賢者の石
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ひりひりと痛む頬を撫でた。
ホグワーツへの入学式当日。まさにその朝、父親に殴りつけられた頬はまだ赤く熱を持って痛みを主張していた。
杖を一振りすれば治るかもしれない。ただ、今は痛みに集中して不毛な親子喧嘩を忘れたかった。
ナマエはホグワーツ特急のコンパートメントの中で汽車の出発を待っていた。窓からホームを眺め、別れを惜しむ生徒とその家族をぼんやり見つめた。数時間前のことを嫌と言うほど何度も思い出していた。
──いつものことだ。いや、いつもより少し苛烈だった。馬の合わない純血主義の父親と言い争い、十一歳のナマエをガタイのいい父親が殴りつけ、屋敷しもべが怯えて困惑していた。
「ダームストラングに入れなかっただけでも情けないというのに!スリザリンに入れなかったら、ただじゃ済まさないぞ。ナマエ!」
「スリザリンに入るくらいなら初日で退学になってやる!」
ナマエはそう叫んで家を飛び出てきた。
憂鬱だ。まるで家出をするように吐き捨ててきたのに、当然夏休みには帰らなければならない。
ちょうどため息をついたときに、コンパートメントの戸が開いた。
「あの、そこ座ってもいい?」
くしゃくしゃの黒髪で丸眼鏡をかけた男の子が現れ、ナマエの向かいの席を指差した。
「もちろん」
ナマエは少し居住まいを正して微笑んだ。
すると、すぐに再びコンパートメントの戸が開き、今度は赤毛の男の子が入ってきた。
このにぎやかな汽車の中で、個室を一人で使えるだなんてはなから思っていなかったので、ナマエは快く迎え入れた。
「──知り合い?」
ナマエは、二人が目を合わせて並んで座ったのを見て声をかけた。
「さっき、ホームで」
黒髪の少年が答えた。
「ふぅん」
ナマエが相槌を打つや否や、またしても戸が開いた。
「おい、ロン」
赤毛の背の高い二人組、──おそらく双子──の男子生徒が入ってきた。
双子はロンと呼ばれた赤毛の男の子の兄らしく、フレッドとジョージと名乗った。彼らはリー・ジョーダンにタランチュラを見せてもらうのだとロンに報告して、また出て行こうとした。
「じゃ、また後でな。ハリー、それと……」
「ナマエ」
ナマエは、自分以外の全員が知り合い同士である気まずさに息を潜めていたが、咄嗟に短く答えた。
双子は揃って「ナマエ」と反芻すると、コンパートメントの戸を閉めて出ていった。
「……よろしく。ハリー、ロン」
ナマエはとりあえず、残っている二人に挨拶を絞り出した。
「よろしく、ナマエ」と二人は答えた。
ナマエは、同世代の知らない子と話した経験がほとんどないことに気づき始めていた。次になんの話を切り出せばよい関係を築けるのだろうかと思案していると、ロンが出し抜けに口を開いた。
「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」
「──ハリー、ポッター?!」
ナマエは仰天して大きな声を出した。すぐさま口を手で押さえたが無意味だった。
ハリーはこっくり頷いた。
ハリー・ポッター。生き残った男の子。
ヴォルデモートが唯一殺せなかった、闇の帝王を打ち負かした、唯一の男の子。
魔法界でその名を知らぬ者はいない、ナマエとて同じだった。
ハリーの顔を見るとやはり噂通り、額に稲妻型の傷があった。
その後は、ナマエが聞きたいと思ったことのほとんどをロンがハリーに質問してくれたので、ナマエはハリーを質問攻めにしてしまう罪悪感を抱かずに済んだ。
魔法界で最も有名な赤ん坊であるにもかかわらず、ハリー・ポッター当人はそんなことはつゆ知らず、マグルの親戚の家で暮らしていたのだと話してくれた。
「──それに、ハグリッドが教えてくれるまでは、僕、自分が魔法使いだってこと全然知らなかったし、両親のことも、ヴォルデモートのことも……」
ハリーが『名前を言ってはいけないあの人』の名前を出した瞬間、ナマエはひやりと背筋が冷たくなるのと同時に、父親に張られた頬が熱を取り戻すのを感じた。
