アズカバンの囚人
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レイブンクロー対グリフィンドールのクィディッチの試合が週末に控えていた。学期が始まってから一週間目に行われたスリザリン戦で惜しくも敗北したレイブンクローのチームは、どこかそわそわと落ち着きがなかった。
ナマエはそのざわめきをよそに分厚い本をめくった。宿題が山積みだった。それに、スキャバーズを探さないといけないし、バックビークの尋問も近づいている。ハーマイオニーは、まだロンと険悪な様子で、いつも泣きそうな顔で授業を受けていた。
ハーマイオニーとナマエは、ハグリッドの小屋をたびたび訪ねた。ハーマイオニーはバックビークに有利になりそうな過去の事件を調べ上げ、ナマエは証人として出廷するのではなく、証言を文書にまとめてハグリッドに託すことになった。
ハーマイオニーはハリーとロンのことで落ち込んで、いつも暗い顔をしていた。
ハグリッドは「箒とネズミよりも友達の方が大事だ、お前さんは間違っちょらん!」と励ました。
レイブンクローとグリフィンドールの試合の日、寝不足のナマエはマイケルたちに引っ張られてクィディッチ競技場に向かった。
ハリーは目が覚めるような飛びっぷりを披露した。流石のナマエも、ファイアボルトの素晴らしさに感心せざるを得なかった。
レイブンクローのシーカーのチョウもなかなかの乗り手だった。ハリーを完全にマークして食らいついていたが、一歩及ばずグリフィンドールの勝利に終わった。
その日のレイブンクローは敗北したものの、生徒のほとんどがファイアボルトを褒めそやした。それに、試合中に吸魂鬼のふりをしたマルフォイたちを、ハリーの守護霊の呪文がやっつけたのだ。完全な守護霊ではなかったが、ナマエは驚いた。時間の余裕さえあれば、自分もルーピン先生に習いにいくのに、と歯噛みした。ハリーの手元に箒が戻ったのだから、ハーマイオニーとの関係も修復されるだろうと、ナマエはほっとした。
──しかし、事件が起こった。
ホグワーツにまたしてもシリウス・ブラックが侵入したのだ。こともあろう、グリフィンドールの男子寮まで侵入し、ロンを襲おうとしたとの噂がホグワーツ中を駆け巡った。学校内は目に見えて警備が強化された。フリットウィック先生は入口のドアというドアに、シリウス・ブラックの大きな写真を貼って、人相を覚え込ませていた。フィルチは気ぜわしく廊下を駆けずり回り、小さな隙間からネズミの出入口まで、穴という穴に板を打ちつけていた。
「ロン!本当の本当に?!シリウス・ブラックが来たのか!?」
ナマエは大広間でロンを見つけて詰め寄った。ナマエは、てっきりロンはショックを受けているかと思っていたが、どこか楽しそうだった。ハリーではなくロンに注目が集まるのはこれが初めてだったからだ。もう何度も話しているだろうに、うれしそうに、微に入り細を穿って語って聞かせた。
「僕が寝てたら、ビリビリって何かを引き裂く音がして……僕、目が覚めた。ベットのカーテンが引きちぎられてて……ブラックが僕の上に覆い被さるように立ってたんだ……。まるで骸骨みたいだった……。僕が叫んだら、あいつは逃げていった……」
「な、なんて無茶な──」
ナマエは思わず声に出してから、ぱっと手で口を覆った。
「いや、あの。……勇敢だったな、ロン」
「まあ、ね」
ロンは満更でもなさそうに鼻を掻いたので、ナマエはほっとしてその場を後にした。
「スキャバーズを見つけないと……」
次の週末は学年最後のホグズミード行きの日だった。
ナマエはマイケルたちには課題があるから行けないと言い訳をして、カササギの姿で叫びの屋敷に向かった。
屋敷の割れた窓からスイっと侵入し、二階まで飛行した。埃っぽい部屋の中に、黒い犬の姿が見えた途端、ナマエは人間の姿になって詰め寄った。
「──っシリウス!なんであんな無謀なことをするんだ!」
すると、犬は一瞬唸ってから人間の姿になってナマエを見下ろした。
「私は、十二年も──君が生まれてから今まで過ごしていた時間くらいに!待ったんだ!!」
シリウスは、初めは噛み殺すような唸り声だったが、最後はほとんど怒鳴っていた。
「犯していない罪を着せられて!アズカバンの牢獄で!十二年だぞ!!」
ナマエは気圧され、俯いた。手伝うと言いながら、たいして何もしていなかったのは事実だった。
「──ごめん」
シリウスは罰が悪そうにため息をついて座り込んだ。
「いや……すまない、君には関係ないことなのに」
気まずい沈黙のあと、ナマエもシリウスの隣に腰を下ろした。
「……スキャバーズは談話室にはいない。逃げられた」
「何だと?」
「あんたに追われてることに気がついてる。猫に喰われたフリをして姿を消したんだ──いや、でも……」
