなたがわたしを誘ってくれたから教えるけど──その……ビクトール・クラム」
ナマエは驚いて声をあげそうになった。ハーマイオニーはまた恥ずかしそうに笑みをこぼした。
「あの人、ずっと図書館にいたでしょう……わたしに話しかけるためだったんですって……でも、勇気がなかったって……」
ハーマイオニーは嬉しそうな顔をナマエから逸らした。ナマエは曖昧に笑った。
「そう……教えてくれてありがと、誰にも言わないよ」
「ええ、本当にごめんなさい」
「ううん、全然。それじゃあ、また」
ナマエはぎこちなく答えて、用もないのに図書館に入った。早くその場を去りたかった。──しかし、すぐに後悔した。ビクトール・クラムが入り口のすぐそばに座っていたのだ。ナマエに気づきもせず、本に目を落としていた。その口元は僅かに笑っているように見えた。
この男よりも早くハーマイオニーを誘っていれば、自分がオーケーしてもらえただろうか。憎らしいやら悔しいやらでクラムを見ていると、視線に気づいたクラムは口元を引き締めた。ナマエは、ハーマイオニーが行ってしまうのを待ってから、図書館を出た。
翌朝、テリーが「ナマエがグレンジャーに断られた!」と談話室で言いふらしたせいで、レイブンクローの女の子数人にダンスパーティに誘われた。話したことのない上級生や、数人で固まって申し込んできた下級生もいた。ナマエのほうは心ここに在らずで、生返事を繰り返していた。テリーがその様子を見てげんなりしたようだった。
「よりどりみどりなのに、なんで断っちゃうんだ?贅沢なやつ」
「うるさいな……テリー、あんたはどうなんだよ。パドマを誘うんじゃなかったのか」
「断られたんだ、聞いてやるなよ」
マイケルが茶化すように笑った。マイケルはすでに同級生のリサ・ターピンと行くことになったらしく、余裕の表情だった。
「──僕、今朝、ダームストラングの男に君の名前を聞かれたぜ。紹介しようか?」
「いらない……」
ナマエはうなだれた。ハーマイオニー以外の女の子を誘う自分がまったく想像できなかった。
⚡️────────
学期最後の週、日を追って騒がしくなった。ホグワーツの教職員は、ボーバトンとダームストラングの客人を、引き続きあっと言わせたいとの願いを込め、クリスマスには城を最高の状態で見せようと決意したようだった。飾りつけができ上がると、それは、ハリーがこれまでホグワーツ城で見た中でも最高にすばらしいものだった。
しかし、ハリーはいまだにダンスのパートナーを見つけてはいなかった。たったいま、ようやく勇気を振り絞ってチョウに申込み──あっけなく断られたばかりだった。
「ハリー、代表は最初に踊るんだってな。誰と行くんだ?」
ハリーが階段に腰掛けてうなだれていると、ナマエがひょっこりと現れた。
「そういう君は?」
「……ハーマイオニーを誘ったけど、先約があるって断られた」
ハリーは口をあんぐり開けた。
「僕、てっきり君が相手だと思ってた──だって、君は──ハンサムだし」
「ハンサム、ね。キュートじゃなくてよかった」
ナマエがため息をつきながら言った。ハリーは、ナマエも女の子に誘いを断られていることに勇気をもらった。
「じゃあ、ハーマイオニーが誰と行くか知ってるの?」
「口止めされてるんだ。まあ──少なくとも、俺の方がハンサムだよ」
ナマエは冗談とは裏腹に浮かない顔で言った。
「そう……僕はチョウに断られた。セドリックと行くんだって」
「チョウ?!」
「シーッ!」
ナマエが大きな声を出したので、ハリーは咎めるように口に指を当てた。ナマエは目をぱちぱちさせた。ハリーがチョウのことをどう思っているか、考えたこともなかったというような顔だった。
ナマエが何か言いたそうにしていると、ロンが階段を降りてやってきた。ロンはナマエを見てにやっとして言った。
「アー、ナマエ。君、たしか化粧してる日があったよね」
