浮気症後日談
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ぼくは女の子を見る目がないのだろう。
一緒に歩いている彼女の視線の先を追うと、綺麗な女の人が立っている。
普通こういうの、逆じゃないのか。
「……こら」
ぐいと頬をつまむ。
「いっ……! ご、ごめんて!」
指を離すとつままれたところを擦りながら「いたーい……」と文句をたれている。
「浮気者」
「う、浮気じゃないよ、綺麗だなって見てただけ」
「……はあ」
「……うう、すみません……」
彼女はいわゆる両性愛者らしい。ぼくと付き合う前には女の子が女の子を相手する……俗な言葉で言えばレズ風俗、で時々欲を満たしていたとか。
ぼくと付き合ってからはやめてくれたけれど、それでも女好きは治らないらしい。
本人曰く「恋愛対象ではなく純粋に綺麗だと思っているだけ、芸術みたいなもんだよ」とのことだがそれでも面白くないことはわかってくれやしない。
前に、やり返してやろうと思って、アパートの大家さんが美人だという話をしたことがあった。
嫉妬する姿を期待したのに、彼女から出た言葉は『いいな!』だ。
『私も綺麗な大家さんにお家賃渡しに行きたい……』
『……家賃は振込だから直接会わないよ』
そのときもほっぺたをつねってやったっけ。
何でこんなヤツを好きなのか、と疑問を抱かれるかもしれないが、順番が逆なのだ。
もう好きになってしまった後、この事実を知った。驚きはしたが、好きだという気持ちがなくなるようなものではなかった。
そんなことを思い出していると、「あのね」と話しかけられる。
「成歩堂くんが一番だよ」
「そうじゃなかったら訴えてる」
強めに返すとまたばつが悪そうに下を向いてしまう。たまにはお灸を据えてやらねばならない。
「……今までだって、成歩堂くん以外誰にも恋愛感情持ったことないもん」
拗ねたようにそう呟かれたが、だから他の女にフラフラ目線を移すのを許せとでも言うのか。
「知ってる。恋愛感情ない相手と遊んできたんだもんな、今まで」
たっぷり皮肉を込めてやると彼女は押し黙った。
「……ごめんなさい……」
「どうしようかな」
「うう……」
しょげかえっているが浮気症な方が悪い。ぼくは悪くないはずだ。……そう思っているのに、これ以上責めるのもそれはそれで気が引けるというもので。
「……これからは目移りしない?」
「し……ません……」
「そこはもう少しハッキリ言いきってくれよ」
「しませえん……」
……これは信用していいのか……?
「もし次やったら別れ」
「それはやだ!!」
即答だった。その反応は嬉しいけれど、なんとも言えない複雑な気分になる。だったら、尚更他の女に目移りしないでほしい。
「じゃあやめるって 約束できるかい?」
「約束するから嫌いにならないで……」
「…………」
泣きそうな顔で言われてしまった。本当にずるいと思う。こうやって甘えてぼくが折れることを知っているのだ。
「わかったよ、仕方ないな」
ため息をつくとぱっと表情が明るくなる。本当に単純な奴だと思う。
そういうところも可愛いけれど。
「大好き……!」
抱きついてきた彼女を受け止めながら、これでしばらく大人しくしてくれればいいんだけど、と願いつつ、さっきまでの苛立ちはどこへやら、思わず笑みを浮かべてしまう。
「……ぼくもだよ」
結局、惚れた弱味というやつなのだ。
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