賢者の石
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ロンの予告よりもクィレルは粘りを見せた。
それから何週間かが経ち、ますますやつれて見えたが、口を割った気配はなかった。スネイプは相変わらず不機嫌にマントを翻して歩いていたが、それこそ石がまだ無事だという証拠でもあった。
ナマエはそれとなく禁じられた廊下に足を運び、三頭犬のフラッフィーの寝息が聞こえることを確かめてはほっと胸を撫でおろした。
クィレルに敬意を払うように努めたし、スネイプにはストレスを与えようと面倒な質問を投げかけて無視されたりした。
試験は十週間も先なのに、先生たちはどっさりと宿題を出した。ナマエはテリーたちと一緒に授業以外の時間はほとんど図書館にこもっていた。
「得意教科はあるかい、ナマエ。ああ、飛行術以外でね」
勉強に疲れたテリーが世間話を始めたが、やはり勉強の話だった。
「教えるのがスネイプじゃなけりゃ、魔法薬学だったかもな」
ナマエはフン、と鼻を鳴らした。
「まあでも、変身術は好きだな。マクゴナガルみたいに俺もアニメーガスになりたい…」
ナマエは変身術が得意教科であることを示すため、書き損じた羊皮紙を蝶に変えて飛ばして見せた。
「おい、マダム・ピンスに見つかったら摘み出されるぞ」
マイケルがちらりと受付のマダム・ピンスを盗み見て言った。
ナマエは「そうかもな」と言って伸びをしながら席を立ち、蝶を追いかけた。
隣の書架で羊皮紙の蝶に追いつくと、片手でぐしゃりと捕まえた。ナマエはクィディッチのシーカーを思い出してふふ、と笑った。
なんとなく人の気配を感じて笑いを引っ込めたが、その正体は壁のように大きく立ちはだかるハグリッドだった。
「ハグリッド!珍しい。何してるんだ?」
思いもよらぬ遭遇にナマエは興味津々だったが、ハグリッドはモジモジごまかした。
「いんや、ちーっと見てただけだ。お前さんは何しちょるんだ。まさかニコラス・フラメルを調べちょるんじゃあるまいな?」
「それはもうハーマイオニーがとっくに見つけたよ、賢者の──」
「シーっ!」
ハグリッドは急いで周りを見渡した。
「そんなことを言いふらしちゃいかん。危険だ」
「でも……」
ナマエは食い下がろうとした。そもそも、ハグリッドがここにいること自体が怪しいのだ。
しかし、ハグリッドを問い詰めるように見上げるとハグリッドの背後の書架のラインナップが目に入った。
『イギリスとアイルランドのドラゴンの種類』『ドラゴンの飼い方――卵から焦熱地獄まで』……。
「──ドラゴン?」
ナマエが呟くとハグリッドはぎょっとした。
ナマエは当たった!と思い、捲し立てた。
「ハグリッド、ドラゴンの本を探してたんだな?その手に持ってる本もそうか?三頭犬だけじゃなくてドラゴンも賢者の石を守ってるのか?それとも──」
「シーッ!いいか?……後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて約束はできねぇが。こんなとこでそんな話をされちゃ困る」
「わかった。後で行く」
ナマエが食い気味にこくりと頷くとハグリッドはモゾモゾ出て行った。
「わっ、ナマエ。今、ハグリッドがいたよな?」
ロンが本棚の間から現れたので、ハグリッドとのやりとりを話して聞かせた。
一時間後、ナマエ、ハリー、ロン、ハーマイオニーがハグリッドの小屋を訪ねると、驚くほど蒸し暑かった。
ハグリッドはお茶を入れ、イタチの肉を挟んだサンドイッチをすすめたが、ナマエ以外は遠慮した。
サンドイッチを頬張るナマエを見て、ロンがハグリッドに聞こえないように言った。
「君ってほんと、なんでも食べるよな」
ナマエは無視してサンドイッチを頬張っていた。ハリーが暑さに耐えかねて窓を開けようとすると、ハグリッドが止めた。
「開けちゃなんねえ!こいつがもう孵るとこだ!」
ハグリッドは轟々と燃え盛る暖炉の窯を愛おしげに見つめた。鎌の中には黒い大きな卵がゆらゆら揺れていた。
「それって、ドラゴンの卵…」
ロンが息を呑むと、ハグリッドは興奮気味にテーブルに卵を置いた。
全員が卵に釘付けになった。
突然卵がミシッと割れ、赤ちゃんドラゴンがテーブルに飛び出てきた。しわしわの湿ったコウモリのようだった。
