アズカバンの囚人
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最悪の状況だった。
凶悪な脱獄囚が、床に転がったナマエに杖を向けていた。
「子供じゃないか……」
シリウス・ブラックは、ナマエの姿をまじまじと見て掠れた声で呟いた。
「っお前!ステューピファ──」
「エクスペリアームス!」
ナマエは叫んで杖を構えたが、ブラックの方が一枚うわてだった。ナマエの杖は宙を舞い、カラカラと音を立てて床に転がった。
「危害は加えない、悪く思わないでくれ!」
ブラックは再びナマエに杖を向けた。ナマエは叫んだ。
「ハリーを殺しにきたのか!?」
ハリーの名前を聞いた瞬間、ブラックの目がギラリと光った。
「違うっ!君の想像とは!全く違う!」
シリウス・ブラックは吠えるように否定した。声の使い方を長いこと忘れていたかのような、しわがれた響きだった。ナマエは杖先から目を離さず、この状況を打開する方法を考えた。手にじっとりと汗が滲んだ。この男の目的がハリーなら、トム・リドルの日記の時のように、また、自分が人質になってしまったら──。
ナマエはぎり、と奥歯が砕けそうなほど歯を食いしばった。
「──違うって、何がどう違うんだ!」
「私は、誰も殺してなどいない!」
もじゃもじゃと肘まで垂れた汚れきった髪が揺れた。血の気のない皮膚が顔の骨にぴったりと貼りつき、まるで髑髏のようだった。ブラックは、ナマエのこわばった表情を見て、腰のベルトにゆっくり杖をしまった。ナマエは驚いてブラックの顔を見た。
「危害は加えない。君をどうこうするつもりはなかった」
ブラックの足元に、クルックシャンクスが体をこすりつけた。
「……この猫は動物と動物もどきを見分けられる。実に賢い猫だ──私のことも人間だと見破った。おそらく、君のことも」
クルックシャンクスが得意げに喉を鳴らした。ナマエはますます混乱した。
「お前は、それで……犬に変身して脱獄したのか」
ナマエはできるだけ落ち着いた声を出そうと努めて言った。話を続けることで、油断させるしかない。
「犬の姿でハリーをつけ回してただろう」
「──そして、君はその犬を追ってきたわけか」
ブラックが疲れたように言った。どうやら本当にナマエの存在は誤算だったらしい。
「──私は無実だ。そして、真犯人を追ってここに来た」
ブラックの落ち窪んだ眼窩の奥の目がギラギラ光った。ナマエは視界の端にある自分の杖に意識を向けながら続きを促した。
「真犯人だと?」
「ピーター・ペテグリュー!!」
ブラックは吠えるように叫んだ。ナマエはビクリと杖に伸ばした手を引っ込めた。そして、ブラックを見て繰り返した。
「──ピーター・ペテグリュー?」
ナマエははっと思い出した。
「お前が殺した──」
「違う!奴はまだ生きている!」
「……どういうことだ?」
ナマエは眉を寄せてブラックの顔をじっと睨んだ。ブラックは、ナマエの杖を足でナマエの方に転がした。両手を上に挙げ、ナマエを見た。
「これで話を聞いてくれるか」
「…………」
ナマエは、杖を拾わずブラックを見つめた。この男の挙動の真偽を測りかねていた。ブラックはそれを肯定と取った。
「君はハリーの友達か?」
「そうだ。ハリーは俺の命を救ってくれた」
ブラックは項垂れ、深く息を吐いた。
「ああ──ジェームズもそういう奴だった……ハリーの父だ。私とジェームズは親友だったんだ」
ブラックは遠い過去を見つめるように、窓から外を眺めた。すでに日が傾き始めていた。
「手短に話そう、」
ブラックがナマエを振り返った。
「私はジェームズとリリーの──ハリーの両親の隠れ家の秘密の守り人となる手筈だった。だが、直前で私は……今でも後悔しているが、ピーターを推薦した」
苦々しい、怒りのこもった声だった。
「なぜ」
「──敵の意表を突くためだ。ピーターが守り人だとは、誰も思いはしないだろうと考えたんだ。ピーターも我々の親友の一人で、信用できると思っていた……だが、ピーターは裏切った。私はすぐにピーターを追った。守り人がピーターだと知っているのはジェームズたちと私だけだった」
