炎のゴブレット
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ある朝、玄関ホールに着くと、それ以上先に進めなくなった。大理石の階段の下に立てられた掲示板の周りに、大勢の生徒が群れをなして右往左往していた。
アンソニーが爪先立ちして、前の生徒の頭越しに、ナマエたちに掲示を読んで聞かせた。
「 三大魔法学校対抗試合 ──ボーバトンとダームストラングの代表団が十月三十日、金曜日、午後六時に到着する。全校生徒はカバンと教科書を寮に置き、歓迎会の前に城の前に集合し、お客様を出迎えること───」
アンソニーは爪先立ちをやめて、振り返った。
「この日は『魔法生物飼育学』は早めに終わるみたいだね?」
テリーが小さく歓声を上げた。ハグリッドの「尻尾爆発スクリュート」は、誰も真面目に世話をしないのにみるみる大きくなっていたのだ。
「助かった!──ねねね、ホグワーツからは誰が出るんだろう。知ってる?」
「セドリック・ディゴリーとか?ほら、ハッフルパフのクィディッチキャプテンだ」
マイケルが言うと、そばから聞きなれた声が聞こえた。
「ディゴリー?あのウスノロが、ホグワーツの代表選手?」
ロンの声だった。ナマエが振り返ると、ハーマイオニーが憤然として反論した。
「あなたはクィディッチで負けたことを根に持ちすぎだわ。あの人、とっても優秀な学生だそうよ──その上、監督生です!」
「君は、あいつがハンサムだから好きなだけだろ」
ロンが痛烈に皮肉った。
「俺だってハンサムだとよく言われるけど、どう?」
ナマエが明るく三人に声をかけた。ハリーがナマエの尊大な言葉にくすくす笑った。
「──ナマエ!あなた、大丈夫だった?」
ハーマイオニーは心配そうに言った。ムーディとマルフォイのことだろうと思った。ナマエが答える前に、ロンが恨めしげに言った。
「君ってば、よくもマルフォイが呪われるチャンスをふいにしてくれたな!」
ナマエは曖昧に笑った。ハーマイオニーがしかめ面でロンを一瞥すると、ナマエのそばに来た。
「行きましょう、ナマエ。『古代ルーン文字学』のクラスに遅れるわ」
ロンはコホンと大きな空咳をしたが、それが「ロックハート!」と聞こえた。
ナマエはハーマイオニーと一緒にクラスに向かった。ロンにからかわれても悪い気はしなかった。動く階段で立ち止まると、ハーマイオニーがナマエに話しかけた。
「ナマエ、これを見て」
ハーマイオニーは小箱を手に持っていた。中には色とりどりのバッジがいくつも入っており、全部に同じ文字が書かれていた。
「『反吐 』?」
「エス──ピー──イー──ダブリュー。つまり、エスは協会、ピーは振興、イーはしもべ妖精、ダブリューは福祉の頭文字。しもべ妖精福祉振興協会よ」
「初耳だ」
ナマエは嫌な予感がして、動く階段が完全に止まる前にぴょんと向こう側に飛び移った。ハーマイオニーは胸を張った。
「当然よ、私が始めたばかりですもの」
「──誰が会員?ロンとハリーとか?」
ハーマイオニーはナマエの問いには答えず、羊皮紙の束をナマエの目の前でひらひら振った。ナマエはいつもより早足で歩いたが、ハーマイオニーはめげなかった。
「私、図書室で徹底的に調べたわ。小人妖精の奴隷制度は、何世紀も前から続いてるの」
「ハーマイオニー、俺が入会すると思ってるなら、あいにくだけど──」
ハーマイオニーはナマエの言葉など耳に入っていないかのように、朗々と読み上げた。
「私たちの短期目標は、屋敷しもべ妖精の正当な報酬と労働条件を確保することである。私たちの長期的目標は、以下の事項を含む。杖の使用禁止に関する法律改正。しもべ妖精代表を一人、『魔法生物規制管理部』に参加させること。なぜなら、彼らの代表権は愕然とするほど無視されているからである」