赤ちゃんがくしゃみをすると、火花が散り、目玉がぎょろりとこぼれ落ちそうになった。
「すばらしく美しいだろう?ノルウェー・リッジバック種だ」
ハグリッドがそう言うと、ナマエが弾かれたように上がり、窓際に駆け寄った。
「どうしたの?」
ナマエはハーマイオニーの問いに答えずに素早くドアから飛び出した。
城に駆けていく後ろ姿は間違いなくマルフォイだった。
「ロコモーター・モルティス!」
ナマエはマルフォイに向かって足縛り呪いを飛ばした。
呪文はマルフォイに命中し、無様に地面に転がった。
「マルフォイ。何をしにきた」
「君こそ、何をしていたんだ?ミョウジ」
マルフォイはひっくり返りながら気丈にもせせら笑った。
「……俺に忘却術を使わせたいのか?まだ人にかけたことがないから、ママの名前を忘れちまうかもな」
ナマエが杖を突きつけながらゆっくりマルフォイに近づくと、マルフォイがさっと杖を握った。
「お前が母親を知らないのは忘却術をかけられたせいなのかい?かわいそうに」
ナマエはかっと頭に血が昇るのを感じたが、次の瞬間にはマルフォイは自分で呪いを解いて走り出した。
ナマエはその場に立ち尽くして走り去るマルフォイを見つめた。
「ナマエ!」
ナマエがハグリッドの小屋に戻ると、ハリーが振り返った。ロンが手から血を流し、ハーマイオニーがハンカチでそれを抑えていた。
ハグリッドは「だめだ、ノーバート!悪い子だ!」と赤ちゃんドラゴンを叱りつけていた。もう名前がついたらしい。
ナマエがロンの傷を覗き込むと、ロンが呻いた。
「噛まれたんだ。一週間は羽根ペンを持てないぜ」
「……そうはならない」
ナマエは言うと杖を取り出し、もう片方の手でロンを手をそっと握って杖先でハンカチをどけた。
呪文を唱えながら杖で傷口をそっとなぞると、みるみる傷口が閉じていった。
「マーリンの髭!ナマエ、もう癒術を使えるのかい?」
ロンは綺麗になった手をまじまじと見ながら言った。
「ああ、まあ。少しだけ」
「すごいわ、ナマエ。どうやって練習したの?どの本?」
「親父が聖マンゴに勤めてるから、教えられた」
ハーマイオニーに尋ねられてナマエは困ったような照れたような顔をした。
しかし、ロンに向き直ると低い声で忠告した。
「でも、ドラゴンにやられた傷だろう。毒があるかもしれない。もしそうなら、マダム・ポンフリーを頼るしかないぜ」
ロンは返事の代わりに呻き声をあげた。ハリーが口を開いた。
「外に誰かいたの?」
「……マルフォイだ。多分、ドラゴンを見られた」
ナマエは心配そうに青ざめているハグリッドに向き直った。
「ハグリッド。ドラゴンの個人飼育は違法だ。そうだろ」
ハグリッドは何か言おうと口を開きかけたが、ナマエは遮って続けた。
「事が大っぴらになる前にロンの兄弟に保護してもらおう。きっとマルフォイはドラゴンのことを告げ口するけど、実物がいなきゃ誰も信じない。ロン、君の兄貴のチャーリーはルーマニアでドラゴンの研究をしているんだったな?チャーリーにノーバートを預けることはできるか?」
「名案!ハグリッド、どうだい?」
ロンも賛成だ。四人は一生懸命説き伏せ、ハグリッドはとうとう、チャーリーに頼みたいというふくろう便を送ることに同意した。
チャーリーからの返事はすぐに来た。土曜日の真夜中、ホグワーツの一番高い塔にドラゴンを迎えに来るらしかった。違法飼育のため、誰にも見られないように連れて行かなければならなかった。
「ロン、いい兄貴だな」
ロンは医務室のベッドに横になっていた。ノーバートに噛まれた手が三倍の大きさに腫れ上がっていた。
「ああでも、大変だ。さっきマルフォイがやってきたんだ。チャーリーからの手紙を見られたんだ」
ナマエとハーマイオニーは顔を見合わせた。
マダム・ポンフリーが「面会の時間は終わりです!」とぴしゃりと言い放ち、ナマエ、ハリー、ハーマイオニーは医務室を追い出された。
「いまさら計画は変えられないよ」
ハリーは言った。
「チャーリーに知らせる時間はないし、こっちには透明マントがあるってこと、マルフォイはまだ知らないんだ」
ナマエは二人の肩を叩いた。
「あんたたち二人で運べるか?透明マントで動くなら同じ寮のほうがいいだろう。俺はマルフォイを見張ってるよ」
「透明マント無しに夜中に抜け出すのは危険だわ」
