賢者の石
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翌日から、ナマエは同室のマイケル・コーナー、テリー・ブート、アンソニー・ゴールドスタインと共に、目まぐるしい日を過ごした。ホグワーツ城は巨大な移動迷路のようで、クラスに辿り着くことだけでもかなりの体力を消耗した。
だいたいの授業は他の寮と合同で行われており、ハリー、ロンと互いに目が合うと手を振ったが、話しかける余裕はなかった。
ナマエを含むレイブンクローの他の生徒は、なるほど勉強熱心だった。授業を移動しながらもテリーは「悪人エメリックと奇人ウリックの年号が合ってるか確認してくれ」とナマエの羊皮紙と自分の羊皮紙を見比べていた。
薬草学、魔法史、呪文学、変身学、闇の魔術に対する防衛術……一通りの授業をこなし、気づけば金曜日の朝になっていた。
大広間で教科書を眺めて朝食を食べながら、ナマエはポツリと言った。
「ハーマイオニー・グレンジャーはなんでレイブンクローじゃないんだろう」
それを聞いてマリエッタはフンと鼻を鳴らした。
「でしゃばりだからじゃない。グリフィンドールは目立ちたがりが多いわ」
パドマはそれを聞いてむっとした表情を見せた。彼女の双子の姉のパーバティ・パチルはグリフィンドール生なのだ。
チョウがコホンと咳をした。
「でも、ナマエ。あなたはいろいろな呪文を知っているってフリットウィック先生が仰ってたわよ」
「ありがと」
ナマエは残念そうに言った。ホグワーツに入学するまで、ずっと家の中に閉じこもってやることがなかった。なので、教科書はすでに何度も読んでいたし、他にも魔法の指導書は読み始めていた。にもかかわらず、ハーマイオニーはマッチ棒を針に変えられたのに、ナマエのマッチ棒は爪楊枝にしかならなかった。
ちょうどその時、ふくろうたちが一斉に大広間になだれ込んできた。ナマエには一度も郵便が来たことがなく、ふくろうも飼っていなかったのでたまたま近くにやってくるふくろうをただ撫でてやっていた。
ところが、ほとんどのふくろうが帰っていく中、パタパタと白いふくろうがナマエの目の前に降り立った。
「うん?お前、見たことがあるな」
ナマエはカリカリと嘴の上を撫でてやりながら言ったが、足にくくりつけられた手紙に手を伸ばすと爪を立てられた。
「いてっ、なんだ?俺への手紙じゃないのか」
「かわいい。その子、グリフィンドールの机から飛んできたわ」
チョウが言った。ナマエはそれを聞いてピンと来た。
「ああ、お前、ヘドウィグだな?ハリーのふくろうだな?」
いたずらっぽくヘドウィグに尋ねると、ヘドウィグは不服そうに「ホー」と鳴いて目を閉じた。
⚡️──────
ハリーは、ヘドウィグが運んできたハグリッドからのお茶会の誘いに返事を出してから朝食を再開していた。
しかし、ロンが「ハリー」と言ってハリーの後ろを指差した。
振り返ると、肩につきそうな黒髪の男の子が立っていた。ナマエだ。
ナマエは右腕に白いふくろうを乗せていた。
「ヘドウィグが拗ねてるぞ。ちゃんと褒めてやったのか?」
ナマエがふくろうをあやしながらにやっとした。ヘドウィグは横目でハリーをじとりと睨んだ。
「アー、……ありがとうヘドウィグ。ごめんよ」
ばつが悪そうにハリーが言うと、ヘドウィグは「ホー」と鳴いてしかたなさそうに飛び上がった。
ハリーはナマエに向き直ったが、周囲がざわざわしているのを感じた。ハリーがこの一週間受けてきた「生き残った男の子」に対するざわめきとは別のものだ。
──確かに、ナマエは整った顔立ちをしていた。
コンパートメントで声をかけた時は、頬が腫れていたことと緊張している印象もあり、女の子のようだと思った。しかし今は、こざっぱりとした表情で、気さくな性格がより顔貌の魅力を引き立てているようだった。
「じゃ、また」
ナマエが立ち去ろうとしたとき、周囲の女の子たちの残念そうな呻きが聞こえた。
「待って、ナマエ」
ハリーは思わず口に出した。引き止められたナマエは心なしか嬉しそうだった。汽車以来あまり話せていないことを残念に思っていたのはハリーだけではないような気がした。
「今日、三時ごろにハグリッドの小屋にいくんだけど、一緒にどうだい?」
ハリーが誘うと、花が綻ぶような笑顔でナマエは答えた。
「もちろん!」
🐦⬛──────
朝食後、「魔法薬学」の授業は地下で行われた。ナマエは自分の得意教科になるだろうと自負していたが、その期待に反して息が詰まるような授業だった。
「魔法薬学」のスネイプ教授はハリーを執拗に陰湿にいびり、学習意欲旺盛なハーマイオニーはことごとく無視された。
