炎のゴブレット
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝目が覚めると、激しい雨が窓ガラスを打っていた。ナマエは制服に袖を通したが、他のみんなはホグワーツ特急の中で制服に着替えることにしていた。
ナマエがハリー、ロン、フレッド、ジョージと一緒に朝食をとりにキッチンに降りると、アーサーさんが暖炉の前に屈み込んで話をしていた。
「──マッド-アイの自宅付近で魔法を見たマグルが数名だ──」
ナマエは椅子に座りそこねそうになった。耳に飛び込んできたのは紛れもなく、チチオヤの声だ。ナマエが振り返ると、暖炉の炎の真ん中にチチオヤの首がどっかりと座っていた。
アーサーさんは急いで羽ペンを走らせながら質問した。
「マッド‐アイは、何が起こったと言ってるのかね?」
「庭に何者かが侵入する音を聞いたそうだ。家のほうに忍びよってきたが、待ち伏せしていた家のゴミバケツたちがそいつを迎え撃ったそうだ。マグルが見たのはそのゴミバケツだ」
チチオヤの生首が大きなため息をついてから続けた。
「しかし、彼の前歴から言って『魔法不適正使用取締局』にマッド‐アイを捕まえられると困る。ダンブルドアも私も同じ考えだ、今年はマッド-アイが必要だ──」
「ゴミバケツは何をしたのかね?侵入者は?」
「ゴミを撒き散らして飛び回った。侵入者は誰だかわからん。ただ、あの神経質なマッド-アイだ。侵入者が本当にいるのかも怪しい──君の管轄で、ゴミバケツに魔法をかけるのはどのくらいの罪だ?」
「警告程度だろう」
「ああ、助かる。すまないがアーサー、現場に飛んでくれ──」
「わかった」
アーサーさんはそう言うと、メモ書きした羊皮紙をポケットに突っ込み、再びキッチンから飛び出していった。
チチオヤの顔がモリーさんのほうを向いた。ナマエには気がついてもいないようだった。
「モリー、すまない。こんな朝早くからお煩わせして……しかし、マッド‐アイを放免できるのはアーサーしかいない」
それからポンと軽い音を立てて、チチオヤの首は消えた。アーサーさんがローブを着て慌ただしく戻ってきた。
「みんな、元気で新学期を過ごすんだよ──母さん、子供たちをキングズ・クロスに連れていけるね?」
「もちろんですよ。あなたはマッド‐アイの面倒だけ見てあげて。私たちは大丈夫だから」
アーサーさんが消えたのと入れ替わりに、ビルとチャーリーがキッチンに入ってきた。
「誰かマッド‐アイって言った?」
ビルが聞いた。ナマエがトーストにバターを塗りながら言った。
「マグルの前でゴミバケツをダンスさせたらしいけど……その人、誰?」
「引退した闇祓い さ。親父の仕事場に連れていってもらったとき、一度だけ会った」
チャーリーが答えた。
「ムーディのお陰でアズカバンの独房の半分は埋まったな。だけど敵もわんさといる……逮捕されたやつの家族とかが主だけど……それに、歳をとってひどい被害妄想に取り憑かれるようになったらしい」
「……その人、俺の親父の知り合いなのかな。さっきアーサーさんと話してた」
ナマエがトーストをかじりながらぽつりと言うと、ビルが答えた。
「君のパパは闇の魔術に詳しいんだ。だから、闇の陣営だと疑うものもいた。その筆頭がマッド-アイだな」
ナマエは、ビルの言葉でシリウスの話を思い出した。シリウスは、チチオヤが昔は闇の陣営に協力的だったと言ったのだ。そう、ナマエが死喰い人に攫われるまでは。
ナマエはこの話にピンときていなかった。チチオヤが自分の立場を翻すほど、ナマエに関心があるようにはどうしても思えなかった。
ナマエの顔が暗くなったのを見て、ビルがつけ加えた。
「でも、闇の魔術に詳しいってことは呪いの解き方にも詳しいってことだ。実際、チチオヤははちゃめちゃにすごい癒者だ。彼にしか治せない呪いはいくつもある」
チャーリーも励ますように大きな手でナマエの背中を叩いた。
「マッド-アイはチチオヤを疑ってたけど、結局、埃はなーんにも出てこなかった!だから今も付き合いがあるんだよ」
アーサーさんがいない代わりに、ビルとチャーリーが付き添ってみんなをキングスクロス駅まで送ってくれた。パーシーは仕事があるとくどくどと謝って出勤して行った。
