秘密の部屋
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残りの夏休み、ナマエは幸福だった。「隠れ穴」での一ヵ月、ロンの部屋に泊まらせてもらった。ベッドが二つしかなかったので、ナマエはハリーと一緒のベッドで寝た。家のあちこちは魔法で補強され、雑然としていたが、こんなに素敵な家は他にないと思った。ロンが妬ましいぐらいだった。ハリーとナマエは完全に同意見で、ロンにこの場所の素晴らしさを自覚させようと熱弁した。
「ナマエはどんなところに住んでるの?どんな暮らし?」
ハリーが尋ねた。
「うーん……ここと真逆だな、なんにもないところ」
ナマエは言葉を探しながら答えた。
「ああでも、飯は美味い。屋敷しもべがいるから」
「屋敷しもべが?!」
ハリーは大声をだしたので、ナマエは眉を上げた。
「……見栄だよ、見栄。裕福な家か、由緒正しい家だって思われたいんだ。屋敷しもべを持っているっていうのはそういうステータスに繋がるんだよ」
「その屋敷しもべ妖精はなんて名前?」
ハリーが身を乗り出した。ナマエは自分の思った反応ではなかったので少し身を引いた。
「え?シノビーだけど……」
「『ドビー』って名前のしもべ妖精を知らない?」
「知らない、どうしたんだ」
ハリーは、マグルのダーズリー一家で暮らす自分の元に『ドビー』という屋敷しもべ妖精が現れて大変だったことを話してくれた。
「『ホグワーツが危険だから戻るな』……そう言ったのか?そのしもべ妖精が?」
「そうだよ。おかげで、バーノンおじさんが僕を部屋に閉じ込めて大変だったんだ」
「僕がフレッドとジョージと救出しにいったんだ。ハリーの部屋なんか、窓に鉄格子まではめられててさ」
ロンが武勇伝を語るように自慢げに言った。
「どこの屋敷しもべ妖精だろうな……」
ナマエは考えたが、シノビー以外の屋敷しもべ妖精に会ったことがなかった。
夏休み最後の夜、ウィーズリー夫人は魔法で豪華な夕食を作ってくれた。
夫人はしきりにナマエの髪を短く切りたがっていたが、ナマエはやんわり断り続けると、最終的にはジニーのように櫛を入れてくれるようになり、少し照れ臭かった。
夜には熱いココアをマグカップでたっぷり飲み、みんな眠りについた。
翌朝、おじさんが魔法をかけた小型のフォード・アングリアに九人の乗客とその荷物とペットたちを詰め込んで、キングスクロス駅に向かった。
皆が大急ぎで駅の構内を駆け抜け、マグルの目には見えない九と四分の三番線のホームに向かった。
「パーシー、先に」おばさんが心配そうに、頭上の大時計を見ながら言った。
障壁を何気なく通り抜けて消えるのに、あと五分しかないことを針が示していた。パーシーはきびきびと前進し、消えた。ウィーズリーおじさんが次で、フレッドとジョージがそれに続いた。
「わたしがジニーを連れていきますからね。すぐにいらっしゃいよ」
ジニーの手を引っ張りながらおばさんはナマエとハリーとロンにそう言うと、行ってしまった。瞬きする間に二人とも消えた。
「じゃ、行くか」
ナマエは先頭に立って九番線と十番線の間にある、固い柵を通り抜けた。
九と四分の三番線には大勢の家族が汽車の中の子供たちに手を振り、すでに汽車からはもくもくと白い蒸気が上がっていた。
「空いてる席があるといいな……なあ?」
ナマエはハリーとロンを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
「……ハリー?ロン?」
「早くしろ!汽車が出るぞ!」フレッドとジョージが言った。
ナマエは急いで汽車に乗り込んだが、窓から何度も顔を出してホームからハリーたちを探そうとした。
ホームには生徒の家族しかいなかった。
