炎のゴブレット
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ナマエは自分のコンパートメントに戻るため、マルフォイの後を歩いた。車内はどこも騒がしく、日に焼けた生徒たちで賑わっていたり、小さな一年生たちがあたりをキョロキョロ見回していた。
ナマエはマルフォイの背中に話しかけた。
「なんでわざわざハリーたちに喧嘩をふっかけるんだ」
返事はなかった。もともとさして期待もしていなかったので、ナマエはため息をついた。しかし、マルフォイは少し歩いてから答えた。
「──お前こそ、どうしてわざわざおせっかい焼きにくるんだ?そんなにポッターにいい顔をしたいのか?」
マルフォイはコンパートメントのドアの前に立ち止まった。中ではクラッブとゴイルが大鍋ケーキをがっついていた。
どうしてかと聞かれるとわからなかった。そういう性格なんだ、と言ってしまえばそれまでだったが、それだけでは足りない気がする。
「……俺は、あんたのことを嫌いになりたくない」
口に出してみると不思議と腑に落ちた。
ナマエはドラコ・マルフォイを、まるごといい友人だとは思えなかったが、その逆もまたできなかった。
マルフォイはふん、と鼻を鳴らしてコンパートメントに入っていった。
列車がホグズミードに到着したとき、頭上で雷が鳴っていた。雨は激しく叩きつけるように降っていた。
ナマエが杖で傘を作ると、テリーがその中に入ってきた。
「ナマエ、このへん漏ってるよ」
「注文つけるならやめるぞ」
ナマエがニヤッと笑って傘の呪文をやめたので、突然二人とも頭からバケツをひっくり返したように雨水を被った。アンソニーとマイケルが呆れたように笑った。ナマエ、テリー、アンソニー、マイケルは馬なしの馬車の一台に飛び乗り、ホグワーツ城に向かった。
ナマエたちが杖先から出した温風を当て合って、笑いながらのろのろ歩いていると、マクゴナガル先生のキビキビとした声がそれを急かした。
「さあ、大広間へ!急いで!」
大広間は、例年のように、学年始めの祝宴に備えて、見事な飾りつけが施されていた。ふわふわと机の上を漂う寮憑きゴーストの「灰色のレディ」の後に続いて、ナマエたちは席に移動した。
「『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生は誰だろうね」
アンソニーは教職員テーブルを見て言った。
「誰もやりたがらないんじゃない?それより腹ペコで死にそう」
テリーが嘆いた。その言葉が終わるか終わらないうちに、大広間の扉が開き、一同しんとなった。マクゴナガル先生を先頭に、一列に並んだ一年生の長い列が大広間の奥へと進んでいく。
一年生は湖を泳いできたのかと思うほど酷い有様だった。寒さと緊張で全員がガタガタと震えていた。
組み分けの儀式で大広間はいっそう賑やかになった。儀式が終わると、ようやくテーブルの上にご馳走が並び出した。
ナマエは隣に座った真っ赤な顔の一年生のローブを乾かしてやり、和気あいあいと過ごした。
遠くのグリフィンドールの席にいるハーマイオニーを見ると、食事に全く手をつけていないようだった。屋敷しもべの話を気にしているのだろうか。ナマエは心配と、余計なことを言ってしまったことの後悔と、ハーマイオニーの頑なさにため息をついた。すると、テリーがにやつきながらこちらを見ていたことに気がついたので、肘で小突いた。
最後のデザートのヨクシャープディングが空になると、ダンブルドアが連絡事項を話し始めた。ナマエは腹が満たされ、欠伸をしながら聞いた。
「──寮対抗クィディッチ試合は今年は取りやめじゃ。これを知らせるのはわしの辛い役目でのう」
その瞬間、生徒たちの悲鳴が上がった。
「嘘でしょう!」
チョウが絶句した。キャプテンのロジャー・デイビースはあまりのことに言葉もなく、ダンブルドアに向かってただ口をパクパクさせていた。ダンブルドアの言葉が続いた。
「これは、十月に始まり、今学年の終りまで続くイベントのためじゃ。今年、ホグワーツで──」
しかし、ちょうどこのとき、耳を劈く雷鳴とともに、大広間の扉がバタンと開いた。戸口に一人の男が立っていた。長いステッキに寄り掛かり、黒い旅行マントをまとっている。大広間の顔という顔が、いっせいに見知らぬ男に向けられた。
男は教職員テーブルに向かって歩き出した。一歩踏み出すごとに、コツッコツッという鈍い音が大広間に響いた。テーブルの端にたどり着くと、男はダンブルドアのほうに向かった。
