アズカバンの囚人
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「ハリーの様子を聞いてもいいか?」
ナマエが落ち着くと、シリウスが尋ねた。ナマエはすん、と鼻を啜ってから話した。
「……ハリーにファイアボルトを送ったのはあんた?」
シリウスの骸骨のような顔がパッと明るくなった。
「ああ、そうだ。猫に注文書を届けてもらった」
「すごく気に入ってると思う。俺は箒のことはよくわからないけど、あの飛行は凄かった」
「ははっ!ジェームズ譲りだ」
シリウスは嬉しそうに笑った。ナマエは少し言い難そうに続けた。
「──ただ、シリウス。ハリーはあんたを両親の仇だと思ってる」
「……そうか」
ナマエはシリウスの表情が曇るのを見ていられなくなり、パン!と自分の膝を叩いて立ち上がった。
「ペテグリューをアズカバンにぶち込もう」
ナマエはシリウスに教わった隠し通路を通ってホグワーツに戻っていた。しかし、出口から出ることができなかった。頭上では唸り声のように風を切る音が鳴り響いていた。暴れ柳の下に出るということは、つまりこの暴力的な木を掻い潜らなければならない。ナマエはため息をついて、そっと太い木の根っこを撫でた。
「大人しくしてくれよ」
ナマエはダメ元で、いつも聞き分けがない魔法道具にするように木の根にキスをした。
すると、暴れ柳の動きが緩慢になり、やがて止まった。ナマエは鳥の姿に戻って、城まで一直線に戻った。日は落ちて、もう夕食が終わっている頃だった。ナマエは大広間にも談話室にも戻らず、そのままネズミ探しをすることにした。
──食料に困らないのは厨房だろう。ただ、おそらく城の厨房には屋敷しもべ妖精しかいない。ペテグリューはシリウスの情報を耳に入れる必要があるし、そもそもナマエは厨房の場所を知らなかった。少し危険だが、職員室は?
ナマエは人目を避けながら城を滑空した。暗い廊下で地面に目を凝らしながら移動していると、足音が近づいてくるのが聞こえてきた。ナマエは窓枠に止まってやり過ごそうとした。光と足音は徐々にナマエに近づいていた。そして、あろうことかナマエのすぐそばでぴたりと止まった。
光の主はルーピン先生だった。しかし、鳥の姿であればもし見つかったとしても外に出される程度で済むだろう。ナマエはその場をじっとやり過ごすことにした。
「──ナマエ」
ナマエは、自分の名前を口にするルーピンに驚いてその場に凍りついた。ルーピン先生は、手に持った紙切れを眺めながらナマエが止まっている窓の前まで歩いてきた。紙切れをローブにしまうと、顔を上げてまっすぐにカササギを見つめて、ルーピン先生はもう一度言った。
「君は、ナマエだね?」
ナマエはしばらく鳥の姿でじっとしていたが、確信に満ちた顔のルーピン先生を見て観念した。窓枠から飛び降りて、人の姿に戻ったナマエは、おずおずと尋ねた。
「──どうして、わかったんですか」
ルーピン先生は柔らかく微笑んだ。
「動物もどきの知り合いがいてね」
「それは──」
「マクゴナガル先生だよ」
それは誰か、と尋ねる前にルーピンが答えた。そして、ナマエを足元から頭の先まで見て、にっこり笑った。
「いや、その歳で動物もどきになれるとは──素晴らしい」
罰則を覚悟していたナマエは調子を崩され、曖昧に笑った。
「ところで、何をしているんだい」
「えっと……友達のペットがいなくなったので、探してました」
ナマエはとっさに答えた。理由はどうあれ、真実だった。
「そうか──」
ルーピン先生は疲れたように息を吐いた。
「そういえば……君は、ハリーの箒を暴れ柳のそばで見つけたと聞いたよ」
「えっと、はい」
「君はなぜ、そこにいたんだい?」
「それは……」
ナマエは、質問の意図がわからず困惑した。ルーピンはすぐに安心させるように穏やかな顔をした。
「怒っているわけじゃないよ、安心して。──ただ、あの木に近づくのは危険だよ。ニンバスのようになりたくなかったら、もう近づかないこと。いいね」
「……はい」
ナマエとて近づきたくはないが、あの木の根元は叫びの屋敷に通じているのだ。ナマエはしぶしぶ頷くと、ルーピン先生は「よろしい」と笑った。
「それと、一人で夜出歩いてはいけないよ。次に見つけたら減点だ。寮まで送ろう」
「すみません。──先生、体調はもういいんですか」
ナマエが歩きながら尋ねた。スネイプがルーピン先生の薬を調合しているという話を思い出したのだ。
「ああ、随分いい。スネイプ先生と同じ職場でラッキーだ。薬が効いているよ」
ルーピンは微笑んだ。ナマエは、なんとなく詮索できなかった。ルーピン先生は物腰柔らかで親切だが、他人と一線を引くような、そんな雰囲気があると思った。
ナマエは、ネズミが這っていないかと地面に目を凝らしながらも、おとなしく寮に戻った。
ベッドに戻ると、手紙が一通届いていた。ぐしゃぐしゃに濡れていて、インクが滲んで読みにくかったが、ハグリッドからだとわかった。
───────
ナマエへ
俺たちが負けた。バックビークはホグワーツに連れて帰るのを許された。
処刑日はこれから決まる。 ビーキーはロンドンを楽しんだ。
おまえさんが俺たちのためにいろいろ助けてくれたことは忘れねえ。