ナマエは話しながら、顎に手を当てて考え込んだ。
「──結局、あんたが侵入したのはよかったかもしれない」
「説明してくれ」
シリウスはじれったそうに促した。ナマエは考えついたことをそのまま口に出した。
「奴はまだホグワーツにいると思う。シリウス・ブラックに関する情報を耳に入れておく必要があるし、あそこなら食うのに困らない。そんなときに、あんたがグリフィンドールの寮に侵入してロンに見られた。となると──」
ナマエはシリウスの顔を見た。
「あんたは危険を犯して、ロンの元にスキャバーズはいないと確認した。さらに警備が強まってるのに、いなかった場所をもう一度探しに来るとは思わないだろう」
シリウスはナマエの顔をじっと見て、続きを引き取った。
「私が襲いに来ないと思えば──やつはまた、その子のペットとしてぬくぬく過ごしに戻ってくると?」
ナマエはこくりと頷いて、埃っぽい床を指でなぞった。
「ペテグリューはあんたから逃れたがっている。でも、みんなペテグリューは死んだと思ってるから、保護は望めない。そうなればやつが助かる道は、ロンにペットとして飼われるか、──例のあの人の信奉者に助けを求めるか」
ナマエは意見を伺うようにシリウスを見た。シリウスは少し考えてから口を開いた。
「──おそらくピーターは、忠誠心で例のあの人に仕えているのではない……恐怖心からだろう。君の読み通り、戻ってくるかもしれない」
ナマエは立ち上がった。
「今度は必ず連れてくる」
シリウスはナマエの腕を掴んだ。
「──待て、ナマエ。ホグワーツに戻るなら、この屋敷の地下にある抜け道を使え。暴れ柳の下に繋がってる」
ナマエは目をぱちくりさせてシリウスを見た。
「……なるほど」
犬の姿だとしても、シリウスがホグワーツにやすやすと出入りしていたのは、こういう理由だったわけかと、ナマエは納得した。同時に、秘密の通路を教えてくれたことで、シリウスに信用されていると感じて嬉しかった。
「──や、でもその前に」
ナマエはシリウスの体を見た。痩せこけて、骨に触れられそうなほど皮膚が薄くなっていた。
「何か買ってくる。ろくに食べてないだろう」
今度はシリウスが目を丸くして、そのあと微笑んだ。
「ああ……ありがたい。ネズミやコウモリの味は絶品とは言えない」
二人は互いに信頼を得たと思った。
ナマエは、知り合いに気づかれないよう、急いで三本の箒に向かってバタービールの瓶を二本と骨付きチキンを買った。瓶と袋を腕に抱えて店を出ると、誰かに呼び止められた。
「ミョウジ」
ナマエがギクリと振り返ると、マルフォイが一人で立っていた。
ナマエはそのざわめきをよそに分厚い本をめくった。宿題が山積みだった。それに、スキャバーズを探さないといけないし、バックビークの尋問も近づいている。ハーマイオニーは、まだロンと険悪な様子で、いつも泣きそうな顔で授業を受けていた。
ハーマイオニーとナマエは、ハグリッドの小屋をたびたび訪ねた。ハーマイオニーはバックビークに有利になりそうな過去の事件を調べ上げ、ナマエは証人として出廷するのではなく、証言を文書にまとめてハグリッドに託すことになった。
ハーマイオニーはハリーとロンのことで落ち込んで、いつも暗い顔をしていた。
ハグリッドは「箒とネズミよりも友達の方が大事だ、お前さんは間違っちょらん!」と励ました。
レイブンクローとグリフィンドールの試合の日、寝不足のナマエはマイケルたちに引っ張られてクィディッチ競技場に向かった。
ハリーは目が覚めるような飛びっぷりを披露した。流石のナマエも、ファイアボルトの素晴らしさに感心せざるを得なかった。
レイブンクローのシーカーのチョウもなかなかの乗り手だった。ハリーを完全にマークして食らいついていたが、一歩及ばずグリフィンドールの勝利に終わった。
その日のレイブンクローは敗北したものの、生徒のほとんどがファイアボルトを褒めそやした。それに、試合中に吸魂鬼のふりをしたマルフォイたちを、ハリーの守護霊の呪文がやっつけたのだ。完全な守護霊ではなかったが、ナマエは驚いた。時間の余裕さえあれば、自分もルーピン先生に習いにいくのに、と歯噛みした。ハリーの手元に箒が戻ったのだから、ハーマイオニーとの関係も修復されるだろうと、ナマエはほっとした。
──しかし、事件が起こった。
ホグワーツにまたしてもシリウス・ブラックが侵入したのだ。こともあろう、グリフィンドールの男子寮まで侵入し、ロンを襲おうとしたとの噂がホグワーツ中を駆け巡った。学校内は目に見えて警備が強化された。フリットウィック先生は入口のドアというドアに、シリウス・ブラックの大きな写真を貼って、人相を覚え込ませていた。フィルチは気ぜわしく廊下を駆けずり回り、小さな隙間からネズミの出入口まで、穴という穴に板を打ちつけていた。
