炎のゴブレット
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第一の課題のあと、生徒たちのハリーへの評価は手のひらを返したように一変した。レイブンクローの友人たちも、ハリーのドラゴンに対する飛行には感心しているようで、なぜかナマエも誇らしかった。談話室でも、翌朝の大広間でもその話題で持ちきりだった。ナマエはクラム、フラー、セドリックの試合を見逃したことを少し後悔した。
「ハリーは飛行もすごかったけど、あの『引き寄せ呪文』も完璧だった──君でもあんなのは出来ないんじゃないか?」
マイケルが出し抜けにナマエに言った。ナマエは「ハリーにあの呪文を教えたのは俺だぞ」と、言ってやりたかったが、選手は一人で課題に立ち向かうことになっていたので、拗ねたような呻き声を上げた。
朝食を食べたあと、ナマエは大広間の出口でダンブルドアを待つことにした。席を立つと、わいわいと騒いでいたグリフィンドールのテーブルから、ぬっとフレッドがナマエの肩に腕を回した。
「よう、我らがハリーのミスター参謀!」
「君の勲功を讃えよう!」
ジョージがその隣から現れ、銀の盆に置かれたクリームサンドを差し出した。
「あ、あんまり大きな声で言うなよ、課題は誰も知らなかったことになってるんだから……」
ナマエは照れくさいのを隠すように、クリームサンドを口に放り込んだ。フレッドとジョージがにっこりとその様子を見た。すると、ハーマイオニーの咎めるような声がした。
「ああっ!食べちゃったの?」
振り返ると、グリフィンドールの生徒が何人かと、ハーマイオニー、ハリー、ロンがいた。ナマエはクリームサンドを飲み込んだ。
「──何?うまいけど」
「屋敷しもべが無償労働で作ったパイを食べるなんて、無教養で恥知らずだぜ、ナマエ」
ロンがにやにやして言ったので、ナマエとハリーは思わず笑い声を上げた。ハリーはすっかり代表に選ばれる前の表情を取り戻していた。
「そんなこと言ってない、違うわよ!」
ハーマイオニーがロンをキッと睨んだ。フレッドとジョージが顔を見合わせた。
「おかしいぞ、入れ忘れたのかな──」
「ウーン……まあいいや。ナマエ、こっちの方を食べてくれ」
「いい、もういい」
ナマエは、ダンブルドアが教職員テーブルからいなくなっていることに気がついて、フレッドの腕を抜け出して、よからぬ顔で菓子を差し出してくるジョージを押しのけた。
「──校長先生!」
ナマエは急いで大広間を出て、ダンブルドアを呼び止めた。ダンブルドアはブルーの瞳でナマエを見透かすように見て、頷いた。
「ごきげんよう、ナマエ。チチオヤから聞いておるよ──もうすぐクリスマスじゃな。パーティにはもちろん参加するじゃろう?」
「えっと、はい」
「では、クリスマスの次の日の朝、校長室においで。もっとも、夜更かしをするつもりなら──」
「えっ──いえ、はい。わかりました」
クリスマスまであと一ヶ月もあった。待ちきれないナマエは食い下がろうと口をもごもごさせたが、ダンブルドアの顔を見て無駄だと悟り、頷いた。
ダンブルドアが行ってしまうと、今度はコツッコツッという音が近づいてきた。ムーディだ。
「校長に用があったのか?ミョウジ」
「ムーディ先生。あの、父のことで──でも、大した事じゃないです」
ナマエはあわてて付け加えた。なんとなく、誰彼構わず父親の相談をしているように思われたくなかった。
「そうか──チチオヤといえば……おまえが昔から薬草や魔法薬に興味を持っていたと話していたな」
ナマエは目を丸くした。チチオヤが他人に、自分のそんな話をしているとは思いもよらなかった。驚いたナマエにムーディはふっと笑った。
「次の課題はしばらく後だが──まあ、おまえがいればポッターも大丈夫だろう」