「化粧?」
ハリーはきょとんとした。ナマエは「ああ」と思い出したように言い、ロンはにやにやしてハリーを肘で小突いた。
「ハリー、君がホグズミードに来れなかった日だよ。去年、一瞬だけ──たしかに、ナマエはれっきとした女の子だった」
「チョウたちの人形になっただけだ」
ナマエは満更でもなさそうにふんと笑った。ハリーは、ナマエがチョウと仲が良いことが気がかりだったが、当のナマエはハーマイオニーを誘ったことをハリーに告白してくれたので、ほっと安心した。ナマエが言った。
「俺は化粧なんてしなくても、ダームストラングの男子からダンスに誘われたよ──あんたも俺に申し込みたいって?」
三人はケラケラ笑った。
すると、デラクール姉妹がナマエたちの前を歩いた。すれ違いざまに、フラーはハリーたちを見て、髪を手で靡かせた。妹はチラチラとナマエとハリーを見ながらその後について歩いて行った。すると、笑っていたロンが黙り込み、突然立ち上がった。
「ロン?」
ナマエが首を傾げた。ロンはずんずんフラーの方に歩いていった。ハリーは「まずい」と思ったが、遅かった。
「──僕とダンスパーティに行ってください!」
大きな声で、はっきりとロンはそう言った。いや、ほとんど叫んでいた。玄関ホール中のみんながロンを見て、しんと静まり返った。
フラーはナマコでも見るかのような顔でロンを一瞥し、妹を連れてさっさとその場を後にした。最悪の空気が玄関ホールに残されていた。スリザリンの生徒がはじめに笑いだし、そのあとからはみんなが笑いを堪えきれずに吹き出した。ハリーとナマエはなんとかロンのために口を固く結んでいたが、ナマエは今にも笑いの発作を起こしそうに、険しい顔で肩を震わせていた。ハリーは打ちのめされたロンを玄関ホールから救い出して、その場から逃げるように談話室に戻った。
いまや、パートナーを見つけることよりも、ドラゴンと戦う方が簡単だとさえ思った。
「皆さんにお話があります。ユールボール・クリスマス──ダンスパーティが近づきました!三大魔法学校対抗試合の伝統でもあり、外国からのお客様と知り合う機会でもあります。さて、ユールボールは四年生以上が参加を許されます──下級生を招待することは可能ですが──」
女の子たちがクスクス笑いを始めた。
「パーティ用のドレスローブを着用なさい」
フリットウィック先生の話が続いた。
「大広間で、クリスマスの夜八時から始まり、夜中の十二時に終わります。しかし、レイブンクローに恥じぬ態度を忘れないように──よいですね!では──授業は終わり!」
ベルが鳴った。みんながカバンに教材を詰め込んだり、肩にかけたり、いつもの慌ただしいガヤガヤが始まった。
「どうする?誰を誘おうか」
マイケルがニヤニヤしながら言った。ナマエは肩をすくめた。
「ダンスなんて──踊ったことないのに」
「いいのか?グレンジャーがハリーと踊るかもよ?」
テリーが茶化した。ナマエは思わずハリーとハーマイオニーが手を取り合って踊る想像をしてしまった。頭を殴られたようなショックを受けて、自分でも驚いた。
アンソニーが仲裁するように話しかけた。
「まあ、まあ……そういうテリーは誰を誘うつもり?」
「パドマ・パチルを誘う!見てろよ」
テリーが言うと、マイケルが笑った。
「学年一の美女だぜ?争奪戦だ──」
教室を出て大広間に向かって歩くと、明らかに今までと違った雰囲気だった。今年のクリスマスは、四年生以上は全員が学校に残るようだった。そして、全員がダンスパーティのことで頭がいっぱいのようだった。女子生徒は廊下でクスクス笑ったり、ヒソヒソ囁いたり、男子生徒がそばを通り過ぎるとキャアキャア笑い声を上げたり、クリスマスの夜に何を着ていくかを夢中で情報交換していた。
ナマエたち男子生徒も雰囲気にのまれ、すっかり落ち着きをなくしてしまった。
