アズカバンの囚人
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⚡️──────
月曜になって、ハリーは学校のざわめきの中に戻った。ハリーは、ドラコ・マルフォイの冷やかしを我慢しなければならなかったが、何か別のことを考えざるをえなくなったのは救いだった。マルフォイはグリフィンドールが負けたことで有頂天で、ハリーが箒から落ちる様子を嬉々としてまねした。
ナマエとロンは少し前からギクシャクしていた。ハーマイオニーがナマエと一緒にいることが多いことで、ロンはいちいち嫌味を言った。ロン自身は「ナマエがマルフォイとつるんで、こっちを馬鹿にしてるんだ」と言っていたが、ハリーは、ロンはハーマイオニーがナマエの肩を持っていることが気に食わないのだろう、と思っていた。
「魔法薬」のクラスでは、初日からナマエはずっとマルフォイの隣に座っていたので、ロンの機嫌はすこぶる悪かった。実際には、ナマエとマルフォイは並んで座っているだけで、ほとんど目も合わせず授業を受けていた。ナマエのほうはロンの嫌味を完全に無視することに決めたらしく、それが逆にロンをさらに苛立たせていた。
ルーピン先生が体調不良から復帰したので、ハリーは、ナマエの言っていた「守護霊の呪文」のことを先生に話して、その呪文を習う約束をした。もう、吸魂鬼が現れても母親の悲鳴を聞かなくて済むかもしれない。そう思うと、気が楽になった。
さらに十一月の終わりに、クィディッチでレイブンクローがハッフルパフをペシャンコに負かしたこともあって、ハリーの気持は着実に明るくなってきた。グリフィンドールはもう一試合も負けるわけにはいかなかったが、まだ優勝争いから脱落してはいなかった。
ハリーはたいていロンと一緒にいたので、ナマエと話す機会がほとんどなくなっていた。以前は、ナマエがハーマイオニーと一緒にグリフィンドールのテーブルで昼食を取るもあったが、ロンがあからさまにナマエを睨むので、ナマエも腹を立てて来なくなってしまった。
ハリーは、ナマエにだけ死神犬の話をしていた。そして、ナマエにも自分が見た犬が見えたことで、死神犬が自分にだけ取り憑いていると思わずに済んだ。
🐦⬛───────
「あいつ、ロン!俺がマルフォイと一緒になってハリーをバカにしてるとでも思ってるのか?」
ハーマイオニーと次のクラスに移動しながら、ナマエはついに毒づいた。ここ最近、ナマエとロンの仲は悪化の一途を辿っていた。ロンがナマエを見かけるたびにこれみよがしにため息をつき、はじめは無視していたナマエも今や舌打ちで応えるようになった。
「ええ、そう思ってるわよ」
ハーマイオニーはこともなげに答えながら、逆転時計を取り出した。ナマエが屈むと、ハーマイオニーが手慣れた仕草で鎖をナマエの首に掛けた。ナマエは、そのままハーマイオニーの顔を覗き込んだ。
「……あんたもそう思ってる?」
「まさか!」
ハーマイオニーはきっぱりと否定して、時間を逆転させた。逆転が終わると、ハーマイオニーは時計をしまいながら言った。
「──ウィーズリーさんが、ハリーに『シリウス・ブラックを探すな』と仰ったわ。それに、マルフォイがハリーをそそのかしたのを、あなたは止めた」
ハーマイオニーはナマエの顔を見た。
「だから、ハリーにはシリウス・ブラックを追うに値する理由があるって、あなたは知ってるのよね」
「それは──」
ナマエは口籠もったが、ハーマイオニーは続けた。
「──でも、あなたはそうさせたくない。ハリーを危険に晒すべきではないと考えてると思っている。わたしも、賛成だわ」
