賢者の石
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ドラゴン移動作戦決行の夜、ナマエはそっとレイブンクローの寮を抜け出した。約束の時間よりも少し早く、チャーリーの仲間がやってくる塔の階下に辿り着き、タペストリーの裏でじっと隠れていた。
しばらくすると、小さな足音が近づいてきた。そっとタペストリーから覗くと、なんとマルフォイが勇敢にも一人で現れた。
「……エイビス、鳥よ」
ナマエは囁き、杖先から小鳥たちが羽ばたいた。
「オパグノ、襲え」
ナマエが鳥たちにそう命じると、小鳥たちはけたたましく鳴きながらマルフォイに向かって一直線に飛翔した。
マルフォイは驚いて悲鳴をあげた。ナマエが笑いを噛み殺していると、ツカツカと別の足音が近づいてきた。
「誰です!こんな時間に!」
マクゴナガル先生の声だった。マルフォイがマクゴナガル先生に見つかったのだ。
「先生、違うんです。誤解です、ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてるんです!」
「なんというくだらないことを!罰則ですよ!さらにスリザリンから二十点減点!こんな真夜中に、何を考えているんです!」
ナマエはこの上なく愉快な気持ちになったが、ハーマイオニーの「透明マント無しに夜中に抜け出すのは危険だわ」という言葉を思い出していた。
確かにその通りだった。マルフォイの二の舞にならないようにしなくては。
ナマエはしばらくそのままタペストリーの中に潜んで待った。
塔のてっぺんから物音が聞こえた。きっとノーバートを無事に引き渡したのだろう。
ナマエはもう帰ってもよいだろうと思い、タペストリーから外をちらりと見た。
血の気が引いた。物音もなく、ミセス・ノリスが塔の上に続く螺旋階段を駆け上がっていた。
まずい、そう思ったがまもなくフィルチが現れた。階段を登らず、その場でじっとしていた。これではハリーたちに知らせることもできない。
ミセス・ノリスがフィルチのもとに舞い戻り、猫と主人は揃って階段を見上げていた。
ナマエはハリーたちがどうか音を立てずに、透明なまま降りてきますようにと祈った。
その祈りも虚しく、フィルチの嬉しそうな声が聞こえた。
「さて、さて。これは困ったことになりましたなあ。え?」
ナマエがこっそり覗くと、ハリーとハーマイオニーがフィルチに連行されていく姿が見え、頭を抱えた。
(なんで透明マントを着ていないんだ、あの二人は……)
達成感で気が緩んだのか、マルフォイが捕まったことで有頂天になったのだろうか。
全員の足音が聞こえなくなるまで待ち、一人無事なナマエは若干の責任感を抱き、塔のてっぺんに向かった。
すり足で床を歩くと、何もないはずの場所で柔らかいものに触れた。透明マントだ。
「すごいな」
ナマエはほう、と賞賛のため息をついた。
霞のような不思議な布だった。体に纏うと液体のような感触がした。足元を見下ろすと、自分の足があるはずの場所には影も形もなく、ただ埃っぽい床があるだけだった。
ナマエはハリーの忘れ物を回収し、──素直に言うと、楽しみながら──寮へと戻っていった。
寮へ帰る途中、教室から誰かがめそめそ啜り泣くような声が聞こえてきた。ナマエが声のする方に近寄ってみるとクィレルの声がした。
「ダメです……もうどうぞお許しを……」
誰かに脅されているようだった。透明になったナマエは気が大きくなっていたので、さらに近づいてみた。
「わかりました……わかりましたよ……」
クィレルのすすり泣くような声が聞こえる。次の瞬間、クィレルが曲がったターバンを直しながら、教室から急ぎ足で出てきた。蒼白な顔をして、いまにも泣き出しそうだ。クィレルの足音が聞こえなくなるのを待って、教室をのぞいた。誰もいない。だが、反対側のドアが少し開いたままになっていた。
「……誰と話していたんだ?」
ナマエは、疑問に思いながらもほとんど確信していた。スネイプだ。スネイプがついにクィレルを説得してしまったのだ。
翌朝、寮の得点を記録している大きな砂時計の前で騒ぎが起こっていた。グリフィンドールの得点が一夜にして百五十点も減っていたからだ。
「あの、ハリー・ポッターが何人かと一緒に一晩でこんなに減らしたんだってさ」
テリーが言った。ナマエは頭を抱え、心底ハリーに同情した。
学校一の有名人で、賞賛の的だったハリーは今や一番の嫌われ者になっていた。レイブンクローやハッフルパフでさえ、ハリーを軽蔑していた。
ナマエは気まずい思いで朝食を食べた。食べ終わると、意を決して大広間を出る生徒の群れをかき分けてハリーのもとへ向かった。
「ハリー、なあ──」
「ごめん」
