秘密の部屋
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「──ミョウジ、その棚に我輩が指示した材料はないはずだが?」
「あっ!?そう……なんですね」
ハッフルパフと合同の魔法薬学の授業中、ナマエは授業に使うイモリの尾を探すフリをして、アニメーガスの魔法薬の材料を物色していた。
しかし、スネイプに咎められたためなにも手に入れることはできなかった。
ナマエはそそくさと席に戻り、どうしたものかと思案した。授業中にスネイプをどうにか気を逸らして、その隙に手に入れるか、はたまた忍び込むか……いや、いっそ自分で採集すれば──。
「何を探してたの?」アンソニーがナマエに尋ねた。
「ドクロメンガタスズメの繭──」
ナマエは考え込んでいたため、無意識に答えてしまってから、はっと口に手を当てた。
「……何に使うかは聞かないけど、あんまりマイケルを怒らせるようなことはしないでね」
「あぁ、ごめん」
「僕にじゃなくてさ……」
アンソニーは半分呆れたように言った。ナマエはきまりが悪くなって、教科書の魔法薬作りの手順を熟読するフリをして、マイケルとテリーの席をちらりと盗み見た。
テリーはたまにこちらを見ていたが、マイケルは頑なに視線を大鍋から離さなかった。
本日最後の授業は「闇の魔術に対する防衛術」だった。
「パーパティが言ってたけど、グリフィンドールの授業で、ロックハートがピクシー妖精をぶちまけたまま出て行ったらしいわ」
教室へ移動中に、パドマが双子のパーバティから伝え聞いた話を教えてくれた。
「パドマもロックハートがイケてると思う?」
ナマエはなんとなくハーマイオニーの反応を思い出して聞いた。
「『も』って何?」
「え、いや……女子のファンが多いから」
「ふうん。まあ、そうね。顔はハンサムだと思うわ」
「俺より?」
「あなたって意外と自惚れてるのね」
パドマは笑った。
「でも、ロックハートの方がずっと自惚れてるわ。だって、本と実物が違いすぎるもの」
パドマの言う通りだった。ロックハートの「闇の魔術に対する防衛術」の授業は、むしろ「ギルデロイ・ロックハート学」と言っても過言ではなかった。彼の武勇伝や、彼の好み、彼についての無駄な雑学ばかりを聞かされた。ナマエはもはや、スネイプが防衛術を教えた方がマシなのではないかとすら思った。
授業が終わって、夕食も済ませて、レイブンクローの談話室に戻った。本棚の側のソファに四人で腰掛けて授業の感想やロックハートのまぬけさについて話したが、ナマエが直接マイケルと口を聞くことはなかった。
マイケルと仲直りはしたいが、自分の欲求を抑えることもできない。
──自分の能力を示したいという幼い欲が、ナマエの中にふつふつと煮えていた。
ナマエは一人で先に寝室に戻って、自分のトランクを漁った。空の小瓶を二つ見つけ出して、ベッドに放り投げた。
次に、去年図書館に通うたびに書きつけていた羊皮紙のメモの束を取り出して、それもベッドに投げた。
「…………」
ナマエはベッドに上がり、あぐらをかいてメモを並べて、順番に読み上げた。
「『手順その一、マンドレイクの葉を一ヶ月のあいだ口に含み続ける』……」
ナマエはポケットから薬草学の授業中に拝借したマンドレイクの葉を取り出した。
「『吐き出したり飲み込んだらやり直し』……案外これが一番難しいかもな」
ナマエはマンドレイクの葉を一枚、口に含んだ。その瞬間、葉のえぐみに吐き出しそうになったが、なんとか堪えた。
ナマエはできるだけ葉を口の端っこに寄せて、水差しから水を飲んだ。
「うぇ……俺が悪食でよかったよ」
ナマエは羊皮紙の一番目の手順のところに今日の日付を書き足した。
「あと必要なのは……朝露と、ドクロメンガタスズメの繭……ハグリッドに聞いてみようか。そのへんに生息してるなら自分で探そう」
危うくマンドレイクの葉を飲み込みそうになりながら、ナマエは羊皮紙の束をトランクに戻して、空の小瓶をサイドテーブルに置いた。
談話室に戻るか少し迷ったが、いつもより早くパジャマに着替えてベッドに潜り込んだ。
それから二、三日たつと、マイケルとは動物もどきの話題を一切出さずにだんだんと会話ができる状態になった。アンソニーとテリーも安心したようで、ナマエもほっとした。しかし、再びナマエの企みが話題に上るようならば前回以上の喧嘩は避けられないだろうとわかっていた。
グリフィンドールとの合同授業では、ロンの折れた杖が暴れ回って顰蹙を買っていた。金曜日の午前、「呪文学」の授業中に、杖はロンの手から飛び出し、フリットウィック先生の眉間にまともに当たり、そこが大きく腫れ上がって、痛そうな緑色のこぶを作った。
あれやこれやで、やっと週末になってナマエはほっとした。土曜日の午前中に、ハリーとロンやハーマイオニーと一緒に、ナマエはハグリッドを訪ねる予定だった。ナマエはドクロメンガタスズメについてさりげなくハグリッドに聞く方法を考えながら眠りについた。
土曜日、ナマエはいつもよりも随分早く目を覚ました。動物もどきになるための材料を集めるのだ。口の中に含んだマンドレイクの葉はずいぶん舌に馴染んでいた。窓から見えるピンクと金色の空に、うっすらと朝靄がかかっていた。
ナマエは着替えて、サイドテーブルに置いておいた空き瓶を二つつかみ、ポケットに入れてそっと寝室を出た。
廊下は静かで、朝の冷たい空気でひんやりしていた。
ナマエは湖のほとりで材料の一つの朝露を採集しようと思い、早足で歩いた。
「……し………とき………こ……」
ふと、頭にこだまするような囁き声が聞こえてぴたりと足を止め、辺りを見回した。
──しかし、誰もいない。果たして、こんな朝早くから起きている者が自分の他にいるのだろうか?