ブラックは荒々しく床を鳴らしながらその場を行ったり来たりしはじめた。
「ピーターに追いつくと、奴は私を大声で罵った!私を犯人だと思わせるために、『シリウス!なんてことを!』ああ、そして奴は自分の死を偽装するために大爆発を起こした。マグルを巻き込んで、自分の指一本を残して逃げた──」
ブラックはぴたりと立ち止まった。
「私は、その場で捕まった。無実の罪で」
床に座り込んでいたナマエも立ち上がった。
「──なぜ、今になって脱獄した?」
「ピーターを見つけた。新聞に載っていた……」
ブラックが日刊預言者新聞を投げてよこした。ウィーズリー家が賞金を当てて、エジプト旅行に行った時の家族写真が写っていた。
「ウィーズリー家の子が持っているそのネズミだ、指が欠けているだろう」
ナマエはその言葉に驚き、じっくりとロンを見た。手に持っているスキャバーズの小さな指は、確かに欠けているように見えた。
「お前、だからスキャバーズを狙ってたのか!」
ナマエはクルックシャンクスを見て言った。クルックシャンクスは、ナマエから抜けた羽で遊んで、こちらを見向きもしなかった。
「これが真実だ。私は誓って友を裏切ったりしない。そのくらいなら死を選ぶ」
ナマエはブラックを見た。──この男の話は辻褄が合う。親友に裏切られ、親友を失い、濡れ衣を着せられた怒りたるや、想像を絶するだろう。しかし、ナマエにふと疑問が湧いた。
「……じゃあ、なんでハリーを追い回してた?」
「──ただ、一目見たかったんだ。私はハリーの名付け親だから」
ズキン、と胸が痛んだ。ブラックの復讐に燃える目が、慈しむような優しさを見せたのだ。両親をこんな形で亡くしたハリーを羨ましく思う自分に、嫌気が差した。
「怖がらせて、すまない。君は──」
「ナマエ……ナマエ・ミョウジ」
「ミョウジ……チチオヤの息子か?聖マンゴの癒者の?」
ナマエははっと思い出した。
「俺の父親があんたを追ってる!詳しくは知らないけど──俺の父親は、シリウス・ブラックに身内を殺されたんだって、ハグリッドが話しているのを聞いた。それも濡れ衣か?何があった?」
「私は誰も殺していない」
突然縋るように話し出したナマエに、ブラックは少し虚を突かれたような顔をしてから続けた。
「──君の父上は、闇の陣営に協力的だった。しかし、先の戦争中に息子が攫われた。チチオヤは死喰い人の犯行だと考えて、それからは我々と協力関係になった。……私が知っているのはそのくらいだ。──君だったのか」
「そんな──知らない、親父は俺に何も話してくれない」
ナマエは思いのほか自分から拗ねたような声が出たので、居心地悪く顔を伏せた。屋敷しもべと二人きりで過ごした寂しい記憶しか、ナマエは持っていなかった。
しばらく二人は黙っていたが、ナマエはポケットをまさぐって、ハニーデュークスで買ったばかりのヌガーを差し出した。
「ブラック、俺もネズミ捕りを手伝う」
シリウスは驚いたようにヌガーとナマエの顔を交互に見た。
「俺はグリフィンドールじゃないから、談話室には入れないけど」
驚きと期待が、痩せこけた顔に広がった。
「君、協力するというのか?」
ナマエは頷いた。今になって、自分が肩から血を流していることに気がついた。クルックシャンクスの牙が食い込んでいたらしい。
「あんたの話は辻褄が合うし、スキャバーズが本当にピーターか確かめられれば、証明できる」
ナマエはようやく杖を拾いあげ、その杖を見つめながら言った。
「それに、親父が追うべきなのは……ブラック、あんたじゃなさそうだし」
「……あぁ……ありがとう……」
ブラックは深い息を吐いた。
「すまないが、ナマエ。ラストネームで呼ばれるのは好きじゃない。実家と折り合いが悪くてね」
「わかった、シリウス。俺もだ」
ナマエは、にっと笑って杖で自分の肩の傷を癒した。部屋を出る前にふとシリウスに尋ねた。
「……一応聞くけど、動物もどきの登録って、してないわけ?」