ハリーは逃げるように去ってしまった。ハーマイオニーは気遣わしげにちらりとこちらに目をやったが、すぐに行ってしまった。
ハリーの落ち込みようは尋常ではなかった。
みんながハリーを指さし、声を低めることもせず、おおっぴらに悪口を言った。一方スリザリン寮生は、ハリーが通るたびに拍手をし、口笛を吹き、「ポッター、ありがとうよ!」とはやしたてた。
ハリーはかなり責任を感じているらしく、ナマエが話そうとしても、頑なに「もう二度と首を突っ込むのはやめる」と言い張った。クィディッチチームを辞めることすら申し出たらしく、これにはナマエも仰天した。
ハーマイオニーも苦しんでおり、明らかに授業で挙手する回数が減った。
「ロン、あいつら大丈夫なのか」
ナマエは男子トイレで一緒になったロンを捕まえて、問いただそうとした。
ロンは肩をすくめた。
「ネビルがさ、マルフォイのことを知らせようとハリーたちを追っかけてたんだ。それで、一人五十点減点。ネビルはハリーたちにからかわれたと思ってるんだ」
「それは……かわいそうに」
ナマエは他に何も言えなかった。
自分はちゃんとマルフォイを見張っていたと弁明したかったし、クィレルとスネイプの話も伝えたかった。それに、透明マントをハリーに返す必要があった。しかし、ネビルが危険を知らせようと、真夜中に一人でハリーたちを探していたなんて……ネビルにしてみればどんなに大変なことだっただろうと思うと胸が痛くなった。ハリーにしてみればナマエ以上につらいのは当然だろう。
「ま、でもドラゴンは無事引き渡せたみたいだし」
ロンはそう言って完治した手を振って去っていった。
ナマエは、ハリーに声を掛られぬまま試験の日が近づいていることにかえってほっとしていた。試験勉強に没頭することで、少しは後ろめたさを忘れることができた。
試験が終わり、ナマエはテリー、マイケル、アンソニーたちと自己採点で盛り上がった。
アンソニーが出し抜けに言った。
「レイブンクローの誰かひとりでもグレンジャーに勝てると思う?」
ナマエはその名前にぎくりとしたが、全員が自信なさげにうめいた。
「ロウェナ・レイブンクローが泣くね」
マイケルがつぶやいた。
ナマエはその日の午後、なんだか落ち着かなくてハグリッドに会いにいった。
ハグリッドはノーバートが元気でやっていけるか、移動で酔ってしまっていないか、いじめられないかと心底心配そうにおいおい泣いたが、ナマエが根気よくなだめ、最後は弱々しく笑った。
「ありがとうよ、ナマエ。お前さんはいいやつだ」
「ハグリッドもいいママだと思うよ」
ハグリッドはその言葉に再び目を潤ませ、鼻をちーんとかんだ。ナマエはハグリッドの振る舞う野生みあふれる料理や歯が欠けそうな硬いクッキーを出される分だけ平らげた。
突然、ナマエはある考えが頭に浮かんだ。
「ハグリッド、ノーバートの卵はどんなやつがくれたんだ?」
「わからんよ。マントをすっぽり着たままだったしな」
ハグリッドはこともなげに答えた。ナマエは絶句した。
「そんなに珍しいこっちゃない。『ホッグズ・ヘッド』なんてとこにゃ……村のパブだがな、おかしなやつがウヨウヨしてる。顔も見んかったよ」
「ハグリッド。そいつとなんの話をしたんだ?相手は何を聞きたがってた?」
ハグリッドは思い出そうとして顔をしかめた。
「うん……どんな動物を飼ってるかって聞いてきたんで……それに答えて……それで、ほんとはずーっとドラゴンが欲しかったって言ったな……それから……そうさなあ……うん、ドラゴンの卵を譲ってやってもいいっていいよった……ただしちゃんと飼えなきゃだめだって、だから言ってやったよ」
「……なんて言ったんだ?」
ナマエはなるべく落ち着いた声で聞いた。
「フラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだって……フラッフィーなんか、ちょいと音楽を聞かせればすぐねんねしちまうって……」
ハグリッドは突然、しまった大変だという顔をした。
「おまえさんに話しちゃいけんかったんだ!」
ハグリッドは慌てて言った。
「わかった、俺は何も聞いてない。大丈夫」
ナマエはそう言ったが、心臓がバクバクと脈打った。
賢者の石を狙うスネイプが、フラッフィーの出し抜き方を聞き出すためにハグリッドに接触したのだとしたら辻褄が合う。そうじゃなければ、ずっとドラゴンの卵を欲しがっていたハグリッドが、たまたま村のパブなんかで卵を手に入れられるはずがない。
「……ハグリッド、そろそろ城に戻るよ」
「お、おう。気いつけるんだぞ」
ナマエはファングを一撫でしてハグリッドの小屋を出ると、城に向かって一目散に走り出した。
ハリーたちに会わなければ。いや、もっと早くにそうするべきだったのに!
