秘密の部屋
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土曜日の朝、ナマエは眠っていたはずなのに、ひどく疲れた状態で目を覚ました。ナマエは自分でも驚くほどやつれていた。動物もどきの儀式はそんなに魔力を使うものなのかと、ナマエは大きくため息をついた。
記憶が曖昧になることも多くなり、ナマエは考えた末、マンドレイクの葉を口に含むのをやめた。
ちょうどそう決めて、くずかごにペっと葉を吐き出した時に、マイケルが現れた。
「ナマエ、まだ寝てたのか……お前本当に顔色が悪いぞ」
「ああ……もう大丈夫だ。多分」
「まさか、まだ動物もどきになろうとしてるんじゃないだろうな?」
マイケルが疑わしそうにナマエを見つめたので、ナマエはどきりとした。
「もう、諦めたよ。本当に。もうちょっと成長してからにする」
ナマエは弱く笑った。「ならいいけど」とマイケルは頭をかいた。
「ほら、着替えて。大丈夫なら競技場に行こうぜ」
この日はグリフィンドールとスリザリンのクィディッチの試合だった。
金に物を言わせたスリザリンが負けることを、スリザリン以外の全員が期待していた。
ナマエはマイケルたちと一緒に、レイブンクロー生が集まっている観客席に座った。
席に着くまでの間に、ナマエは妙な感じがしていた。いつものように、通りすがる顔見知りの生徒に挨拶をすると、少し戸惑うような、むっとしたような表情をされた気がしたのだ。
テリーとマイケル、アンソニーはスリザリンチームが跨っている『ニンバス2001』の速度に目を見張ったり、スリザリンの選手にブーイングしたりで忙しかった。
ナマエはぼうっとハリーの動きを目で追っていた。ハリーは襲いくるブラッジャーを見事な飛翔で避けていた。
しかし、ハリーが何度避けても、ブラッジャーはハリーに磁力で引き寄せられているように、ハリーだけを狙っていた。
「ああ!危ない!ブラッジャーって、ああいうもんなのか?」
ナマエがマイケルに聞いた。
「まさか!絶対何か細工されてる!スリザリンのやつら、とことん卑怯だな!」
マイケルは試合から目を離さずに答えた。
ブラッジャーがついにハリーを捕らえ、肘を強打した。
「うわっ、折れたんじゃないか?」
観客がどよめいた。それでもハリーは片手で飛行し続けている。ナマエは唾を飲んだ。
ハリーはもう片方の手も箒から離した。もはや脚だけで箒を挟み、マルフォイに向かって一直線に飛び、そしてそのまま地面にバシャっと崩れ落ちた。
「ハリー!」
ナマエは咄嗟に席を立って、グラウンドに駆け降りた。ワーワーというどよめきや口笛が聞こえた。ハリーがスニッチを取ったのだ。
ナマエは地面に倒れているハリーに駆け寄ろうとしたが、ロックハートが行く手を阻んだ。
グリフィンドールチームのメンバーも集まってきたが、心配よりも勝利の喜びで笑みが隠せていなかった。フレッドとジョージはいまだにハリーを狙って暴れ狂うブラッジャーをなんとか箱に押し込めようと格闘していた。
ロックハートが翡翠色の袖をたくし上げながら高らかに言った。
「ハリー、心配しなくて大丈夫!私が君の腕を治して差し上げましょう!」
ナマエはぞっとした。
「やめて!」
「待って、先生!」
ハリーとナマエは同時に叫んだが、遅かった。
ナマエは頭を抱えた。ハリーは、どうしてもっと早く来てくれなかったのかと、ナマエに目で訴えていた。
「あっ」ロックハートの声だ。
「そう。まあね。時にはこんなことも起こりますね。でも、要するにもう骨は折れていない。それが肝心だ。それじゃ、ハリー、医務室まで気をつけて歩いていきなさい。──あっ、ミョウジ君、付き添っていってくれるかな?──マダム・ポンフリーが、その、少し君を……あー、きちんとしてくれるでしょう」
ハリーが立ち上がると、全員が息を飲んだ。ハリーのローブの端から突き出していたのは、肌色の分厚いゴムの手袋のようなものだった。ロックハートはハリーの腕の骨を治したのではない。骨を抜き取ってしまったのだ。
ナマエは、ロンとハーマイオニーと一緒にハリーを医務室に連れて行った。マダム・ポンフリーはお冠だった。
「まっすぐにわたしのところに来るべきでした!今夜はここに泊まらないと……」