ナマエは、ムーディに評価されて悪い気はしなかった。父親がムーディを通して自分を気にかけてくれているようで、嬉しかった。
十二月が風とみぞれを連れてホグワーツにやってきた。この日の授業、スリザリンと合同の「薬草学」の内容は、ブボチューバーの膿を採集するというものだった。
ナマエは、温室で気色悪そうに膿をつついているドラコのとなりに移動した。ナマエはドラコの胸の「汚いぞ、ポッター」のバッジに目を止めた。
「まだそれ、付けてるのか。もうあんただけだぞ」
ドラコは途端に不機嫌そうな顔になった。腫れ草から黄緑色のドロッとした膿がたっぷり溢れ出し、強烈な石油臭がした。
「わざわざお小言を言いにきたのか?ポッター親衛隊さん……どうせ、英雄の武勲を書き足すために忙しいんだろう?」
「そんなんじゃない、ただ友達として──力になりたいだけだ」
「へぇ、そう」
自分でそう言ったのに、ナマエにふと疑問が湧いた。──本当に、それだけだろうか?ムーディの期待に応えたいという欲求があるのも、また事実だった。ナマエは話題を変えた。
「……そんなことより──ありがとな。こないだの手紙」
ナマエは、ドラコが書き直した手紙をそのまま父に宛てたのだった。ふん、とドラコは鼻で返事をした。ナマエは続けた。
「ホグズミードはすっぽかされたけど──試合の日に会って話せた」
ナマエが満足そうに言うと、ドラコは膿を見るより奇妙な顔でナマエを振り返った。
「はあ、お前──」
ドラコは驚きと呆れの混じった声を上げた。ナマエは咄嗟に続きを引き取った。
「仕事のついでで来ただけだろって、そんなので満足するなって言うんだろ。わかってるよ……でも、俺にとってこれは大きな進歩なんだ」
ドラコはもう一言二言言いたそうだったが、呆れたように鼻を鳴らした。
「……考えられないくらい安いやつだな」
「あんたの高い高ーいプライドに比べたらな」
ナマエが笑った。膿の採集が終わると、校庭の向こうから鐘の音が響いた。温室を出て、霜の降りた野菜畑を生徒がぞろぞろと通り、ナマエはドラコと話しながら歩いた。
「あんたがレイブンクローだったらよかったのになあ」
ナマエはぽろりとこぼした。ナマエにとって、父親の話を包み隠さず話せるのはドラコだけだった。もちろん、同室のアンソニーたちや、ハリーたちにも少しは話をしていた。ただ、両親のいないハリーにこんなことを話すのは気が引けたし、それでなくとも心配されたり、同情されることが居心地悪く、普段と変わりなく聞いてくれるドラコの存在はありがたかった。ドラコは小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「それは違う。……お前がスリザリンに来るべきだった」
「まさか!」
「八方美人のお節介くんなら、どこの寮でもやっていけるだろう」
「それより──あんたはスリザリンでは成績がいい方だろう?レイブンクローにいてもビリにはならない」
「いちいち癪に触る言い方しかできないのか?」
「あんたに言われたくない」
皮肉の応酬を楽しんでいると、スリザリンのパンジー・パーキンソンがナマエを睨みつけていることに気がついた。
「──あの女男、どこまでついてくるつもり?今度はドラコの金魚の糞になりたいのかしら……」
パーキンソンは隣のミリセント・ブルストロードに話しかけた。ナマエは眉を下げてドラコの肩を叩いた。
「──じゃあ、またな」
「ああ」
ドラコが短くそう返した。ドラコの返事に、ナマエは思わず得意げな顔をして、パーキンソンのそばを通り過ぎた。レイブンクローの生徒は石段を登って「呪文学」の授業へ、スリザリンの生徒は反対に芝生を下っていった。
城に戻る道中、水色の制服のボーバトン生たちも寒そうに城に向かっていくところだった。フラーがナマエたちの前で見事なシルバーブロンドを靡かせていた。
「……もう慣れろよ、いい加減」