生徒たちは皆汽車に乗り込み、ホグワーツ特急は汽笛を上げて走り出した。
「ハリーとロンがいない!」
ナマエはハーマイオニーとジニーが座っていたコンパートメントに飛び込んで挨拶も無しに叫んだ。
「まさか!」
「だって、俺のすぐ後ろにいたのに……誰も入ってこなかった」
「ゲートに間に合わなかったのかしら」
「そんなはず──」
「おやおや、ボーイフレンドがいなくて寂しいのかい?『お嬢さん』」
マルフォイだった。ハリーが汽車に乗り損ねたと聞いてかなり嬉しそうだ。
「ああ、俺のダーリンがどこにいるか知らないなら出てってくれ」
ナマエはうんざりしてコンパートメントの戸を閉めた。
マルフォイはそれも気にせず、ハリーとロンの不在をそこかしこに吹聴して歩いていった。
「ナマエって……」
ハーマイオニーは何か言いたそうにナマエの顔をじっと見た。
「何?」
ナマエはその目線が少し居心地悪くて前髪を撫で付けた。心なしかジニーもいつもよりぎこちない。
「いえ、なんでも。……今までに汽車に遅刻した人だっているはずよ、ね?」
ハーマイオニーは言いかけた言葉を飲み込んで話題を変えた。ナマエは肩をすくめた。
しかし、ハーマイオニーはやはりナマエを、心なしか頬を染めてじっと見た。ジニーは真っ赤になっていた。
ナマエは気まずくてウィーズリーおばさんに持たせてもらったサンドイッチを取り出した。
ナマエがそれを頬張っている間も、ハーマイオニーは何か言いたげにうずうずしていた。
「……ハーマイオニー、なあに見つめてるんだ?」
ナマエは冗談ぽく探りを入れた。
「じゃあ、聞くけど…………あなた、ハリーと付き合ってるの?」
ナマエは驚いて咳き込み、サンドイッチを膝にぶちまけた。
「ゲホッ、ゴッ、っ………はあ?!そんなわけないだろ、なんだ?マルフォイがまだ何か言ってるのか」
ナマエの惨状をよそに、ジニーはなぜかほっとしたように笑った。
「日刊預言者新聞に載ってたわ」
ハーマイオニーが新聞を開いて、読み上げた。
「『──先日、書店で開かれたギルデロイ・ロックハート氏のサイン会は大盛況で、あの生き残った男の子、ハリー・ポッターもガールフレンドと共に応援に駆けつけた──』……少し前に発刊された記事よ。マルフォイが丁寧に配り歩いてたわ」
読み終わると、掲載された写真を見せてくれた。
写真の中で、ロックハートは輝く笑みでハリーとナマエを両腕でがっちり掴んでいた。
ハリーはぎこちなく笑い、ナマエは顔を逸らしたり、ハリーを見て笑いかけたりしていた。
ナマエはうめいてから、はっと顔をあげた。
「……俺の名前は載ってないよな?名乗ってないし」
「ええ、そうね。載っていなかったわ。どうかしたの?」
「親父は俺が目立つのを望まないから、面倒にならないといいなって……」
ハーマイオニーが今度は心配げにナマエを見つめたので、ナマエは話題を変えた。
「それよりハリーとロンだけど」
ナマエはバラバラになったサンドイッチを拾い集めた。
「ハリーが……もぐ、『ドビー』っていう……屋敷ひもべ妖精に、ホグワーフは……ホグワーツは危険だから帰るなって言われたらしいんだ」
ナマエはサンドイッチだったものを口に放り込みながら話した。
「誰?ドビーって」
「しあない、ゴホッ……誰か、飲み物ない?」
ナマエがサンドイッチを喉に詰まらせていると、ジニーがわたわたとナマエに水を差し出した。ハーマイオニーはため息をついた。
「お行儀が悪いわよ」
ハーマイオニーは厳しい目つきで杖を振って、ナマエの膝の上のパンくずを片付けた。
汽車がホグズミード駅に到着したが、やはりハリーもロンもいなかった。
ジニーはハグリッドの引率で一年生の群れに加わり、ナマエもハーマイオニーと別れて、レイブンクローのマイケルたちと一緒に馬車でホグワーツに向かった。