「君、『例のあの人』の名前を言った!君の、君の口からその名を…」
ロンは驚きと称賛の入り交じった声をあげた。
ハリーはごにょごにょとロンの称賛を否定していたが、ナマエは頬をさすりながらハリーに身を乗り出した。
「ハリー、ハリー。あんたって……」
きっとこの生き残った英雄も、自分と同じように純血主義の大人たちを嫌ってくれるだろうと期待して口を開いたが、うまく言葉にまとめられなかった。ましてや、ついこの間まで魔法界を知らず、マグルとして生きてきた彼に自分の思想を説明して共感を得ようなど、至難の業であると気づいた。
「……すごいよ、本当に」
ロンの賞賛に同調してその言葉だけ絞り出し、ナマエは背もたれに背を預けた。
昼になると車内販売がやってきて、ハリーがとんでもなく贅沢な買い方をして、みんなでそれを分けて食べた。
ロンが持ってきたロンの母親特製のコンビーフのサンドイッチはナマエが全部食べてしまった。
「パサパサでおいしくないだろ?ママは時間がないから。子供が五人もいるんだもの」
ロンはナマエにそう言ったが、ほったらかしにしていたサンドイッチを誰かが腹に収めてくれることがありがたいようだった。
「うまいよ。そう伝えておいて」
ナマエはそう言ったが、喉を詰まらせそうになり、かぼちゃジュースで乾いたパンを流し込んだ。ロンはそれを見て笑ったが、微かに耳がピンク色になっていた。
ナマエは弁当を持たせてくれる母親がいることはとても尊く、羨ましいと思った。また父親に張られた頬が熱く痛んだ。
ナマエが頬をさすると、ハリーがそれに気がついた。
「どうしたの?」
「あー、ちょっと。今朝ぶつけたんだ」
両親がいないハリーの前で、「父親と喧嘩した」なんて話すのはなんとなく気が引けて、適当に誤魔化した。
しばらくして、コンパートメントの戸が再び開いた。女の子がふっくらした男の子を連れていた。
「誰かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」
なんとなく威張った話し方をする女の子だ。栗色の髪がフサフサして、前歯がちょっと大きかった。
彼女は自分がマグル生まれだとか、ホグワーツは最高の魔法学校だの、教科書を暗記しただのを一気に捲し立て、最後に名乗った。
──ハーマイオニー・グレンジャー。彼女はナマエたちにもネビルにも話す隙をほとんど与えず一方的に喋り続け、「そろそろ着替えたほうがいいわよ」と言い残して出ていった。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないとこがいいな」
ロンが言った。
ナマエは寮の話にピクリと反応した。
「君の兄さんたちってどこの寮なの?」
ハリーがロンに聞いた。
「グリフィンドール。ママもパパもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ」
「違いない」
ナマエはできるだけさりげなく聞こえるように、しかしはっきりと頷いた。
「そこって、ヴォル……つまり、『例のあの人』がいたところ?」
「そう、それ以外にも。例のあの人の仲間はほとんどそうだ」
ナマエは断言するように言い、嫌悪と軽蔑を顕にした。ナマエの言葉にロンは頷いた。
ハリーが何か言いかけたとき、またコンパートメントの戸が開いた。今度は「ヒキガエル探し」のネビルでもハーマイオニーでもなかった。
男の子が三人入ってきた。真ん中に立つ青白いブロンドの男の子を見ると、ナマエはガタっと音を立てて立ち上がり、三人を睨みつけた。
ロンとハリーは驚いたが、男の子はナマエの様子を無視してハリーに関心を注いでいた。
「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」とハリーが答えた。
ナマエは入ってきた三人を無言で睨み続けていたが、男の子はやはりナマエの態度は無視して自己紹介をした。