ナマエは驚きと嬉しさとで、一瞬言葉を失った。
「──あ……あんたって本当、頭がいいな」
ハーマイオニーはにこっと笑った。
週末には、レイブンクローがハッフルパフに圧勝したことで寮がお祭り騒ぎだった。みんながクィディッチチームのメンバー向かってバタービールを掛けて祝っていた。マイケルが嬉しそうに言った。
「怪我のブランクもない、レイブンクローのシーカーは完全復活だな!」
シーカーのチョウはバタービールの雨をひらりとかわして、ナマエに駆け寄った。
「あなた、次の試合はハリーの方を応援するの?」
「えっ?──もちろんレイブンクローを応援する」
ナマエが咄嗟に答えると、チョウはニコッと笑って、突然屈んだ。ナマエはマイケルの放ったバタービールをもろに顔で受けた。談話室の生徒たちがどっと笑った。
学期が終わる二週間前、城の中はクリスマス・ムードで満ち溢れていた。フリットウィック先生は、もう自分の教室にチラチラ瞬くライトを飾りつけていたが、これが実は本物の妖精が羽をパタパタさせている光だった。みんなが休み中の計画を楽しげに語り合っていた。ナマエは毎年のようにホグワーツに居残ることに決めていた。学期の最後の週末には、二回目のホグズミード行きが許された。
ナマエはマイケルたちと一緒に街を回った。前回と違って、ホグズミードはどこもかしこもクリスマスムードが漂っていて、気分が高揚した。
ゾンコの店を出た時、ふと、ナマエは白い雪に覆われた丘に、似つかわしくない黒い影を見つけた。──とことこと雪上を歩くそれは、間違いなく死神犬だった。
「ごめん、漏れそう!先行っててくれ!」
ナマエはマイケルたちにそう叫ぶと、路地裏に入った。──あの犬を追うのに人間の足では到底敵うまい。ナマエは建物の陰で姿を変え、カササギとなって空高く飛び上がった──と、思った。
その瞬間、身体に激痛が走った。羽が何枚かブチブチと抜け、肌に生暖かい空気を感じた。必死に小さな頭を回すと──そこにいたのはクルックシャンクスだった。クルックシャンクスは猫が口に含むにしてはやや大きいカササギを、見事捕まえたのだった。
(──なんでお前がここにいるんだ!)
ナマエは羽をくねらせてジタバタともがいたが、ふと首筋に牙を感じた。
このまま人間の姿に戻ったらどうなるのだろう。自分の首にクルックシャンクスの牙が食い込むのが先か、クルックシャンクスの顎を吹き飛ばしてしまうのが先か──。
しかし、クルックシャンクスはナマエを咥えたまま、とことこ歩き始めた。どうやら食い殺す気はないらしく、ナマエはひとまず大人しくすることにした。きっと、まず獲物をご主人のハーマイオニーに見せに行くに違いない。
しかし、猫はホグズミードの町並みから外れて、寂れた道を歩き始めた。この先には「叫びの屋敷」しか建物はない。クルックシャンクスはナマエを咥えて「叫びの屋敷」にするりと侵入した。慣れた様子で階段を駆け上がると、埃っぽい部屋に入り、ナマエをびたんと床に吐き出した。ナマエは痛みに耐えながら死んだふりをして、そろりと薄目を開けた。
暗闇の中でギロリと光る目玉と目が合った。黒い体毛に覆われた獣が、ナマエを見つめていた。
──死神犬のグリムだ。
まずい。小鳥一羽で獣を二匹相手にするのは得策ではない。それどころか、人間の姿でも、この大きな犬に噛みつかれたらひとたまりもないだろう。
「──私が頼んだのはネズミだったんだが」
突然、男の声が聞こえた。ナマエの視界から犬の姿は消え、そこには人間の足元が見えた。
「とは言え、こいつも動物ではないと、そう言いたいんだな?」
(──誰だ?誰と話してる?)