ナマエはいぶかしみながらも、再び足を進めようとすると、曲がり角で突然誰かがぶつかってきた。
ぶつかってきた相手はナマエより小さく、反動で地面に転げた。
「うわっ……大丈夫か?」
「え?」
ぶつかってきたのは、なんとジニーだった。
「ああ、ジニーか……前見て走った方がいい」
ナマエは小瓶が割れていないことを確認して、座り込んだままのジニーに手を差し出した。
しかし、ジニーは困惑したような、怯えたような表情でナマエを見た。
「………あたし………?………」
ジニーはナマエの手を取らずに立ち上がって、そのまま逃げるように駆け出した。
取り残されたナマエは呆然とその場に立ちすくんだ。
「なんなんだ……」
ジニーが人見知り気味なことは理解していたが、ナマエはやや傷つきながらひとりごちた。
──それにしても、ジニーはこんな時間に何をしていたんだろう……。
再び歩き出そうとしたナマエは、地面に黒いものが落ちているのを見つけた。黒い革表紙の古いノートのようなものだった。
ナマエはジニーの落とし物かと思ったが、首をかしげた。表紙の文字は消えかけているが、五十年前の物だとわかる。ページをめくると、最初のページに滲んだインクで書かれた名前が読み取れた。
──T・M・リドル──。
「あっ!?そう……なんですね」
ハッフルパフと合同の魔法薬学の授業中、ナマエは授業に使うイモリの尾を探すフリをして、アニメーガスの魔法薬の材料を物色していた。
しかし、スネイプに咎められたためなにも手に入れることはできなかった。
ナマエはそそくさと席に戻り、どうしたものかと思案した。授業中にスネイプをどうにか気を逸らして、その隙に手に入れるか、はたまた忍び込むか……いや、いっそ自分で採集すれば──。
「何を探してたの?」アンソニーがナマエに尋ねた。
「ドクロメンガタスズメの繭──」
ナマエは考え込んでいたため、無意識に答えてしまってから、はっと口に手を当てた。
「……何に使うかは聞かないけど、あんまりマイケルを怒らせるようなことはしないでね」
「あぁ、ごめん」
「僕にじゃなくてさ……」
アンソニーは半分呆れたように言った。ナマエはきまりが悪くなって、教科書の魔法薬作りの手順を熟読するフリをして、マイケルとテリーの席をちらりと盗み見た。
テリーはたまにこちらを見ていたが、マイケルは頑なに視線を大鍋から離さなかった。
本日最後の授業は「闇の魔術に対する防衛術」だった。
「パーパティが言ってたけど、グリフィンドールの授業で、ロックハートがピクシー妖精をぶちまけたまま出て行ったらしいわ」
教室へ移動中に、パドマが双子のパーバティから伝え聞いた話を教えてくれた。
「パドマもロックハートがイケてると思う?」
ナマエはなんとなくハーマイオニーの反応を思い出して聞いた。
「『も』って何?」
「え、いや……女子のファンが多いから」
「ふうん。まあ、そうね。顔はハンサムだと思うわ」
「俺より?」
「あなたって意外と自惚れてるのね」
パドマは笑った。
「でも、ロックハートの方がずっと自惚れてるわ。だって、本と実物が違いすぎるもの」
パドマの言う通りだった。ロックハートの「闇の魔術に対する防衛術」の授業は、むしろ「ギルデロイ・ロックハート学」と言っても過言ではなかった。彼の武勇伝や、彼の好み、彼についての無駄な雑学ばかりを聞かされた。ナマエはもはや、スネイプが防衛術を教えた方がマシなのではないかとすら思った。
授業が終わって、夕食も済ませて、レイブンクローの談話室に戻った。本棚の側のソファに四人で腰掛けて授業の感想やロックハートのまぬけさについて話したが、ナマエが直接マイケルと口を聞くことはなかった。
マイケルと仲直りはしたいが、自分の欲求を抑えることもできない。
──自分の能力を示したいという幼い欲が、ナマエの中にふつふつと煮えていた。
ナマエは一人で先に寝室に戻って、自分のトランクを漁った。空の小瓶を二つ見つけ出して、ベッドに放り投げた。
次に、去年図書館に通うたびに書きつけていた羊皮紙のメモの束を取り出して、それもベッドに投げた。