「こいつはクラッブで、こいつがゴイルさ。そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンはクスクス笑いを誤魔化すように咳払いをし、ナマエはフンと鼻を鳴らした。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
マルフォイはハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。
「友達は自分で選べる」
ハリーが冷たく言い放った。
「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね」
マルフォイはからみつくような言い方をして、次にロンの姿を見て鼻で笑い、最後にナマエを見た。
「ああ、いたのか。君はたしか、片親の──」
ナマエは後ろポケットの杖を掴んで引き抜こうとしたが、それよりも先にゴイルの悲鳴が上がった。
ロンのネズミのスキャバーズがゴイルの指に噛み付いていたのだ。
ゴイルはスキャバーズをぐるぐる振り回して窓に叩きつけ、三人とも足早に消え去った。
「お高く止まりやがって」
ナマエが吐き捨てた。
「マルフォイを知ってるの?二人とも」
ロンはナマエとハリーに尋ねた。
ハリーはダイアゴン横丁で、マダムマルキンの店でたまたま出会ったのだと言った。ナマエはまた頬をさすって言った。
「俺は、ちょっと家ぐるみで関係があるんだ。親父がああいう気取った純血主義者だから」
ナマエは肩をすくめた。
「でも、勘違いしないでくれよ。俺と親父は仲が悪い」
ナマエは赤く腫れた頬を指差してにやっとした。
三人は互いに打ち解けた気持ちになった。
ナマエ、ハリー、ロンがローブに着替え終わる頃、ゆっくりと汽車が停止した。
列車の戸を開けて外に出ると、大男が一年生を引率していた。
大男がハリーに話しかけるのを見て、ナマエは驚いた。
「ハリー、あの巨じ──大きな人と知り合いなのか」
「うん、ハグリッドだよ」
なるほど、と感心したようにナマエは言った。
ハリーはナマエの満足気な表情の理由がわからなかったが、悪い意味ではないと捉えた。
小道を抜け、ボートで湖面を滑り、一年生とハグリッドはホグワーツ城に向かった。
ホグワーツへの入学式当日。まさにその朝、父親に殴りつけられた頬はまだ赤く熱を持って痛みを主張していた。
杖を一振りすれば治るかもしれない。ただ、今は痛みに集中して不毛な親子喧嘩を忘れたかった。
ナマエはホグワーツ特急のコンパートメントの中で汽車の出発を待っていた。窓からホームを眺め、別れを惜しむ生徒とその家族をぼんやり見つめた。数時間前のことを嫌と言うほど何度も思い出していた。
──いつものことだ。いや、いつもより少し苛烈だった。馬の合わない純血主義の父親と言い争い、十一歳のナマエをガタイのいい父親が殴りつけ、屋敷しもべが怯えて困惑していた。
「ダームストラングに入れなかっただけでも情けないというのに!スリザリンに入れなかったら、ただじゃ済まさないぞ。ナマエ!」
「スリザリンに入るくらいなら初日で退学になってやる!」
ナマエはそう叫んで家を飛び出てきた。
憂鬱だ。まるで家出をするように吐き捨ててきたのに、当然夏休みには帰らなければならない。
ちょうどため息をついたときに、コンパートメントの戸が開いた。
「あの、そこ座ってもいい?」
くしゃくしゃの黒髪で丸眼鏡をかけた男の子が現れ、ナマエの向かいの席を指差した。
「もちろん」
ナマエは少し居住まいを正して微笑んだ。
すると、すぐに再びコンパートメントの戸が開き、今度は赤毛の男の子が入ってきた。
このにぎやかな汽車の中で、個室を一人で使えるだなんてはなから思っていなかったので、ナマエは快く迎え入れた。
「──知り合い?」
ナマエは、二人が目を合わせて並んで座ったのを見て声をかけた。
「さっき、ホームで」
黒髪の少年が答えた。
「ふぅん」
ナマエが相槌を打つや否や、またしても戸が開いた。
「おい、ロン」
赤毛の背の高い二人組、──おそらく双子──の男子生徒が入ってきた。
双子はロンと呼ばれた赤毛の男の子の兄らしく、フレッドとジョージと名乗った。彼らはリー・ジョーダンにタランチュラを見せてもらうのだとロンに報告して、また出て行こうとした。