紅に輝く蒸気機関車ホグワーツ特急は、もう入線していた。吐き出す白い煙の向こう側に、ホグワーツの学生や親たちが大勢、黒いゴーストのような影になって見えた。ピッグウィジョンは、霞のかなたから聞こえるホーホーというたくさんのふくろうの鳴き声につられて、ますますうるさく鳴いた。
ナマエたちは席探しを始めた。まもなく列車の中ほどに空いたコンパートメントをみつけて、ハリー、ロン、ハーマイオニーが中に入った。ナマエも中に入ろうとすると、後ろから肩を叩かれた。
「久しぶりだな、ナマエ!背が伸びたんじゃないか?」
「マイケル!」
レイブンクローの同室のマイケルだった。胸にはアイルランドの緑のロゼットをつけていた。魔法が消えかけているらしく、「トロイ!マレット!モラン!」と選手の名前をキーキー叫んではいるが、弱々しく疲れたかけ声になっていた。
「アンソニーとテリーが席を取ってるけど、こっち来る?」
マイケルが言った。ナマエはにっこり笑った。久しぶりに会った友人に心が躍った。
「ハリー、ロン、ハーマイオニー。俺、あっちのコンパートメントに行ってくるよ」
「オーケー、またね」
ハリーが手を振った。
ナマエはマイケルたちについて列車の中を移動していると、ドラコ・マルフォイが向かいからやってきた。ドラコとは『闇の印』の騒動のときに乱暴に別れたきりだった。ナマエは気まずく思いながら、ぎこちなく笑った。
「よう」
「──ああ」
すれ違い様に短い言葉を交わした。ナマエはほっとした。マイケルは驚いて目を瞬いた。
「仲良かったか?」
「ウーン……部分的に。……まあ、座ってから話そう」
コンパートメントでは、アンソニーとテリーがワールドカップの話で白熱していた。二人とも見ないうちに背が高くなったような気がした。アンソニーがナマエに気がついた。
「やあナマエ、君はどっちを応援してたの?」
「よせよトニー!ナマエがワールドカップを見てるわけないだろう」
テリーが言った。ナマエはニヤッと笑った。
「バカにするなよ、貴賓席で見たぞ」
「マーリンの髭!どうして?」
三人ともびっくり仰天した。ナマエは眉を下げた。
「さあ……親父が切符を用意してたから」
「じゃあ、二人で見れたんだね?」
アンソニーが優しく言った。ナマエはさらに俯いた。
「ううん、一人で──、じゃなかったな。マルフォイと見た」
「マルフォイ?」
みんなびっくり仰天した。ただ、アンソニーは意外にも納得したふうに頷いた。
「ああ、だからか」
「なにが?」
ナマエが聞いた。アンソニーが親指で向かいのコンパートメントを指した。
「マルフォイがそこに座ってたんだ。ずーっとしゃべくってたよ。『ミョウジは家柄の良い人間と親しくすべきだとようやく気がついた』だとか、『貧乏人と付き合うのはさぞ恥ずかしかっただろう』だとか」
ナマエは呆れてふーっと息を吐いて前髪を吹き飛ばした。さっきすれ違った時はしおらしく見えたのに、すっかりいつも通りのマルフォイだった。しかし、マルフォイが自分と付き合いがあることを得意げに話しているのは不思議だった。ナマエはふと気がついた。
「あ──、そうか」
「何?」
マイケルが聞いた。
「マルフォイとさっきすれ違ったんだ──ハリーたちのコンパートメントに行ったに違いない」
ナマエは立ち上がった。テリーが不満そうに声を上げた。
「ほっとけばいいじゃないか、ハリーだって言われっぱなしのたちじゃないんだし」
「たぶん、グレンジャーだよ。ナマエが気にしてるのは……ほら、マルフォイが最低な暴言を吐いたことが何度もあるだろう」
アンソニーが親切にテリーをたしなめた。ナマエは否定する言葉が思いつかず、曖昧に呻いてハリーたちのコンパートメントへと向かった。
⚡️───
ナマエが去ってからすぐに、招かれていないマルフォイがハリーたちのコンパートメントにやってきた。マルフォイは鼻持ちならないニヤニヤ笑いを浮かべて、ロンに話しかけていた。
「それで……エントリーするのか、ウィーズリー?賞金もかかっているしねぇ……」
「何を言ってるんだ?」
ロンが噛みついた。
「エントリーするのかい?」
マルフォイが繰り返した。
「君はするだろうねぇ、ポッター。見せびらかすチャンスは逃さない君のことだし?」
「何が言いたいのか、はっきりしなさい。じゃなきゃ出ていってよ、マルフォイ」
