賢者の石
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「レイブンクロー、十点減点」
ナマエは申し訳なくも、ハリーに比べたら十点など痛くも痒くもないと思った。
全力疾走を突然とめられたナマエは、地面に転がったままぜいぜいと胸を上下させた。
「はあっ、……はい、っはあ、す、すみません」
「何をそんなに急いでいたのかね?」
「ハ……友達、を…はあっ、探して……ました」
ナマエは床に座り込んだまま探るようにスネイプを見上げた。
スネイプはじっとその様子を睨みつけ、目を逸らさずにナマエの背後に声を掛けた。
「やあ、こんにちは」
いやに愛想のよい声だった。
ナマエが振り返ると、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が立っていた。
「諸君、こんな日には室内にいるもんじゃない」
スネイプはようやっとナマエから視線を外し、今度はハリーを睨みつけた。
「僕たちは……」
ハリーたちはナマエとスネイプを交互に見てまごついた。
「もっと慎重に願いたいものですな。こんなふうにうろうろしているところを人が見たら、何か企んでいるように見えますぞ。グリフィンドールとしては、これ以上減点される余裕はないはずだろう?」
ハリーは少し顔が赤くなった。
「これ以上夜中にうろついているのを見かけたら、我輩が自ら君たちを退校処分にするぞ。さあもう行きたまえ」
スネイプは大股に職員室の方に歩いていった。
「ナマエ、どうしたの?大丈夫?」
ナマエはハーマイオニーに助け起こされた。ようやっとまともな呼吸に戻ったナマエは弾かれたように叫んだ。
「「大変なんだよ!!」」
ハリーと同時だった。
ハリーは、罰則で『禁じられた森』に入ったこと、そこでユニコーンの血をすするヴォルデモートを見たことをナマエに話した。
「もしスネイプが『石』を手に入れたら、ヴォルデモートが戻ってくるんだ」
ナマエはその名前に少しぎくりとしながらも、ハリーに悟られないようにした。
「それはまずい、かなりまずいな…………」
「だから、ダンブルドアに伝えにいったんだけど、マクゴナガル先生に咎められて……」
「校長は不在なんですって。今、魔法省に呼び出されているそうよ」
「こんな時に?!」
ナマエは焦りで再び汗をかき始めた。
「まずい、本当にまずいんだ。俺も話があるんだよ」
ナマエはあたりをきょろきょろ見回してから、声をひそめて言った。
「クィレルが、スネイプに降参したと思う。クィレルが、そんな感じの泣き言を言っているのを聞いたんだ」
「なんだって?!」
ハリーたちは仰天したが、ナマエが手で制した。
「まだある、さっきハグリッドに聞いたんだ。ハグリッドは……ほら、ドラゴンの卵を怪しいやつからもらったんじゃないかと思って。そしたら、ドラゴンの卵をくれたやつはフラッフィーの宥め方を聞いてきたって言ってた」
「つまり、それって……」
ハーマイオニーが口に手を当てた。
「そうだ、スネイプはもういつでも石を手に入れられる」
「──今夜だ」
ハリーは決然と言った。
「僕が止める。何とかして石を先に手に入れる」
「気は確かか!」ロンが言った。
「だめよ!マクゴナガル先生にもスネイプにも言われたでしょ。退校になっちゃうわ!」
「だからなんだっていうんだ?」
ハリーが叫んだ。
「わからないのかい?もしスネイプが石を手に入れたら、ヴォルデモートが戻ってくるんだ。あいつがすべてを征服しようとしていた時、どんなありさまだったか、聞いてるだろう?退校にされようにも、ホグワーツそのものがなくなってしまうんだ」
ハリーはハーマイオニーとロンを睨みつけた。
「君たちが何と言おうと僕は行く。いいかい、僕の両親はヴォルデモートに殺されたんだ」
しばらく沈黙が流れた。
廊下で突っ立って黙っている四人を、通りすがった生徒が訝しげに見て去っていった。
ナマエがふう、と息をついてから口をひらいた。
「……ハリー、透明マントが必要なんじゃないのか?」
ナマエがいたずらっぽくウィンクしたので、ハリーは目をぱちくりした。
「でも、透明マントは……」
「言っただろう。あの夜、俺はマルフォイを見張ってやるって。ばっちり追い返したし、忘れ物も回収済みさ」
ハリーの顔が久しく明るくなった。
「君って、最高だ!」
「今夜、真夜中にグリフィンドールの寮に行くから。準備しておいてくれ」
「でも、四人全員入れるかな?」
ロンが言った。
「全員って……君たちも行くつもりかい?」
「バカ言うなよ。君ら二人だけを行かせると思うのかい?」
「もちろん、そんなことできないわ」
ハーマイオニーが決然と答え、ロンも頷いた。
ナマエは夕食後、談話室でハグリッドにもらったオカリナに魔法をかける練習をしていると、マイケルが耳を塞いで非難した。
「おい、なんだそのひどい音は」
「子守唄のつもりだったんだけど」
ナマエが杖を振りながら顔をしかめた。
「冗談だろ?フリットウィックに聴いてもらえよ。ひっくり返るぞ」