大広間に到着しても、組分けの儀式が始まってもハリーとロンは現れなかった。その代わりに、誰彼ともなく噂が流れてきた。
「ハリー・ポッターとロナルド・ウィーズリーが空飛ぶ車で墜落して退校処分になったって」
「ナマエはどんなところに住んでるの?どんな暮らし?」
ハリーが尋ねた。
「うーん……ここと真逆だな、なんにもないところ」
ナマエは言葉を探しながら答えた。
「ああでも、飯は美味い。屋敷しもべがいるから」
「屋敷しもべが?!」
ハリーは大声をだしたので、ナマエは眉を上げた。
「……見栄だよ、見栄。裕福な家か、由緒正しい家だって思われたいんだ。屋敷しもべを持っているっていうのはそういうステータスに繋がるんだよ」
「その屋敷しもべ妖精はなんて名前?」
ハリーが身を乗り出した。ナマエは自分の思った反応ではなかったので少し身を引いた。
「え?シノビーだけど……」
「『ドビー』って名前のしもべ妖精を知らない?」
「知らない、どうしたんだ」
ハリーは、マグルのダーズリー一家で暮らす自分の元に『ドビー』という屋敷しもべ妖精が現れて大変だったことを話してくれた。
「『ホグワーツが危険だから戻るな』……そう言ったのか?そのしもべ妖精が?」
「そうだよ。おかげで、バーノンおじさんが僕を部屋に閉じ込めて大変だったんだ」
「僕がフレッドとジョージと救出しにいったんだ。ハリーの部屋なんか、窓に鉄格子まではめられててさ」
ロンが武勇伝を語るように自慢げに言った。
「どこの屋敷しもべ妖精だろうな……」
ナマエは考えたが、シノビー以外の屋敷しもべ妖精に会ったことがなかった。
夏休み最後の夜、ウィーズリー夫人は魔法で豪華な夕食を作ってくれた。
夫人はしきりにナマエの髪を短く切りたがっていたが、ナマエはやんわり断り続けると、最終的にはジニーのように櫛を入れてくれるようになり、少し照れ臭かった。
夜には熱いココアをマグカップでたっぷり飲み、みんな眠りについた。
翌朝、おじさんが魔法をかけた小型のフォード・アングリアに九人の乗客とその荷物とペットたちを詰め込んで、キングスクロス駅に向かった。
皆が大急ぎで駅の構内を駆け抜け、マグルの目には見えない九と四分の三番線のホームに向かった。
「パーシー、先に」おばさんが心配そうに、頭上の大時計を見ながら言った。
障壁を何気なく通り抜けて消えるのに、あと五分しかないことを針が示していた。パーシーはきびきびと前進し、消えた。ウィーズリーおじさんが次で、フレッドとジョージがそれに続いた。
「わたしがジニーを連れていきますからね。すぐにいらっしゃいよ」
ジニーの手を引っ張りながらおばさんはナマエとハリーとロンにそう言うと、行ってしまった。瞬きする間に二人とも消えた。
「じゃ、行くか」
ナマエは先頭に立って九番線と十番線の間にある、固い柵を通り抜けた。
九と四分の三番線には大勢の家族が汽車の中の子供たちに手を振り、すでに汽車からはもくもくと白い蒸気が上がっていた。
「空いてる席があるといいな……なあ?」
ナマエはハリーとロンを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
「……ハリー?ロン?」
「早くしろ!汽車が出るぞ!」フレッドとジョージが言った。
ナマエは急いで汽車に乗り込んだが、窓から何度も顔を出してホームからハリーたちを探そうとした。
ホームには生徒の家族しかいなかった。
生徒たちは皆汽車に乗り込み、ホグワーツ特急は汽笛を上げて走り出した。
「ハリーとロンがいない!」
ナマエはハーマイオニーとジニーが座っていたコンパートメントに飛び込んで挨拶も無しに叫んだ。
「まさか!」
「だって、俺のすぐ後ろにいたのに……誰も入ってこなかった」