ハーマイオニーが「基本呪文集・四学年用」の上に顔を出し、つっけんどんに言った。マルフォイの青白い顔に、得意げな笑みが広がった。
「まさか、君たちは知らないとでも?」
マルフォイはうれしそうに言った。
「父親も兄貴も魔法省にいるのに、まるで知らないのか?驚いたね。……たぶん、君の父親は、ウィーズリー、下っ端だから知らないのかもしれないな──」
ロンが怒りに任せて立ち上がると同時に、ひょっこりと黒い頭がコンパートメントをのぞいた。──ナマエだ。
「やっぱりここにいたのか──いちいち突っかかるのやめろよ」
「……また王子様気取りか?ミョウジ」
マルフォイは不満そうに鼻を鳴らして、しかし存外素直にコンパートメントを出て行った。ハリーたちが面食らっていると、ナマエは笑った。
「──あいつ、ああやって言いふらしてるけど、俺たちには関係ないぜ。十七歳以上じゃないとエントリーできないし」
「だから、何のことか教えてよ!」
ロンは顔を赤くして言った。ナマエは一瞬ためらったが、話し始めた。
「……まあ、俺から教えるならいいか──今年、ホグワーツで 三大魔法学校対抗試合 が開催されるらしいんだ」
「トライ、──何それ?」
ハリーが尋ねた。
「ホグワーツと、ダームストラングと──あと、どこだっけ──まあとにかく、三つの魔法学校から代表選手が選ばれて、三人で魔法競技を競うってやつさ。しばらく開催されてなかったらしいけど」
「君はパパに聞いたの?」
ロンが聞いた。
「──ああ、そうだ。ワールドカップの日に言われた」
ハリーは、ナマエとチチオヤがテントの前で話していたことを思い出した。ナマエは付け加えた。
「俺の親父やルシウス・マルフォイと違って、アーサーさんたちはちゃんとしてるよ。信用できる人たちだ。だから、発表されるまでは他のやつには黙っててくれよ」
ナマエはそう言って、コンパートメントを後にした。ハリーが戸を閉め直そうと立ち上がると、廊下には、ナマエを一目見ようとコンパートメントから顔を出している女の子たちがいっぱいだった。
ハリーはその中にチョウ・チャンの姿がないかと視線を巡らせたが、いなかった。ハリーはほっとして戸をしっかりと閉めた。
ハリーは、セドリックとナマエがチョウの話をしていたことを思い出して、なぜか落ち着かない気持ちになった。
ナマエがハリー、ロン、フレッド、ジョージと一緒に朝食をとりにキッチンに降りると、アーサーさんが暖炉の前に屈み込んで話をしていた。
「──マッド-アイの自宅付近で魔法を見たマグルが数名だ──」
ナマエは椅子に座りそこねそうになった。耳に飛び込んできたのは紛れもなく、チチオヤの声だ。ナマエが振り返ると、暖炉の炎の真ん中にチチオヤの首がどっかりと座っていた。
アーサーさんは急いで羽ペンを走らせながら質問した。
「マッド‐アイは、何が起こったと言ってるのかね?」
「庭に何者かが侵入する音を聞いたそうだ。家のほうに忍びよってきたが、待ち伏せしていた家のゴミバケツたちがそいつを迎え撃ったそうだ。マグルが見たのはそのゴミバケツだ」
チチオヤの生首が大きなため息をついてから続けた。
「しかし、彼の前歴から言って『魔法不適正使用取締局』にマッド‐アイを捕まえられると困る。ダンブルドアも私も同じ考えだ、今年はマッド-アイが必要だ──」
「ゴミバケツは何をしたのかね?侵入者は?」
「ゴミを撒き散らして飛び回った。侵入者は誰だかわからん。ただ、あの神経質なマッド-アイだ。侵入者が本当にいるのかも怪しい──君の管轄で、ゴミバケツに魔法をかけるのはどのくらいの罪だ?」
「警告程度だろう」
「ああ、助かる。すまないがアーサー、現場に飛んでくれ──」
「わかった」
アーサーさんはそう言うと、メモ書きした羊皮紙をポケットに突っ込み、再びキッチンから飛び出していった。
チチオヤの顔がモリーさんのほうを向いた。ナマエには気がついてもいないようだった。
「モリー、すまない。こんな朝早くからお煩わせして……しかし、マッド‐アイを放免できるのはアーサーしかいない」
それからポンと軽い音を立てて、チチオヤの首は消えた。アーサーさんがローブを着て慌ただしく戻ってきた。
「みんな、元気で新学期を過ごすんだよ──母さん、子供たちをキングズ・クロスに連れていけるね?」