ナマエは城内に入ると、大広間に飛び込んでキョロキョロ見回した。
何人かがナマエのほうを振り向いたが、ハリーたちの姿はない。
「ナマエ、だれを探してるの?」
背後から声がした。汗だくでぜいぜいと荒い息のナマエが振り返ると、ネビルが不思議そうに立っていた。
「はあ、は…、げほっ…ハリー……どこにい、ハアっ、見た?」
ナマエは息絶え絶えで答えた。
「知ってるよ、僕さっき……」
「どこっ?!どこで……ゲホっ!」
「職員室の前だ。思い出し玉をまたなくしちゃったから、届けられてないかと思って聞きにいったんだ──」
「助かる!」
ネビルが言い終わる前にナマエは再び駆け出した。ネビルの思い出し玉とやらを見つけたらきっと届けてやろう。そう思った。
階段を駆け上がると脇腹が痛み、ハグリッドの小屋での食事を後悔した。
廊下に差し掛かり、突き当たりを曲がると突然黒い影に衝突して尻餅をついた。
「うわっ!悪い……はあ、え?」
ナマエが顔を見上げると、さっと血の気が引いた。
「やけに元気が良いですな?ミョウジ」
スネイプがとってつけたようなゆがんだほほえみを浮かべて立っていた。
しばらくすると、小さな足音が近づいてきた。そっとタペストリーから覗くと、なんとマルフォイが勇敢にも一人で現れた。
「……エイビス、鳥よ」
ナマエは囁き、杖先から小鳥たちが羽ばたいた。
「オパグノ、襲え」
ナマエが鳥たちにそう命じると、小鳥たちはけたたましく鳴きながらマルフォイに向かって一直線に飛翔した。
マルフォイは驚いて悲鳴をあげた。ナマエが笑いを噛み殺していると、ツカツカと別の足音が近づいてきた。
「誰です!こんな時間に!」
マクゴナガル先生の声だった。マルフォイがマクゴナガル先生に見つかったのだ。
「先生、違うんです。誤解です、ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてるんです!」
「なんというくだらないことを!罰則ですよ!さらにスリザリンから二十点減点!こんな真夜中に、何を考えているんです!」
ナマエはこの上なく愉快な気持ちになったが、ハーマイオニーの「透明マント無しに夜中に抜け出すのは危険だわ」という言葉を思い出していた。
確かにその通りだった。マルフォイの二の舞にならないようにしなくては。
ナマエはしばらくそのままタペストリーの中に潜んで待った。
塔のてっぺんから物音が聞こえた。きっとノーバートを無事に引き渡したのだろう。
ナマエはもう帰ってもよいだろうと思い、タペストリーから外をちらりと見た。
血の気が引いた。物音もなく、ミセス・ノリスが塔の上に続く螺旋階段を駆け上がっていた。
まずい、そう思ったがまもなくフィルチが現れた。階段を登らず、その場でじっとしていた。これではハリーたちに知らせることもできない。
ミセス・ノリスがフィルチのもとに舞い戻り、猫と主人は揃って階段を見上げていた。
ナマエはハリーたちがどうか音を立てずに、透明なまま降りてきますようにと祈った。
その祈りも虚しく、フィルチの嬉しそうな声が聞こえた。
「さて、さて。これは困ったことになりましたなあ。え?」
ナマエがこっそり覗くと、ハリーとハーマイオニーがフィルチに連行されていく姿が見え、頭を抱えた。
(なんで透明マントを着ていないんだ、あの二人は……)
達成感で気が緩んだのか、マルフォイが捕まったことで有頂天になったのだろうか。
全員の足音が聞こえなくなるまで待ち、一人無事なナマエは若干の責任感を抱き、塔のてっぺんに向かった。
すり足で床を歩くと、何もないはずの場所で柔らかいものに触れた。透明マントだ。
「すごいな」
ナマエはほう、と賞賛のため息をついた。
霞のような不思議な布だった。体に纏うと液体のような感触がした。足元を見下ろすと、自分の足があるはずの場所には影も形もなく、ただ埃っぽい床があるだけだった。