ナマエはいつものように、フラーの美貌に釘付けになっているマイケル、テリー、アンソニーを順番に小突いて正気に戻した。
フラーの妹らしき小さな女の子が、ちらちらこちらを伺うように振り返りながら、フラーを小走りで追いかけていった。
「ハリーは飛行もすごかったけど、あの『引き寄せ呪文』も完璧だった──君でもあんなのは出来ないんじゃないか?」
マイケルが出し抜けにナマエに言った。ナマエは「ハリーにあの呪文を教えたのは俺だぞ」と、言ってやりたかったが、選手は一人で課題に立ち向かうことになっていたので、拗ねたような呻き声を上げた。
朝食を食べたあと、ナマエは大広間の出口でダンブルドアを待つことにした。席を立つと、わいわいと騒いでいたグリフィンドールのテーブルから、ぬっとフレッドがナマエの肩に腕を回した。
「よう、我らがハリーのミスター参謀!」
「君の勲功を讃えよう!」
ジョージがその隣から現れ、銀の盆に置かれたクリームサンドを差し出した。
「あ、あんまり大きな声で言うなよ、課題は誰も知らなかったことになってるんだから……」
ナマエは照れくさいのを隠すように、クリームサンドを口に放り込んだ。フレッドとジョージがにっこりとその様子を見た。すると、ハーマイオニーの咎めるような声がした。
「ああっ!食べちゃったの?」
振り返ると、グリフィンドールの生徒が何人かと、ハーマイオニー、ハリー、ロンがいた。ナマエはクリームサンドを飲み込んだ。
「──何?うまいけど」
「屋敷しもべが無償労働で作ったパイを食べるなんて、無教養で恥知らずだぜ、ナマエ」
ロンがにやにやして言ったので、ナマエとハリーは思わず笑い声を上げた。ハリーはすっかり代表に選ばれる前の表情を取り戻していた。
「そんなこと言ってない、違うわよ!」
ハーマイオニーがロンをキッと睨んだ。フレッドとジョージが顔を見合わせた。
「おかしいぞ、入れ忘れたのかな──」
「ウーン……まあいいや。ナマエ、こっちの方を食べてくれ」
「いい、もういい」
ナマエは、ダンブルドアが教職員テーブルからいなくなっていることに気がついて、フレッドの腕を抜け出して、よからぬ顔で菓子を差し出してくるジョージを押しのけた。
「──校長先生!」
ナマエは急いで大広間を出て、ダンブルドアを呼び止めた。ダンブルドアはブルーの瞳でナマエを見透かすように見て、頷いた。
「ごきげんよう、ナマエ。チチオヤから聞いておるよ──もうすぐクリスマスじゃな。パーティにはもちろん参加するじゃろう?」
「えっと、はい」
「では、クリスマスの次の日の朝、校長室においで。もっとも、夜更かしをするつもりなら──」
「えっ──いえ、はい。わかりました」
クリスマスまであと一ヶ月もあった。待ちきれないナマエは食い下がろうと口をもごもごさせたが、ダンブルドアの顔を見て無駄だと悟り、頷いた。
ダンブルドアが行ってしまうと、今度はコツッコツッという音が近づいてきた。ムーディだ。
「校長に用があったのか?ミョウジ」
「ムーディ先生。あの、父のことで──でも、大した事じゃないです」
ナマエはあわてて付け加えた。なんとなく、誰彼構わず父親の相談をしているように思われたくなかった。
「そうか──チチオヤといえば……おまえが昔から薬草や魔法薬に興味を持っていたと話していたな」
ナマエは目を丸くした。チチオヤが他人に、自分のそんな話をしているとは思いもよらなかった。驚いたナマエにムーディはふっと笑った。
「次の課題はしばらく後だが──まあ、おまえがいればポッターも大丈夫だろう」
ナマエは、ムーディに評価されて悪い気はしなかった。父親がムーディを通して自分を気にかけてくれているようで、嬉しかった。
十二月が風とみぞれを連れてホグワーツにやってきた。この日の授業、スリザリンと合同の「薬草学」の内容は、ブボチューバーの膿を採集するというものだった。
