アズカバンの囚人
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ナマエたちは翌日の昼に退院したが、その時城にはほとんど誰もいなかった。うだるような暑さの上、試験が終わったとなれば、みんなホグズミード行きを十分に楽しんでいるというわけだ。
ナマエは出かける気になれなかった。一人で城の中を歩きながら考えていた。
ハリーによると、シリウスはバックビークに乗って逃げたらしい。ハリーは完璧な守護霊を作り出し、シリウスと過去の自分を救ったのだとハーマイオニーが誇らしそうに語った。シリウスやバックビークはいまごろどこだろうと思案をめぐらせた。
しかし、やはりナマエの頭はペテグリューのことですぐにいっぱいになった。やつはどこにいったのだろう。チチオヤは今度も何も言ってくれないのだろうか。
過去を知っている人と話したかった。ナマエは無意識のうちに、闇の魔術に対する防衛術の教室に来ていた。
誰もいない教室に入ると、ルーピン先生の部屋へ続くドアが開いていた。そっと部屋を覗くと、ほとんど荷造りがすんで、すっきりと片付いていた。ルーピンは机の上で何かを広げていた。ナマエは思い切って声をかけた。
「夏休みに、どこかへ?」
「──君がやってくるのが見えたよ」
ルーピンが微笑みながら、いままで熱心に見ていた羊皮紙を指した。「忍びの地図」だった。
「……私が狼人間だとみんなに知れてしまった。明日にでも、生徒の親たちからふくろう便が届くだろう」
「そんな……誰かに見られたんですか」
ルーピンは自嘲的な笑いを浮かべた。
「いいや、幸い誰にも遭遇しなかった。──ただ、スネイプ先生が朝食の席で話してしまったんだ」
ナマエは目を見開いた。と、同時に昨晩のスネイプの様子を思い出した。スネイプはナマエから見ても、シリウスとルーピンに我を忘れるほどの深い憎しみを抱いていた。
「あの……スネイプ先生は、なぜ先生達を憎んでいるんですか?」
ルーピンはいっそうくたびれた笑い方をした。
「ああ……そうだね。私たちは同級生なんだ。スネイプ先生は、変身した私に咬まれそうになったことがある。──シリウスの度が過ぎたいたずらのせいでね」
「いたずら──」
ナマエが絶句していると、ルーピンは同意するように頷いた。
「──そして昨晩、スネイプ先生はシリウスもマーリン勲章も取り逃がした。それでうっかり、口を滑らせてしまったんだろう……」
ナマエは、ルーピン先生が机の上を片付けながら話すのを眺めて、返す言葉を探していると、いつのまにか背後に誰かが立っていた。
「ルーピン、あと半刻で馬車がつく──」
ナマエは驚いて振り返った。声の主はチチオヤだった。ルーピンはこともなげに答えた。
「──ああ、ありがとう。チチオヤ」
「ど、どうしてここに」
ナマエが後ずさると、ルーピンは穏やかに答えた。
「──君のお父さんは、昨夜の私を捕まえてくれてね。おかげで誰にも咬みつかずにすんだ」
「…………」
ナマエはまたしても返すべき言葉が見つからなかった。チチオヤが沈黙を破った。
「──行くぞ、ナマエ。先生の邪魔になる」
チチオヤはくるりと踵を返して部屋を出た。ナマエは慌ててその後を追い、ドアのところでルーピンを振り返った。
「あの、俺──先生の授業好きだった!」
ルーピンはいつもの授業で見せるように、にっこり笑った。
父の背中を追ってナマエは廊下を早足で歩いた。チチオヤは立ち止まる事なく一直線に正門へ向かっているようだった。
「──父上、あの」
「私もルーピン先生の馬車に相乗りして帰る」
「あの、ペテグリューは、母上が死んだとき──」
「昨日の仕事を残しているから」
「──脅されてやったって、そう言ったんだ──」
チチオヤはナマエの言葉に耳を貸さず、歩みをさらに早めた。ナマエは苛立った。もはやほとんど走っていた。
「父上、待って──なんでっ──何も話してくれないんだ!」