再び稲妻が天井を横切った。稲妻が男の顔をくっきりと浮かび上がらせた。それは、ナマエがいままでに見たどんな顔とも違っていた。口はまるで斜めに切り裂かれた傷口に見え、鼻は大きく削がれていた。しかし、男の形相が恐ろしいのは、何よりもその目のせいだった。片方の目は小さく、黒く光っていた。もう一方は、大きく、丸いコインのようで、鮮やかな明るいブルーだった。ブルーの目は瞬きもせず、もう一方の普通の目とはまったく無関係に、ぐるぐると上下、左右に絶え間なく動いている──ちょうどその目玉がくるりと裏返しになり、瞳が男の真後ろを見る位置に移動したので、正面からは白目しか見えなくなった。
静まり返った中でダンブルドアの明るい声が響いた。
「『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生、ムーディ先生じゃ」
その容貌と、今朝のチチオヤとアーサーとの会話がナマエの頭の中で繋がった。
「あれが──マッド-アイ・ムーディ?」
ナマエは無意識に口に出していた。
新任の先生は拍手で迎えられるのが普通だったが、ダンブルドアとハグリッド以外は職員も生徒も誰一人として拍手しなかった。
ムーディは、お世辞にも温かいとはいえない歓迎ぶりにも、まったく無頓着のようだった。目の前のかぼちゃジュースのジャーには目もくれず、マントからこんどは携帯用酒瓶を引っ張り出してグビッグビッと飲んだ。飲むときに腕が上がり、マントの裾が床から数センチ持ち上がって木製の義足がちらちらと見え隠れした。
ダンブルドアが咳払いした。
「先ほど言いかけていたのじゃが、この開催を発表するのは、わしとしても大いにうれしい。今年──ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合を行う」
ムーディが到着してからずっと大広間に張りつめていた緊張が、急に解けた。ほとんど全員が笑い出し、ダンブルドアも絶妙のかけ声を楽しむように、フォッフォッと笑った。
「三大魔法学校対抗試合はおよそ七百年前、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まったものじゃ──ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの三校でのう。各校から代表選手が一人ずつ選ばれ、三人が三つの魔法競技を争うのじゃ──」
ダンブルドアが試合の説明を始めた。
ナマエはダンブルドアの言葉を話半分に聞きながら、ムーディを見つめて考えていた。
ワールドカップの夜、「闇の印」が打ち上げられた後、ウィーズリー家のテントの前で、チチオヤから三校対抗試合について聞かされていた。それが、「例のあの人」と何が関係あるのかナマエには皆目検討がつかなかったが──他校に「例のあの人」の手引きをする人間がいるかもしれないとチチオヤは──そしてダンブルドアも、そう考えているのだろうか。
ナマエが思案に耽っていると、忙しなく動き回っていたムーディの目玉がぴたりとナマエを捉えた。ナマエはぎょっとして目を逸らした。
「ボーバトンとダームストラングの代表団は十月に来校し、今年度はほとんどずっと我が校に留まる。外国からの客人が滞在する間、皆、礼儀と厚情を尽くすことと信ずる」
言い終えると、ダンブルドアは手を挙げた。
「──さてと、夜も更けた。明日からの授業に備えて、ゆっくり休み、はっきりした頭で臨むことが大切じゃと、皆そう思っておるじゃろうのう。就寝!ほれほれ!」
ダンブルドアは再び腰かけ、マッド‐アイ・ムーディと話しはじめた。ガタガタ、バタバタと騒々しい音を立てて、全校生徒が立ち上がり、群れをなして玄関ホールに出た。
ナマエたちはぞろぞろとレイブンクロー寮がある塔に向かい、男子寮の懐かしのベッドに飛び込んだ。
テリーがビクトール・クラムのポスターを袖机の上に貼りながら言った。
「もし代表選手に立候補できるなら、してた?」
「うーん……魔法競技に『飛行術』が無かったら、したかもなあ」
ナマエは答えて寝返りを打った。背中に笑い声が聞こえた。でも、きっとそんなことは関係なく立候補しただろうとぼんやり考えた。自分が優勝したら、チチオヤはどんな顔をするだろうか──。ナマエは、ワールドカップの日の挨拶回りのようにチチオヤが自分を連れ回して、息子の快挙を自慢して回るのを想像してみた。実際のチチオヤは息子が不相応に目立つのを嫌がるだろうが──今だけは都合のいい夢を楽しんだ。
