振り回される人
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「送ってくれてありがとう」
「うん、おやすみ」
「送り狼になってくれてもいいんだよ?」
冗談半分、本気半分でそう言うと成歩堂くんに頭を小突かれた。
「ばか。女の子がそういうこと言うもんじゃないだろ」
今回もやっぱり家に上がるつもりはないらしい。
こういうところは成歩堂くんの良いところでもあるけれど、同時に残酷だとも思う。
「酷いなあ……」
「そんな痛くないだろ」
「……頭はね」
最後につぶやいた言葉は相手に届かず、当人は不思議そうにこちらを見ている。
これはまた矢張くんに相談しなきゃだなあと苦笑すると、更に不思議そうにしていた。
「よくわかんないけど、ちゃんと早く寝なよ?」
「うん、わかってる。おやすみなさい」
「じゃあまた」
「うん」
「…………」
「…………」
「……名無しちゃんが中に入ってくれないと帰れないんだけど」
「ええ、私は成歩堂くんを見送ってから帰るつもりなのに!」
しばらくの沈黙とビミョウな空気の中、お互いに見送ろうとしていたことが発覚する。
成歩堂くんの背中を見てから帰ろうと思っていたのだが、その彼に肩を掴まれて建物の方を向かされてしまった。
「だめ、ほら早く中に入って」
「えー……はいはい、気をつけて帰ってね」
「ぼくは男だから心配しなくていいよ」
「いやいや、最近世の中物騒だし、成歩堂くんはソッチのウケ良さそうだし」
「なんだよソッチのウケって、やめろよ」
クスクスと笑っていると、「ほら」と成歩堂くんに促される。
諦めて部屋に帰るしかなさそうだ。
「またデートしてね」
「で、デー……ああ、うん」
うん、照れて目をそらす様が愛おしい。
満足感を覚えた私は背を向けて建物へと入る。
次の矢張くんとの飲み会で報告することを頭で整理しながら、エレベーターのボタンを押した。