ナマエが叫ぶと、チチオヤは立ち止まった。ナマエは危うくぶつかりそうになった。
ナマエは今になってハリーの気持ちが本当にわかった。真実が隠されていると知りながら、何も知らされないことが焦ったく、悔しかった。ナマエは拳を握り込んだ。
「──俺が赤ん坊のときに、何が起こってたんだ?父上は例のあの人の仲間だったのか?なんで母さんはペテグリューに命を狙われたんだ?!母さんはスリザリンの子孫なんだろう?記録には事故の犠牲者はペテグリューとマグルしかいないって、書いてあった!」
ナマエは、自分が得た断片的な情報をぶつけた。疑問だらけだった。まだまだ聞きたいことは山ほどあった。ナマエは一息ついたが、チチオヤは微動だにしなかった。
「何か言ってくれよ、俺は全部──本当は──本当は、父上から聞きたかった」
ナマエが言葉を絞り出すと、チチオヤはゆっくり振り返った。
「──お前の母親は」
チチオヤはその一言を発したとたん、一気に老け込んだように見えた。ナマエは目を見開いた。
「──私と出会うまでは、マグルとして生きていた。スリザリンの子孫、ゴーント家の血を引くスクイブだ」
「スクイブ……」
ナマエが続けて口を開こうとすると、チチオヤが手でそれを制した。誰かが近づいてくる足音が廊下に響いていた。
「──わかるな?今、ここで話すべきことではない」
ナマエはしぶしぶ小さく頷いた。チチオヤは足音から遠ざかるように、さっさとその場を立ち去った。入れ替わるように近づいてきたのは──ハリーだった。
「ナマエ!さっきルーピン先生に会ってきたんだ──君のパパ、もういいの?」
ハリーはナマエに駆け寄りながら尋ねた。
「うん。どうせすぐ夏休みだし。それより──シリウスのこと、隠しててごめん」
「それはもういいって言ったじゃないか。僕が君を蹴っ飛ばしたのでおあいこだって」
二人は笑った。ナマエはふと、ハリーの顔を、額の傷を見つめた。
「なに?」
「──漏れ鍋で、あんたが寝てる時にその傷跡に触れたことがあるんだ」
ハリーは「なんでそんなことを」とでも言いたげな奇妙な顔をした。
「そしたら、傷に触れた指先が痛んだ」
ハリーは黙って自分の額の稲妻型の傷跡をさすった。ナマエは続けた。
「──例のあの人は、あんたに触れられないんだろう?クィレルはそうだった」
ナマエはハリーの顔に手を伸ばした。ハリーは抵抗しなかった。頬に触れた。痛みはなく、ハリーの頬のなめらかな弾力を感じるだけだった。
「リドルの日記が俺に言ったんだ。『君にも 、ゴーントの血が流れている』って、そう言ってた。きっとリドルもそうなんだ」
ナマエはハリーの頬から手を離した。すると、ハリーがその手首を掴んだ。
「つまり、君の親戚に『ヴォルデモートおじさん』がいるかもってこと?」
「──ふ、あははは!ばか、おじさんって」
ナマエは、その名前を聞いておかしな気持ちになったのは初めてだった。
ナマエが笑っていると、ハリーは「えいっ」と、ナマエの手のひらに額を傷ごと押し付けた。
「ちょっ、ハリー……!」
その瞬間、傷に触れたナマエの手のひらが熱くなった。
ナマエは咄嗟に手を引いた。手のひらには何の傷もついていなかった。
ナマエとハリーはお互いを見た。
「僕はなんともなかった。君、手が痛んだ?」
「──少しだけ」
それから二人は黙って大広間に戻った。食欲はあまりなかった。
学期の最後の日に、試験の結果が発表された。もちろん首席はハーマイオニーだったが、「変身学」だけは、ナマエの方が少し点が高かった。
ハーマイオニーはナマエの「変身学」の試験用紙と自分の採点結果を見比べて、ため息をついた。
「──わたし、もう『マグル学』は辞めるわ」
「ええっ、三百六十点も取ったのに?」
「もう、あんなに目まぐるしいのはこりごり。占い学もやめたし、来年からは普通の時間割よ」
ナマエは、ハーマイオニーと一緒にいられる時間を気に入っていたので、そう言われて寂しい気持ちになった。ナマエは、真剣に羊皮紙を見比べているハーマイオニーの顔を覗き込んだ。