ナマエはハリーの忘れ物を回収し、──素直に言うと、楽しみながら──寮へと戻っていった。
寮へ帰る途中、教室から誰かがめそめそ啜り泣くような声が聞こえてきた。ナマエが声のする方に近寄ってみるとクィレルの声がした。
「ダメです……もうどうぞお許しを……」
誰かに脅されているようだった。透明になったナマエは気が大きくなっていたので、さらに近づいてみた。
「わかりました……わかりましたよ……」
クィレルのすすり泣くような声が聞こえる。次の瞬間、クィレルが曲がったターバンを直しながら、教室から急ぎ足で出てきた。蒼白な顔をして、いまにも泣き出しそうだ。クィレルの足音が聞こえなくなるのを待って、教室をのぞいた。誰もいない。だが、反対側のドアが少し開いたままになっていた。
「……誰と話していたんだ?」
ナマエは、疑問に思いながらもほとんど確信していた。スネイプだ。スネイプがついにクィレルを説得してしまったのだ。
翌朝、寮の得点を記録している大きな砂時計の前で騒ぎが起こっていた。グリフィンドールの得点が一夜にして百五十点も減っていたからだ。
「あの、ハリー・ポッターが何人かと一緒に一晩でこんなに減らしたんだってさ」
テリーが言った。ナマエは頭を抱え、心底ハリーに同情した。
学校一の有名人で、賞賛の的だったハリーは今や一番の嫌われ者になっていた。レイブンクローやハッフルパフでさえ、ハリーを軽蔑していた。
ナマエは気まずい思いで朝食を食べた。食べ終わると、意を決して大広間を出る生徒の群れをかき分けてハリーのもとへ向かった。
「ハリー、なあ──」
「ごめん」
ハリーは逃げるように去ってしまった。ハーマイオニーは気遣わしげにちらりとこちらに目をやったが、すぐに行ってしまった。
ハリーの落ち込みようは尋常ではなかった。
みんながハリーを指さし、声を低めることもせず、おおっぴらに悪口を言った。一方スリザリン寮生は、ハリーが通るたびに拍手をし、口笛を吹き、「ポッター、ありがとうよ!」とはやしたてた。
ハリーはかなり責任を感じているらしく、ナマエが話そうとしても、頑なに「もう二度と首を突っ込むのはやめる」と言い張った。クィディッチチームを辞めることすら申し出たらしく、これにはナマエも仰天した。
ハーマイオニーも苦しんでおり、明らかに授業で挙手する回数が減った。
「ロン、あいつら大丈夫なのか」
ナマエは男子トイレで一緒になったロンを捕まえて、問いただそうとした。
ロンは肩をすくめた。
「ネビルがさ、マルフォイのことを知らせようとハリーたちを追っかけてたんだ。それで、一人五十点減点。ネビルはハリーたちにからかわれたと思ってるんだ」
「それは……かわいそうに」
ナマエは他に何も言えなかった。
自分はちゃんとマルフォイを見張っていたと弁明したかったし、クィレルとスネイプの話も伝えたかった。それに、透明マントをハリーに返す必要があった。しかし、ネビルが危険を知らせようと、真夜中に一人でハリーたちを探していたなんて……ネビルにしてみればどんなに大変なことだっただろうと思うと胸が痛くなった。ハリーにしてみればナマエ以上につらいのは当然だろう。
「ま、でもドラゴンは無事引き渡せたみたいだし」
ロンはそう言って完治した手を振って去っていった。
ナマエは、ハリーに声を掛られぬまま試験の日が近づいていることにかえってほっとしていた。試験勉強に没頭することで、少しは後ろめたさを忘れることができた。
試験が終わり、ナマエはテリー、マイケル、アンソニーたちと自己採点で盛り上がった。
アンソニーが出し抜けに言った。
「レイブンクローの誰かひとりでもグレンジャーに勝てると思う?」
ナマエはその名前にぎくりとしたが、全員が自信なさげにうめいた。