ハーマイオニーはナマエを心配そうに見た。
「慣れっこだ」
ナマエが笑った。
それから何週間かが経ち、ますますやつれて見えたが、口を割った気配はなかった。スネイプは相変わらず不機嫌にマントを翻して歩いていたが、それこそ石がまだ無事だという証拠でもあった。
ナマエはそれとなく禁じられた廊下に足を運び、三頭犬のフラッフィーの寝息が聞こえることを確かめてはほっと胸を撫でおろした。
クィレルに敬意を払うように努めたし、スネイプにはストレスを与えようと面倒な質問を投げかけて無視されたりした。
試験は十週間も先なのに、先生たちはどっさりと宿題を出した。ナマエはテリーたちと一緒に授業以外の時間はほとんど図書館にこもっていた。
「得意教科はあるかい、ナマエ。ああ、飛行術以外でね」
勉強に疲れたテリーが世間話を始めたが、やはり勉強の話だった。
「教えるのがスネイプじゃなけりゃ、魔法薬学だったかもな」
ナマエはフン、と鼻を鳴らした。
「まあでも、変身術は好きだな。マクゴナガルみたいに俺もアニメーガスになりたい…」
ナマエは変身術が得意教科であることを示すため、書き損じた羊皮紙を蝶に変えて飛ばして見せた。
「おい、マダム・ピンスに見つかったら摘み出されるぞ」
マイケルがちらりと受付のマダム・ピンスを盗み見て言った。
ナマエは「そうかもな」と言って伸びをしながら席を立ち、蝶を追いかけた。
隣の書架で羊皮紙の蝶に追いつくと、片手でぐしゃりと捕まえた。ナマエはクィディッチのシーカーを思い出してふふ、と笑った。
なんとなく人の気配を感じて笑いを引っ込めたが、その正体は壁のように大きく立ちはだかるハグリッドだった。
「ハグリッド!珍しい。何してるんだ?」
思いもよらぬ遭遇にナマエは興味津々だったが、ハグリッドはモジモジごまかした。
「いんや、ちーっと見てただけだ。お前さんは何しちょるんだ。まさかニコラス・フラメルを調べちょるんじゃあるまいな?」
「それはもうハーマイオニーがとっくに見つけたよ、賢者の──」
「シーっ!」
ハグリッドは急いで周りを見渡した。
「そんなことを言いふらしちゃいかん。危険だ」
「でも……」
ナマエは食い下がろうとした。そもそも、ハグリッドがここにいること自体が怪しいのだ。
しかし、ハグリッドを問い詰めるように見上げるとハグリッドの背後の書架のラインナップが目に入った。
『イギリスとアイルランドのドラゴンの種類』『ドラゴンの飼い方――卵から焦熱地獄まで』……。
「──ドラゴン?」
ナマエが呟くとハグリッドはぎょっとした。
ナマエは当たった!と思い、捲し立てた。
「ハグリッド、ドラゴンの本を探してたんだな?その手に持ってる本もそうか?三頭犬だけじゃなくてドラゴンも賢者の石を守ってるのか?それとも──」
「シーッ!いいか?……後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて約束はできねぇが。こんなとこでそんな話をされちゃ困る」
「わかった。後で行く」
ナマエが食い気味にこくりと頷くとハグリッドはモゾモゾ出て行った。
「わっ、ナマエ。今、ハグリッドがいたよな?」
ロンが本棚の間から現れたので、ハグリッドとのやりとりを話して聞かせた。
一時間後、ナマエ、ハリー、ロン、ハーマイオニーがハグリッドの小屋を訪ねると、驚くほど蒸し暑かった。
ハグリッドはお茶を入れ、イタチの肉を挟んだサンドイッチをすすめたが、ナマエ以外は遠慮した。
サンドイッチを頬張るナマエを見て、ロンがハグリッドに聞こえないように言った。
「君ってほんと、なんでも食べるよな」
ナマエは無視してサンドイッチを頬張っていた。ハリーが暑さに耐えかねて窓を開けようとすると、ハグリッドが止めた。
「開けちゃなんねえ!こいつがもう孵るとこだ!」
ハグリッドは轟々と燃え盛る暖炉の窯を愛おしげに見つめた。鎌の中には黒い大きな卵がゆらゆら揺れていた。
「それって、ドラゴンの卵…」
ロンが息を呑むと、ハグリッドは興奮気味にテーブルに卵を置いた。
全員が卵に釘付けになった。
突然卵がミシッと割れ、赤ちゃんドラゴンがテーブルに飛び出てきた。しわしわの湿ったコウモリのようだった。
赤ちゃんがくしゃみをすると、火花が散り、目玉がぎょろりとこぼれ落ちそうになった。