ナマエが男の顔を見ようと身を捩ると、無理やり頭を天井に向かって引っ張られるような感覚がした。
「っうわ!?」
途端、ナマエの意思とは関係なく、カササギから人間の姿に戻された。ナマエは混乱しながら素早く身を起こした。その瞬間、身が凍るような心地がした。
「誰だ?」
目の前に立っているのは、死神犬ではく、杖を持った──シリウス・ブラックだった。
月曜になって、ハリーは学校のざわめきの中に戻った。ハリーは、ドラコ・マルフォイの冷やかしを我慢しなければならなかったが、何か別のことを考えざるをえなくなったのは救いだった。マルフォイはグリフィンドールが負けたことで有頂天で、ハリーが箒から落ちる様子を嬉々としてまねした。
ナマエとロンは少し前からギクシャクしていた。ハーマイオニーがナマエと一緒にいることが多いことで、ロンはいちいち嫌味を言った。ロン自身は「ナマエがマルフォイとつるんで、こっちを馬鹿にしてるんだ」と言っていたが、ハリーは、ロンはハーマイオニーがナマエの肩を持っていることが気に食わないのだろう、と思っていた。
「魔法薬」のクラスでは、初日からナマエはずっとマルフォイの隣に座っていたので、ロンの機嫌はすこぶる悪かった。実際には、ナマエとマルフォイは並んで座っているだけで、ほとんど目も合わせず授業を受けていた。ナマエのほうはロンの嫌味を完全に無視することに決めたらしく、それが逆にロンをさらに苛立たせていた。
ルーピン先生が体調不良から復帰したので、ハリーは、ナマエの言っていた「守護霊の呪文」のことを先生に話して、その呪文を習う約束をした。もう、吸魂鬼が現れても母親の悲鳴を聞かなくて済むかもしれない。そう思うと、気が楽になった。
さらに十一月の終わりに、クィディッチでレイブンクローがハッフルパフをペシャンコに負かしたこともあって、ハリーの気持は着実に明るくなってきた。グリフィンドールはもう一試合も負けるわけにはいかなかったが、まだ優勝争いから脱落してはいなかった。
ハリーはたいていロンと一緒にいたので、ナマエと話す機会がほとんどなくなっていた。以前は、ナマエがハーマイオニーと一緒にグリフィンドールのテーブルで昼食を取るもあったが、ロンがあからさまにナマエを睨むので、ナマエも腹を立てて来なくなってしまった。
ハリーは、ナマエにだけ死神犬の話をしていた。そして、ナマエにも自分が見た犬が見えたことで、死神犬が自分にだけ取り憑いていると思わずに済んだ。
🐦⬛───────
「あいつ、ロン!俺がマルフォイと一緒になってハリーをバカにしてるとでも思ってるのか?」
ハーマイオニーと次のクラスに移動しながら、ナマエはついに毒づいた。ここ最近、ナマエとロンの仲は悪化の一途を辿っていた。ロンがナマエを見かけるたびにこれみよがしにため息をつき、はじめは無視していたナマエも今や舌打ちで応えるようになった。
「ええ、そう思ってるわよ」
ハーマイオニーはこともなげに答えながら、逆転時計を取り出した。ナマエが屈むと、ハーマイオニーが手慣れた仕草で鎖をナマエの首に掛けた。ナマエは、そのままハーマイオニーの顔を覗き込んだ。
「……あんたもそう思ってる?」
「まさか!」
ハーマイオニーはきっぱりと否定して、時間を逆転させた。逆転が終わると、ハーマイオニーは時計をしまいながら言った。
「──ウィーズリーさんが、ハリーに『シリウス・ブラックを探すな』と仰ったわ。それに、マルフォイがハリーをそそのかしたのを、あなたは止めた」
ハーマイオニーはナマエの顔を見た。
「だから、ハリーにはシリウス・ブラックを追うに値する理由があるって、あなたは知ってるのよね」
「それは──」
ナマエは口籠もったが、ハーマイオニーは続けた。
「──でも、あなたはそうさせたくない。ハリーを危険に晒すべきではないと考えてると思っている。わたしも、賛成だわ」
ナマエは驚きと嬉しさとで、一瞬言葉を失った。
「──あ……あんたって本当、頭がいいな」