「もちろんですよ。あなたはマッド‐アイの面倒だけ見てあげて。私たちは大丈夫だから」
アーサーさんが消えたのと入れ替わりに、ビルとチャーリーがキッチンに入ってきた。
「誰かマッド‐アイって言った?」
ビルが聞いた。ナマエがトーストにバターを塗りながら言った。
「マグルの前でゴミバケツをダンスさせたらしいけど……その人、誰?」
「引退した
チャーリーが答えた。
「ムーディのお陰でアズカバンの独房の半分は埋まったな。だけど敵もわんさといる……逮捕されたやつの家族とかが主だけど……それに、歳をとってひどい被害妄想に取り憑かれるようになったらしい」
「……その人、俺の親父の知り合いなのかな。さっきアーサーさんと話してた」
ナマエがトーストをかじりながらぽつりと言うと、ビルが答えた。
「君のパパは闇の魔術に詳しいんだ。だから、闇の陣営だと疑うものもいた。その筆頭がマッド-アイだな」
ナマエは、ビルの言葉でシリウスの話を思い出した。シリウスは、チチオヤが昔は闇の陣営に協力的だったと言ったのだ。そう、ナマエが死喰い人に攫われるまでは。
ナマエはこの話にピンときていなかった。チチオヤが自分の立場を翻すほど、ナマエに関心があるようにはどうしても思えなかった。
ナマエの顔が暗くなったのを見て、ビルがつけ加えた。
「でも、闇の魔術に詳しいってことは呪いの解き方にも詳しいってことだ。実際、チチオヤははちゃめちゃにすごい癒者だ。彼にしか治せない呪いはいくつもある」
チャーリーも励ますように大きな手でナマエの背中を叩いた。
「マッド-アイはチチオヤを疑ってたけど、結局、埃はなーんにも出てこなかった!だから今も付き合いがあるんだよ」
アーサーさんがいない代わりに、ビルとチャーリーが付き添ってみんなをキングスクロス駅まで送ってくれた。パーシーは仕事があるとくどくどと謝って出勤して行った。
紅に輝く蒸気機関車ホグワーツ特急は、もう入線していた。吐き出す白い煙の向こう側に、ホグワーツの学生や親たちが大勢、黒いゴーストのような影になって見えた。ピッグウィジョンは、霞のかなたから聞こえるホーホーというたくさんのふくろうの鳴き声につられて、ますますうるさく鳴いた。
ナマエたちは席探しを始めた。まもなく列車の中ほどに空いたコンパートメントをみつけて、ハリー、ロン、ハーマイオニーが中に入った。ナマエも中に入ろうとすると、後ろから肩を叩かれた。
「久しぶりだな、ナマエ!背が伸びたんじゃないか?」
「マイケル!」
レイブンクローの同室のマイケルだった。胸にはアイルランドの緑のロゼットをつけていた。魔法が消えかけているらしく、「トロイ!マレット!モラン!」と選手の名前をキーキー叫んではいるが、弱々しく疲れたかけ声になっていた。
「アンソニーとテリーが席を取ってるけど、こっち来る?」
マイケルが言った。ナマエはにっこり笑った。久しぶりに会った友人に心が躍った。
「ハリー、ロン、ハーマイオニー。俺、あっちのコンパートメントに行ってくるよ」
「オーケー、またね」
ハリーが手を振った。
ナマエはマイケルたちについて列車の中を移動していると、ドラコ・マルフォイが向かいからやってきた。ドラコとは『闇の印』の騒動のときに乱暴に別れたきりだった。ナマエは気まずく思いながら、ぎこちなく笑った。
「よう」
「──ああ」
すれ違い様に短い言葉を交わした。ナマエはほっとした。マイケルは驚いて目を瞬いた。
「仲良かったか?」
「ウーン……部分的に。……まあ、座ってから話そう」
コンパートメントでは、アンソニーとテリーがワールドカップの話で白熱していた。二人とも見ないうちに背が高くなったような気がした。アンソニーがナマエに気がついた。
「やあナマエ、君はどっちを応援してたの?」
「よせよトニー!ナマエがワールドカップを見てるわけないだろう」
テリーが言った。ナマエはニヤッと笑った。
「バカにするなよ、貴賓席で見たぞ」
「マーリンの髭!どうして?」
三人ともびっくり仰天した。ナマエは眉を下げた。
「さあ……親父が切符を用意してたから」
「じゃあ、二人で見れたんだね?」
アンソニーが優しく言った。ナマエはさらに俯いた。
「ううん、一人で──、じゃなかったな。マルフォイと見た」