「ハーマイオニー、あの」
「なあに?」
ハーマイオニーは顔を上げた。
「──夏休み、教科書を買いに行くだろう?その前に、ロンドンで遊ばない?」
「あら、いいわよ。マグルの街に興味があるって言ってたものね」
ハーマイオニーの返事はあっさりしたものだったが、ナマエはうれしくてたまらなかった。
「やった!また連絡するよ」
あれよあれよと汽車の時間がやってきた。ナマエはマイケル、アンソニー、テリーたちとコンパートメントに収まった。
四人でテストの結果を話し合ったり、爆発スナップに興じて過ごした。ロンドンに到着し、下車の順番を待っていると、テリーが言った。
「みんな、夏休みは何する?」
「──俺、マグルの街に行く」
ナマエがわくわくして答えたが、アンソニーは心配そうな顔をした。
「君のパパ、怒るだろうね……」
ナマエは苦い顔をした。マイケルがガラリとコンパートメントの扉を開けて振り返り、心底呆れたような顔をして言った。
「何言ってるんだ?今年の夏はクィディッチのワールド・カップだぜ!」
ナマエたちは汽車から降りてキングスクロス駅のホームに荷物を下ろした。すると、ハリーがこっちに駆け寄ってきた。
「ナマエ!」
「わっ、何?」
ハリーは勢いよくナマエに近づき、羊皮紙を見せて声をひそめた。
「シリウスから手紙が来た、君にもよろしくって!」
「本当?よかった!」
シリウスもバックビークも無事らしく、ハリーも心底嬉しそうな様子だった。
「じゃあ、おじさんたちが来たから行くね」
「うん、また『電話』するよ」
ナマエがウインクすると、ハリーは笑って、手を振ってロンドンの街に去っていった。
ナマエも、夏休みにハーマイオニーとこの街を歩けるのだと思うと楽しみで仕方なかった。ナマエはキングスクロス駅に行き交うマグルを眺めた。
「──ナマエ」
笑みをこらえていると、不意に背後から名前を呼ばれた。
振り返ると、父親のチチオヤが立っていた。
「迎えに来た」
父親が、キングスクロス駅にナマエを迎えに来たのは、これが初めてのことだった。
去年までとはなにもかもが違う夏休みが、始まろうとしていた。
ナマエは出かける気になれなかった。一人で城の中を歩きながら考えていた。
ハリーによると、シリウスはバックビークに乗って逃げたらしい。ハリーは完璧な守護霊を作り出し、シリウスと過去の自分を救ったのだとハーマイオニーが誇らしそうに語った。シリウスやバックビークはいまごろどこだろうと思案をめぐらせた。
しかし、やはりナマエの頭はペテグリューのことですぐにいっぱいになった。やつはどこにいったのだろう。チチオヤは今度も何も言ってくれないのだろうか。
過去を知っている人と話したかった。ナマエは無意識のうちに、闇の魔術に対する防衛術の教室に来ていた。
誰もいない教室に入ると、ルーピン先生の部屋へ続くドアが開いていた。そっと部屋を覗くと、ほとんど荷造りがすんで、すっきりと片付いていた。ルーピンは机の上で何かを広げていた。ナマエは思い切って声をかけた。
「夏休みに、どこかへ?」
「──君がやってくるのが見えたよ」
ルーピンが微笑みながら、いままで熱心に見ていた羊皮紙を指した。「忍びの地図」だった。
「……私が狼人間だとみんなに知れてしまった。明日にでも、生徒の親たちからふくろう便が届くだろう」
「そんな……誰かに見られたんですか」
ルーピンは自嘲的な笑いを浮かべた。
「いいや、幸い誰にも遭遇しなかった。──ただ、スネイプ先生が朝食の席で話してしまったんだ」
ナマエは目を見開いた。と、同時に昨晩のスネイプの様子を思い出した。スネイプはナマエから見ても、シリウスとルーピンに我を忘れるほどの深い憎しみを抱いていた。
「あの……スネイプ先生は、なぜ先生達を憎んでいるんですか?」
ルーピンはいっそうくたびれた笑い方をした。
「ああ……そうだね。私たちは同級生なんだ。スネイプ先生は、変身した私に咬まれそうになったことがある。──シリウスの度が過ぎたいたずらのせいでね」