マダム・ポンフリーは恐い顔でそう言うと、パジャマをハリーのほうに放ってよこした。
ハリーがナマエとロンの手を借りてパジャマに着替える間、ハーマイオニーはベッドの周りに張られたカーテンの外で待った。
骨なしのゴムのような腕を袖に通すのに、かなり時間がかかった。それに、ロンはナマエの目を全く見ようとしなかった。
「今夜は辛いですよ」
ビーカーになみなみと湯気の立つ薬を注ぎ、ハリーにそれを渡しながら、マダム・ポンフリーが言った。
マダム・ポンフリーは、「あんな危険なスポーツ」とか、「能なしの先生」とか、文句を言いながら出ていった。
ハリーは咳込んだり、咽せたりしながら薬と格闘した。
「『スケレ・グロ』、骨生え薬だな」
ナマエはハリーが水を飲むのを手伝いながら、薬を見て言った。
ロンがナマエを睨んだ。
「君、今更どうしたんだよ。えっ?絶命日パーティにも来なかったじゃないか」
「えっ?俺、行かなかったのか?」
一瞬、全員がぽかんとした。ナマエは何を言っていいやらわからず、口をつぐんだ。
──自分は一体、ハロウィーンの日どこで何をしていたんだ?なぜ、気がついたら女子トイレにいたんだ?ナマエは左手から滴る血と、壁の赤い文字を思い出していた。
ハーマイオニーがナマエの顔を心配そうに覗き込んだ。
「ナマエ、あなた……ここのところ体調が悪かったんじゃない?今も顔色が悪いし──女の子はみんな心配していたわ。あなたの様子が変だって」
ナマエはきょとんとして聞き返した。
「たしかに調子は良くないけど……あんた以外に、どの女の子が心配してくれてるんだ?」
「知らなかったの?あなたって、結構人気があるのよ。でも最近は、なんだか暗いし、挨拶もしてくれないことがあるわ」
「そうだっけ……」
ナマエは、なんとなくよそよそしい態度の生徒たちを思い出した。自分で無視をしておいて馴れ馴れしく挨拶をしたから、あんな態度だったというなら、合点がいく。
「そうさ!」
ロンが怒ったように大声を出したのでナマエはびっくりして後ずさった。
「ジニーが言ってたぞ!君に無視されたって」
「ジニーが?俺に?」
ナマエはますますわけがわからなかった。記憶の中で、ナマエは一度もジニーから話しかけられたことはなかった。
──もし、あの引っ込み思案のジニーが自分に声をかけたなら、きっと勇気を振り絞ったに違いない。そう思うと、胸が痛かった。
「それは……謝らないと」
ナマエが困惑していると、ハリーが口を開いた。
「僕……少しだけ、もしかしたら君が……君も僕のことをスリザリンの継承者だと思って避けてるのかと思ってた」
「まさか!」
ナマエは反射的に大きな声を出してしまい、マダム・ポンフリーを振り返った。幸い、医務室から出て行ったことを思い出した。
ナマエはハリーの顔を振り返って、力強く言った。
「俺、絶対にそうは思ってない。だって、ハリー……もし、万が一あんたが継承者なら──マルフォイのやつを、いの一番に襲ってくれるだろ?」
ロンは思わずぷっと吹き出し、ハーマイオニーは「冗談でもそんなこと言っちゃだめよ」と、顔を顰めた。
ハリーとナマエも、にやっと笑った。
その時、医務室のドアがパッと開き、泥んこのグリフィンドール選手全員がハリーの見舞いにやってきた。
「じゃあ、俺は行くよ。またな」
ナマエはハリーたちにそう言って、医務室を後にした。
ナマエはレイブンクローの寮に歩きながら考えを巡らせた。
自分の記憶がない間の、自分の行動を振り返る必要がある。
「なあ、俺って最近、何かおかしいことあるか?」
ナマエは、談話室の本棚の前で、魔法史のレポートを書いているアンソニー、テリー、マイケルに問いかけた。
「その質問がおかしいと思うけど──うん、君は最近変だよ」
アンソニーがレポートの手を止めて、ナマエを見た。マイケルとテリーも顔を上げてナマエを見たので、ナマエは少し緊張した。
「どんなふうに?」
「……たまに人が変わったように冷たい顔をしている。話しかけても聞こえないような時もあるし」
アンソニーが怪訝そうに言うと、マイケルも続いた。
「それに、夕食にあまり来ない。どこに行ってるのか知らないけど、自覚がないなんてこと、ないよな?」
ナマエの心臓がバクバクと激しく鳴った。自分は気でも狂ったのだろうか。動物もどきの儀式は、マイケルの言うようにこんなに危険だったのか?
