秘密の部屋
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ナマエはハリーたちと別れてレイブンクローの食卓についた。朝露の採取だけの予定だったのに、ドクロメンガタスズメの繭も手に入ったことで、上機嫌だった。
「ナマエ、こっち!どこ行ってたの?」
テリーが手を振って呼びかけた。ナマエはテリーの隣に着席すると、マイケルとアンソニーもいた。
「ハグリッドのところ……あ、そういえば」
ナマエは思い出したようにローブのポケットから黒い革表紙のノートを取り出して、三人に見せた。
「廊下に落ちてたんだよな。学校にリドルって人、いたっけ?」
「うーん、少なくとも同学年にも、後輩にもいない」
アンソニーが答えた。アンソニーは一番熱心に組み分けを見ていたので、確かだろうと思った。
「日記みたいなんだけど、なーんにも書いてない」
「リドル……うーん、レイブンクローにもいないんじゃないかな」
マイケルもポテトサラダをよそいながら答えた。テリーがノートを手に取りパラパラめくって声を上げた。
「うわあ!これ、五十年前のノートだぜ?きっと掃除中に落としたんだろ、捨てようとしてさ」
「……ま、一応先生に預けようかな」
ナマエはそう言いながらヒョイとテリーから日記を取り返した。しかし、先生に日記を渡す気はあまりなかった。ナマエはなぜだか人にこの日記を触られると心がざわついた。
昼食を終え、テリーとマイケルとアンソニーはレイブンクローのクィディッチの練習を見学に行くというので、ナマエは一人でレイブンクローの寮に戻った。テリーが「ナマエも行こう」と食い下がったが、マイケルが「ナマエは飛行術に引け目があるんだよ」とにやにや笑いながら嗜めた。ナマエがマイケルを睨み、アンソニーはため息をついた。
ナマエは一人、自室の机に座って、何も書かれていないT・M・リドルの日記をなんとなくパラパラとめくった。
「……アパレシウム、現れよ!」
ナマエが杖で日記を叩きながら唱えても、何も起こらなかった。やはり、どのページもまっさらな白紙だった。
唐突に、ナマエの頭にある考えが浮かんだ。
「そうだ、動物もどきになるまで、これで日誌をつけよう」
ナマエはいそいそとメモの束を集め、脇に置いた。
羽ペンにインクを浸して、日記の2ページ目に筆を走らせた。
『マンドレイクの葉を含んで四日目、』
「──えっ?」
ナマエは目を疑った。インクで書いた文字は紙の上で一瞬明るく光ったが、まるでページに吸い込まれるように消えてしまった。
そして、思いがけないことが起こった。そのページから、いま使ったインクが滲み出してきて、ナマエが書いてもいない文字が現れた。
『動物もどきになるのですか?』
「な……なんだ?」
この文字も薄くなっていったが、その前にナマエは返事を走り書きした。
「はい。あなたはT・M・リドル?」
『はい、僕はトム・リドルです』
『俺は、ナマエ・ミョウジ。この日記を拾った。勝手に使おうとして、ごめん』
『かまいません』
ナマエは驚きと興奮でインク壺をひっくり返しそうになりながら、羽ペンを浸し、また文章を綴った。
『あなたは、たった一行で、動物もどきの魔法だとわかったの?』
『ええ、僕はその術を試していませんが、知識はあります』
胸をドキドキさせ、羽根ペンを走らせつづけた。日記の中のトム・リドルは十六歳で、五十年前のホグワーツ生だった。
トムはナマエと比べ物にならないほど魔法への造詣が深く、ナマエの質問になんでも澱みなく答えた。彼はスリザリン生らしかったが、ナマエの中のスリザリンへの偏見が薄れるほどに謙虚で博識だった。
「──すごい、すごい!」
ナマエは興奮していた。五十年も前の人間と会話をしている。たったの十六歳で、こんな方法で記憶を残せるなんて、一体どんな魔法使いだったんだろう?
