秘密の部屋
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「『決闘クラブ』を始めるんだって!」
テリーがナマエたちに意気揚々と知らせに来た。
「今夜が第一回目だ。もちろん行くよな?」
ナマエはあまり乗り気でなかったが、マイケルもアンソニーも行くそうだったので、ついていくことにした。
大広間の食事用の長いテーブルは取り払われ、一方の壁に沿って、金色の舞台が出現していた。何千本もの蝋燭が宙を漂い、舞台を照らしている。天井は、何度も見慣れたビロードのような黒で、その下には、おのおの杖を持ち、興奮した面持ちで、ほとんど学校中の生徒が集まっているようだった。
「フリットウィック先生って、若い時、決闘チャンピオンだったんだってさ」
テリーがそう教えてくれたので、顧問はフリットウィック先生だろうと思っていたが、違った。
ギルデロイ・ロックハートが舞台に登場したのだ。
きらびやかに深紫のローブをまとい、後ろに、誰あろう、いつもの黒装束のスネイプを従えている。
「みなさん、集まって。さあ、集まって。みなさん、私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?結構、結構!」
観衆に向かって手を振った。
「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」ロックハートは満面の笑みを振りまいた。
「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずか、ご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに、勇敢にも、手伝ってくださるというご了承をいただきました。さてさて、お若いみなさんにご心配をおかけしたくはありません。──私が彼と手合わせしたあとでも、みなさんの『魔法薬』の先生は、ちゃんと存在します。ご心配めさるな!」
「相討ちで、両方やられっちまえばいいと思わないか?」
マイケルがひそひそ声で言った。
ロックハートとスネイプは向き合って一礼した。それから二人とも杖を剣のように前に突き出して構えた。
「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています」
ロックハートはしーんとした観衆に向かって説明した。
「三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」
「一、二、三──」
二人とも杖を肩より高く振り上げた。スネイプが叫んだ。
「エクスペリアームス!武器よ去れ!」
目も眩むような紅の閃光が走ったかと思うと、ロックハートは舞台から吹っ飛び、後ろ向きに宙を飛び、壁に激突し、壁伝いにズルズルと滑り落ちて、床に無様に大の字になった。マルフォイや数人のスリザリン生が歓声をあげた。
女子生徒は悲痛な声をあげた。ロックハートはふらふら立ち上がった。帽子は吹っ飛び、カールした髪が逆立っていた。
「レイブンクローの恥だな、あいつは」
マイケルがため息をついた。ロックハートはレイブンクロー出身らしかった。
「さあ、みんなわかったでしょうね!」
よろめきながら壇上に戻ったロックハートが言った。
「あれが、『武装解除の術』です。──ご覧のとおり、私は杖を失ったわけです。あぁ、ミス・ブラウン、ありがとう。スネイプ先生、たしかに、生徒にあの術を見せようとしたのは、すばらしいお考えです。しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかが、あまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せたほうが、教育的によいと思いましてね……」
スネイプは殺気立っていた。ロックハートもそれに気づいたらしく、咳払いをした。
「さあ、生徒諸君!だれか、舞台の上にどうぞ!」
「マルフォイとポッターはどうかね?」
スネイプは口元を歪めて笑った。
「それは名案!」
ロックハートは、ハリーとマルフォイに大広間の真ん中に来るよう手招きした。他の生徒たちは下がって二人のために空間をあけた。
ロックハートは、陽気にハリーの肩をポンと叩き、「ハリー、私がやったようにやるんだよ!」と言った。
ハリーは困惑した顔で頷いた。ロックハートは呪文を喰らって吹き飛ばされただけだったからだ。
号令がかかった。マルフォイは素早く杖を振り上げ、「サーペンソーティア!ヘビ出よ!」と大声で怒鳴った。