ナマエは答えあぐねて、眉間をおさえた。
「何か困ってるなら聞くよ」
アンソニーが言った。ナマエは小さく「ありがとう」と言った。
「でも、今日は……先に休む」
ナマエはそう言って寝室へ向かった。
『……す……殺してやる……殺す時が来た……』
「──はあ、はあ、はあっ………!」
ナマエは汗びっしょりで、レイブンクローの談話室の、ロウェナ・レイブンクローの像の前にしゃがみ込んでいた。
またしても、ナマエは身に覚えのない場所にいた。直前の記憶は、自分のベッドに倒れ込んだところだった。
──なんでだ、もう……もう、動物もどきの儀式はやめたのに。
ナマエはその場で動けずに、息を整えた。全速力で走ってきた後のようだった。
窓を見ると、真っ黒い山々が見えた。夜明け前だ。
ふと自分のローブのポケットに何か入っているのを感じた。それは、トムの日記だった。
ナマエは、これ以上なにも考えたくなかった。重い足を動かして、寝室への階段を登った。
翌日になると、昨日の晩にコリン・クリービーが襲われ、いまは医務室で石になって横たわっているというニュースが学校中に広まっていた。疑心暗鬼が黒雲のように広がった。
ナマエは恐ろしくなった。ミセス・ノリスが石にされたハロウィーンの日も、コリンが襲われた昨晩も、ナマエは自分の記憶が全くないのだ。
──もしかして、知らない間に自分が襲ったんじゃないのか?そんな疑念がナマエを苦しめた。
テリーは、ナマエがスリザリンの継承者に狙われるのを恐れているのだと思い、「君は純血なんだ、大丈夫だよ」と励ました。
十二月の第二週目に、例年のとおり、先生たちがクリスマス休暇中、学校に残る生徒の名前を調べにきた。はなから帰る気がないナマエとハリーだけでなく、ロン、ハーマイオニー、そしてマルフォイまで残るらしかった。ナマエは、休暇中に同室のアンソニーたちがいなくなってしまうのが少し不安だった。
記憶が曖昧になることも多くなり、ナマエは考えた末、マンドレイクの葉を口に含むのをやめた。
ちょうどそう決めて、くずかごにペっと葉を吐き出した時に、マイケルが現れた。
「ナマエ、まだ寝てたのか……お前本当に顔色が悪いぞ」
「ああ……もう大丈夫だ。多分」
「まさか、まだ動物もどきになろうとしてるんじゃないだろうな?」
マイケルが疑わしそうにナマエを見つめたので、ナマエはどきりとした。
「もう、諦めたよ。本当に。もうちょっと成長してからにする」
ナマエは弱く笑った。「ならいいけど」とマイケルは頭をかいた。
「ほら、着替えて。大丈夫なら競技場に行こうぜ」
この日はグリフィンドールとスリザリンのクィディッチの試合だった。
金に物を言わせたスリザリンが負けることを、スリザリン以外の全員が期待していた。
ナマエはマイケルたちと一緒に、レイブンクロー生が集まっている観客席に座った。
席に着くまでの間に、ナマエは妙な感じがしていた。いつものように、通りすがる顔見知りの生徒に挨拶をすると、少し戸惑うような、むっとしたような表情をされた気がしたのだ。
テリーとマイケル、アンソニーはスリザリンチームが跨っている『ニンバス2001』の速度に目を見張ったり、スリザリンの選手にブーイングしたりで忙しかった。
ナマエはぼうっとハリーの動きを目で追っていた。ハリーは襲いくるブラッジャーを見事な飛翔で避けていた。
しかし、ハリーが何度避けても、ブラッジャーはハリーに磁力で引き寄せられているように、ハリーだけを狙っていた。
「ああ!危ない!ブラッジャーって、ああいうもんなのか?」
ナマエがマイケルに聞いた。
「まさか!絶対何か細工されてる!スリザリンのやつら、とことん卑怯だな!」
マイケルは試合から目を離さずに答えた。
ブラッジャーがついにハリーを捕らえ、肘を強打した。
「うわっ、折れたんじゃないか?」
観客がどよめいた。それでもハリーは片手で飛行し続けている。ナマエは唾を飲んだ。
ハリーはもう片方の手も箒から離した。もはや脚だけで箒を挟み、マルフォイに向かって一直線に飛び、そしてそのまま地面にバシャっと崩れ落ちた。
