アズカバンの囚人
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シリウスの二度目の侵入事件以来、生徒は厳しい安全対策を守らなければならず、日が暮れてからハグリッドを訪ねるのは不可能だった。話ができるのは「魔法生物飼育学」の授業中しかなかった。
ハグリッドを元気づけることが最優先だと思ったナマエ、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、それぞれのいがみ合いは水に流すことにした。ハグリッドは判決を受けたショックで放心状態だった。
「みんな俺が悪いんだ。舌がもつれっちまって。みんな黒いローブを着込んで座ってて、そんでもって俺はメモをぼろぼろ落としっちまって、ハーマイオニー、おまえさんがせっかく探してくれたいろんなもんの日付は忘れっちまうし。そんで、そのあとルシウス・マルフォイが立ち上がって、『ナマエは教師からの報復が怖くて弁護してる』だの、やつの言い分をしゃべって、そんで、委員会はあいつに『やれ』と言われたとおりにやったんだ……」
「まだ控訴がある!」
ロンが熱を込めて言った。
「まだ諦めないで。僕、ハーマイオニーから準備を引き継いだ。やれることをやろう!」
五人はクラスの他の生徒たちと一緒に、城に向かって歩いているところだった。前のほうに、クラッブとゴイルを引き連れたマルフォイの姿が見えた。ちらちらと後ろを振り返っては、小バカにしたように笑っている。しかし、マルフォイはナマエと目が合うと、にやにや笑いを引っ込めて、すっと視線を逸らせた。
「ロン、そいつぁだめだ」
城の階段までたどり着いた時、ハグリッドが悲しそうに言った。
「あの委員会は、ルシウス・マルフォイの言うなりだ。俺はただ、ビーキーに残された時間を思いっきり幸せなもんにしてやるんだ。俺は、そうしてやらにゃ……」
ハグリッドは踵を返し、ハンカチに顔を埋めて、急いで小屋に戻っていった。ハグリッドの大きな背中を見送っていると、ナマエは階段の隅に素早く動く黒い影を見た。
──ネズミか?
ナマエは咄嗟にロンたちを見たが、三人は先を歩くマルフォイを睨みつけていた。ナマエは三人を残して一目散に影を追った。
ネズミは茂みの中に飛び込んだ。ナマエも後を追い、腹這いで茂みに突っ込んだ。枝が顔をバシバシと打ち、思わず目を瞑ってしまった──完全に見失った。
ナマエはうつ伏せのままあたりを見渡して、ふうと息をついた。
「まだいた、やっぱりホグワーツにいるんだ……」
ナマエは自分の見立てが間違っていなかったことに安堵した。いつのまにかそばにクルックシャンクスがとことこ歩いていた。
「でも、城の中にいるとは限らないな」
ナマエはクルックシャンクスをひと撫でして、立ち上がった。
制服に付いた枝葉を払いながら城に戻っていると、先に歩いていたはずのマルフォイとばったり出くわした。ナマエは気まずく思ったが、マルフォイの鼻から血がぼたぼた滴っているので思わず二度見した。
「どうしたんだ?その顔──」
「話しかけるなっ」
マルフォイはローブで血を拭ったが、痛みで顔を顰めた。ナマエは杖を向けた。
「エピスキー」
ぱちっと火花が弾けるような音がして、血が止まった。マルフォイはナマエを睨んだ。
「……頼んでないぞ」
「廊下が汚れるだろ」
マルフォイはナマエを睨みつけてから、そのまますたすたと立ち去った。後ろからデカのクラッブとゴイルが走ってやってきて、ナマエを突き飛ばしてマルフォイのあとをあたふたと追った。
「──なんなんだ?」
ナマエは怪訝に思いつつも、次の授業へと急いだ。ハーマイオニーと一緒に時間を逆転させなければならないのだ。しかし、いつもの場所で待っていても、ハーマイオニーは一向にやって来る気配はなかった。困り果てたナマエは仕方なく、時間通りの次の授業に向かった。
残りの授業を終え、大広間でマグル学の教科書を水瓶に立てかけて夕食をがっついていると、ハーマイオニーが泣きそうになりながら駆け寄って来た。
「ナマエ!ごめんなさい、わたし──うっかり眠ってたの、本当にごめんなさい」
「いいよ、一回くらい。あんたは俺より授業が多いし、疲れてて当然だ」
「ありがとう。でも、もう『占い学』はやめたわ。時間の無駄だもの」
ハーマイオニーはナマエから見てもパンク状態で、目の下はひどいくまができていた。
「ベクトル先生、怒っていらっしゃるかしら。後で謝りに行かないと……ああ、マルフォイのせいよ。あいつのこと考えてたら、ごちゃごちゃになっちゃったんだわ!」
「マルフォイ?」
意外な名前が出たので、ナマエは目を丸くした。ハーマイオニーは憤慨していた。
「ハグリッドを悪く言ったから──わたし、我慢できなくて──」
「──マルフォイを呪った?」
「いいえ、殴ってやったわ」
ナマエは思わず手に持っていたキドニーパイを取り落とした。笑わないほうがいいと分かっていても、口角が上がるのを感じた。
「ああ、思い出すだけで腹が立つわ!」
ハーマイオニーはひとしきり謝ったり怒ったりして、グリフィンドールのテーブルに戻って行った。ナマエがネズミを追いかけている間に、そんなことがあったなんて。マルフォイの鼻血はハーマイオニーの鉄拳のせいだったのか。ナマエは可笑しい気持ちでハーマイオニーの背中を眺めていると、マイケルがナマエを肘でこづいた。