「ああ、君もそうらしいな」
シリウスは、出会ってから初めて口角を上げた。
凶悪な脱獄囚が、床に転がったナマエに杖を向けていた。
「子供じゃないか……」
シリウス・ブラックは、ナマエの姿をまじまじと見て掠れた声で呟いた。
「っお前!ステューピファ──」
「エクスペリアームス!」
ナマエは叫んで杖を構えたが、ブラックの方が一枚うわてだった。ナマエの杖は宙を舞い、カラカラと音を立てて床に転がった。
「危害は加えない、悪く思わないでくれ!」
ブラックは再びナマエに杖を向けた。ナマエは叫んだ。
「ハリーを殺しにきたのか!?」
ハリーの名前を聞いた瞬間、ブラックの目がギラリと光った。
「違うっ!君の想像とは!全く違う!」
シリウス・ブラックは吠えるように否定した。声の使い方を長いこと忘れていたかのような、しわがれた響きだった。ナマエは杖先から目を離さず、この状況を打開する方法を考えた。手にじっとりと汗が滲んだ。この男の目的がハリーなら、トム・リドルの日記の時のように、また、自分が人質になってしまったら──。
ナマエはぎり、と奥歯が砕けそうなほど歯を食いしばった。
「──違うって、何がどう違うんだ!」
「私は、誰も殺してなどいない!」
もじゃもじゃと肘まで垂れた汚れきった髪が揺れた。血の気のない皮膚が顔の骨にぴったりと貼りつき、まるで髑髏のようだった。ブラックは、ナマエのこわばった表情を見て、腰のベルトにゆっくり杖をしまった。ナマエは驚いてブラックの顔を見た。
「危害は加えない。君をどうこうするつもりはなかった」
ブラックの足元に、クルックシャンクスが体をこすりつけた。
「……この猫は動物と動物もどきを見分けられる。実に賢い猫だ──私のことも人間だと見破った。おそらく、君のことも」
クルックシャンクスが得意げに喉を鳴らした。ナマエはますます混乱した。
「お前は、それで……犬に変身して脱獄したのか」
ナマエはできるだけ落ち着いた声を出そうと努めて言った。話を続けることで、油断させるしかない。
「犬の姿でハリーをつけ回してただろう」
「──そして、君はその犬を追ってきたわけか」
ブラックが疲れたように言った。どうやら本当にナマエの存在は誤算だったらしい。
「──私は無実だ。そして、真犯人を追ってここに来た」
ブラックの落ち窪んだ眼窩の奥の目がギラギラ光った。ナマエは視界の端にある自分の杖に意識を向けながら続きを促した。
「真犯人だと?」
「ピーター・ペテグリュー!!」
ブラックは吠えるように叫んだ。ナマエはビクリと杖に伸ばした手を引っ込めた。そして、ブラックを見て繰り返した。
「──ピーター・ペテグリュー?」
ナマエははっと思い出した。
「お前が殺した──」
「違う!奴はまだ生きている!」
「……どういうことだ?」
ナマエは眉を寄せてブラックの顔をじっと睨んだ。ブラックは、ナマエの杖を足でナマエの方に転がした。両手を上に挙げ、ナマエを見た。
「これで話を聞いてくれるか」
「…………」
ナマエは、杖を拾わずブラックを見つめた。この男の挙動の真偽を測りかねていた。ブラックはそれを肯定と取った。
「君はハリーの友達か?」
「そうだ。ハリーは俺の命を救ってくれた」
ブラックは項垂れ、深く息を吐いた。
「ああ──ジェームズもそういう奴だった……ハリーの父だ。私とジェームズは親友だったんだ」
ブラックは遠い過去を見つめるように、窓から外を眺めた。すでに日が傾き始めていた。
「手短に話そう、」
ブラックがナマエを振り返った。
「私はジェームズとリリーの──ハリーの両親の隠れ家の秘密の守り人となる手筈だった。だが、直前で私は……今でも後悔しているが、ピーターを推薦した」
苦々しい、怒りのこもった声だった。
「なぜ」
「──敵の意表を突くためだ。ピーターが守り人だとは、誰も思いはしないだろうと考えたんだ。ピーターも我々の親友の一人で、信用できると思っていた……だが、ピーターは裏切った。私はすぐにピーターを追った。守り人がピーターだと知っているのはジェームズたちと私だけだった」