ナマエはマルフォイの背中に話しかけた。
「なんでわざわざハリーたちに喧嘩をふっかけるんだ」
返事はなかった。もともとさして期待もしていなかったので、ナマエはため息をついた。しかし、マルフォイは少し歩いてから答えた。
「──お前こそ、どうしてわざわざおせっかい焼きにくるんだ?そんなにポッターにいい顔をしたいのか?」
マルフォイはコンパートメントのドアの前に立ち止まった。中ではクラッブとゴイルが大鍋ケーキをがっついていた。
どうしてかと聞かれるとわからなかった。そういう性格なんだ、と言ってしまえばそれまでだったが、それだけでは足りない気がする。
「……俺は、あんたのことを嫌いになりたくない」
口に出してみると不思議と腑に落ちた。
ナマエはドラコ・マルフォイを、まるごといい友人だとは思えなかったが、その逆もまたできなかった。
マルフォイはふん、と鼻を鳴らしてコンパートメントに入っていった。
列車がホグズミードに到着したとき、頭上で雷が鳴っていた。雨は激しく叩きつけるように降っていた。
ナマエが杖で傘を作ると、テリーがその中に入ってきた。
「ナマエ、このへん漏ってるよ」
「注文つけるならやめるぞ」
ナマエがニヤッと笑って傘の呪文をやめたので、突然二人とも頭からバケツをひっくり返したように雨水を被った。アンソニーとマイケルが呆れたように笑った。ナマエ、テリー、アンソニー、マイケルは馬なしの馬車の一台に飛び乗り、ホグワーツ城に向かった。
ナマエたちが杖先から出した温風を当て合って、笑いながらのろのろ歩いていると、マクゴナガル先生のキビキビとした声がそれを急かした。
「さあ、大広間へ!急いで!」
大広間は、例年のように、学年始めの祝宴に備えて、見事な飾りつけが施されていた。ふわふわと机の上を漂う寮憑きゴーストの「灰色のレディ」の後に続いて、ナマエたちは席に移動した。
「『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生は誰だろうね」
アンソニーは教職員テーブルを見て言った。
「誰もやりたがらないんじゃない?それより腹ペコで死にそう」
テリーが嘆いた。その言葉が終わるか終わらないうちに、大広間の扉が開き、一同しんとなった。マクゴナガル先生を先頭に、一列に並んだ一年生の長い列が大広間の奥へと進んでいく。
一年生は湖を泳いできたのかと思うほど酷い有様だった。寒さと緊張で全員がガタガタと震えていた。
組み分けの儀式で大広間はいっそう賑やかになった。儀式が終わると、ようやくテーブルの上にご馳走が並び出した。
ナマエは隣に座った真っ赤な顔の一年生のローブを乾かしてやり、和気あいあいと過ごした。
遠くのグリフィンドールの席にいるハーマイオニーを見ると、食事に全く手をつけていないようだった。屋敷しもべの話を気にしているのだろうか。ナマエは心配と、余計なことを言ってしまったことの後悔と、ハーマイオニーの頑なさにため息をついた。すると、テリーがにやつきながらこちらを見ていたことに気がついたので、肘で小突いた。
最後のデザートのヨクシャープディングが空になると、ダンブルドアが連絡事項を話し始めた。ナマエは腹が満たされ、欠伸をしながら聞いた。
「──寮対抗クィディッチ試合は今年は取りやめじゃ。これを知らせるのはわしの辛い役目でのう」
その瞬間、生徒たちの悲鳴が上がった。
「嘘でしょう!」
チョウが絶句した。キャプテンのロジャー・デイビースはあまりのことに言葉もなく、ダンブルドアに向かってただ口をパクパクさせていた。ダンブルドアの言葉が続いた。
「これは、十月に始まり、今学年の終りまで続くイベントのためじゃ。今年、ホグワーツで──」
しかし、ちょうどこのとき、耳を劈く雷鳴とともに、大広間の扉がバタンと開いた。戸口に一人の男が立っていた。長いステッキに寄り掛かり、黒い旅行マントをまとっている。大広間の顔という顔が、いっせいに見知らぬ男に向けられた。
男は教職員テーブルに向かって歩き出した。一歩踏み出すごとに、コツッコツッという鈍い音が大広間に響いた。テーブルの端にたどり着くと、男はダンブルドアのほうに向かった。