マルフォイの杖の先が炸裂した。その先から、長い黒ヘビがニョロニョロと出てきたのを見て、生徒たちはぎょっとした。
ヘビは二人の間の床にドスンと落ち、鎌首をもたげて攻撃の態勢を取った。周りの生徒は悲鳴をあげ、さーっと後ずさりした。
「動くな、ポッター」
スネイプが悠々と言った。ハリーが身動きもできず、怒ったヘビと、目を見合わせて立ちすくんでいる光景を、スネイプが楽しんでいるのがはっきりわかる。
「我輩が追い払ってやろう……」
「私にお任せあれ!」ロックハートが叫んだ。
ヘビに向かって杖を振り回すと、バーンと大きな音がして、ヘビは消え去るどころか二、三メートル宙を飛び、ビシャッと大きな音をたててまた床に落ちてきた。挑発され、怒り狂ってシューシューと、ヘビはジャスティン・フィンチ‐フレッチリーめがけて滑り寄り、再び鎌首をもたげ、牙をむき出して攻撃の構えを取った。
──驚くべきことが起こった。
『彼から離れろ』
冷たい囁き声が響いた。ハリーが、ヘビに命令したのだ。
ヘビは、まるで庭の水撒き用の太いホースのようにおとなしくなり、床に平たく丸まり、従順にハリーを見上げた。
「いったい、何を悪ふざけしてるんだ?ヘビをけしかけようとするなんて!」ジャスティンが叫んだ。
「──違う!ハリーはヘビに、あんたに近づくなって、そう言ったんだ」
突然ナマエが割って入って訂正すると、大広間がしんとした。
ハリーだけは、安心したようにナマエの方を見た。しかし、ジャスティンは声を荒げた。
「きみ、なんでわかるんだ?でまかせを言うな!」
「でまかせじゃない!蛇語は抑揚が無いから、感情がわかりづらいだけ──」
「おいナマエっ!」
マイケルがナマエの肩をぐいと掴んで遮った。ナマエにはマイケルの言いたいことがわかったが、言い返した。
「わかってるよ、でも本当なんだ!」
「ナマエっ!!」
アンソニーとテリーもナマエを止めようとした。しかし、ナマエは反論した。
「友達を庇うなってのかっ?」
蛇の言葉が分かる。それが何を意味するのか、ナマエはわかっていた。自分がスリザリンの継承者だと叫んでいるようなものだ。
しかし、ナマエは最近の自分の異常な状態を、一連の事件に結びつけて自分を疑っていた。自分が、この自分が無意識に、生徒を襲っているのではないか?──それなのに、ハリーが疑われている。濡れ衣だ。自分のせいだ。
そう考えると、ナマエは耐えられなかった。
しかし、それ以上ナマエが何か言う前に、ジャスティンはくるりと背を向け、怒って大広間から出ていってしまった。
スネイプが進み出て杖を振り、ヘビは、ポッと黒い煙を上げて消え去った。スネイプも、鋭く探るような目つきでナマエとハリーを見ている。周り中がヒソヒソと、何やら不吉な話をし始めた。
ハリーの表情は困惑だった。ハリーはパーセルタングの意味するところを知らないのかもしれないと、ナマエはようやく思い至った。
「ナマエ……」
ハリーが説明を求めてナマエを見たが、ロンがハリーのローブの袖を引っ張った。ロンとナマエは目配せして、ナマエは頷いた。
ロンはハリーとハーマイオニーを連れてさっと大広間を出た。人垣が割れるように三人を避けた。
みんながみんな、ハリーを継承者だと疑った。ナマエはハリーを庇うために、蛇語がわかると出まかせを言ったのだと思われているようだった。
生徒の中には、今更ながら、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店でのハリーとナマエのスキャンダルを持ち出して、ナマエがハリーを庇う理由がまことしやかに囁くものもいた。
──数日後、また生徒が襲われた。事もあろうに、ジャスティンと「ほとんど首無しニック」が廊下で石になっていた。そして、現場には──ハリーがいた。
学校中の生徒はハリーを見ると、まるで凶悪な怪物であるかのようにさーっと避けた。
ナマエは逆に、他の生徒がいると自分が何かしでかすような気がして、できるだけ一人になるようになった。同室のマイケルたちは心配したが、そっとしておいてくれたので、ナマエはありがたかった。
ナマエはやはり、ジャスティンが襲われた日の記憶がなかった。ナマエの服には何故か、見覚えのない鶏の羽のようなものがついていた。
ジャスティンと「ほとんど首無しニック」の二人が一度に襲われた事件で、これまでのように単なる不安感ではすまなくなり、パニック状態が起こった。奇妙なことに、一番不安を煽ったのはニックの運命だった。ゴーストにあんなことをするなんて、いったい何者なのかと、寄ると触るとその話だった。もう死んでいる者に危害を加えるなんて、どんな恐ろしい力を持っているんだろう?クリスマスに帰宅しようと、生徒たちが雪崩を打ってホグワーツ特急の予約を入れた。