ナマエは、温室で気色悪そうに膿をつついているドラコのとなりに移動した。ナマエはドラコの胸の「汚いぞ、ポッター」のバッジに目を止めた。
「まだそれ、付けてるのか。もうあんただけだぞ」
ドラコは途端に不機嫌そうな顔になった。腫れ草から黄緑色のドロッとした膿がたっぷり溢れ出し、強烈な石油臭がした。
「わざわざお小言を言いにきたのか?ポッター親衛隊さん……どうせ、英雄の武勲を書き足すために忙しいんだろう?」
「そんなんじゃない、ただ友達として──力になりたいだけだ」
「へぇ、そう」
自分でそう言ったのに、ナマエにふと疑問が湧いた。──本当に、それだけだろうか?ムーディの期待に応えたいという欲求があるのも、また事実だった。ナマエは話題を変えた。
「……そんなことより──ありがとな。こないだの手紙」
ナマエは、ドラコが書き直した手紙をそのまま父に宛てたのだった。ふん、とドラコは鼻で返事をした。ナマエは続けた。
「ホグズミードはすっぽかされたけど──試合の日に会って話せた」
ナマエが満足そうに言うと、ドラコは膿を見るより奇妙な顔でナマエを振り返った。
「はあ、お前──」
ドラコは驚きと呆れの混じった声を上げた。ナマエは咄嗟に続きを引き取った。
「仕事のついでで来ただけだろって、そんなので満足するなって言うんだろ。わかってるよ……でも、俺にとってこれは大きな進歩なんだ」
ドラコはもう一言二言言いたそうだったが、呆れたように鼻を鳴らした。
「……考えられないくらい安いやつだな」
「あんたの高い高ーいプライドに比べたらな」
ナマエが笑った。膿の採集が終わると、校庭の向こうから鐘の音が響いた。温室を出て、霜の降りた野菜畑を生徒がぞろぞろと通り、ナマエはドラコと話しながら歩いた。
「あんたがレイブンクローだったらよかったのになあ」
ナマエはぽろりとこぼした。ナマエにとって、父親の話を包み隠さず話せるのはドラコだけだった。もちろん、同室のアンソニーたちや、ハリーたちにも少しは話をしていた。ただ、両親のいないハリーにこんなことを話すのは気が引けたし、それでなくとも心配されたり、同情されることが居心地悪く、普段と変わりなく聞いてくれるドラコの存在はありがたかった。ドラコは小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「それは違う。……お前がスリザリンに来るべきだった」
「まさか!」
「八方美人のお節介くんなら、どこの寮でもやっていけるだろう」
「それより──あんたはスリザリンでは成績がいい方だろう?レイブンクローにいてもビリにはならない」
「いちいち癪に触る言い方しかできないのか?」
「あんたに言われたくない」
皮肉の応酬を楽しんでいると、スリザリンのパンジー・パーキンソンがナマエを睨みつけていることに気がついた。
「──あの女男、どこまでついてくるつもり?今度はドラコの金魚の糞になりたいのかしら……」
パーキンソンは隣のミリセント・ブルストロードに話しかけた。ナマエは眉を下げてドラコの肩を叩いた。
「──じゃあ、またな」
「ああ」
ドラコが短くそう返した。ドラコの返事に、ナマエは思わず得意げな顔をして、パーキンソンのそばを通り過ぎた。レイブンクローの生徒は石段を登って「呪文学」の授業へ、スリザリンの生徒は反対に芝生を下っていった。
城に戻る道中、水色の制服のボーバトン生たちも寒そうに城に向かっていくところだった。フラーがナマエたちの前で見事なシルバーブロンドを靡かせていた。
「……もう慣れろよ、いい加減」
ナマエはいつものように、フラーの美貌に釘付けになっているマイケル、テリー、アンソニーを順番に小突いて正気に戻した。
フラーの妹らしき小さな女の子が、ちらちらこちらを伺うように振り返りながら、フラーを小走りで追いかけていった。