ナマエは不思議な交換日記に夢中になった。
「ナマエ、夜中に出歩くのはやめたほうがいいよ」
「──えっ?」
ナマエの耳に突然、アンソニーの声が飛び込んだ。ナマエの目の前にアンソニーが立っていた。
さっきまでトムの日記と文通をしていたのに、ナマエは気づくと談話室の入り口に立っていた。
「え?じゃないよ。ペネロピーに見つかったら、君でも減点されると思うよ」
アンソニーは腰に手を当ててナマエを見つめていた。ナマエは辺りを見回した。窓の外はとっぷり日が暮れていた。本棚の前のソファでマイケルとテリーがチェスに興じていて、それ以外の生徒はいなかった。
「どこに行ってたの、夕食もとらないで」
「どこって……俺は……」
ナマエは動揺した。自分はどこにいたんだ?自分の状況が全くわからなかった。ナマエの代わりに答えるように、腹の虫が鳴った。アンソニーはため息をついた。
「また、ハリー・ポッターたちとつるんでたの?」
「違う……と思うけど、その言い方はなんだよ」
ナマエは弱々しく反論した。昼間から突然タイムスリップしたような気分だった。
「ごめん、だけどナマエ、心配してるんだよ。僕だけじゃなくて、テリーも、マイケルも」
「……うん、ごめん……」
アンソニーに真っ直ぐ見つめられて、ナマエは弱った。
「素直でよろしい」
アンソニーがふっと笑って、マイケルとテリーが座っている方を指差した。
「ほら、夕食をちょっと持ってきたから食べよう。僕たちも小腹が空いてきた」
ナマエは申し訳なさそうにアンソニーに続いてソファに向かった。チェスをしていたマイケルはナマエを見て「どこ行ってたんだ」と言ったが、テリーが盤面を睨みながら「待って、今は話さないで」と制した。
アンソニーは銀紙に包んだミートパイを広げてナマエに差し出した。
ナマエは地べたに座り込んでそれを食べた。自分の口の中にマンドレイクの葉があることを思い出した。
「なあ、……俺っていつここを出たっけ?」
「ああっ!」
テリーの悲鳴が上がった。ナマエが顔をあげるとテリーのナイトが倒されたのが見えた。
「さあ、僕たちが帰ってきた時にはもういなかったけど」
マイケルがミートパイをつまみながら答えた。
ナマエは順番に思い出そうとした。
朝、起きて朝露を取りに行った。ジニーとぶつかって、日記を拾った。そのあと、ハリーとナメクジを吐いているロン、ハーマイオニーとハグリッドの小屋に行って、アンソニーたちと昼ごはんを食べて、それから……。
トム・リドルの日記……!
ナマエは思わず自分のローブをまさぐった。──あった。日記がポケットの中に収まっていた。
ナマエはほっとした。
「それ、まだ持ってたの」アンソニーが言った。
「あ、ああ……忘れてた……」
ナマエは、日記とのやり取りを思い出そうとしたが、なぜかひどく疲れていて、それ以上考え事をする気が起きなかった。
「ナマエ、こっち!どこ行ってたの?」
テリーが手を振って呼びかけた。ナマエはテリーの隣に着席すると、マイケルとアンソニーもいた。
「ハグリッドのところ……あ、そういえば」
ナマエは思い出したようにローブのポケットから黒い革表紙のノートを取り出して、三人に見せた。
「廊下に落ちてたんだよな。学校にリドルって人、いたっけ?」
「うーん、少なくとも同学年にも、後輩にもいない」
アンソニーが答えた。アンソニーは一番熱心に組み分けを見ていたので、確かだろうと思った。
「日記みたいなんだけど、なーんにも書いてない」
「リドル……うーん、レイブンクローにもいないんじゃないかな」
マイケルもポテトサラダをよそいながら答えた。テリーがノートを手に取りパラパラめくって声を上げた。
「うわあ!これ、五十年前のノートだぜ?きっと掃除中に落としたんだろ、捨てようとしてさ」
「……ま、一応先生に預けようかな」
ナマエはそう言いながらヒョイとテリーから日記を取り返した。しかし、先生に日記を渡す気はあまりなかった。ナマエはなぜだか人にこの日記を触られると心がざわついた。
昼食を終え、テリーとマイケルとアンソニーはレイブンクローのクィディッチの練習を見学に行くというので、ナマエは一人でレイブンクローの寮に戻った。テリーが「ナマエも行こう」と食い下がったが、マイケルが「ナマエは飛行術に引け目があるんだよ」とにやにや笑いながら嗜めた。ナマエがマイケルを睨み、アンソニーはため息をついた。
ナマエは一人、自室の机に座って、何も書かれていないT・M・リドルの日記をなんとなくパラパラとめくった。
「……アパレシウム、現れよ!」
ナマエが杖で日記を叩きながら唱えても、何も起こらなかった。やはり、どのページもまっさらな白紙だった。