「いいよ、わかった。わかった──」
ナマエはあしらいながらクラスの扉に手をかけた。ハーマイオニーは食い下がった。
「ナマエ、あなただってシノビーが酷い扱いをうけていたら嫌でしょう!」
「……そりゃ嫌だよ、でもあんたの言う『酷い扱い』とシノビーが思う『酷い扱い』は違うじゃないか」
ナマエにしては珍しくにべもなく断ると、ハーマイオニーは不服そうに席に着いた。ナマエは居心地が悪く、ため息をこらえた。
ナマエは、いままでハーマイオニーと正面から反発しあったことはなかったし、そうなることを避けているふしがあった。しかし、ハーマイオニーはまるでナマエがシノビーを虐待しているかのように話すので、ナマエの気に障った。「スペルマンの音節文字」を捲って「ファルストーンの石碑」の碑文を訳しながらも、なんとなく二人は気まずい空気で過ごした。
授業が終わると、耐えかねたナマエが教室を出る時に口を開いた。
「──ドビーみたいにさ……」
ハーマイオニーががばっと顔を上げた。ナマエは弱った顔をして続けた。
「……嫌いな主人に無理やり契約させられてるしもべは……俺もかわいそうだと思う……」
ハーマイオニーの顔がパッと明るくなった。
昼休み、昼食を済ませたナマエは中庭に出た。胸に付けられたキラキラ輝く「S.P.E.W.」のバッジをはずした。
天気の良い中庭で胡座をかいて、鞄から読みかけの「地中海の水性魔法族とその特性」を取り出して、栞がわりに挟んでいた羊皮紙をつまんで本を開いた。
羊皮紙は、何度も何度も書き直して推敲されたチチオヤへの手紙だった。ナマエは、父親から短い説教じみた手紙を受け取ったことはあれど、自分から手紙を書いたことはこれまで一度もなかった。それでも羽根ペンを取ったのは、ムーディから聞きかじったことの真偽や、ほかの疑問を本人にぶつけるためだった。
書き漏らしがないかと、羊皮紙を注意深く読み直していると、影が落ちた。
「──『反吐 』?」
顔を上げると、ドラコ・マルフォイが不遜な態度で「S.P.E.W.」のバッジをつまみ上げていた。ナマエは咄嗟に本を閉じて手紙を隠した。
「アー……欲しい?」
「いらない」
ドラコはそう言いつつ、鞄を下ろしてナマエのそばの塀に腰掛けた。ドラコは明らかにムーディの一件を気にしているのだろうとわかった。ナマエはドラコの不器用さにくすくす笑った。
「何がおかしい?」
「別に──クラッブとゴイルは一緒じゃないのか」
「僕があいつらと同じ食欲をしてるわけないだろう」
「それもそうか」
ドラコはバッジを空に放り投げてはキャッチした。スニッチを掴む練習になるのだろうかとナマエはぼうっと考えていると、ドラコが出し抜けに言った。
「ラブレターでも書いていたのか?ミョウジ」
「……そう。父上宛てのね」
ナマエは一瞬迷ったが、素直に答えてもう一度本を開いた。すると、ドラコはひょいと勝手に手紙を取り上げて読み始めた。ナマエは焦った。
「ちょっ──ドラコ!」
「……お前──ははは!これが手紙?テストの問題文の間違いじゃないのかい?『以下の内容は事実か?誤りがあれば説明を』──」
ドラコは、ナマエが手紙に伸ばした手をひらりと交わした。
「やめろ、読み上げるなよ」
ナマエがむすっと言うと、ドラコは無視して手紙に視線を戻した。そして、笑みを消して目を見開いた。
「──お前、知らなかったのか?」
「はあ──え?」
ドラコはトントンと手紙を指で叩いた。「ルシウス・マルフォイと取引をしたというのは事実か」という箇所だった。チチオヤが二歳のナマエの身柄と引き換えに、ルシウスの無実を証言したとムーディは言っていた。
ぎくりとナマエの肩が跳ねた。ルシウス・マルフォイの息子であるドラコに読まれてしまったという妙な後ろめたさと、そしてまたしても当然のように、自分だけが知らなかったという恥ずかしさがないまぜになって、頭が火照った。