ナマエもハーマイオニーのように手を挙げて答えたい衝動はあったが、無論この教室で手を上げる度胸はさらさらなかった。皮肉にも、グリフィンドールは勇気があると認めざるを得なかった。
三時五分前には城を出て、ハリー、ロン、ナマエは校庭を横切った。ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。ノックすると、中からメチャメチャに戸を引っ掻く音と、犬のよく響く吠える声が聞こえた。
「退がれ、ファング、退がれ」
ハグリッドの大声が響いた。戸が少し開いて、隙間からハグリッドの大きな髯モジャの顔が現れた。
ハグリッドは巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、三人を招き入れた。
ファングはロンに飛びついてベロベロと舐め回した。ナマエは声をあげて笑った。
「ロンと、ナマエです」
ハリーがハグリッドに紹介してくれたので、ナマエはハグリッドに笑顔を向けた。
ナマエはハグリッドの目が少し泳いだ気がした。しかし、ややあってハグリッドはナマエに笑顔を返して、ロンを見た。
「ウィーズリー家の子かい。え?」
ロンのそばかすをチラッと見ながらハグリッドが言った。
ナマエはロンの家族の話を聞きながら、羨ましく思った。その羨望を振り払うようにファングの顔を揉みくちゃに撫でてやると、ファングはちぎれんばかりにしっぽをブンブン振り、洪水のような涎でナマエのズボンを濡らした。
三人はハグリッドが振る舞ってくれたロックケーキを齧って歯を折りそうになったが、たまに口をつけておいしいふりをした。
三人はフィルチやスネイプへの不平をハグリッドに話し、盛り上がったが、ハグリッドがスネイプを庇うように話を逸らすので、ハリーは腑に落ちないようだった。
ハグリッドは気のいい人だった。それが仇となって、嘘がすこぶる下手らしかった。
ナマエは、ハグリッドが必死でグリンゴッツの銀行強盗(ハグリッドは狙われた品を知っているらしい)やスネイプから話を逸らすのを、内心「がんばれ!」と応援しながら眺めていた。
三人は夕食に遅れないように城に向かって歩いた。ナマエだけはハグリッドが持たせたロックケーキを食べていた。あまりに固いので、食べるというより口の中で湿らせているだけだった。
「ナマエってさ、飲み込みづらい食べ物が好きなわけ?」
ロンが茶化すように笑った。
だいたいの授業は他の寮と合同で行われており、ハリー、ロンと互いに目が合うと手を振ったが、話しかける余裕はなかった。
ナマエを含むレイブンクローの他の生徒は、なるほど勉強熱心だった。授業を移動しながらもテリーは「悪人エメリックと奇人ウリックの年号が合ってるか確認してくれ」とナマエの羊皮紙と自分の羊皮紙を見比べていた。
薬草学、魔法史、呪文学、変身学、闇の魔術に対する防衛術……一通りの授業をこなし、気づけば金曜日の朝になっていた。
大広間で教科書を眺めて朝食を食べながら、ナマエはポツリと言った。
「ハーマイオニー・グレンジャーはなんでレイブンクローじゃないんだろう」
それを聞いてマリエッタはフンと鼻を鳴らした。
「でしゃばりだからじゃない。グリフィンドールは目立ちたがりが多いわ」
パドマはそれを聞いてむっとした表情を見せた。彼女の双子の姉のパーバティ・パチルはグリフィンドール生なのだ。
チョウがコホンと咳をした。
「でも、ナマエ。あなたはいろいろな呪文を知っているってフリットウィック先生が仰ってたわよ」
「ありがと」
ナマエは残念そうに言った。ホグワーツに入学するまで、ずっと家の中に閉じこもってやることがなかった。なので、教科書はすでに何度も読んでいたし、他にも魔法の指導書は読み始めていた。にもかかわらず、ハーマイオニーはマッチ棒を針に変えられたのに、ナマエのマッチ棒は爪楊枝にしかならなかった。
ちょうどその時、ふくろうたちが一斉に大広間になだれ込んできた。ナマエには一度も郵便が来たことがなく、ふくろうも飼っていなかったのでたまたま近くにやってくるふくろうをただ撫でてやっていた。
ところが、ほとんどのふくろうが帰っていく中、パタパタと白いふくろうがナマエの目の前に降り立った。
「うん?お前、見たことがあるな」
ナマエはカリカリと嘴の上を撫でてやりながら言ったが、足にくくりつけられた手紙に手を伸ばすと爪を立てられた。
「いてっ、なんだ?俺への手紙じゃないのか」
「かわいい。その子、グリフィンドールの机から飛んできたわ」