「ハリー!」
ナマエは咄嗟に席を立って、グラウンドに駆け降りた。ワーワーというどよめきや口笛が聞こえた。ハリーがスニッチを取ったのだ。
ナマエは地面に倒れているハリーに駆け寄ろうとしたが、ロックハートが行く手を阻んだ。
グリフィンドールチームのメンバーも集まってきたが、心配よりも勝利の喜びで笑みが隠せていなかった。フレッドとジョージはいまだにハリーを狙って暴れ狂うブラッジャーをなんとか箱に押し込めようと格闘していた。
ロックハートが翡翠色の袖をたくし上げながら高らかに言った。
「ハリー、心配しなくて大丈夫!私が君の腕を治して差し上げましょう!」
ナマエはぞっとした。
「やめて!」
「待って、先生!」
ハリーとナマエは同時に叫んだが、遅かった。
ナマエは頭を抱えた。ハリーは、どうしてもっと早く来てくれなかったのかと、ナマエに目で訴えていた。
「あっ」ロックハートの声だ。
「そう。まあね。時にはこんなことも起こりますね。でも、要するにもう骨は折れていない。それが肝心だ。それじゃ、ハリー、医務室まで気をつけて歩いていきなさい。──あっ、ミョウジ君、付き添っていってくれるかな?──マダム・ポンフリーが、その、少し君を……あー、きちんとしてくれるでしょう」
ハリーが立ち上がると、全員が息を飲んだ。ハリーのローブの端から突き出していたのは、肌色の分厚いゴムの手袋のようなものだった。ロックハートはハリーの腕の骨を治したのではない。骨を抜き取ってしまったのだ。
ナマエは、ロンとハーマイオニーと一緒にハリーを医務室に連れて行った。マダム・ポンフリーはお冠だった。
「まっすぐにわたしのところに来るべきでした!今夜はここに泊まらないと……」
マダム・ポンフリーは恐い顔でそう言うと、パジャマをハリーのほうに放ってよこした。
ハリーがナマエとロンの手を借りてパジャマに着替える間、ハーマイオニーはベッドの周りに張られたカーテンの外で待った。
骨なしのゴムのような腕を袖に通すのに、かなり時間がかかった。それに、ロンはナマエの目を全く見ようとしなかった。
「今夜は辛いですよ」
ビーカーになみなみと湯気の立つ薬を注ぎ、ハリーにそれを渡しながら、マダム・ポンフリーが言った。
マダム・ポンフリーは、「あんな危険なスポーツ」とか、「能なしの先生」とか、文句を言いながら出ていった。
ハリーは咳込んだり、咽せたりしながら薬と格闘した。
「『スケレ・グロ』、骨生え薬だな」
ナマエはハリーが水を飲むのを手伝いながら、薬を見て言った。
ロンがナマエを睨んだ。
「君、今更どうしたんだよ。えっ?絶命日パーティにも来なかったじゃないか」
「えっ?俺、行かなかったのか?」
一瞬、全員がぽかんとした。ナマエは何を言っていいやらわからず、口をつぐんだ。
──自分は一体、ハロウィーンの日どこで何をしていたんだ?なぜ、気がついたら女子トイレにいたんだ?ナマエは左手から滴る血と、壁の赤い文字を思い出していた。
ハーマイオニーがナマエの顔を心配そうに覗き込んだ。
「ナマエ、あなた……ここのところ体調が悪かったんじゃない?今も顔色が悪いし──女の子はみんな心配していたわ。あなたの様子が変だって」
ナマエはきょとんとして聞き返した。
「たしかに調子は良くないけど……あんた以外に、どの女の子が心配してくれてるんだ?」
「知らなかったの?あなたって、結構人気があるのよ。でも最近は、なんだか暗いし、挨拶もしてくれないことがあるわ」
「そうだっけ……」
ナマエは、なんとなくよそよそしい態度の生徒たちを思い出した。自分で無視をしておいて馴れ馴れしく挨拶をしたから、あんな態度だったというなら、合点がいく。
「そうさ!」
ロンが怒ったように大声を出したのでナマエはびっくりして後ずさった。
「ジニーが言ってたぞ!君に無視されたって」
「ジニーが?俺に?」
ナマエはますますわけがわからなかった。記憶の中で、ナマエは一度もジニーから話しかけられたことはなかった。