フリットフィック先生はカエルの合唱団の指揮者だった。
マイケルに指導されながら、ナマエはなんとかオカリナに曲の体裁を取ったメロディを奏でさせることに成功した。
寮生が少しずつ寝室に行き、談話室は人気がなくなってきた。ナマエも寝室に戻るふりをして、透明マントを手に取った。
「よし、いくか」
ナマエは正直言って、透明マントが気に入っていた。これが一人で使う最後かもしれないなと惜しみつつ、グリフィンドールの寮へと向かった。
道中、ミセス・ノリスとピーブスを見かけたが無事到着し、グリフィンドール寮の肖像画の脇で三人が出てくるのを待った。
しばらくすると、ゆっくりと肖像画の扉が開いて、囁き声がした。
「ナマエ、いるかい?」
「ああ、こっちだ」
ナマエは寝ている肖像画の太った婦人を起こさないよう、手だけをマントから出して手招きした。
「君、すっごく不気味だぜ。それ」
ナマエはロンの言葉を無視した。
「遅かったじゃないか。すっぽかされたのかと思ったぜ」
「ネビルがね、私たちを止めたのよ」
ハーマイオニーは憐れむような声を出した。
四人はぎゅうぎゅうにマントに収まって四階の廊下に向かった。
「あ、ちょっと」
ナマエが突然足を止めたので三人がよろめいた。
「何!?」
ロンに足を踏まれたハーマイオニーが喚いた。
「悪い、あそこに……何か光ってる」
ナマエは壁に並んだ鎧たちの足元できらりと光るものを指差し、杖を取り出した。
「何するつもりなの?」
「ちょっと試していいか?……できるかな。アクシオ、『思い出し玉』よ来い!」
鎧の足元にあった大きなビー玉のような玉が、ころりころりとゆっくりと床を這ってナマエたちの元に辿り着いた。
「それ、ネビルの思い出し玉よ!」
「……まあ、上出来だ」
ナマエが呼び寄せた玉を拾いあげた。
「急ごう、時間がないんだよ」
ハリーは少しイライラして言った。
四人は急いで廊下を移動すると、扉はすでに少し開いていた。
「ほら、やっぱりだ。スネイプはもうフラッフィーを突破したんだ」
ハリーは扉を押し開けた。扉はきしみながら開き、低い、グルルルという唸り声が聞こえた。三つの鼻が、姿の見えない四人のいる方向を狂ったように嗅ぎ回った。
フラッフィーの足元には、先に侵入した者が使ったのであろうハープが転がっていた。
ナマエは突然マントから飛び出た。ハリーたちは、悲鳴をあげそうになって息を呑んだ。
フラッフィーの六つの目玉がナマエを捉えた。
ナマエはオカリナをかざし、杖でとんとんと叩いてから指揮棒のように振って歌うように唱えた。
「カンティス!」
オカリナは不器用ながら優しい音色を奏で始めた。途端に、フラッフィーはトロンとしはじめた。だんだんと犬の唸り声が消え、よろよろと膝をついて座り込み、ゴロンと床に横たわった。ぐっすりと眠り込んでいる。
「かわいいじゃないか」
ナマエは言った。
三人もマントを抜け出してそーっと隠し扉に移動した。ロンが引き手を引っ張ると、扉が跳ね上がって開いた。
「何にもない…真っ暗だ、落ちていくしかない……」
「僕が先に行く。もし僕の身に何か起きたら、ついてくるなよ」
「了解」ロンが頷いた。
「気をつけろよ、ハリー」
ナマエがそういうと、ハリーがじっとナマエを見つめ返した。
「……なんだよ?見惚れてるのか?」
ナマエは居心地悪そうに冗談を返したが、ハリーは真剣な声で言った。
「君はここで残っていてくれないか」
「ハリー!ほんとに俺に言ってるのか?」
ナマエは無意識にちらりとハーマイオニーを見た。
「ナマエ!女の子には勇気がないと思っているの?」
ハーマイオニーが憤慨した。
「違う、そうじゃない!俺は──」
「誰かがここに残っている必要があるんだ!この扉から戻ってくるのに外から手助けがいるかもしれないし、もし誰か来たり、僕たちが帰って来なかったらヘドウィグでダンブルドアに知らせてほしい」
全員が黙った。ロンがちらちら全員の顔を見た。
「……ハリー。一時間だ。一時間後、あんたたちが帰って来なかったらヘドウィグの元へ行く。だが、そのあとは追いかける」
「わかった」
ハリーは頷いた。
「マント、また預かってて……じゃ、後で会おう」
そう言ってハリーは扉の中へ飛び込んだ。ヒューッと落ちる音がした。
残った三人が扉を覗き込むと、深い穴の中から「オーケーだよ!」と叫ぶ声がこだました。
「じゃあ、僕が行く」
ロンが続いて飛び降りた。ハーマイオニーが続いて降りる前に、ナマエに向き直った。
「あなた、習ってない呪文をたくさん知ってるのね」
「……あんたほどじゃない」
ナマエは留守番を命じられて少しむくれている自覚があった。ハーマイオニーはそんなナマエを宥めようとしているのだろうと思った。
「じゃあ、また後でね」
ハーマイオニーも扉の中に消えていった。
ナマエは耳を済ませた。
オカリナの音、フラッフィーの寝息のほかに、扉に落ちていった三人の気配を探した。
しばらくしてから、寝ているフラッフィーの真ん中の頭を少し撫でた。
「……お前たちはいいな、三匹一緒にいられてさ」