ブラックは荒々しく床を鳴らしながらその場を行ったり来たりしはじめた。
「ピーターに追いつくと、奴は私を大声で罵った!私を犯人だと思わせるために、『シリウス!なんてことを!』ああ、そして奴は自分の死を偽装するために大爆発を起こした。マグルを巻き込んで、自分の指一本を残して逃げた──」
ブラックはぴたりと立ち止まった。
「私は、その場で捕まった。無実の罪で」
床に座り込んでいたナマエも立ち上がった。
「──なぜ、今になって脱獄した?」
「ピーターを見つけた。新聞に載っていた……」
ブラックが日刊預言者新聞を投げてよこした。ウィーズリー家が賞金を当てて、エジプト旅行に行った時の家族写真が写っていた。
「ウィーズリー家の子が持っているそのネズミだ、指が欠けているだろう」
ナマエはその言葉に驚き、じっくりとロンを見た。手に持っているスキャバーズの小さな指は、確かに欠けているように見えた。
「お前、だからスキャバーズを狙ってたのか!」
ナマエはクルックシャンクスを見て言った。クルックシャンクスは、ナマエから抜けた羽で遊んで、こちらを見向きもしなかった。
「これが真実だ。私は誓って友を裏切ったりしない。そのくらいなら死を選ぶ」
ナマエはブラックを見た。──この男の話は辻褄が合う。親友に裏切られ、親友を失い、濡れ衣を着せられた怒りたるや、想像を絶するだろう。しかし、ナマエにふと疑問が湧いた。
「……じゃあ、なんでハリーを追い回してた?」
「──ただ、一目見たかったんだ。私はハリーの名付け親だから」
ズキン、と胸が痛んだ。ブラックの復讐に燃える目が、慈しむような優しさを見せたのだ。両親をこんな形で亡くしたハリーを羨ましく思う自分に、嫌気が差した。
「怖がらせて、すまない。君は──」
「ナマエ……ナマエ・ミョウジ」
「ミョウジ……チチオヤの息子か?聖マンゴの癒者の?」
ナマエははっと思い出した。
「俺の父親があんたを追ってる!詳しくは知らないけど──俺の父親は、シリウス・ブラックに身内を殺されたんだって、ハグリッドが話しているのを聞いた。それも濡れ衣か?何があった?」
「私は誰も殺していない」
突然縋るように話し出したナマエに、ブラックは少し虚を突かれたような顔をしてから続けた。
「──君の父上は、闇の陣営に協力的だった。しかし、先の戦争中に息子が攫われた。チチオヤは死喰い人の犯行だと考えて、それからは我々と協力関係になった。……私が知っているのはそのくらいだ。──君だったのか」
「そんな──知らない、親父は俺に何も話してくれない」
ナマエは思いのほか自分から拗ねたような声が出たので、居心地悪く顔を伏せた。屋敷しもべと二人きりで過ごした寂しい記憶しか、ナマエは持っていなかった。
しばらく二人は黙っていたが、ナマエはポケットをまさぐって、ハニーデュークスで買ったばかりのヌガーを差し出した。
「ブラック、俺もネズミ捕りを手伝う」
シリウスは驚いたようにヌガーとナマエの顔を交互に見た。
「俺はグリフィンドールじゃないから、談話室には入れないけど」
驚きと期待が、痩せこけた顔に広がった。
「君、協力するというのか?」
ナマエは頷いた。今になって、自分が肩から血を流していることに気がついた。クルックシャンクスの牙が食い込んでいたらしい。
「あんたの話は辻褄が合うし、スキャバーズが本当にピーターか確かめられれば、証明できる」
ナマエはようやく杖を拾いあげ、その杖を見つめながら言った。
「それに、親父が追うべきなのは……ブラック、あんたじゃなさそうだし」
「……あぁ……ありがとう……」
ブラックは深い息を吐いた。
「すまないが、ナマエ。ラストネームで呼ばれるのは好きじゃない。実家と折り合いが悪くてね」
「わかった、シリウス。俺もだ」
ナマエは、にっと笑って杖で自分の肩の傷を癒した。部屋を出る前にふとシリウスに尋ねた。
「……一応聞くけど、動物もどきの登録って、してないわけ?」
「ああ、君もそうらしいな」
シリウスは、出会ってから初めて口角を上げた。
