賢者の石
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ナマエはそわそわしていた。飛行術の授業が始まるのだ。
魔法族生まれのナマエは、自宅で箒に乗ってみようと試してみたことは何度もあったが、箒と仲良しだとは言えなかった。
「絶対に行きたくない……」
マルフォイは自分の飛行技術やクィディッチの腕前を自慢して回っていたし、チョウは絶対に難しくないと励ましたが、難しいと感じているのは自分だけのようでさらに気が滅入った。
さらに、昨日はグリフィンドールとスリザリンの合同授業で、ハリーが見事な飛翔でクィディッチの選手に大抜擢されたとロンから聞いていた。
ナマエはテリーとマイケルともに項垂れながら校庭に向かった。
芝生に並ぶとすぐに教師のマダム・フーチはガミガミと生徒に命令を飛ばし始めた。
「さあ、早く!箒の横に立って!」
周囲を見渡すと皆緊張した面持ちだった。おそらく経験済みの者は余裕の表情で、ナマエはさらに不安を感じた。
「上がれ!!」
ナマエはマダム・フーチの指示通りに叫んだつもりだったが、箒は勢いよく飛び上がって、ナマエが掴む前に地面にまた転がり落ちた。
「……上がれ!!」
何度やっても、ナマエの箒は弄ぶように掴む直前に落下した。ナマエは小さく舌打ちをした。
その日の授業でナマエは十秒と空中にいることはなかった。こわごわとだが空に浮かぶマイケル、テリー、アンソニーを苦々しげに見つめているだけだった。
ナマエは夕食時にグリフィンドールの机に向かった。ハリーから飛行術のコツを聞こうと藁にもすがる思いだった。
しかし、グリフィンドールの机では、なにやらマルフォイとハリーが火花を散らしていた。
ナマエはゆっくりとマルフォイたちに近づいた。どうやら、マルフォイがハリーに決闘をけしかけているようだった。
「魔法使いの決闘だ。杖だけだ──相手には触れない。どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
マルフォイがせせら笑った。
「なら、俺が介添人をやろう」
ナマエはマルフォイの後ろから声をあげた。
グラップ、ゴイル、マルフォイが驚いて振り返ったが、すぐにいつものにたにた笑いに戻った。
「ああ、お節介のミョウジじゃないか」
「口だけ達者なお前と違ってね」
ナマエは無意識に飛行術の鬱憤を晴らそうとしていた。
マルフォイはクラッブを介添人にするといい、その場を去った。
きょとんとするハリーにロンは魔法使いの決闘のルールを説明した。ロンが「つまり介添人はハリーが死んだらナマエが戦うって意味」というと、ハリーはゴクリと唾を飲み込んだ。
「大丈夫さ、俺が死んだらロンが次の介添人をやるよ」
ナマエがそう言うとロンは笑った。
「ちょっと失礼」
三人が見上げると、ハーマイオニー・グレンジャーが咎めるように顔を顰めていた。
「真夜中にトロフィー室で決闘ですって?絶対にダメよ。グリフィンドールが何点減点されるかわかってるの?まったく、なんて自分勝手なの」
「大きなお世話だよ」
ハリーが言い返した。
「大丈夫さ、ハーマイオニー。もし減点されても、レイブンクローと痛み分けだし」
ナマエはウィンクしたが、ハーマイオニーはむっつりとナマエを睨んだ。
ナマエはその夜、レイブンクロー寮を首尾よく抜け出した。
一人で城を移動していたが、不思議と箒に乗るよりも恐れがなかった。
四階のトロフィー室にはまだ誰もいなかった。
ナマエはトロフィーを眺めながらハリーとマルフォイを待っていた。
そっと扉が開いた。マルフォイだったら不意打ちをかましてくるに違いないとナマエは杖を構えた。
しかし、現れたのはグリフィンドールのハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルだった。
「大所帯だな」
ナマエは困ったように笑った。大人数なら当然、フィルチに見つかる確率が上がる。
その時、隣の部屋で物音がして、全員が飛び上がった。
「どこかこのへんにいるぞ。隠れているに違いない」
フィルチがブツブツ言う声が聞こえる。
「逃げろ、こっちだ」
ハリーは小声で四人に呟いた。しかし、ネビルが恐怖のあまりナマエに抱きつき、ナマエは受け身も取れずに倒れ込んだ。
不運なことに、ナマエはトロフィー棚にぶち当たり、城中に響き渡る大音響を奏でてしまった。
ガッシャーン!!!!!