ハーマイオニーはにこっと笑った。
週末には、レイブンクローがハッフルパフに圧勝したことで寮がお祭り騒ぎだった。みんながクィディッチチームのメンバー向かってバタービールを掛けて祝っていた。マイケルが嬉しそうに言った。
「怪我のブランクもない、レイブンクローのシーカーは完全復活だな!」
シーカーのチョウはバタービールの雨をひらりとかわして、ナマエに駆け寄った。
「あなた、次の試合はハリーの方を応援するの?」
「えっ?──もちろんレイブンクローを応援する」
ナマエが咄嗟に答えると、チョウはニコッと笑って、突然屈んだ。ナマエはマイケルの放ったバタービールをもろに顔で受けた。談話室の生徒たちがどっと笑った。
学期が終わる二週間前、城の中はクリスマス・ムードで満ち溢れていた。フリットウィック先生は、もう自分の教室にチラチラ瞬くライトを飾りつけていたが、これが実は本物の妖精が羽をパタパタさせている光だった。みんなが休み中の計画を楽しげに語り合っていた。ナマエは毎年のようにホグワーツに居残ることに決めていた。学期の最後の週末には、二回目のホグズミード行きが許された。
ナマエはマイケルたちと一緒に街を回った。前回と違って、ホグズミードはどこもかしこもクリスマスムードが漂っていて、気分が高揚した。
ゾンコの店を出た時、ふと、ナマエは白い雪に覆われた丘に、似つかわしくない黒い影を見つけた。──とことこと雪上を歩くそれは、間違いなく死神犬だった。
「ごめん、漏れそう!先行っててくれ!」
ナマエはマイケルたちにそう叫ぶと、路地裏に入った。──あの犬を追うのに人間の足では到底敵うまい。ナマエは建物の陰で姿を変え、カササギとなって空高く飛び上がった──と、思った。
その瞬間、身体に激痛が走った。羽が何枚かブチブチと抜け、肌に生暖かい空気を感じた。必死に小さな頭を回すと──そこにいたのはクルックシャンクスだった。クルックシャンクスは猫が口に含むにしてはやや大きいカササギを、見事捕まえたのだった。
(──なんでお前がここにいるんだ!)
ナマエは羽をくねらせてジタバタともがいたが、ふと首筋に牙を感じた。
このまま人間の姿に戻ったらどうなるのだろう。自分の首にクルックシャンクスの牙が食い込むのが先か、クルックシャンクスの顎を吹き飛ばしてしまうのが先か──。
しかし、クルックシャンクスはナマエを咥えたまま、とことこ歩き始めた。どうやら食い殺す気はないらしく、ナマエはひとまず大人しくすることにした。きっと、まず獲物をご主人のハーマイオニーに見せに行くに違いない。
しかし、猫はホグズミードの町並みから外れて、寂れた道を歩き始めた。この先には「叫びの屋敷」しか建物はない。クルックシャンクスはナマエを咥えて「叫びの屋敷」にするりと侵入した。慣れた様子で階段を駆け上がると、埃っぽい部屋に入り、ナマエをびたんと床に吐き出した。ナマエは痛みに耐えながら死んだふりをして、そろりと薄目を開けた。
暗闇の中でギロリと光る目玉と目が合った。黒い体毛に覆われた獣が、ナマエを見つめていた。
──死神犬のグリムだ。
まずい。小鳥一羽で獣を二匹相手にするのは得策ではない。それどころか、人間の姿でも、この大きな犬に噛みつかれたらひとたまりもないだろう。
「──私が頼んだのはネズミだったんだが」
突然、男の声が聞こえた。ナマエの視界から犬の姿は消え、そこには人間の足元が見えた。
「とは言え、こいつも動物ではないと、そう言いたいんだな?」
(──誰だ?誰と話してる?)
ナマエが男の顔を見ようと身を捩ると、無理やり頭を天井に向かって引っ張られるような感覚がした。
「っうわ!?」
途端、ナマエの意思とは関係なく、カササギから人間の姿に戻された。ナマエは混乱しながら素早く身を起こした。その瞬間、身が凍るような心地がした。
「誰だ?」
目の前に立っているのは、死神犬ではく、杖を持った──シリウス・ブラックだった。