「…………じゃ、ここは省く」
ナマエはできるだけ冷静に聞こえるように振る舞った。ドラコは馬鹿にしたような笑みを浮かべ、杖を取り出した。ナマエは片眉を上げた。
「ドラコ、何をする気だ?」
「──お前は、誰にでもいい顔をするくせに……父親にはそれができないのか?理解に苦しむね」
ドラコは杖を複雑に振って、ナマエの手紙に向けた。すると、手紙の中の文字が一斉に動き出して、まるで整列し直すかのように、文章が作り直されていった。文字の動きが止まると、ナマエは感心した声を上げた。簡潔で、親しみのこもった文章に校正されていた。
────────
拝啓 お父様
お元気でしょうか。
僕はホグワーツでムーディ先生にご指導いただいてます。
先生は父上のことをよくご存知だとおっしゃっていました。僕をよろしくと伝えてくださったそうですね。
先生から父上の話を聞きました。昔のこと、僕に関わること。
僕は直接、親子水入らずで父上と話がしたいです。
お忙しいとはわかっていますが、次のホグズミード行きの日にどうかお願いします。
ナマエ
────────
「直談判か──」
ナマエは苦笑を漏らした。父親と顔を合わせて話す覚悟はまだできていなかった。
「さすが、おべんちゃらの使い方にかけては一流だな。ドラコ」
ドラコは鼻で笑って、宙に放り投げたバッジを見事に片手でパシッと掴んだ。
「返事がこなかった時に、僕のせいにできて気が楽だろう?」
痛いところをつかれた。ナマエは黙って書き直された手紙を丁寧にしまった。
大広間の方からクラッブとゴイルが両腕にハムロールを抱えてこちらに歩いて来るのが見えた。ナマエは立ち上がった。
「……次は『変身学』だ。そっちは?」
「『危険 生物飼育学』」
マルフォイは心底嫌そうな顔で鞄を肩にかけた。
「おまけにグリフィンドールと合同ときた。どうしてこう、奴らと同じ授業が多いんだ……」
マルフォイはぶつくさ文句を言いながらクラッブたちを連れて門の方に向かった。
「──ナマエ!遅れるよ!」
渡り廊下から自分を呼ぶアンソニーの声がした。
アンソニーが爪先立ちして、前の生徒の頭越しに、ナマエたちに掲示を読んで聞かせた。
「
アンソニーは爪先立ちをやめて、振り返った。
「この日は『魔法生物飼育学』は早めに終わるみたいだね?」
テリーが小さく歓声を上げた。ハグリッドの「尻尾爆発スクリュート」は、誰も真面目に世話をしないのにみるみる大きくなっていたのだ。
「助かった!──ねねね、ホグワーツからは誰が出るんだろう。知ってる?」
「セドリック・ディゴリーとか?ほら、ハッフルパフのクィディッチキャプテンだ」
マイケルが言うと、そばから聞きなれた声が聞こえた。
「ディゴリー?あのウスノロが、ホグワーツの代表選手?」
ロンの声だった。ナマエが振り返ると、ハーマイオニーが憤然として反論した。
「あなたはクィディッチで負けたことを根に持ちすぎだわ。あの人、とっても優秀な学生だそうよ──その上、監督生です!」
「君は、あいつがハンサムだから好きなだけだろ」
ロンが痛烈に皮肉った。
「俺だってハンサムだとよく言われるけど、どう?」
ナマエが明るく三人に声をかけた。ハリーがナマエの尊大な言葉にくすくす笑った。
「──ナマエ!あなた、大丈夫だった?」
ハーマイオニーは心配そうに言った。ムーディとマルフォイのことだろうと思った。ナマエが答える前に、ロンが恨めしげに言った。
「君ってば、よくもマルフォイが呪われるチャンスをふいにしてくれたな!」
ナマエは曖昧に笑った。ハーマイオニーがしかめ面でロンを一瞥すると、ナマエのそばに来た。
「行きましょう、ナマエ。『古代ルーン文字学』のクラスに遅れるわ」