「逃げろ!!!」
ナマエはネビルを立たせながら声を張り上げた。
五人は全速力で回廊を疾走した。
「だめだ、ミセス・ノリスがついてきてる!」
燭台に照らされた影を見てハリーが言った。
ふと廊下の突き当たりに鍵がかかっている扉が見えた。
「ハーマイオニー、鍵開け呪文を覚えてるかっ?」
ナマエは自分の杖を差し出しながら懇願した。
ハーマイオニーはナマエの杖をひったくって唱えた。
「アロホモラ!」
カチッと鍵が開き、ドアがパッと開いた。五人は折り重なってなだれ込み、急いでドアを閉めた。
フィルチが悪態をつく声が聞こえて、全員がふうと息を撫で下ろした。
しかし、ネビルがナマエの背中をバンバンと叩いていた。
「なんだ、ネビル…………」
その時、全員がこの場所がどこなのか悟った。禁じられた廊下だ。そして同時になぜ禁じられているのかを理解した。三つ頭の犬が、それぞれの目をぎょろりとさせながら牙をちらつかせていた。
「逃げろ!!!!」
ハリーが咄嗟に今入ってきた扉を開け、全員が再び逆方向に倒れ込んだ。
全員が飛ぶように寮へと走り、ナマエはグリフィンドールの四人に何か告げることもなくレイブンクローの西棟へと走った。足手まといになることを恐れたのだ。
ナマエはレイブンクロー寮のドアノッカーの謎をこれまでにない速さで解き、誰もいない談話室に転がり込んだ。
ナマエはできるだけそっと寝床について、弾む息を整えながら思い出していた。
──あの恐ろしい犬の足元には、扉があったような気がする。
魔法族生まれのナマエは、自宅で箒に乗ってみようと試してみたことは何度もあったが、箒と仲良しだとは言えなかった。
「絶対に行きたくない……」
マルフォイは自分の飛行技術やクィディッチの腕前を自慢して回っていたし、チョウは絶対に難しくないと励ましたが、難しいと感じているのは自分だけのようでさらに気が滅入った。
さらに、昨日はグリフィンドールとスリザリンの合同授業で、ハリーが見事な飛翔でクィディッチの選手に大抜擢されたとロンから聞いていた。
ナマエはテリーとマイケルともに項垂れながら校庭に向かった。
芝生に並ぶとすぐに教師のマダム・フーチはガミガミと生徒に命令を飛ばし始めた。
「さあ、早く!箒の横に立って!」
周囲を見渡すと皆緊張した面持ちだった。おそらく経験済みの者は余裕の表情で、ナマエはさらに不安を感じた。
「上がれ!!」
ナマエはマダム・フーチの指示通りに叫んだつもりだったが、箒は勢いよく飛び上がって、ナマエが掴む前に地面にまた転がり落ちた。
「……上がれ!!」
何度やっても、ナマエの箒は弄ぶように掴む直前に落下した。ナマエは小さく舌打ちをした。
その日の授業でナマエは十秒と空中にいることはなかった。こわごわとだが空に浮かぶマイケル、テリー、アンソニーを苦々しげに見つめているだけだった。
ナマエは夕食時にグリフィンドールの机に向かった。ハリーから飛行術のコツを聞こうと藁にもすがる思いだった。
しかし、グリフィンドールの机では、なにやらマルフォイとハリーが火花を散らしていた。
ナマエはゆっくりとマルフォイたちに近づいた。どうやら、マルフォイがハリーに決闘をけしかけているようだった。
「魔法使いの決闘だ。杖だけだ──相手には触れない。どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
マルフォイがせせら笑った。
「なら、俺が介添人をやろう」
ナマエはマルフォイの後ろから声をあげた。
グラップ、ゴイル、マルフォイが驚いて振り返ったが、すぐにいつものにたにた笑いに戻った。
「ああ、お節介のミョウジじゃないか」
