振り回される人
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「……で?釣りして飯食って帰って来たのかオマエは」
「…………」
「何だよそのデートは!?学生じゃねえんだぞ!?いくつだオマエは!それでもオトコかっての!」
「矢張、うるさい」
事務所に突然押し掛けてきた矢張に居酒屋に連れ出されたかと思ったら、説教を受けるハメになってしまった。
あーあ、来るんじゃなかった。
そう後悔するもぼくへの説教は止まらない。
「ったく、何年こじらせてんだよ……。やっと付き合ったのかと思えばやることやってねえなんて」
「……仕方ないだろ、急に変わるもんじゃないし」
「…………あっ」
「なんだよ」
急に何かに気づいたような矢張に顔を向けると、妙に真面目な顔をしている。
思わずぼくも心配になってしまい、ビールの入ったグラスを机に置き次の言葉を待った。
「……お前、まさかED」
「訴えるぞ!」
矢張が真面目なことを言うかもしれないだなんてどうして思ってしまったんだろうか。
矢張ではなく自分に対して呆れてしまう。
再びグラスを取りビールを口に含むと、再度矢張が口を開いた。
「でもよ成歩堂。マジな話さあ、名無しちゃんとそういうコトしたくない訳じゃねえだろ?」
「……そりゃあ、そうだけど」
「名無しちゃんがお前に惚れてんのは昔っからわかりきってたし、今はもうお互い大人だろ?手を出さないことが優しさじゃないぜ」
わかったような口を利く矢張には正直ムカつくが、ヤツの方がこの手の経験が多いのも確かだ。
ここはひとつ素直に返事をしてやろう。
「ああ、わかったよ」
「よしよし、本当にしょうがねえなあお前ら2人は。オレ様がいねえとちっとも進展しねえんだからよ!」
そう言って上機嫌になった矢張に対して、ぼくには引っかかるものがあった。
「……お前ら2人?」
「おうよ、名無しちゃんの相談に乗ってやってるのもこのオレ様よ?何度も名無しちゃんの悩みを……っ」
はっと口元を押さえる矢張だが、もう遅い。
人形のようにぎこちなく首を動かしてこちらを見る矢張の顔は完全にひきつっていた。
そんなヤツにぼくはあえて優しく聞いてやる。
「へえ、名無しちゃんの相談に……2人で会ってるのか?」
「え、いや、それは」
「1回もそんな話聞いたことなかったな。詳しく話してくれるだろ?」
「別に詳しく話すほどのもんじゃ……」
「…………」
「…………」
「……矢張」
「わかった!わかったから!そんな睨むなよなあ!」
いつものように少し問い詰めただけで汗をたらし挙動不審になり、両手をあごの下で握って怯えた矢張がそう叫んだ。
ヤツの話によると、今回のぼくのように、名無しちゃんは矢張と2人で居酒屋に行くことが度々あるらしい。
面白くはないが、彼女がぼくと幼なじみであるということは、彼女と矢張も幼なじみということだ。
居酒屋に行ったくらいで本気で怒っている訳ではない。
ただ、ぼくのことなのにどうして本人ではなく矢張に相談なんてするのだろうか。
そういったことも含めて、これはまた名無しちゃんにも直接話を聞く必要がありそうだ。
今回はこれくらいで程々にしてやるか、そう思った矢先に。
「ったく、嫉妬はイッチョマエかよ……」
瞬間、ぼくの脳内には“尋問開始”の文字が流れるのだった。
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