ロンはコホンと大きな空咳をしたが、それが「ロックハート!」と聞こえた。
ナマエはハーマイオニーと一緒にクラスに向かった。ロンにからかわれても悪い気はしなかった。動く階段で立ち止まると、ハーマイオニーがナマエに話しかけた。
「ナマエ、これを見て」
ハーマイオニーは小箱を手に持っていた。中には色とりどりのバッジがいくつも入っており、全部に同じ文字が書かれていた。
「『
「エス──ピー──イー──ダブリュー。つまり、エスは協会、ピーは振興、イーはしもべ妖精、ダブリューは福祉の頭文字。しもべ妖精福祉振興協会よ」
「初耳だ」
ナマエは嫌な予感がして、動く階段が完全に止まる前にぴょんと向こう側に飛び移った。ハーマイオニーは胸を張った。
「当然よ、私が始めたばかりですもの」
「──誰が会員?ロンとハリーとか?」
ハーマイオニーはナマエの問いには答えず、羊皮紙の束をナマエの目の前でひらひら振った。ナマエはいつもより早足で歩いたが、ハーマイオニーはめげなかった。
「私、図書室で徹底的に調べたわ。小人妖精の奴隷制度は、何世紀も前から続いてるの」
「ハーマイオニー、俺が入会すると思ってるなら、あいにくだけど──」
ハーマイオニーはナマエの言葉など耳に入っていないかのように、朗々と読み上げた。
「私たちの短期目標は、屋敷しもべ妖精の正当な報酬と労働条件を確保することである。私たちの長期的目標は、以下の事項を含む。杖の使用禁止に関する法律改正。しもべ妖精代表を一人、『魔法生物規制管理部』に参加させること。なぜなら、彼らの代表権は愕然とするほど無視されているからである」
「いいよ、わかった。わかった──」
ナマエはあしらいながらクラスの扉に手をかけた。ハーマイオニーは食い下がった。
「ナマエ、あなただってシノビーが酷い扱いをうけていたら嫌でしょう!」
「……そりゃ嫌だよ、でもあんたの言う『酷い扱い』とシノビーが思う『酷い扱い』は違うじゃないか」
ナマエにしては珍しくにべもなく断ると、ハーマイオニーは不服そうに席に着いた。ナマエは居心地が悪く、ため息をこらえた。
ナマエは、いままでハーマイオニーと正面から反発しあったことはなかったし、そうなることを避けているふしがあった。しかし、ハーマイオニーはまるでナマエがシノビーを虐待しているかのように話すので、ナマエの気に障った。「スペルマンの音節文字」を捲って「ファルストーンの石碑」の碑文を訳しながらも、なんとなく二人は気まずい空気で過ごした。
授業が終わると、耐えかねたナマエが教室を出る時に口を開いた。
「──ドビーみたいにさ……」
ハーマイオニーががばっと顔を上げた。ナマエは弱った顔をして続けた。
「……嫌いな主人に無理やり契約させられてるしもべは……俺もかわいそうだと思う……」
ハーマイオニーの顔がパッと明るくなった。
昼休み、昼食を済ませたナマエは中庭に出た。胸に付けられたキラキラ輝く「S.P.E.W.」のバッジをはずした。
天気の良い中庭で胡座をかいて、鞄から読みかけの「地中海の水性魔法族とその特性」を取り出して、栞がわりに挟んでいた羊皮紙をつまんで本を開いた。
羊皮紙は、何度も何度も書き直して推敲されたチチオヤへの手紙だった。ナマエは、父親から短い説教じみた手紙を受け取ったことはあれど、自分から手紙を書いたことはこれまで一度もなかった。それでも羽根ペンを取ったのは、ムーディから聞きかじったことの真偽や、ほかの疑問を本人にぶつけるためだった。
書き漏らしがないかと、羊皮紙を注意深く読み直していると、影が落ちた。
「──『
顔を上げると、ドラコ・マルフォイが不遜な態度で「S.P.E.W.」のバッジをつまみ上げていた。ナマエは咄嗟に本を閉じて手紙を隠した。
「アー……欲しい?」