「やっぱり、グレンジャーと付き合ってるんだろ。最近、談話室にいないときは二人で──」
「付き合ってない!」
ナマエは緩んだ顔を引っ込めて、かぼちゃジュースを飲み干した。
ハグリッドを元気づけることが最優先だと思ったナマエ、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、それぞれのいがみ合いは水に流すことにした。ハグリッドは判決を受けたショックで放心状態だった。
「みんな俺が悪いんだ。舌がもつれっちまって。みんな黒いローブを着込んで座ってて、そんでもって俺はメモをぼろぼろ落としっちまって、ハーマイオニー、おまえさんがせっかく探してくれたいろんなもんの日付は忘れっちまうし。そんで、そのあとルシウス・マルフォイが立ち上がって、『ナマエは教師からの報復が怖くて弁護してる』だの、やつの言い分をしゃべって、そんで、委員会はあいつに『やれ』と言われたとおりにやったんだ……」
「まだ控訴がある!」
ロンが熱を込めて言った。
「まだ諦めないで。僕、ハーマイオニーから準備を引き継いだ。やれることをやろう!」
五人はクラスの他の生徒たちと一緒に、城に向かって歩いているところだった。前のほうに、クラッブとゴイルを引き連れたマルフォイの姿が見えた。ちらちらと後ろを振り返っては、小バカにしたように笑っている。しかし、マルフォイはナマエと目が合うと、にやにや笑いを引っ込めて、すっと視線を逸らせた。
「ロン、そいつぁだめだ」
城の階段までたどり着いた時、ハグリッドが悲しそうに言った。
「あの委員会は、ルシウス・マルフォイの言うなりだ。俺はただ、ビーキーに残された時間を思いっきり幸せなもんにしてやるんだ。俺は、そうしてやらにゃ……」
ハグリッドは踵を返し、ハンカチに顔を埋めて、急いで小屋に戻っていった。ハグリッドの大きな背中を見送っていると、ナマエは階段の隅に素早く動く黒い影を見た。
──ネズミか?
ナマエは咄嗟にロンたちを見たが、三人は先を歩くマルフォイを睨みつけていた。ナマエは三人を残して一目散に影を追った。
ネズミは茂みの中に飛び込んだ。ナマエも後を追い、腹這いで茂みに突っ込んだ。枝が顔をバシバシと打ち、思わず目を瞑ってしまった──完全に見失った。
ナマエはうつ伏せのままあたりを見渡して、ふうと息をついた。
「まだいた、やっぱりホグワーツにいるんだ……」
ナマエは自分の見立てが間違っていなかったことに安堵した。いつのまにかそばにクルックシャンクスがとことこ歩いていた。
「でも、城の中にいるとは限らないな」
ナマエはクルックシャンクスをひと撫でして、立ち上がった。
制服に付いた枝葉を払いながら城に戻っていると、先に歩いていたはずのマルフォイとばったり出くわした。ナマエは気まずく思ったが、マルフォイの鼻から血がぼたぼた滴っているので思わず二度見した。
「どうしたんだ?その顔──」
「話しかけるなっ」
マルフォイはローブで血を拭ったが、痛みで顔を顰めた。ナマエは杖を向けた。
「エピスキー」
ぱちっと火花が弾けるような音がして、血が止まった。マルフォイはナマエを睨んだ。
「……頼んでないぞ」
「廊下が汚れるだろ」
マルフォイはナマエを睨みつけてから、そのまますたすたと立ち去った。後ろからデカのクラッブとゴイルが走ってやってきて、ナマエを突き飛ばしてマルフォイのあとをあたふたと追った。
「──なんなんだ?」
ナマエは怪訝に思いつつも、次の授業へと急いだ。ハーマイオニーと一緒に時間を逆転させなければならないのだ。しかし、いつもの場所で待っていても、ハーマイオニーは一向にやって来る気配はなかった。困り果てたナマエは仕方なく、時間通りの次の授業に向かった。
残りの授業を終え、大広間でマグル学の教科書を水瓶に立てかけて夕食をがっついていると、ハーマイオニーが泣きそうになりながら駆け寄って来た。
「ナマエ!ごめんなさい、わたし──うっかり眠ってたの、本当にごめんなさい」
「いいよ、一回くらい。あんたは俺より授業が多いし、疲れてて当然だ」
「ありがとう。でも、もう『占い学』はやめたわ。時間の無駄だもの」
ハーマイオニーはナマエから見てもパンク状態で、目の下はひどいくまができていた。
「ベクトル先生、怒っていらっしゃるかしら。後で謝りに行かないと……ああ、マルフォイのせいよ。あいつのこと考えてたら、ごちゃごちゃになっちゃったんだわ!」
「マルフォイ?」
意外な名前が出たので、ナマエは目を丸くした。ハーマイオニーは憤慨していた。
「ハグリッドを悪く言ったから──わたし、我慢できなくて──」
「──マルフォイを呪った?」
「いいえ、殴ってやったわ」
ナマエは思わず手に持っていたキドニーパイを取り落とした。笑わないほうがいいと分かっていても、口角が上がるのを感じた。
「ああ、思い出すだけで腹が立つわ!」
ハーマイオニーはひとしきり謝ったり怒ったりして、グリフィンドールのテーブルに戻って行った。ナマエがネズミを追いかけている間に、そんなことがあったなんて。マルフォイの鼻血はハーマイオニーの鉄拳のせいだったのか。ナマエは可笑しい気持ちでハーマイオニーの背中を眺めていると、マイケルがナマエを肘でこづいた。
「やっぱり、グレンジャーと付き合ってるんだろ。最近、談話室にいないときは二人で──」
「付き合ってない!」
ナマエは緩んだ顔を引っ込めて、かぼちゃジュースを飲み干した。