「すばらしく美しいだろう?ノルウェー・リッジバック種だ」
ハグリッドがそう言うと、ナマエが弾かれたように上がり、窓際に駆け寄った。
「どうしたの?」
ナマエはハーマイオニーの問いに答えずに素早くドアから飛び出した。
城に駆けていく後ろ姿は間違いなくマルフォイだった。
「ロコモーター・モルティス!」
ナマエはマルフォイに向かって足縛り呪いを飛ばした。
呪文はマルフォイに命中し、無様に地面に転がった。
「マルフォイ。何をしにきた」
「君こそ、何をしていたんだ?ミョウジ」
マルフォイはひっくり返りながら気丈にもせせら笑った。
「……俺に忘却術を使わせたいのか?まだ人にかけたことがないから、ママの名前を忘れちまうかもな」
ナマエが杖を突きつけながらゆっくりマルフォイに近づくと、マルフォイがさっと杖を握った。
「お前が母親を知らないのは忘却術をかけられたせいなのかい?かわいそうに」
ナマエはかっと頭に血が昇るのを感じたが、次の瞬間にはマルフォイは自分で呪いを解いて走り出した。
ナマエはその場に立ち尽くして走り去るマルフォイを見つめた。
「ナマエ!」
ナマエがハグリッドの小屋に戻ると、ハリーが振り返った。ロンが手から血を流し、ハーマイオニーがハンカチでそれを抑えていた。
ハグリッドは「だめだ、ノーバート!悪い子だ!」と赤ちゃんドラゴンを叱りつけていた。もう名前がついたらしい。
ナマエがロンの傷を覗き込むと、ロンが呻いた。
「噛まれたんだ。一週間は羽根ペンを持てないぜ」
「……そうはならない」
ナマエは言うと杖を取り出し、もう片方の手でロンを手をそっと握って杖先でハンカチをどけた。
呪文を唱えながら杖で傷口をそっとなぞると、みるみる傷口が閉じていった。
「マーリンの髭!ナマエ、もう癒術を使えるのかい?」
ロンは綺麗になった手をまじまじと見ながら言った。
「ああ、まあ。少しだけ」
「すごいわ、ナマエ。どうやって練習したの?どの本?」
「親父が聖マンゴに勤めてるから、教えられた」
ハーマイオニーに尋ねられてナマエは困ったような照れたような顔をした。
しかし、ロンに向き直ると低い声で忠告した。
「でも、ドラゴンにやられた傷だろう。毒があるかもしれない。もしそうなら、マダム・ポンフリーを頼るしかないぜ」
ロンは返事の代わりに呻き声をあげた。ハリーが口を開いた。
「外に誰かいたの?」
「……マルフォイだ。多分、ドラゴンを見られた」
ナマエは心配そうに青ざめているハグリッドに向き直った。
「ハグリッド。ドラゴンの個人飼育は違法だ。そうだろ」
ハグリッドは何か言おうと口を開きかけたが、ナマエは遮って続けた。
「事が大っぴらになる前にロンの兄弟に保護してもらおう。きっとマルフォイはドラゴンのことを告げ口するけど、実物がいなきゃ誰も信じない。ロン、君の兄貴のチャーリーはルーマニアでドラゴンの研究をしているんだったな?チャーリーにノーバートを預けることはできるか?」
「名案!ハグリッド、どうだい?」
ロンも賛成だ。四人は一生懸命説き伏せ、ハグリッドはとうとう、チャーリーに頼みたいというふくろう便を送ることに同意した。
チャーリーからの返事はすぐに来た。土曜日の真夜中、ホグワーツの一番高い塔にドラゴンを迎えに来るらしかった。違法飼育のため、誰にも見られないように連れて行かなければならなかった。
「ロン、いい兄貴だな」
ロンは医務室のベッドに横になっていた。ノーバートに噛まれた手が三倍の大きさに腫れ上がっていた。
「ああでも、大変だ。さっきマルフォイがやってきたんだ。チャーリーからの手紙を見られたんだ」
ナマエとハーマイオニーは顔を見合わせた。
マダム・ポンフリーが「面会の時間は終わりです!」とぴしゃりと言い放ち、ナマエ、ハリー、ハーマイオニーは医務室を追い出された。
「いまさら計画は変えられないよ」
ハリーは言った。
「チャーリーに知らせる時間はないし、こっちには透明マントがあるってこと、マルフォイはまだ知らないんだ」
ナマエは二人の肩を叩いた。
「あんたたち二人で運べるか?透明マントで動くなら同じ寮のほうがいいだろう。俺はマルフォイを見張ってるよ」
「透明マント無しに夜中に抜け出すのは危険だわ」
ハーマイオニーはナマエを心配そうに見た。
「慣れっこだ」
ナマエが笑った。