「ロウェナ・レイブンクローが泣くね」
マイケルがつぶやいた。
ナマエはその日の午後、なんだか落ち着かなくてハグリッドに会いにいった。
ハグリッドはノーバートが元気でやっていけるか、移動で酔ってしまっていないか、いじめられないかと心底心配そうにおいおい泣いたが、ナマエが根気よくなだめ、最後は弱々しく笑った。
「ありがとうよ、ナマエ。お前さんはいいやつだ」
「ハグリッドもいいママだと思うよ」
ハグリッドはその言葉に再び目を潤ませ、鼻をちーんとかんだ。ナマエはハグリッドの振る舞う野生みあふれる料理や歯が欠けそうな硬いクッキーを出される分だけ平らげた。
突然、ナマエはある考えが頭に浮かんだ。
「ハグリッド、ノーバートの卵はどんなやつがくれたんだ?」
「わからんよ。マントをすっぽり着たままだったしな」
ハグリッドはこともなげに答えた。ナマエは絶句した。
「そんなに珍しいこっちゃない。『ホッグズ・ヘッド』なんてとこにゃ……村のパブだがな、おかしなやつがウヨウヨしてる。顔も見んかったよ」
「ハグリッド。そいつとなんの話をしたんだ?相手は何を聞きたがってた?」
ハグリッドは思い出そうとして顔をしかめた。
「うん……どんな動物を飼ってるかって聞いてきたんで……それに答えて……それで、ほんとはずーっとドラゴンが欲しかったって言ったな……それから……そうさなあ……うん、ドラゴンの卵を譲ってやってもいいっていいよった……ただしちゃんと飼えなきゃだめだって、だから言ってやったよ」
「……なんて言ったんだ?」
ナマエはなるべく落ち着いた声で聞いた。
「フラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだって……フラッフィーなんか、ちょいと音楽を聞かせればすぐねんねしちまうって……」
ハグリッドは突然、しまった大変だという顔をした。
「おまえさんに話しちゃいけんかったんだ!」
ハグリッドは慌てて言った。
「わかった、俺は何も聞いてない。大丈夫」
ナマエはそう言ったが、心臓がバクバクと脈打った。
賢者の石を狙うスネイプが、フラッフィーの出し抜き方を聞き出すためにハグリッドに接触したのだとしたら辻褄が合う。そうじゃなければ、ずっとドラゴンの卵を欲しがっていたハグリッドが、たまたま村のパブなんかで卵を手に入れられるはずがない。
「……ハグリッド、そろそろ城に戻るよ」
「お、おう。気いつけるんだぞ」
ナマエはファングを一撫でしてハグリッドの小屋を出ると、城に向かって一目散に走り出した。
ハリーたちに会わなければ。いや、もっと早くにそうするべきだったのに!
ナマエは城内に入ると、大広間に飛び込んでキョロキョロ見回した。
何人かがナマエのほうを振り向いたが、ハリーたちの姿はない。
「ナマエ、だれを探してるの?」
背後から声がした。汗だくでぜいぜいと荒い息のナマエが振り返ると、ネビルが不思議そうに立っていた。
「はあ、は…、げほっ…ハリー……どこにい、ハアっ、見た?」
ナマエは息絶え絶えで答えた。
「知ってるよ、僕さっき……」
「どこっ?!どこで……ゲホっ!」
「職員室の前だ。思い出し玉をまたなくしちゃったから、届けられてないかと思って聞きにいったんだ──」
「助かる!」
ネビルが言い終わる前にナマエは再び駆け出した。ネビルの思い出し玉とやらを見つけたらきっと届けてやろう。そう思った。
階段を駆け上がると脇腹が痛み、ハグリッドの小屋での食事を後悔した。
廊下に差し掛かり、突き当たりを曲がると突然黒い影に衝突して尻餅をついた。
「うわっ!悪い……はあ、え?」
ナマエが顔を見上げると、さっと血の気が引いた。
「やけに元気が良いですな?ミョウジ」
スネイプがとってつけたようなゆがんだほほえみを浮かべて立っていた。