チョウが言った。ナマエはそれを聞いてピンと来た。
「ああ、お前、ヘドウィグだな?ハリーのふくろうだな?」
いたずらっぽくヘドウィグに尋ねると、ヘドウィグは不服そうに「ホー」と鳴いて目を閉じた。
⚡️──────
ハリーは、ヘドウィグが運んできたハグリッドからのお茶会の誘いに返事を出してから朝食を再開していた。
しかし、ロンが「ハリー」と言ってハリーの後ろを指差した。
振り返ると、肩につきそうな黒髪の男の子が立っていた。ナマエだ。
ナマエは右腕に白いふくろうを乗せていた。
「ヘドウィグが拗ねてるぞ。ちゃんと褒めてやったのか?」
ナマエがふくろうをあやしながらにやっとした。ヘドウィグは横目でハリーをじとりと睨んだ。
「アー、……ありがとうヘドウィグ。ごめんよ」
ばつが悪そうにハリーが言うと、ヘドウィグは「ホー」と鳴いてしかたなさそうに飛び上がった。
ハリーはナマエに向き直ったが、周囲がざわざわしているのを感じた。ハリーがこの一週間受けてきた「生き残った男の子」に対するざわめきとは別のものだ。
──確かに、ナマエは整った顔立ちをしていた。
コンパートメントで声をかけた時は、頬が腫れていたことと緊張している印象もあり、女の子のようだと思った。しかし今は、こざっぱりとした表情で、気さくな性格がより顔貌の魅力を引き立てているようだった。
「じゃ、また」
ナマエが立ち去ろうとしたとき、周囲の女の子たちの残念そうな呻きが聞こえた。
「待って、ナマエ」
ハリーは思わず口に出した。引き止められたナマエは心なしか嬉しそうだった。汽車以来あまり話せていないことを残念に思っていたのはハリーだけではないような気がした。
「今日、三時ごろにハグリッドの小屋にいくんだけど、一緒にどうだい?」
ハリーが誘うと、花が綻ぶような笑顔でナマエは答えた。
「もちろん!」
🐦⬛──────
朝食後、「魔法薬学」の授業は地下で行われた。ナマエは自分の得意教科になるだろうと自負していたが、その期待に反して息が詰まるような授業だった。
「魔法薬学」のスネイプ教授はハリーを執拗に陰湿にいびり、学習意欲旺盛なハーマイオニーはことごとく無視された。
ナマエもハーマイオニーのように手を挙げて答えたい衝動はあったが、無論この教室で手を上げる度胸はさらさらなかった。皮肉にも、グリフィンドールは勇気があると認めざるを得なかった。
三時五分前には城を出て、ハリー、ロン、ナマエは校庭を横切った。ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。ノックすると、中からメチャメチャに戸を引っ掻く音と、犬のよく響く吠える声が聞こえた。
「退がれ、ファング、退がれ」
ハグリッドの大声が響いた。戸が少し開いて、隙間からハグリッドの大きな髯モジャの顔が現れた。
ハグリッドは巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、三人を招き入れた。
ファングはロンに飛びついてベロベロと舐め回した。ナマエは声をあげて笑った。
「ロンと、ナマエです」
ハリーがハグリッドに紹介してくれたので、ナマエはハグリッドに笑顔を向けた。
ナマエはハグリッドの目が少し泳いだ気がした。しかし、ややあってハグリッドはナマエに笑顔を返して、ロンを見た。
「ウィーズリー家の子かい。え?」
ロンのそばかすをチラッと見ながらハグリッドが言った。
ナマエはロンの家族の話を聞きながら、羨ましく思った。その羨望を振り払うようにファングの顔を揉みくちゃに撫でてやると、ファングはちぎれんばかりにしっぽをブンブン振り、洪水のような涎でナマエのズボンを濡らした。
三人はハグリッドが振る舞ってくれたロックケーキを齧って歯を折りそうになったが、たまに口をつけておいしいふりをした。
三人はフィルチやスネイプへの不平をハグリッドに話し、盛り上がったが、ハグリッドがスネイプを庇うように話を逸らすので、ハリーは腑に落ちないようだった。
ハグリッドは気のいい人だった。それが仇となって、嘘がすこぶる下手らしかった。
ナマエは、ハグリッドが必死でグリンゴッツの銀行強盗(ハグリッドは狙われた品を知っているらしい)やスネイプから話を逸らすのを、内心「がんばれ!」と応援しながら眺めていた。
三人は夕食に遅れないように城に向かって歩いた。ナマエだけはハグリッドが持たせたロックケーキを食べていた。あまりに固いので、食べるというより口の中で湿らせているだけだった。
「ナマエってさ、飲み込みづらい食べ物が好きなわけ?」
ロンが茶化すように笑った。