唐突に、ナマエの頭にある考えが浮かんだ。
「そうだ、動物もどきになるまで、これで日誌をつけよう」
ナマエはいそいそとメモの束を集め、脇に置いた。
羽ペンにインクを浸して、日記の2ページ目に筆を走らせた。
『マンドレイクの葉を含んで四日目、』
「──えっ?」
ナマエは目を疑った。インクで書いた文字は紙の上で一瞬明るく光ったが、まるでページに吸い込まれるように消えてしまった。
そして、思いがけないことが起こった。そのページから、いま使ったインクが滲み出してきて、ナマエが書いてもいない文字が現れた。
『動物もどきになるのですか?』
「な……なんだ?」
この文字も薄くなっていったが、その前にナマエは返事を走り書きした。
「はい。あなたはT・M・リドル?」
『はい、僕はトム・リドルです』
『俺は、ナマエ・ミョウジ。この日記を拾った。勝手に使おうとして、ごめん』
『かまいません』
ナマエは驚きと興奮でインク壺をひっくり返しそうになりながら、羽ペンを浸し、また文章を綴った。
『あなたは、たった一行で、動物もどきの魔法だとわかったの?』
『ええ、僕はその術を試していませんが、知識はあります』
胸をドキドキさせ、羽根ペンを走らせつづけた。日記の中のトム・リドルは十六歳で、五十年前のホグワーツ生だった。
トムはナマエと比べ物にならないほど魔法への造詣が深く、ナマエの質問になんでも澱みなく答えた。彼はスリザリン生らしかったが、ナマエの中のスリザリンへの偏見が薄れるほどに謙虚で博識だった。
「──すごい、すごい!」
ナマエは興奮していた。五十年も前の人間と会話をしている。たったの十六歳で、こんな方法で記憶を残せるなんて、一体どんな魔法使いだったんだろう?
ナマエは不思議な交換日記に夢中になった。
「ナマエ、夜中に出歩くのはやめたほうがいいよ」
「──えっ?」
ナマエの耳に突然、アンソニーの声が飛び込んだ。ナマエの目の前にアンソニーが立っていた。
さっきまでトムの日記と文通をしていたのに、ナマエは気づくと談話室の入り口に立っていた。
「え?じゃないよ。ペネロピーに見つかったら、君でも減点されると思うよ」
アンソニーは腰に手を当ててナマエを見つめていた。ナマエは辺りを見回した。窓の外はとっぷり日が暮れていた。本棚の前のソファでマイケルとテリーがチェスに興じていて、それ以外の生徒はいなかった。
「どこに行ってたの、夕食もとらないで」
「どこって……俺は……」
ナマエは動揺した。自分はどこにいたんだ?自分の状況が全くわからなかった。ナマエの代わりに答えるように、腹の虫が鳴った。アンソニーはため息をついた。
「また、ハリー・ポッターたちとつるんでたの?」
「違う……と思うけど、その言い方はなんだよ」
ナマエは弱々しく反論した。昼間から突然タイムスリップしたような気分だった。
「ごめん、だけどナマエ、心配してるんだよ。僕だけじゃなくて、テリーも、マイケルも」
「……うん、ごめん……」
アンソニーに真っ直ぐ見つめられて、ナマエは弱った。
「素直でよろしい」
アンソニーがふっと笑って、マイケルとテリーが座っている方を指差した。
「ほら、夕食をちょっと持ってきたから食べよう。僕たちも小腹が空いてきた」
ナマエは申し訳なさそうにアンソニーに続いてソファに向かった。チェスをしていたマイケルはナマエを見て「どこ行ってたんだ」と言ったが、テリーが盤面を睨みながら「待って、今は話さないで」と制した。
アンソニーは銀紙に包んだミートパイを広げてナマエに差し出した。
ナマエは地べたに座り込んでそれを食べた。自分の口の中にマンドレイクの葉があることを思い出した。
「なあ、……俺っていつここを出たっけ?」
「ああっ!」
テリーの悲鳴が上がった。ナマエが顔をあげるとテリーのナイトが倒されたのが見えた。
「さあ、僕たちが帰ってきた時にはもういなかったけど」
マイケルがミートパイをつまみながら答えた。
ナマエは順番に思い出そうとした。
朝、起きて朝露を取りに行った。ジニーとぶつかって、日記を拾った。そのあと、ハリーとナメクジを吐いているロン、ハーマイオニーとハグリッドの小屋に行って、アンソニーたちと昼ごはんを食べて、それから……。
トム・リドルの日記……!
ナマエは思わず自分のローブをまさぐった。──あった。日記がポケットの中に収まっていた。
ナマエはほっとした。
「それ、まだ持ってたの」アンソニーが言った。
「あ、ああ……忘れてた……」
ナマエは、日記とのやり取りを思い出そうとしたが、なぜかひどく疲れていて、それ以上考え事をする気が起きなかった。