寝ているときに見た夢
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名無し名無しは、バスに揺られていた。
ボケッと窓の外を見ていると、2人の人物に目が止まる。
途端に彼女の世界がスローモーションになった。
成歩堂龍一、彼女が密かに思いを寄せる男と、黒髪の女性が信号待ちをしながら仲睦まじそうに笑っている。
黒髪の女性は、葉桜院あやめ。成歩堂のかつての恋人だ。
名無しは反射的に降車ボタンを押して、目的地とはまったく違う場所でバスを降りた。
少し距離があるから、2人は名無しに気づかない。
詳しいことは知らないが、あの様子はただの友人関係などではないとわかってしまった。
かつての、そう、かつての、彼女だったはず。
しかし、確か、誤解が解けて。それで。
思わずバスを飛び降りた名無しだが、何もできることはない。
ぽっかりと心に穴が空く。これは失恋だ。
死ぬほど辛い。死ぬほど辛いが、突っ立っていても仕方がない。
そう思った名無しが踵を返そうとしたとき、もう1人のあやめが2人に駆け寄った。
同一人物が2人、その場に存在することになる。
「あ、あやめさんが……2人……?」
名無しも慌てて駆け出し、3人と合流する。合流したところで、なんだというのか。それでも、思わず近づいてしまった。
すると、成歩堂と共にいた方のあやめが、不適に口角を上げた。
「あら、バレちゃったのね」
その言葉で、その場は電気が走ったように固まる。
髪こそ黒に染めているが、この女性は葉桜院あやめではない。
双子の姉、美柳ちなみだ。
「な、なんで……お姉さま……」
後から駆けてきた方、つまり本物のあやめが震える声で呟く。
「言っておくけど、このオトコを好きな訳じゃないわ。あやめ、アンタの幸せも、このオトコの幸せも奪ってやりたかった。ただそれだけよ」
ちなみは名無しを見やって、続ける。
「もう1人、苦しめることができたみたいだけれど。ふふ、ふふふ……」
様々な思いを飲み込んで、名無しがやっと口を開いた。
「さすが、やってくれたわ……ちなみさん」
「うふふ、あはは! バッカみたい!」
「……安心した、貴女が貴女のままで」
「あはは、あははははは!」
ちなみの笑い声が、響き渡った。
「っ?!」
名無しがベッドから飛び起きる。
「ゆ、夢……なんてイヤな……」
美柳ちなみ。既に故人となった彼女は、成歩堂だけでなく、名無しの心まで蝕んでいるらしい。
「ほんと、やってくれる……はは……」
名無しは力なく笑った。
しばらく寝付けそうにないので、ベッドから出て窓辺に立ち、外を眺める。
「……もう二度とこんな悪夢を見ませんように」
効果があるかわからない願い事を、呟いた。
翌日、成歩堂に会いに行った名無しは、彼から悪夢を見たと聞かされる。
その悪夢の内容を聞いていいのか、そして名無しが自分の夢の内容を伝えるべきかは、わからない。
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