「…………」
ナマエはベッドに上がり、あぐらをかいてメモを並べて、順番に読み上げた。
「『手順その一、マンドレイクの葉を一ヶ月のあいだ口に含み続ける』……」
ナマエはポケットから薬草学の授業中に拝借したマンドレイクの葉を取り出した。
「『吐き出したり飲み込んだらやり直し』……案外これが一番難しいかもな」
ナマエはマンドレイクの葉を一枚、口に含んだ。その瞬間、葉のえぐみに吐き出しそうになったが、なんとか堪えた。
ナマエはできるだけ葉を口の端っこに寄せて、水差しから水を飲んだ。
「うぇ……俺が悪食でよかったよ」
ナマエは羊皮紙の一番目の手順のところに今日の日付を書き足した。
「あと必要なのは……朝露と、ドクロメンガタスズメの繭……ハグリッドに聞いてみようか。そのへんに生息してるなら自分で探そう」
危うくマンドレイクの葉を飲み込みそうになりながら、ナマエは羊皮紙の束をトランクに戻して、空の小瓶をサイドテーブルに置いた。
談話室に戻るか少し迷ったが、いつもより早くパジャマに着替えてベッドに潜り込んだ。
それから二、三日たつと、マイケルとは動物もどきの話題を一切出さずにだんだんと会話ができる状態になった。アンソニーとテリーも安心したようで、ナマエもほっとした。しかし、再びナマエの企みが話題に上るようならば前回以上の喧嘩は避けられないだろうとわかっていた。
グリフィンドールとの合同授業では、ロンの折れた杖が暴れ回って顰蹙を買っていた。金曜日の午前、「呪文学」の授業中に、杖はロンの手から飛び出し、フリットウィック先生の眉間にまともに当たり、そこが大きく腫れ上がって、痛そうな緑色のこぶを作った。
あれやこれやで、やっと週末になってナマエはほっとした。土曜日の午前中に、ハリーとロンやハーマイオニーと一緒に、ナマエはハグリッドを訪ねる予定だった。ナマエはドクロメンガタスズメについてさりげなくハグリッドに聞く方法を考えながら眠りについた。
土曜日、ナマエはいつもよりも随分早く目を覚ました。動物もどきになるための材料を集めるのだ。口の中に含んだマンドレイクの葉はずいぶん舌に馴染んでいた。窓から見えるピンクと金色の空に、うっすらと朝靄がかかっていた。
ナマエは着替えて、サイドテーブルに置いておいた空き瓶を二つつかみ、ポケットに入れてそっと寝室を出た。
廊下は静かで、朝の冷たい空気でひんやりしていた。
ナマエは湖のほとりで材料の一つの朝露を採集しようと思い、早足で歩いた。
「……し………とき………こ……」
ふと、頭にこだまするような囁き声が聞こえてぴたりと足を止め、辺りを見回した。
──しかし、誰もいない。果たして、こんな朝早くから起きている者が自分の他にいるのだろうか?
ナマエはいぶかしみながらも、再び足を進めようとすると、曲がり角で突然誰かがぶつかってきた。
ぶつかってきた相手はナマエより小さく、反動で地面に転げた。
「うわっ……大丈夫か?」
「え?」
ぶつかってきたのは、なんとジニーだった。
「ああ、ジニーか……前見て走った方がいい」
ナマエは小瓶が割れていないことを確認して、座り込んだままのジニーに手を差し出した。
しかし、ジニーは困惑したような、怯えたような表情でナマエを見た。
「………あたし………?………」
ジニーはナマエの手を取らずに立ち上がって、そのまま逃げるように駆け出した。
取り残されたナマエは呆然とその場に立ちすくんだ。
「なんなんだ……」
ジニーが人見知り気味なことは理解していたが、ナマエはやや傷つきながらひとりごちた。
──それにしても、ジニーはこんな時間に何をしていたんだろう……。
再び歩き出そうとしたナマエは、地面に黒いものが落ちているのを見つけた。黒い革表紙の古いノートのようなものだった。
ナマエはジニーの落とし物かと思ったが、首をかしげた。表紙の文字は消えかけているが、五十年前の物だとわかる。ページをめくると、最初のページに滲んだインクで書かれた名前が読み取れた。
──T・M・リドル──。