ハグリッドより
───────
ナマエが落ち着くと、シリウスが尋ねた。ナマエはすん、と鼻を啜ってから話した。
「……ハリーにファイアボルトを送ったのはあんた?」
シリウスの骸骨のような顔がパッと明るくなった。
「ああ、そうだ。猫に注文書を届けてもらった」
「すごく気に入ってると思う。俺は箒のことはよくわからないけど、あの飛行は凄かった」
「ははっ!ジェームズ譲りだ」
シリウスは嬉しそうに笑った。ナマエは少し言い難そうに続けた。
「──ただ、シリウス。ハリーはあんたを両親の仇だと思ってる」
「……そうか」
ナマエはシリウスの表情が曇るのを見ていられなくなり、パン!と自分の膝を叩いて立ち上がった。
「ペテグリューをアズカバンにぶち込もう」
ナマエはシリウスに教わった隠し通路を通ってホグワーツに戻っていた。しかし、出口から出ることができなかった。頭上では唸り声のように風を切る音が鳴り響いていた。暴れ柳の下に出るということは、つまりこの暴力的な木を掻い潜らなければならない。ナマエはため息をついて、そっと太い木の根っこを撫でた。
「大人しくしてくれよ」
ナマエはダメ元で、いつも聞き分けがない魔法道具にするように木の根にキスをした。
すると、暴れ柳の動きが緩慢になり、やがて止まった。ナマエは鳥の姿に戻って、城まで一直線に戻った。日は落ちて、もう夕食が終わっている頃だった。ナマエは大広間にも談話室にも戻らず、そのままネズミ探しをすることにした。
──食料に困らないのは厨房だろう。ただ、おそらく城の厨房には屋敷しもべ妖精しかいない。ペテグリューはシリウスの情報を耳に入れる必要があるし、そもそもナマエは厨房の場所を知らなかった。少し危険だが、職員室は?
ナマエは人目を避けながら城を滑空した。暗い廊下で地面に目を凝らしながら移動していると、足音が近づいてくるのが聞こえてきた。ナマエは窓枠に止まってやり過ごそうとした。光と足音は徐々にナマエに近づいていた。そして、あろうことかナマエのすぐそばでぴたりと止まった。
光の主はルーピン先生だった。しかし、鳥の姿であればもし見つかったとしても外に出される程度で済むだろう。ナマエはその場をじっとやり過ごすことにした。
「──ナマエ」
ナマエは、自分の名前を口にするルーピンに驚いてその場に凍りついた。ルーピン先生は、手に持った紙切れを眺めながらナマエが止まっている窓の前まで歩いてきた。紙切れをローブにしまうと、顔を上げてまっすぐにカササギを見つめて、ルーピン先生はもう一度言った。
「君は、ナマエだね?」
ナマエはしばらく鳥の姿でじっとしていたが、確信に満ちた顔のルーピン先生を見て観念した。窓枠から飛び降りて、人の姿に戻ったナマエは、おずおずと尋ねた。
「──どうして、わかったんですか」
ルーピン先生は柔らかく微笑んだ。
「動物もどきの知り合いがいてね」
「それは──」
「マクゴナガル先生だよ」
それは誰か、と尋ねる前にルーピンが答えた。そして、ナマエを足元から頭の先まで見て、にっこり笑った。
「いや、その歳で動物もどきになれるとは──素晴らしい」
罰則を覚悟していたナマエは調子を崩され、曖昧に笑った。
「ところで、何をしているんだい」
「えっと……友達のペットがいなくなったので、探してました」
ナマエはとっさに答えた。理由はどうあれ、真実だった。
「そうか──」
ルーピン先生は疲れたように息を吐いた。
「そういえば……君は、ハリーの箒を暴れ柳のそばで見つけたと聞いたよ」
「えっと、はい」
「君はなぜ、そこにいたんだい?」
「それは……」
ナマエは、質問の意図がわからず困惑した。ルーピンはすぐに安心させるように穏やかな顔をした。
「怒っているわけじゃないよ、安心して。──ただ、あの木に近づくのは危険だよ。ニンバスのようになりたくなかったら、もう近づかないこと。いいね」
「……はい」
ナマエとて近づきたくはないが、あの木の根元は叫びの屋敷に通じているのだ。ナマエはしぶしぶ頷くと、ルーピン先生は「よろしい」と笑った。
「それと、一人で夜出歩いてはいけないよ。次に見つけたら減点だ。寮まで送ろう」
「すみません。──先生、体調はもういいんですか」
ナマエが歩きながら尋ねた。スネイプがルーピン先生の薬を調合しているという話を思い出したのだ。
「ああ、随分いい。スネイプ先生と同じ職場でラッキーだ。薬が効いているよ」
ルーピンは微笑んだ。ナマエは、なんとなく詮索できなかった。ルーピン先生は物腰柔らかで親切だが、他人と一線を引くような、そんな雰囲気があると思った。
ナマエは、ネズミが這っていないかと地面に目を凝らしながらも、おとなしく寮に戻った。
ベッドに戻ると、手紙が一通届いていた。ぐしゃぐしゃに濡れていて、インクが滲んで読みにくかったが、ハグリッドからだとわかった。
───────
ナマエへ
俺たちが負けた。バックビークはホグワーツに連れて帰るのを許された。
処刑日はこれから決まる。 ビーキーはロンドンを楽しんだ。
おまえさんが俺たちのためにいろいろ助けてくれたことは忘れねえ。
ハグリッドより
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