「マルフォイ?」
みんなびっくり仰天した。ただ、アンソニーは意外にも納得したふうに頷いた。
「ああ、だからか」
「なにが?」
ナマエが聞いた。アンソニーが親指で向かいのコンパートメントを指した。
「マルフォイがそこに座ってたんだ。ずーっとしゃべくってたよ。『ミョウジは家柄の良い人間と親しくすべきだとようやく気がついた』だとか、『貧乏人と付き合うのはさぞ恥ずかしかっただろう』だとか」
ナマエは呆れてふーっと息を吐いて前髪を吹き飛ばした。さっきすれ違った時はしおらしく見えたのに、すっかりいつも通りのマルフォイだった。しかし、マルフォイが自分と付き合いがあることを得意げに話しているのは不思議だった。ナマエはふと気がついた。
「あ──、そうか」
「何?」
マイケルが聞いた。
「マルフォイとさっきすれ違ったんだ──ハリーたちのコンパートメントに行ったに違いない」
ナマエは立ち上がった。テリーが不満そうに声を上げた。
「ほっとけばいいじゃないか、ハリーだって言われっぱなしのたちじゃないんだし」
「たぶん、グレンジャーだよ。ナマエが気にしてるのは……ほら、マルフォイが最低な暴言を吐いたことが何度もあるだろう」
アンソニーが親切にテリーをたしなめた。ナマエは否定する言葉が思いつかず、曖昧に呻いてハリーたちのコンパートメントへと向かった。
⚡️───
ナマエが去ってからすぐに、招かれていないマルフォイがハリーたちのコンパートメントにやってきた。マルフォイは鼻持ちならないニヤニヤ笑いを浮かべて、ロンに話しかけていた。
「それで……エントリーするのか、ウィーズリー?賞金もかかっているしねぇ……」
「何を言ってるんだ?」
ロンが噛みついた。
「エントリーするのかい?」
マルフォイが繰り返した。
「君はするだろうねぇ、ポッター。見せびらかすチャンスは逃さない君のことだし?」
「何が言いたいのか、はっきりしなさい。じゃなきゃ出ていってよ、マルフォイ」
ハーマイオニーが「基本呪文集・四学年用」の上に顔を出し、つっけんどんに言った。マルフォイの青白い顔に、得意げな笑みが広がった。
「まさか、君たちは知らないとでも?」
マルフォイはうれしそうに言った。
「父親も兄貴も魔法省にいるのに、まるで知らないのか?驚いたね。……たぶん、君の父親は、ウィーズリー、下っ端だから知らないのかもしれないな──」
ロンが怒りに任せて立ち上がると同時に、ひょっこりと黒い頭がコンパートメントをのぞいた。──ナマエだ。
「やっぱりここにいたのか──いちいち突っかかるのやめろよ」
「……また王子様気取りか?ミョウジ」
マルフォイは不満そうに鼻を鳴らして、しかし存外素直にコンパートメントを出て行った。ハリーたちが面食らっていると、ナマエは笑った。
「──あいつ、ああやって言いふらしてるけど、俺たちには関係ないぜ。十七歳以上じゃないとエントリーできないし」
「だから、何のことか教えてよ!」
ロンは顔を赤くして言った。ナマエは一瞬ためらったが、話し始めた。
「……まあ、俺から教えるならいいか──今年、ホグワーツで
「トライ、──何それ?」
ハリーが尋ねた。
「ホグワーツと、ダームストラングと──あと、どこだっけ──まあとにかく、三つの魔法学校から代表選手が選ばれて、三人で魔法競技を競うってやつさ。しばらく開催されてなかったらしいけど」
「君はパパに聞いたの?」
ロンが聞いた。
「──ああ、そうだ。ワールドカップの日に言われた」
ハリーは、ナマエとチチオヤがテントの前で話していたことを思い出した。ナマエは付け加えた。
「俺の親父やルシウス・マルフォイと違って、アーサーさんたちはちゃんとしてるよ。信用できる人たちだ。だから、発表されるまでは他のやつには黙っててくれよ」
ナマエはそう言って、コンパートメントを後にした。ハリーが戸を閉め直そうと立ち上がると、廊下には、ナマエを一目見ようとコンパートメントから顔を出している女の子たちがいっぱいだった。
ハリーはその中にチョウ・チャンの姿がないかと視線を巡らせたが、いなかった。ハリーはほっとして戸をしっかりと閉めた。
ハリーは、セドリックとナマエがチョウの話をしていたことを思い出して、なぜか落ち着かない気持ちになった。