「ゲートに間に合わなかったのかしら」
「そんなはず──」
「おやおや、ボーイフレンドがいなくて寂しいのかい?『お嬢さん』」
マルフォイだった。ハリーが汽車に乗り損ねたと聞いてかなり嬉しそうだ。
「ああ、俺のダーリンがどこにいるか知らないなら出てってくれ」
ナマエはうんざりしてコンパートメントの戸を閉めた。
マルフォイはそれも気にせず、ハリーとロンの不在をそこかしこに吹聴して歩いていった。
「ナマエって……」
ハーマイオニーは何か言いたそうにナマエの顔をじっと見た。
「何?」
ナマエはその目線が少し居心地悪くて前髪を撫で付けた。心なしかジニーもいつもよりぎこちない。
「いえ、なんでも。……今までに汽車に遅刻した人だっているはずよ、ね?」
ハーマイオニーは言いかけた言葉を飲み込んで話題を変えた。ナマエは肩をすくめた。
しかし、ハーマイオニーはやはりナマエを、心なしか頬を染めてじっと見た。ジニーは真っ赤になっていた。
ナマエは気まずくてウィーズリーおばさんに持たせてもらったサンドイッチを取り出した。
ナマエがそれを頬張っている間も、ハーマイオニーは何か言いたげにうずうずしていた。
「……ハーマイオニー、なあに見つめてるんだ?」
ナマエは冗談ぽく探りを入れた。
「じゃあ、聞くけど…………あなた、ハリーと付き合ってるの?」
ナマエは驚いて咳き込み、サンドイッチを膝にぶちまけた。
「ゲホッ、ゴッ、っ………はあ?!そんなわけないだろ、なんだ?マルフォイがまだ何か言ってるのか」
ナマエの惨状をよそに、ジニーはなぜかほっとしたように笑った。
「日刊預言者新聞に載ってたわ」
ハーマイオニーが新聞を開いて、読み上げた。
「『──先日、書店で開かれたギルデロイ・ロックハート氏のサイン会は大盛況で、あの生き残った男の子、ハリー・ポッターもガールフレンドと共に応援に駆けつけた──』……少し前に発刊された記事よ。マルフォイが丁寧に配り歩いてたわ」
読み終わると、掲載された写真を見せてくれた。
写真の中で、ロックハートは輝く笑みでハリーとナマエを両腕でがっちり掴んでいた。
ハリーはぎこちなく笑い、ナマエは顔を逸らしたり、ハリーを見て笑いかけたりしていた。
ナマエはうめいてから、はっと顔をあげた。
「……俺の名前は載ってないよな?名乗ってないし」
「ええ、そうね。載っていなかったわ。どうかしたの?」
「親父は俺が目立つのを望まないから、面倒にならないといいなって……」
ハーマイオニーが今度は心配げにナマエを見つめたので、ナマエは話題を変えた。
「それよりハリーとロンだけど」
ナマエはバラバラになったサンドイッチを拾い集めた。
「ハリーが……もぐ、『ドビー』っていう……屋敷ひもべ妖精に、ホグワーフは……ホグワーツは危険だから帰るなって言われたらしいんだ」
ナマエはサンドイッチだったものを口に放り込みながら話した。
「誰?ドビーって」
「しあない、ゴホッ……誰か、飲み物ない?」
ナマエがサンドイッチを喉に詰まらせていると、ジニーがわたわたとナマエに水を差し出した。ハーマイオニーはため息をついた。
「お行儀が悪いわよ」
ハーマイオニーは厳しい目つきで杖を振って、ナマエの膝の上のパンくずを片付けた。
汽車がホグズミード駅に到着したが、やはりハリーもロンもいなかった。
ジニーはハグリッドの引率で一年生の群れに加わり、ナマエもハーマイオニーと別れて、レイブンクローのマイケルたちと一緒に馬車でホグワーツに向かった。
大広間に到着しても、組分けの儀式が始まってもハリーとロンは現れなかった。その代わりに、誰彼ともなく噂が流れてきた。
「ハリー・ポッターとロナルド・ウィーズリーが空飛ぶ車で墜落して退校処分になったって」