テリーがナマエたちに意気揚々と知らせに来た。
「今夜が第一回目だ。もちろん行くよな?」
ナマエはあまり乗り気でなかったが、マイケルもアンソニーも行くそうだったので、ついていくことにした。
大広間の食事用の長いテーブルは取り払われ、一方の壁に沿って、金色の舞台が出現していた。何千本もの蝋燭が宙を漂い、舞台を照らしている。天井は、何度も見慣れたビロードのような黒で、その下には、おのおの杖を持ち、興奮した面持ちで、ほとんど学校中の生徒が集まっているようだった。
「フリットウィック先生って、若い時、決闘チャンピオンだったんだってさ」
テリーがそう教えてくれたので、顧問はフリットウィック先生だろうと思っていたが、違った。
ギルデロイ・ロックハートが舞台に登場したのだ。
きらびやかに深紫のローブをまとい、後ろに、誰あろう、いつもの黒装束のスネイプを従えている。
「みなさん、集まって。さあ、集まって。みなさん、私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?結構、結構!」
観衆に向かって手を振った。
「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」ロックハートは満面の笑みを振りまいた。
「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずか、ご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに、勇敢にも、手伝ってくださるというご了承をいただきました。さてさて、お若いみなさんにご心配をおかけしたくはありません。──私が彼と手合わせしたあとでも、みなさんの『魔法薬』の先生は、ちゃんと存在します。ご心配めさるな!」
「相討ちで、両方やられっちまえばいいと思わないか?」
マイケルがひそひそ声で言った。
ロックハートとスネイプは向き合って一礼した。それから二人とも杖を剣のように前に突き出して構えた。
「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています」
ロックハートはしーんとした観衆に向かって説明した。
「三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」
「一、二、三──」
二人とも杖を肩より高く振り上げた。スネイプが叫んだ。
「エクスペリアームス!武器よ去れ!」
目も眩むような紅の閃光が走ったかと思うと、ロックハートは舞台から吹っ飛び、後ろ向きに宙を飛び、壁に激突し、壁伝いにズルズルと滑り落ちて、床に無様に大の字になった。マルフォイや数人のスリザリン生が歓声をあげた。
女子生徒は悲痛な声をあげた。ロックハートはふらふら立ち上がった。帽子は吹っ飛び、カールした髪が逆立っていた。
「レイブンクローの恥だな、あいつは」
マイケルがため息をついた。ロックハートはレイブンクロー出身らしかった。
「さあ、みんなわかったでしょうね!」
よろめきながら壇上に戻ったロックハートが言った。
「あれが、『武装解除の術』です。──ご覧のとおり、私は杖を失ったわけです。あぁ、ミス・ブラウン、ありがとう。スネイプ先生、たしかに、生徒にあの術を見せようとしたのは、すばらしいお考えです。しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかが、あまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せたほうが、教育的によいと思いましてね……」
スネイプは殺気立っていた。ロックハートもそれに気づいたらしく、咳払いをした。
「さあ、生徒諸君!だれか、舞台の上にどうぞ!」
「マルフォイとポッターはどうかね?」
スネイプは口元を歪めて笑った。
「それは名案!」
ロックハートは、ハリーとマルフォイに大広間の真ん中に来るよう手招きした。他の生徒たちは下がって二人のために空間をあけた。
ロックハートは、陽気にハリーの肩をポンと叩き、「ハリー、私がやったようにやるんだよ!」と言った。
ハリーは困惑した顔で頷いた。ロックハートは呪文を喰らって吹き飛ばされただけだったからだ。
号令がかかった。マルフォイは素早く杖を振り上げ、「サーペンソーティア!ヘビ出よ!」と大声で怒鳴った。
マルフォイの杖の先が炸裂した。その先から、長い黒ヘビがニョロニョロと出てきたのを見て、生徒たちはぎょっとした。
