20周年記念
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「祝! 逆転裁判シリーズ20周年!」
みぬきがそう言ってパンツを掲げると、鳥やらうさぎやら、紙吹雪やらリボンやらが飛び出した。
「きゃっ……わあ、いつにも増して大盤振る舞いね」
驚きながらも飛び出したうさぎを捕まえて抱えたのは、名無しだ。
「えへへ、張り切っちゃった」
みぬきが舌を出しながら、コツンと自分の頭をこづく。
「それにしても、パパが法廷に初めて立ってから20年かあ……。……あれ? 20年? パパ今いくつ……」
「やめようか、みぬき。時空が歪むから」
龍一がそう言ってみぬきの言葉を止める。
「やれやれ……。作中の時系列では弁護士資格失ってるのに、告知やカフェでは弁護士だったりして難しいんだよね、こういう話するの。まあ、今のピアニストの状態でコラボカフェとか記念イラストとか描かれちゃうと、ぼくもちょっと困るんだけどさ」
「うーん、これこそ逆裁シリーズ最大のムジュン、だね!」
みぬきがうんうんと頷く。その横でうさぎをみぬきに渡しながら名無しが口を開いた。
「ふふ、まずはそのムジュンより先に部屋を片付けよっか?」
「あ、そうだった」
「これは……なかなか大変そうだね」
床に散らばったキラキラとした装飾。その上を跳び跳ねるうさぎ。天井付近を飛んだり、ソファーに止まっている鳥。
普段からカオスな事務所が、更なるカオスに見舞われていた。
「さ、お祝いのケーキ買ってあるから、終わったら食べよう? コーヒーや紅茶でも淹れて」
「わあっ、嬉しい! ショートケーキ?」
「うん、苺がたくさん乗ってるやつ」
「へえ、楽しみだな」
「龍一くん好きだもんねえ、苺がたくさん乗ったショートケーキ」
「名無しさん、いっつもそればっかり買ってくるよね」
「……昔、それが好きだって言ってたからつい」
「へー、そんなにパパのこと好きなんだあ……」
「ふうん……」
「2人して同じ顔で見ないでよっ」
みぬきと龍一がニヤニヤとしながら名無しを見る。
見られた本人は熱を持った顔をパタパタと扇ぎながら抗議した。
「ほら、みぬきも龍一くんも早く掃除する!」
「はあい」
「はいはい」
「もう……」
「じゃあみぬき、鳥さんから掴まえてこようかな」
みぬきが飛び回る鳥たちを捕まえるためにその場を離れる。
その後に続こうとした龍一の手を名無しが掴んで引き止めた。
「ん? どうしたの」
振り向いた龍一は首を傾げる。
「少しだけ、いい?」
「いいよ。……なに?」
優しい声色に、名無しが頬を緩ませる。そして一息吐いたあと、話し始めた。
「……20周年、おめでとう、龍一くん」
「はは……ありがとう」
「いっぱい、大変なこともあったし、今だって辛いこともあるだろうし」
「……うん」
「でも、龍一くんは立派な人だよ。ずっと。これからも。……会えてよかった」
「……ぼくも、きみに会えてよかった」
「嬉しい。……これからもよろしくね」
「こちらこそ」
「……えへへ、こういうときに、こういうこと、ちゃんと伝えたくて」
「……名無しちゃん」
龍一が彼女の頬に手を伸ばす。その瞬間、後ろから「あーっ!」と叫ぶ声がした。
「パパ、サボってイチャイチャしてる!」
「うわっ、ご、ごめんみぬき……」
「名無しさんもあんなに掃除するって言ってたのに!」
「ご、ごめんね、すぐやるから」
「いいもん、そしたらみぬきが1人でケーキ食べちゃうんだから!」
憤慨したみぬきが冷蔵庫に向かい、ケーキの箱を取り出した。
そしてうやうやしくお辞儀をする。
「さあ皆さま、こちらのケーキ、よおく見てて下さいね! みぬきがこのステッキで3回叩くとなんと……!」
「ちょ、ちょっとみぬき、まさか」
「みぬき、落ち着いて、ね?」
みぬきに怒られた2人が慌てて止めようとするが、空中から現れたステッキが動く方が早かった。
「1、2、3! ……なんと消えちゃいました!」
みぬきの言う通り、ケーキの箱はいとも簡単にその行方をくらましてしまった。
「…………」
「…………」
「2人が反省するまでケーキは出てきません!」
ぽかんとする2人に、腰に手を当てて頬を膨らませるみぬき。
2021年10月12日の、風景だ。
約1時間後、事務所の掃除が終わり、なんとかみぬきの機嫌を直して、仲良く3人でケーキにありつくことができたという。
なお、どういう仕組みかわからないがケーキはちゃんと冷えていたそうだ。
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