「いたずら──」
ナマエが絶句していると、ルーピンは同意するように頷いた。
「──そして昨晩、スネイプ先生はシリウスもマーリン勲章も取り逃がした。それでうっかり、口を滑らせてしまったんだろう……」
ナマエは、ルーピン先生が机の上を片付けながら話すのを眺めて、返す言葉を探していると、いつのまにか背後に誰かが立っていた。
「ルーピン、あと半刻で馬車がつく──」
ナマエは驚いて振り返った。声の主はチチオヤだった。ルーピンはこともなげに答えた。
「──ああ、ありがとう。チチオヤ」
「ど、どうしてここに」
ナマエが後ずさると、ルーピンは穏やかに答えた。
「──君のお父さんは、昨夜の私を捕まえてくれてね。おかげで誰にも咬みつかずにすんだ」
「…………」
ナマエはまたしても返すべき言葉が見つからなかった。チチオヤが沈黙を破った。
「──行くぞ、ナマエ。先生の邪魔になる」
チチオヤはくるりと踵を返して部屋を出た。ナマエは慌ててその後を追い、ドアのところでルーピンを振り返った。
「あの、俺──先生の授業好きだった!」
ルーピンはいつもの授業で見せるように、にっこり笑った。
父の背中を追ってナマエは廊下を早足で歩いた。チチオヤは立ち止まる事なく一直線に正門へ向かっているようだった。
「──父上、あの」
「私もルーピン先生の馬車に相乗りして帰る」
「あの、ペテグリューは、母上が死んだとき──」
「昨日の仕事を残しているから」
「──脅されてやったって、そう言ったんだ──」
チチオヤはナマエの言葉に耳を貸さず、歩みをさらに早めた。ナマエは苛立った。もはやほとんど走っていた。
「父上、待って──なんでっ──何も話してくれないんだ!」
ナマエが叫ぶと、チチオヤは立ち止まった。ナマエは危うくぶつかりそうになった。
ナマエは今になってハリーの気持ちが本当にわかった。真実が隠されていると知りながら、何も知らされないことが焦ったく、悔しかった。ナマエは拳を握り込んだ。
「──俺が赤ん坊のときに、何が起こってたんだ?父上は例のあの人の仲間だったのか?なんで母さんはペテグリューに命を狙われたんだ?!母さんはスリザリンの子孫なんだろう?記録には事故の犠牲者はペテグリューとマグルしかいないって、書いてあった!」
ナマエは、自分が得た断片的な情報をぶつけた。疑問だらけだった。まだまだ聞きたいことは山ほどあった。ナマエは一息ついたが、チチオヤは微動だにしなかった。
「何か言ってくれよ、俺は全部──本当は──本当は、父上から聞きたかった」
ナマエが言葉を絞り出すと、チチオヤはゆっくり振り返った。
「──お前の母親は」
チチオヤはその一言を発したとたん、一気に老け込んだように見えた。ナマエは目を見開いた。
「──私と出会うまでは、マグルとして生きていた。スリザリンの子孫、ゴーント家の血を引くスクイブだ」
「スクイブ……」
ナマエが続けて口を開こうとすると、チチオヤが手でそれを制した。誰かが近づいてくる足音が廊下に響いていた。
「──わかるな?今、ここで話すべきことではない」
ナマエはしぶしぶ小さく頷いた。チチオヤは足音から遠ざかるように、さっさとその場を立ち去った。入れ替わるように近づいてきたのは──ハリーだった。
「ナマエ!さっきルーピン先生に会ってきたんだ──君のパパ、もういいの?」
ハリーはナマエに駆け寄りながら尋ねた。
「うん。どうせすぐ夏休みだし。それより──シリウスのこと、隠しててごめん」
「それはもういいって言ったじゃないか。僕が君を蹴っ飛ばしたのでおあいこだって」
二人は笑った。ナマエはふと、ハリーの顔を、額の傷を見つめた。
「なに?」
「──漏れ鍋で、あんたが寝てる時にその傷跡に触れたことがあるんだ」
ハリーは「なんでそんなことを」とでも言いたげな奇妙な顔をした。
「そしたら、傷に触れた指先が痛んだ」
ハリーは黙って自分の額の稲妻型の傷跡をさすった。ナマエは続けた。