「ロン!本当の本当に?!シリウス・ブラックが来たのか!?」
ナマエは大広間でロンを見つけて詰め寄った。ナマエは、てっきりロンはショックを受けているかと思っていたが、どこか楽しそうだった。ハリーではなくロンに注目が集まるのはこれが初めてだったからだ。もう何度も話しているだろうに、うれしそうに、微に入り細を穿って語って聞かせた。
「僕が寝てたら、ビリビリって何かを引き裂く音がして……僕、目が覚めた。ベットのカーテンが引きちぎられてて……ブラックが僕の上に覆い被さるように立ってたんだ……。まるで骸骨みたいだった……。僕が叫んだら、あいつは逃げていった……」
「な、なんて無茶な──」
ナマエは思わず声に出してから、ぱっと手で口を覆った。
「いや、あの。……勇敢だったな、ロン」
「まあ、ね」
ロンは満更でもなさそうに鼻を掻いたので、ナマエはほっとしてその場を後にした。
「スキャバーズを見つけないと……」
次の週末は学年最後のホグズミード行きの日だった。
ナマエはマイケルたちには課題があるから行けないと言い訳をして、カササギの姿で叫びの屋敷に向かった。
屋敷の割れた窓からスイっと侵入し、二階まで飛行した。埃っぽい部屋の中に、黒い犬の姿が見えた途端、ナマエは人間の姿になって詰め寄った。
「──っシリウス!なんであんな無謀なことをするんだ!」
すると、犬は一瞬唸ってから人間の姿になってナマエを見下ろした。
「私は、十二年も──君が生まれてから今まで過ごしていた時間くらいに!待ったんだ!!」
シリウスは、初めは噛み殺すような唸り声だったが、最後はほとんど怒鳴っていた。
「犯していない罪を着せられて!アズカバンの牢獄で!十二年だぞ!!」
ナマエは気圧され、俯いた。手伝うと言いながら、たいして何もしていなかったのは事実だった。
「──ごめん」
シリウスは罰が悪そうにため息をついて座り込んだ。
「いや……すまない、君には関係ないことなのに」
気まずい沈黙のあと、ナマエもシリウスの隣に腰を下ろした。
「……スキャバーズは談話室にはいない。逃げられた」
「何だと?」
「あんたに追われてることに気がついてる。猫に喰われたフリをして姿を消したんだ──いや、でも……」
ナマエは話しながら、顎に手を当てて考え込んだ。
「──結局、あんたが侵入したのはよかったかもしれない」
「説明してくれ」
シリウスはじれったそうに促した。ナマエは考えついたことをそのまま口に出した。
「奴はまだホグワーツにいると思う。シリウス・ブラックに関する情報を耳に入れておく必要があるし、あそこなら食うのに困らない。そんなときに、あんたがグリフィンドールの寮に侵入してロンに見られた。となると──」
ナマエはシリウスの顔を見た。
「あんたは危険を犯して、ロンの元にスキャバーズはいないと確認した。さらに警備が強まってるのに、いなかった場所をもう一度探しに来るとは思わないだろう」
シリウスはナマエの顔をじっと見て、続きを引き取った。
「私が襲いに来ないと思えば──やつはまた、その子のペットとしてぬくぬく過ごしに戻ってくると?」
ナマエはこくりと頷いて、埃っぽい床を指でなぞった。
「ペテグリューはあんたから逃れたがっている。でも、みんなペテグリューは死んだと思ってるから、保護は望めない。そうなればやつが助かる道は、ロンにペットとして飼われるか、──例のあの人の信奉者に助けを求めるか」
ナマエは意見を伺うようにシリウスを見た。シリウスは少し考えてから口を開いた。
「──おそらくピーターは、忠誠心で例のあの人に仕えているのではない……恐怖心からだろう。君の読み通り、戻ってくるかもしれない」
ナマエは立ち上がった。
「今度は必ず連れてくる」
シリウスはナマエの腕を掴んだ。
「──待て、ナマエ。ホグワーツに戻るなら、この屋敷の地下にある抜け道を使え。暴れ柳の下に繋がってる」
ナマエは目をぱちくりさせてシリウスを見た。
「……なるほど」
犬の姿だとしても、シリウスがホグワーツにやすやすと出入りしていたのは、こういう理由だったわけかと、ナマエは納得した。同時に、秘密の通路を教えてくれたことで、シリウスに信用されていると感じて嬉しかった。
「──や、でもその前に」
ナマエはシリウスの体を見た。痩せこけて、骨に触れられそうなほど皮膚が薄くなっていた。
「何か買ってくる。ろくに食べてないだろう」
今度はシリウスが目を丸くして、そのあと微笑んだ。
「ああ……ありがたい。ネズミやコウモリの味は絶品とは言えない」
二人は互いに信頼を得たと思った。
ナマエは、知り合いに気づかれないよう、急いで三本の箒に向かってバタービールの瓶を二本と骨付きチキンを買った。瓶と袋を腕に抱えて店を出ると、誰かに呼び止められた。
「ミョウジ」
ナマエがギクリと振り返ると、マルフォイが一人で立っていた。