──もし、あの引っ込み思案のジニーが自分に声をかけたなら、きっと勇気を振り絞ったに違いない。そう思うと、胸が痛かった。
「それは……謝らないと」
ナマエが困惑していると、ハリーが口を開いた。
「僕……少しだけ、もしかしたら君が……君も僕のことをスリザリンの継承者だと思って避けてるのかと思ってた」
「まさか!」
ナマエは反射的に大きな声を出してしまい、マダム・ポンフリーを振り返った。幸い、医務室から出て行ったことを思い出した。
ナマエはハリーの顔を振り返って、力強く言った。
「俺、絶対にそうは思ってない。だって、ハリー……もし、万が一あんたが継承者なら──マルフォイのやつを、いの一番に襲ってくれるだろ?」
ロンは思わずぷっと吹き出し、ハーマイオニーは「冗談でもそんなこと言っちゃだめよ」と、顔を顰めた。
ハリーとナマエも、にやっと笑った。
その時、医務室のドアがパッと開き、泥んこのグリフィンドール選手全員がハリーの見舞いにやってきた。
「じゃあ、俺は行くよ。またな」
ナマエはハリーたちにそう言って、医務室を後にした。
ナマエはレイブンクローの寮に歩きながら考えを巡らせた。
自分の記憶がない間の、自分の行動を振り返る必要がある。
「なあ、俺って最近、何かおかしいことあるか?」
ナマエは、談話室の本棚の前で、魔法史のレポートを書いているアンソニー、テリー、マイケルに問いかけた。
「その質問がおかしいと思うけど──うん、君は最近変だよ」
アンソニーがレポートの手を止めて、ナマエを見た。マイケルとテリーも顔を上げてナマエを見たので、ナマエは少し緊張した。
「どんなふうに?」
「……たまに人が変わったように冷たい顔をしている。話しかけても聞こえないような時もあるし」
アンソニーが怪訝そうに言うと、マイケルも続いた。
「それに、夕食にあまり来ない。どこに行ってるのか知らないけど、自覚がないなんてこと、ないよな?」
ナマエの心臓がバクバクと激しく鳴った。自分は気でも狂ったのだろうか。動物もどきの儀式は、マイケルの言うようにこんなに危険だったのか?
ナマエは答えあぐねて、眉間をおさえた。
「何か困ってるなら聞くよ」
アンソニーが言った。ナマエは小さく「ありがとう」と言った。
「でも、今日は……先に休む」
ナマエはそう言って寝室へ向かった。
『……す……殺してやる……殺す時が来た……』
「──はあ、はあ、はあっ………!」
ナマエは汗びっしょりで、レイブンクローの談話室の、ロウェナ・レイブンクローの像の前にしゃがみ込んでいた。
またしても、ナマエは身に覚えのない場所にいた。直前の記憶は、自分のベッドに倒れ込んだところだった。
──なんでだ、もう……もう、動物もどきの儀式はやめたのに。
ナマエはその場で動けずに、息を整えた。全速力で走ってきた後のようだった。
窓を見ると、真っ黒い山々が見えた。夜明け前だ。
ふと自分のローブのポケットに何か入っているのを感じた。それは、トムの日記だった。
ナマエは、これ以上なにも考えたくなかった。重い足を動かして、寝室への階段を登った。
翌日になると、昨日の晩にコリン・クリービーが襲われ、いまは医務室で石になって横たわっているというニュースが学校中に広まっていた。疑心暗鬼が黒雲のように広がった。
ナマエは恐ろしくなった。ミセス・ノリスが石にされたハロウィーンの日も、コリンが襲われた昨晩も、ナマエは自分の記憶が全くないのだ。
──もしかして、知らない間に自分が襲ったんじゃないのか?そんな疑念がナマエを苦しめた。
テリーは、ナマエがスリザリンの継承者に狙われるのを恐れているのだと思い、「君は純血なんだ、大丈夫だよ」と励ました。
十二月の第二週目に、例年のとおり、先生たちがクリスマス休暇中、学校に残る生徒の名前を調べにきた。はなから帰る気がないナマエとハリーだけでなく、ロン、ハーマイオニー、そしてマルフォイまで残るらしかった。ナマエは、休暇中に同室のアンソニーたちがいなくなってしまうのが少し不安だった。