「──例のあの人は、あんたに触れられないんだろう?クィレルはそうだった」
ナマエはハリーの顔に手を伸ばした。ハリーは抵抗しなかった。頬に触れた。痛みはなく、ハリーの頬のなめらかな弾力を感じるだけだった。
「リドルの日記が俺に言ったんだ。『
ナマエはハリーの頬から手を離した。すると、ハリーがその手首を掴んだ。
「つまり、君の親戚に『ヴォルデモートおじさん』がいるかもってこと?」
「──ふ、あははは!ばか、おじさんって」
ナマエは、その名前を聞いておかしな気持ちになったのは初めてだった。
ナマエが笑っていると、ハリーは「えいっ」と、ナマエの手のひらに額を傷ごと押し付けた。
「ちょっ、ハリー……!」
その瞬間、傷に触れたナマエの手のひらが熱くなった。
ナマエは咄嗟に手を引いた。手のひらには何の傷もついていなかった。
ナマエとハリーはお互いを見た。
「僕はなんともなかった。君、手が痛んだ?」
「──少しだけ」
それから二人は黙って大広間に戻った。食欲はあまりなかった。
学期の最後の日に、試験の結果が発表された。もちろん首席はハーマイオニーだったが、「変身学」だけは、ナマエの方が少し点が高かった。
ハーマイオニーはナマエの「変身学」の試験用紙と自分の採点結果を見比べて、ため息をついた。
「──わたし、もう『マグル学』は辞めるわ」
「ええっ、三百六十点も取ったのに?」
「もう、あんなに目まぐるしいのはこりごり。占い学もやめたし、来年からは普通の時間割よ」
ナマエは、ハーマイオニーと一緒にいられる時間を気に入っていたので、そう言われて寂しい気持ちになった。ナマエは、真剣に羊皮紙を見比べているハーマイオニーの顔を覗き込んだ。
「ハーマイオニー、あの」
「なあに?」
ハーマイオニーは顔を上げた。
「──夏休み、教科書を買いに行くだろう?その前に、ロンドンで遊ばない?」
「あら、いいわよ。マグルの街に興味があるって言ってたものね」
ハーマイオニーの返事はあっさりしたものだったが、ナマエはうれしくてたまらなかった。
「やった!また連絡するよ」
あれよあれよと汽車の時間がやってきた。ナマエはマイケル、アンソニー、テリーたちとコンパートメントに収まった。
四人でテストの結果を話し合ったり、爆発スナップに興じて過ごした。ロンドンに到着し、下車の順番を待っていると、テリーが言った。
「みんな、夏休みは何する?」
「──俺、マグルの街に行く」
ナマエがわくわくして答えたが、アンソニーは心配そうな顔をした。
「君のパパ、怒るだろうね……」
ナマエは苦い顔をした。マイケルがガラリとコンパートメントの扉を開けて振り返り、心底呆れたような顔をして言った。
「何言ってるんだ?今年の夏はクィディッチのワールド・カップだぜ!」
ナマエたちは汽車から降りてキングスクロス駅のホームに荷物を下ろした。すると、ハリーがこっちに駆け寄ってきた。
「ナマエ!」
「わっ、何?」
ハリーは勢いよくナマエに近づき、羊皮紙を見せて声をひそめた。
「シリウスから手紙が来た、君にもよろしくって!」
「本当?よかった!」
シリウスもバックビークも無事らしく、ハリーも心底嬉しそうな様子だった。
「じゃあ、おじさんたちが来たから行くね」
「うん、また『電話』するよ」
ナマエがウインクすると、ハリーは笑って、手を振ってロンドンの街に去っていった。
ナマエも、夏休みにハーマイオニーとこの街を歩けるのだと思うと楽しみで仕方なかった。ナマエはキングスクロス駅に行き交うマグルを眺めた。
「──ナマエ」
笑みをこらえていると、不意に背後から名前を呼ばれた。
振り返ると、父親のチチオヤが立っていた。
「迎えに来た」
父親が、キングスクロス駅にナマエを迎えに来たのは、これが初めてのことだった。
去年までとはなにもかもが違う夏休みが、始まろうとしていた。
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