「いらない」
ドラコはそう言いつつ、鞄を下ろしてナマエのそばの塀に腰掛けた。ドラコは明らかにムーディの一件を気にしているのだろうとわかった。ナマエはドラコの不器用さにくすくす笑った。
「何がおかしい?」
「別に──クラッブとゴイルは一緒じゃないのか」
「僕があいつらと同じ食欲をしてるわけないだろう」
「それもそうか」
ドラコはバッジを空に放り投げてはキャッチした。スニッチを掴む練習になるのだろうかとナマエはぼうっと考えていると、ドラコが出し抜けに言った。
「ラブレターでも書いていたのか?ミョウジ」
「……そう。父上宛てのね」
ナマエは一瞬迷ったが、素直に答えてもう一度本を開いた。すると、ドラコはひょいと勝手に手紙を取り上げて読み始めた。ナマエは焦った。
「ちょっ──ドラコ!」
「……お前──ははは!これが手紙?テストの問題文の間違いじゃないのかい?『以下の内容は事実か?誤りがあれば説明を』──」
ドラコは、ナマエが手紙に伸ばした手をひらりと交わした。
「やめろ、読み上げるなよ」
ナマエがむすっと言うと、ドラコは無視して手紙に視線を戻した。そして、笑みを消して目を見開いた。
「──お前、知らなかったのか?」
「はあ──え?」
ドラコはトントンと手紙を指で叩いた。「ルシウス・マルフォイと取引をしたというのは事実か」という箇所だった。チチオヤが二歳のナマエの身柄と引き換えに、ルシウスの無実を証言したとムーディは言っていた。
ぎくりとナマエの肩が跳ねた。ルシウス・マルフォイの息子であるドラコに読まれてしまったという妙な後ろめたさと、そしてまたしても当然のように、自分だけが知らなかったという恥ずかしさがないまぜになって、頭が火照った。
「…………じゃ、ここは省く」
ナマエはできるだけ冷静に聞こえるように振る舞った。ドラコは馬鹿にしたような笑みを浮かべ、杖を取り出した。ナマエは片眉を上げた。
「ドラコ、何をする気だ?」
「──お前は、誰にでもいい顔をするくせに……父親にはそれができないのか?理解に苦しむね」
ドラコは杖を複雑に振って、ナマエの手紙に向けた。すると、手紙の中の文字が一斉に動き出して、まるで整列し直すかのように、文章が作り直されていった。文字の動きが止まると、ナマエは感心した声を上げた。簡潔で、親しみのこもった文章に校正されていた。
────────
拝啓 お父様
お元気でしょうか。
僕はホグワーツでムーディ先生にご指導いただいてます。
先生は父上のことをよくご存知だとおっしゃっていました。僕をよろしくと伝えてくださったそうですね。
先生から父上の話を聞きました。昔のこと、僕に関わること。
僕は直接、親子水入らずで父上と話がしたいです。
お忙しいとはわかっていますが、次のホグズミード行きの日にどうかお願いします。
ナマエ
────────
「直談判か──」
ナマエは苦笑を漏らした。父親と顔を合わせて話す覚悟はまだできていなかった。
「さすが、おべんちゃらの使い方にかけては一流だな。ドラコ」
ドラコは鼻で笑って、宙に放り投げたバッジを見事に片手でパシッと掴んだ。
「返事がこなかった時に、僕のせいにできて気が楽だろう?」
痛いところをつかれた。ナマエは黙って書き直された手紙を丁寧にしまった。
大広間の方からクラッブとゴイルが両腕にハムロールを抱えてこちらに歩いて来るのが見えた。ナマエは立ち上がった。
「……次は『変身学』だ。そっちは?」
「『
マルフォイは心底嫌そうな顔で鞄を肩にかけた。
「おまけにグリフィンドールと合同ときた。どうしてこう、奴らと同じ授業が多いんだ……」
マルフォイはぶつくさ文句を言いながらクラッブたちを連れて門の方に向かった。
「──ナマエ!遅れるよ!」
渡り廊下から自分を呼ぶアンソニーの声がした。