どういう意味だと聞かれても
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ロビーのソファ。
柔らかく沈む背もたれに身を預けながら、主任はさっきから落ち着かない様子だった。
隣に座りながらもしばらくは気づかないふりをして、のんびりとコーヒーを啜っていたが。
「……主任、なにソワソワしてんの」
「あ、いえ……さっきの……」
「さっき?」
俺の方が気になってしまって声をかける。
すると主任は、もじもじとクッションをいじっていた手をぐっと握りしめてから、じっとこちらを見上げた。
「ダニエルさん、さっき言ってましたよね。私とは『1年以上前から縁がある』って」
「あぁ? 事実だろ」
「その後の言葉です」
コーヒーを置いて、ゆっくりと主任を見返す。その頬は赤く染まって、視線は揺れていた。
……やっぱり、あの一言が引っかかっているのか。
そんな顔してまで確認してくるなんて、かわいい奴。
こういう時の主任をあえて焦らしてやりたくなってしまうのは、俺の悪い癖だ。
「『よく頑張ったな』……だろ?」
「それも、嬉しかったです。でも、その後の……!」
ちょっと語気が強くなった自分に自分で驚いたのか、慌てて口を噤む様子に思わず苦笑した。
からかうように眉を上げてから口を開く。
「……『末永くよろしく頼むぜ?』ってやつか」
「はい!」
即答。ためらいもなく。
かわいすぎて吹き出しそうになったけど、なんとか耐えた。
──ああ、まったく。
そんな顔されたら、からかった態度で包んだ言葉が本気みたいになるだろうが。
コイツはまだ気づいていない。今後も気づかないかもしれない。
俺がどれだけ、ずっと前から見ていたか。
「……それ、どういう意味で言ってます?」
だからそんな問いかけももはや腹立たしい。
「あーあー、……そんなんいちいち聞くなよ、野暮だな」
へらへらといつものように笑って流すのが精一杯だった。
本気だなんて、簡単に言ったら終わりそうで。
だから今までも腹の中の冷えたり燃えたりするものは表に出してこなかったのに、次々と声をかけられている主任を見たら、思わず発してしまっていた。
ほとんどの奴らと違って1年以上縁があることも、今後も傍に置いておきたい気持ちも。
やっちまったか、そう心の中で呟きながら目を軽く伏せて自分の言動を振り返っていると、腹のあたりに、軽い衝撃と体温を感じた。
主任が抱き着いてきたらしい。
主任はそのまま俺の腹に顔を埋めながら呟く。
「……ダニエルさんがそういうこと言ってくれるって思ってなかったぁ……」
その声は少し震えていた気がして、胸の奥がざわついた。
俺はそんな甘え方を受け止めながら、頭に手を添えて、くしゃりと撫でる。
「なんだよ、心外だな」
「だって、ダニエルさんっていつも軽いから……」
「お前が俺を重くさせたんだろ~? 責任とってもらわねーといけねえな」
「……それってやっぱり、どういう意……んっ⁉」
またつまらないことを聞いてこようとしたから、覆いかぶさるように体を曲げる。
体重を少しだけかけると、主任がくすぐったそうに笑った。
「ふふ、ちょっと……重いって物理的な話ですか? 苦しいですってば」
「ひでぇ。これでも加減してやってんだけど」
そんなやりとりが、こんなにも愛しい。
やっぱり、“末永く”手離す気なんてさらさらない。
だから抜け出そうともがく主任の身体を抑え込んで、言ってやった。
「こら、逃げんな」
気づかせたのは、お前だろ。
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