「じゃ、また後でな。ハリー、それと……」
「ナマエ」
ナマエは、自分以外の全員が知り合い同士である気まずさに息を潜めていたが、咄嗟に短く答えた。
双子は揃って「ナマエ」と反芻すると、コンパートメントの戸を閉めて出ていった。
「……よろしく。ハリー、ロン」
ナマエはとりあえず、残っている二人に挨拶を絞り出した。
「よろしく、ナマエ」と二人は答えた。
ナマエは、同世代の知らない子と話した経験がほとんどないことに気づき始めていた。次になんの話を切り出せばよい関係を築けるのだろうかと思案していると、ロンが出し抜けに口を開いた。
「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」
「──ハリー、ポッター?!」
ナマエは仰天して大きな声を出した。すぐさま口を手で押さえたが無意味だった。
ハリーはこっくり頷いた。
ハリー・ポッター。生き残った男の子。
ヴォルデモートが唯一殺せなかった、闇の帝王を打ち負かした、唯一の男の子。
魔法界でその名を知らぬ者はいない、ナマエとて同じだった。
ハリーの顔を見るとやはり噂通り、額に稲妻型の傷があった。
その後は、ナマエが聞きたいと思ったことのほとんどをロンがハリーに質問してくれたので、ナマエはハリーを質問攻めにしてしまう罪悪感を抱かずに済んだ。
魔法界で最も有名な赤ん坊であるにもかかわらず、ハリー・ポッター当人はそんなことはつゆ知らず、マグルの親戚の家で暮らしていたのだと話してくれた。
「──それに、ハグリッドが教えてくれるまでは、僕、自分が魔法使いだってこと全然知らなかったし、両親のことも、ヴォルデモートのことも……」
ハリーが『名前を言ってはいけないあの人』の名前を出した瞬間、ナマエはひやりと背筋が冷たくなるのと同時に、父親に張られた頬が熱を取り戻すのを感じた。
「君、『例のあの人』の名前を言った!君の、君の口からその名を…」
ロンは驚きと称賛の入り交じった声をあげた。
ハリーはごにょごにょとロンの称賛を否定していたが、ナマエは頬をさすりながらハリーに身を乗り出した。
「ハリー、ハリー。あんたって……」
きっとこの生き残った英雄も、自分と同じように純血主義の大人たちを嫌ってくれるだろうと期待して口を開いたが、うまく言葉にまとめられなかった。ましてや、ついこの間まで魔法界を知らず、マグルとして生きてきた彼に自分の思想を説明して共感を得ようなど、至難の業であると気づいた。
「……すごいよ、本当に」
ロンの賞賛に同調してその言葉だけ絞り出し、ナマエは背もたれに背を預けた。
昼になると車内販売がやってきて、ハリーがとんでもなく贅沢な買い方をして、みんなでそれを分けて食べた。
ロンが持ってきたロンの母親特製のコンビーフのサンドイッチはナマエが全部食べてしまった。
「パサパサでおいしくないだろ?ママは時間がないから。子供が五人もいるんだもの」
ロンはナマエにそう言ったが、ほったらかしにしていたサンドイッチを誰かが腹に収めてくれることがありがたいようだった。
「うまいよ。そう伝えておいて」
ナマエはそう言ったが、喉を詰まらせそうになり、かぼちゃジュースで乾いたパンを流し込んだ。ロンはそれを見て笑ったが、微かに耳がピンク色になっていた。
ナマエは弁当を持たせてくれる母親がいることはとても尊く、羨ましいと思った。また父親に張られた頬が熱く痛んだ。
ナマエが頬をさすると、ハリーがそれに気がついた。
「どうしたの?」
「あー、ちょっと。今朝ぶつけたんだ」
両親がいないハリーの前で、「父親と喧嘩した」なんて話すのはなんとなく気が引けて、適当に誤魔化した。
しばらくして、コンパートメントの戸が再び開いた。女の子がふっくらした男の子を連れていた。
「誰かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」
なんとなく威張った話し方をする女の子だ。栗色の髪がフサフサして、前歯がちょっと大きかった。