ヘビは二人の間の床にドスンと落ち、鎌首をもたげて攻撃の態勢を取った。周りの生徒は悲鳴をあげ、さーっと後ずさりした。
「動くな、ポッター」
スネイプが悠々と言った。ハリーが身動きもできず、怒ったヘビと、目を見合わせて立ちすくんでいる光景を、スネイプが楽しんでいるのがはっきりわかる。
「我輩が追い払ってやろう……」
「私にお任せあれ!」ロックハートが叫んだ。
ヘビに向かって杖を振り回すと、バーンと大きな音がして、ヘビは消え去るどころか二、三メートル宙を飛び、ビシャッと大きな音をたててまた床に落ちてきた。挑発され、怒り狂ってシューシューと、ヘビはジャスティン・フィンチ‐フレッチリーめがけて滑り寄り、再び鎌首をもたげ、牙をむき出して攻撃の構えを取った。
──驚くべきことが起こった。
『彼から離れろ』
冷たい囁き声が響いた。ハリーが、ヘビに命令したのだ。
ヘビは、まるで庭の水撒き用の太いホースのようにおとなしくなり、床に平たく丸まり、従順にハリーを見上げた。
「いったい、何を悪ふざけしてるんだ?ヘビをけしかけようとするなんて!」ジャスティンが叫んだ。
「──違う!ハリーはヘビに、あんたに近づくなって、そう言ったんだ」
突然ナマエが割って入って訂正すると、大広間がしんとした。
ハリーだけは、安心したようにナマエの方を見た。しかし、ジャスティンは声を荒げた。
「きみ、なんでわかるんだ?でまかせを言うな!」
「でまかせじゃない!蛇語は抑揚が無いから、感情がわかりづらいだけ──」
「おいナマエっ!」
マイケルがナマエの肩をぐいと掴んで遮った。ナマエにはマイケルの言いたいことがわかったが、言い返した。
「わかってるよ、でも本当なんだ!」
「ナマエっ!!」
アンソニーとテリーもナマエを止めようとした。しかし、ナマエは反論した。
「友達を庇うなってのかっ?」
蛇の言葉が分かる。それが何を意味するのか、ナマエはわかっていた。自分がスリザリンの継承者だと叫んでいるようなものだ。
しかし、ナマエは最近の自分の異常な状態を、一連の事件に結びつけて自分を疑っていた。自分が、この自分が無意識に、生徒を襲っているのではないか?──それなのに、ハリーが疑われている。濡れ衣だ。自分のせいだ。
そう考えると、ナマエは耐えられなかった。
しかし、それ以上ナマエが何か言う前に、ジャスティンはくるりと背を向け、怒って大広間から出ていってしまった。
スネイプが進み出て杖を振り、ヘビは、ポッと黒い煙を上げて消え去った。スネイプも、鋭く探るような目つきでナマエとハリーを見ている。周り中がヒソヒソと、何やら不吉な話をし始めた。
ハリーの表情は困惑だった。ハリーはパーセルタングの意味するところを知らないのかもしれないと、ナマエはようやく思い至った。
「ナマエ……」
ハリーが説明を求めてナマエを見たが、ロンがハリーのローブの袖を引っ張った。ロンとナマエは目配せして、ナマエは頷いた。
ロンはハリーとハーマイオニーを連れてさっと大広間を出た。人垣が割れるように三人を避けた。
みんながみんな、ハリーを継承者だと疑った。ナマエはハリーを庇うために、蛇語がわかると出まかせを言ったのだと思われているようだった。
生徒の中には、今更ながら、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店でのハリーとナマエのスキャンダルを持ち出して、ナマエがハリーを庇う理由がまことしやかに囁くものもいた。
──数日後、また生徒が襲われた。事もあろうに、ジャスティンと「ほとんど首無しニック」が廊下で石になっていた。そして、現場には──ハリーがいた。
学校中の生徒はハリーを見ると、まるで凶悪な怪物であるかのようにさーっと避けた。
ナマエは逆に、他の生徒がいると自分が何かしでかすような気がして、できるだけ一人になるようになった。同室のマイケルたちは心配したが、そっとしておいてくれたので、ナマエはありがたかった。
ナマエはやはり、ジャスティンが襲われた日の記憶がなかった。ナマエの服には何故か、見覚えのない鶏の羽のようなものがついていた。
ジャスティンと「ほとんど首無しニック」の二人が一度に襲われた事件で、これまでのように単なる不安感ではすまなくなり、パニック状態が起こった。奇妙なことに、一番不安を煽ったのはニックの運命だった。ゴーストにあんなことをするなんて、いったい何者なのかと、寄ると触るとその話だった。もう死んでいる者に危害を加えるなんて、どんな恐ろしい力を持っているんだろう?クリスマスに帰宅しようと、生徒たちが雪崩を打ってホグワーツ特急の予約を入れた。