夕食を食べながら、ナマエたちのそばで──おそらく聞こえるように──女子生徒が「男子に申し込むか、誘われるのを待つかどうか」という作戦会議を始めた。
ナマエは、誰と行きたいか自分ではよくわかっていた。むしろ、それ以外の人が思いつかなかった。
「──俺、ハーマイオニーを誘う」
ナマエは、すっかりお気に入りになったブイヤベースを食べながら、決意した。テリーは「いいぞ!」と囃し立てた。
「じゃ、さっさと行ってこい!」
ナマエはハーマイオニーが図書館に返す本を持っているのを見た。夕食後、意を決して図書館に向かった。図書館の扉の前で、深呼吸した。──問題ない、いつものように話すだけだ。ドアノブに手をかけようとすると、ナマエが触れる前に扉が開いた。ハーマイオニーが出てくるところだった。ハーマイオニーはなぜか口元を緩ませて頬をピンクに染めていた。やや遅れて、ハーマイオニーがナマエに気がついた。
「──ナマエ!あら、図書館?」
ハーマイオニーがきゅっと口元を元に戻した。ナマエは不安な気持ちになったが、ふうと息をついて、覚悟を決めた。
「ハーマイオニー、あの──ダンスパーティ、俺と一緒に行かない?」
ハーマイオニーは目を丸くして、さっきよりも赤くなった。ナマエは顔が熱くなり、自分も赤くなっているのだろうと思った。そして、ハーマイオニーが目を伏せて、申し訳なさそうに絞り出した。
「ナマエ──ごめんなさい、本当にたったいま──ほかの人に誘われて、『オーケー』って言ったの」
「えっ」
ナマエは急に内臓が空っぽになったような気がした。なぜだか無自覚な自信があった。断られることは想定していなかったのだ。ナマエはふとテリーが言った言葉を思い出した。「グレンジャーがハリーと踊るかもよ……」と。
「あの、えっと、誰に──?」
ハーマイオニーは少し迷ってから、ナマエに耳打ちした。
「あなたがわたしを誘ってくれたから教えるけど──その……ビクトール・クラム」
ナマエは驚いて声をあげそうになった。ハーマイオニーはまた恥ずかしそうに笑みをこぼした。
「あの人、ずっと図書館にいたでしょう……わたしに話しかけるためだったんですって……でも、勇気がなかったって……」
ハーマイオニーは嬉しそうな顔をナマエから逸らした。ナマエは曖昧に笑った。
「そう……教えてくれてありがと、誰にも言わないよ」
「ええ、本当にごめんなさい」
「ううん、全然。それじゃあ、また」
ナマエはぎこちなく答えて、用もないのに図書館に入った。早くその場を去りたかった。──しかし、すぐに後悔した。ビクトール・クラムが入り口のすぐそばに座っていたのだ。ナマエに気づきもせず、本に目を落としていた。その口元は僅かに笑っているように見えた。
この男よりも早くハーマイオニーを誘っていれば、自分がオーケーしてもらえただろうか。憎らしいやら悔しいやらでクラムを見ていると、視線に気づいたクラムは口元を引き締めた。ナマエは、ハーマイオニーが行ってしまうのを待ってから、図書館を出た。
翌朝、テリーが「ナマエがグレンジャーに断られた!」と談話室で言いふらしたせいで、レイブンクローの女の子数人にダンスパーティに誘われた。話したことのない上級生や、数人で固まって申し込んできた下級生もいた。ナマエのほうは心ここに在らずで、生返事を繰り返していた。テリーがその様子を見てげんなりしたようだった。
「よりどりみどりなのに、なんで断っちゃうんだ?贅沢なやつ」
「うるさいな……テリー、あんたはどうなんだよ。パドマを誘うんじゃなかったのか」
「断られたんだ、聞いてやるなよ」
マイケルが茶化すように笑った。マイケルはすでに同級生のリサ・ターピンと行くことになったらしく、余裕の表情だった。
「──僕、今朝、ダームストラングの男に君の名前を聞かれたぜ。紹介しようか?」
「いらない……」