「口だけ達者なお前と違ってね」
ナマエは無意識に飛行術の鬱憤を晴らそうとしていた。
マルフォイはクラッブを介添人にするといい、その場を去った。
きょとんとするハリーにロンは魔法使いの決闘のルールを説明した。ロンが「つまり介添人はハリーが死んだらナマエが戦うって意味」というと、ハリーはゴクリと唾を飲み込んだ。
「大丈夫さ、俺が死んだらロンが次の介添人をやるよ」
ナマエがそう言うとロンは笑った。
「ちょっと失礼」
三人が見上げると、ハーマイオニー・グレンジャーが咎めるように顔を顰めていた。
「真夜中にトロフィー室で決闘ですって?絶対にダメよ。グリフィンドールが何点減点されるかわかってるの?まったく、なんて自分勝手なの」
「大きなお世話だよ」
ハリーが言い返した。
「大丈夫さ、ハーマイオニー。もし減点されても、レイブンクローと痛み分けだし」
ナマエはウィンクしたが、ハーマイオニーはむっつりとナマエを睨んだ。
ナマエはその夜、レイブンクロー寮を首尾よく抜け出した。
一人で城を移動していたが、不思議と箒に乗るよりも恐れがなかった。
四階のトロフィー室にはまだ誰もいなかった。
ナマエはトロフィーを眺めながらハリーとマルフォイを待っていた。
そっと扉が開いた。マルフォイだったら不意打ちをかましてくるに違いないとナマエは杖を構えた。
しかし、現れたのはグリフィンドールのハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルだった。
「大所帯だな」
ナマエは困ったように笑った。大人数なら当然、フィルチに見つかる確率が上がる。
その時、隣の部屋で物音がして、全員が飛び上がった。
「どこかこのへんにいるぞ。隠れているに違いない」
フィルチがブツブツ言う声が聞こえる。
「逃げろ、こっちだ」
ハリーは小声で四人に呟いた。しかし、ネビルが恐怖のあまりナマエに抱きつき、ナマエは受け身も取れずに倒れ込んだ。
不運なことに、ナマエはトロフィー棚にぶち当たり、城中に響き渡る大音響を奏でてしまった。
ガッシャーン!!!!!
「逃げろ!!!」
ナマエはネビルを立たせながら声を張り上げた。
五人は全速力で回廊を疾走した。
「だめだ、ミセス・ノリスがついてきてる!」
燭台に照らされた影を見てハリーが言った。
ふと廊下の突き当たりに鍵がかかっている扉が見えた。
「ハーマイオニー、鍵開け呪文を覚えてるかっ?」
ナマエは自分の杖を差し出しながら懇願した。
ハーマイオニーはナマエの杖をひったくって唱えた。
「アロホモラ!」
カチッと鍵が開き、ドアがパッと開いた。五人は折り重なってなだれ込み、急いでドアを閉めた。
フィルチが悪態をつく声が聞こえて、全員がふうと息を撫で下ろした。
しかし、ネビルがナマエの背中をバンバンと叩いていた。
「なんだ、ネビル…………」
その時、全員がこの場所がどこなのか悟った。禁じられた廊下だ。そして同時になぜ禁じられているのかを理解した。三つ頭の犬が、それぞれの目をぎょろりとさせながら牙をちらつかせていた。
「逃げろ!!!!」
ハリーが咄嗟に今入ってきた扉を開け、全員が再び逆方向に倒れ込んだ。
全員が飛ぶように寮へと走り、ナマエはグリフィンドールの四人に何か告げることもなくレイブンクローの西棟へと走った。足手まといになることを恐れたのだ。
ナマエはレイブンクロー寮のドアノッカーの謎をこれまでにない速さで解き、誰もいない談話室に転がり込んだ。
ナマエはできるだけそっと寝床について、弾む息を整えながら思い出していた。
──あの恐ろしい犬の足元には、扉があったような気がする。