再び稲妻が天井を横切った。稲妻が男の顔をくっきりと浮かび上がらせた。それは、ナマエがいままでに見たどんな顔とも違っていた。口はまるで斜めに切り裂かれた傷口に見え、鼻は大きく削がれていた。しかし、男の形相が恐ろしいのは、何よりもその目のせいだった。片方の目は小さく、黒く光っていた。もう一方は、大きく、丸いコインのようで、鮮やかな明るいブルーだった。ブルーの目は瞬きもせず、もう一方の普通の目とはまったく無関係に、ぐるぐると上下、左右に絶え間なく動いている──ちょうどその目玉がくるりと裏返しになり、瞳が男の真後ろを見る位置に移動したので、正面からは白目しか見えなくなった。
静まり返った中でダンブルドアの明るい声が響いた。
「『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生、ムーディ先生じゃ」
その容貌と、今朝のチチオヤとアーサーとの会話がナマエの頭の中で繋がった。
「あれが──マッド-アイ・ムーディ?」
ナマエは無意識に口に出していた。
新任の先生は拍手で迎えられるのが普通だったが、ダンブルドアとハグリッド以外は職員も生徒も誰一人として拍手しなかった。
ムーディは、お世辞にも温かいとはいえない歓迎ぶりにも、まったく無頓着のようだった。目の前のかぼちゃジュースのジャーには目もくれず、マントからこんどは携帯用酒瓶を引っ張り出してグビッグビッと飲んだ。飲むときに腕が上がり、マントの裾が床から数センチ持ち上がって木製の義足がちらちらと見え隠れした。
ダンブルドアが咳払いした。
「先ほど言いかけていたのじゃが、この開催を発表するのは、わしとしても大いにうれしい。今年──ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合を行う」
ムーディが到着してからずっと大広間に張りつめていた緊張が、急に解けた。ほとんど全員が笑い出し、ダンブルドアも絶妙のかけ声を楽しむように、フォッフォッと笑った。
「三大魔法学校対抗試合はおよそ七百年前、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まったものじゃ──ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの三校でのう。各校から代表選手が一人ずつ選ばれ、三人が三つの魔法競技を争うのじゃ──」
ダンブルドアが試合の説明を始めた。
ナマエはダンブルドアの言葉を話半分に聞きながら、ムーディを見つめて考えていた。
ワールドカップの夜、「闇の印」が打ち上げられた後、ウィーズリー家のテントの前で、チチオヤから三校対抗試合について聞かされていた。それが、「例のあの人」と何が関係あるのかナマエには皆目検討がつかなかったが──他校に「例のあの人」の手引きをする人間がいるかもしれないとチチオヤは──そしてダンブルドアも、そう考えているのだろうか。
ナマエが思案に耽っていると、忙しなく動き回っていたムーディの目玉がぴたりとナマエを捉えた。ナマエはぎょっとして目を逸らした。
「ボーバトンとダームストラングの代表団は十月に来校し、今年度はほとんどずっと我が校に留まる。外国からの客人が滞在する間、皆、礼儀と厚情を尽くすことと信ずる」
言い終えると、ダンブルドアは手を挙げた。
「──さてと、夜も更けた。明日からの授業に備えて、ゆっくり休み、はっきりした頭で臨むことが大切じゃと、皆そう思っておるじゃろうのう。就寝!ほれほれ!」
ダンブルドアは再び腰かけ、マッド‐アイ・ムーディと話しはじめた。ガタガタ、バタバタと騒々しい音を立てて、全校生徒が立ち上がり、群れをなして玄関ホールに出た。
ナマエたちはぞろぞろとレイブンクロー寮がある塔に向かい、男子寮の懐かしのベッドに飛び込んだ。
テリーがビクトール・クラムのポスターを袖机の上に貼りながら言った。
「もし代表選手に立候補できるなら、してた?」
「うーん……魔法競技に『飛行術』が無かったら、したかもなあ」
ナマエは答えて寝返りを打った。背中に笑い声が聞こえた。でも、きっとそんなことは関係なく立候補しただろうとぼんやり考えた。自分が優勝したら、チチオヤはどんな顔をするだろうか──。ナマエは、ワールドカップの日の挨拶回りのようにチチオヤが自分を連れ回して、息子の快挙を自慢して回るのを想像してみた。実際のチチオヤは息子が不相応に目立つのを嫌がるだろうが──今だけは都合のいい夢を楽しんだ。