ナマエはうなだれた。ハーマイオニー以外の女の子を誘う自分がまったく想像できなかった。
⚡️────────
学期最後の週、日を追って騒がしくなった。ホグワーツの教職員は、ボーバトンとダームストラングの客人を、引き続きあっと言わせたいとの願いを込め、クリスマスには城を最高の状態で見せようと決意したようだった。飾りつけができ上がると、それは、ハリーがこれまでホグワーツ城で見た中でも最高にすばらしいものだった。
しかし、ハリーはいまだにダンスのパートナーを見つけてはいなかった。たったいま、ようやく勇気を振り絞ってチョウに申込み──あっけなく断られたばかりだった。
「ハリー、代表は最初に踊るんだってな。誰と行くんだ?」
ハリーが階段に腰掛けてうなだれていると、ナマエがひょっこりと現れた。
「そういう君は?」
「……ハーマイオニーを誘ったけど、先約があるって断られた」
ハリーは口をあんぐり開けた。
「僕、てっきり君が相手だと思ってた──だって、君は──ハンサムだし」
「ハンサム、ね。キュートじゃなくてよかった」
ナマエがため息をつきながら言った。ハリーは、ナマエも女の子に誘いを断られていることに勇気をもらった。
「じゃあ、ハーマイオニーが誰と行くか知ってるの?」
「口止めされてるんだ。まあ──少なくとも、俺の方がハンサムだよ」
ナマエは冗談とは裏腹に浮かない顔で言った。
「そう……僕はチョウに断られた。セドリックと行くんだって」
「チョウ?!」
「シーッ!」
ナマエが大きな声を出したので、ハリーは咎めるように口に指を当てた。ナマエは目をぱちぱちさせた。ハリーがチョウのことをどう思っているか、考えたこともなかったというような顔だった。
ナマエが何か言いたそうにしていると、ロンが階段を降りてやってきた。ロンはナマエを見てにやっとして言った。
「アー、ナマエ。君、たしか化粧してる日があったよね」
「化粧?」
ハリーはきょとんとした。ナマエは「ああ」と思い出したように言い、ロンはにやにやしてハリーを肘で小突いた。
「ハリー、君がホグズミードに来れなかった日だよ。去年、一瞬だけ──たしかに、ナマエはれっきとした女の子だった」
「チョウたちの人形になっただけだ」
ナマエは満更でもなさそうにふんと笑った。ハリーは、ナマエがチョウと仲が良いことが気がかりだったが、当のナマエはハーマイオニーを誘ったことをハリーに告白してくれたので、ほっと安心した。ナマエが言った。
「俺は化粧なんてしなくても、ダームストラングの男子からダンスに誘われたよ──あんたも俺に申し込みたいって?」
三人はケラケラ笑った。
すると、デラクール姉妹がナマエたちの前を歩いた。すれ違いざまに、フラーはハリーたちを見て、髪を手で靡かせた。妹はチラチラとナマエとハリーを見ながらその後について歩いて行った。すると、笑っていたロンが黙り込み、突然立ち上がった。
「ロン?」
ナマエが首を傾げた。ロンはずんずんフラーの方に歩いていった。ハリーは「まずい」と思ったが、遅かった。
「──僕とダンスパーティに行ってください!」
大きな声で、はっきりとロンはそう言った。いや、ほとんど叫んでいた。玄関ホール中のみんながロンを見て、しんと静まり返った。
フラーはナマコでも見るかのような顔でロンを一瞥し、妹を連れてさっさとその場を後にした。最悪の空気が玄関ホールに残されていた。スリザリンの生徒がはじめに笑いだし、そのあとからはみんなが笑いを堪えきれずに吹き出した。ハリーとナマエはなんとかロンのために口を固く結んでいたが、ナマエは今にも笑いの発作を起こしそうに、険しい顔で肩を震わせていた。ハリーは打ちのめされたロンを玄関ホールから救い出して、その場から逃げるように談話室に戻った。
いまや、パートナーを見つけることよりも、ドラゴンと戦う方が簡単だとさえ思った。