彼女は自分がマグル生まれだとか、ホグワーツは最高の魔法学校だの、教科書を暗記しただのを一気に捲し立て、最後に名乗った。
──ハーマイオニー・グレンジャー。彼女はナマエたちにもネビルにも話す隙をほとんど与えず一方的に喋り続け、「そろそろ着替えたほうがいいわよ」と言い残して出ていった。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないとこがいいな」
ロンが言った。
ナマエは寮の話にピクリと反応した。
「君の兄さんたちってどこの寮なの?」
ハリーがロンに聞いた。
「グリフィンドール。ママもパパもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ」
「違いない」
ナマエはできるだけさりげなく聞こえるように、しかしはっきりと頷いた。
「そこって、ヴォル……つまり、『例のあの人』がいたところ?」
「そう、それ以外にも。例のあの人の仲間はほとんどそうだ」
ナマエは断言するように言い、嫌悪と軽蔑を顕にした。ナマエの言葉にロンは頷いた。
ハリーが何か言いかけたとき、またコンパートメントの戸が開いた。今度は「ヒキガエル探し」のネビルでもハーマイオニーでもなかった。
男の子が三人入ってきた。真ん中に立つ青白いブロンドの男の子を見ると、ナマエはガタっと音を立てて立ち上がり、三人を睨みつけた。
ロンとハリーは驚いたが、男の子はナマエの様子を無視してハリーに関心を注いでいた。
「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」とハリーが答えた。
ナマエは入ってきた三人を無言で睨み続けていたが、男の子はやはりナマエの態度は無視して自己紹介をした。
「こいつはクラッブで、こいつがゴイルさ。そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンはクスクス笑いを誤魔化すように咳払いをし、ナマエはフンと鼻を鳴らした。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
マルフォイはハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。
「友達は自分で選べる」
ハリーが冷たく言い放った。
「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね」
マルフォイはからみつくような言い方をして、次にロンの姿を見て鼻で笑い、最後にナマエを見た。
「ああ、いたのか。君はたしか、片親の──」
ナマエは後ろポケットの杖を掴んで引き抜こうとしたが、それよりも先にゴイルの悲鳴が上がった。
ロンのネズミのスキャバーズがゴイルの指に噛み付いていたのだ。
ゴイルはスキャバーズをぐるぐる振り回して窓に叩きつけ、三人とも足早に消え去った。
「お高く止まりやがって」
ナマエが吐き捨てた。
「マルフォイを知ってるの?二人とも」
ロンはナマエとハリーに尋ねた。
ハリーはダイアゴン横丁で、マダムマルキンの店でたまたま出会ったのだと言った。ナマエはまた頬をさすって言った。
「俺は、ちょっと家ぐるみで関係があるんだ。親父がああいう気取った純血主義者だから」
ナマエは肩をすくめた。
「でも、勘違いしないでくれよ。俺と親父は仲が悪い」
ナマエは赤く腫れた頬を指差してにやっとした。
三人は互いに打ち解けた気持ちになった。
ナマエ、ハリー、ロンがローブに着替え終わる頃、ゆっくりと汽車が停止した。
列車の戸を開けて外に出ると、大男が一年生を引率していた。
大男がハリーに話しかけるのを見て、ナマエは驚いた。
「ハリー、あの巨じ──大きな人と知り合いなのか」
「うん、ハグリッドだよ」
なるほど、と感心したようにナマエは言った。
ハリーはナマエの満足気な表情の理由がわからなかったが、悪い意味ではないと捉えた。
小道を抜け、ボートで湖面を滑り、一年生とハグリッドはホグワーツ城に向かった。