cat fight
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ぼくは動物はキライじゃない。
犬と散歩するのも気分転換になりそうでいいなって思う。(世話ができるかは心配だけど)
インコももしかしたら話し相手になってくれるのかもしれない。(なんなら尋問したことはある)
ただ、最近ネコが苦手なんだ。
ぼくにはありがたいことに彼女がいる。
名無し名無しっていうんだけど、これがまた可愛くて。
……うん、ほんとに可愛くて。
付き合ってるんだし、家に遊びにいくことはもちろん、時々泊まらせてもらうこともある。
言っとくけど、ぼくに甲斐性がないわけじゃない。
その子がネコを飼っているんだ。
ネコをひとり(彼女がひとり、って数えるんだよなあ)家に置いて一晩留守にしたくない、と。
まあ、それはしょうがないと思う。
心配する気持ちはわかるから。
幸いぼくはネコアレルギーでもないし、前述したように動物ギライでもない。
ほら、どっちの家に泊まろうと一晩名無しちゃんと一緒に居られるなら大した問題じゃないって思ってた。
そんなことなかったんだけど。
名無しちゃんの家に初めて泊まることになったとき、夕飯をご馳走になって(作ってくれたんだ。とても美味しかった)、お風呂を借りて(どの小物もとても女の子らしくて、ぼくの家の風呂場とは大違いだ)、ベッドに座る名無しちゃんに近づいて(すごくいい匂いがして、頭がくらくらしそうだった)、さあってときに、ひと鳴き。
「にゃあん」
そのたったひと鳴きで名無しちゃんの意識は完全にネコに向いた。
するとすぐさま、またひと鳴き。
「にゃーっ」
マジか、そう思った次は、もはやひと鳴きではすまなくなった。
「にゃあ、にゃあっ!うあーん!」
とうとう名無しちゃんはするりとぼくの脇を抜けてネコの元へ。
「なーん」
「はいはい、どうしたの?」
そして会話を始めてしまう。
なんてことだ。
ぼくはとてつもない敗北感に襲われた。
たったひと鳴きで彼女の意識を全て奪い、これからって時に完全にジャマをされた。
思わず法廷で行き詰まったときかのように頭を抱えてしまう。
「うみゃーん」
「なあに?」
「みゃあ」
「うんうん、ちょっと待っててね」
「にゃわ」
しばらく頭を抱えていたが、ネコとの会話が一段落したところで、名無しちゃんが戻ってきてくれる。
よかった、鳴き止んだみたいだ。
ごめんね、なんて気まずそうに謝る名無しちゃんをベッドに寝かせて。
そこに覆い被さるように手をついて、仕切り直しだ、ってときに、とすんと小さな振動が。
顔をあげるとじいっとこちらを見るネコがいた。
……コイツまさか、とことんぼくのジャマをする気なんだろうか。
名無しちゃんが慌ててネコをベッドから降ろそうとするけれど、びくともしない。
「……ごめん、龍一くん」
「……うん」
ぼくが体を起こすと彼女はネコを抱き上げてベッドを降りる。
今度はせっかく見つけたムジュンを再びなかったことにされたときかのように天を仰いだ。
ネコと和解せよ、とでも言うのか。
ガサガサと音がしたあと、名無しちゃんが再び戻ってくる。
見ると餌をあげたようだ。
お腹が空いていただけだったのか、ネコは夢中で食事をしている。
本当にごめん、と謝る名無しちゃんを今度こそベッドに寝かせて。
今度は肘をつける形で覆い被さって。
名無しちゃんは瞼を閉じる。
三度目の正直だ、と唇を落とした。
……いや、正確には落とそうとした。
二度あることは三度あるらしい。
唇が触れるか触れないかといったとき、突然ガシガシと音がして、名無しちゃんは目を開ける。
一瞬顔の近さに頬を染めるも、すぐに視線は音の方へ。
ぼくもつられて横を向くと、いた。
ネコが彼女の肩を手でひっかくようにしている。
……お前、餌を食べていたんじゃなかったのか……?
「…………ま、誠に申し訳ありません……」
「………………」
完全敗北した瞬間だった。
名無しちゃんいわく、ネコとはいつも一緒に寝ているそうだ。
ネコはもっと一匹でいたい生き物だと思っていたけれど、彼女のネコは違うらしい。
さっきの手でひっかくような仕草も、布団に入れろという意味なのだとか。
そう、それで今は川の字で寝ている。
ぼく、ネコ、彼女の順で。
ぼくとネコの間には少し隙間があって、ネコは彼女にぴったりとくっついている。
つまり、ぼくと彼女はどこも触れていない。
さっきまであんなに鳴いていたネコは、すっかり大人しくなっている。
羨ましいやら恨めしいやら。
本当にぼくのジャマをする気だったんじゃないだろうか。
思わず名無しちゃんにそう伝えると、彼女は「まさか、そんなわけないじゃない」と笑って答えた。
ぼくは真剣に言ってるんだけど。
「でも、結果的にネコにジャマされちゃったよね。ごめんね?」
「…………うん……」
「そ、そんなにしょげないでよ」
「しょげては……ない、けど」
「そうかなあ」
そう言って名無しちゃんは腕を伸ばしてぼくの頬に触れる。
すりすりと撫でる様は、普段から見ているネコを扱う手つきと同じで。
名無しちゃんに撫でられているこのネコは、いつもこんな心地なのかとしみじみと考えてしまった。
今日は仕方なく諦めてやるけれど、次はこうは行かないぞ。
そう思ったぼくはネコに勝つ術を一生懸命考えながら眠りについた。
そして今にいたるまで、前戦全敗だ。
最初に『時々泊まらせてもらうこともある』『初めて泊まることになった』と言っただろう?
泊まったのは1回だけじゃない。
あのあとも何度も試みたけれど毎回同じようにネコにジャマされるんだ。
そして結局川の字で寝ることになる。
今までにもライバルと呼ぶような存在(ぼく自身はそこまで意識してないけど)はいたけど、このネコが一番厄介だと思う。
……実はかくいう今日も、名無しちゃんの家に泊まることになっている。
今日こそはと意気込んだぼくはペットショップに立ち寄り、猫用の新作おやつを持ってレジへと進んだ。
犬と散歩するのも気分転換になりそうでいいなって思う。(世話ができるかは心配だけど)
インコももしかしたら話し相手になってくれるのかもしれない。(なんなら尋問したことはある)
ただ、最近ネコが苦手なんだ。
ぼくにはありがたいことに彼女がいる。
名無し名無しっていうんだけど、これがまた可愛くて。
……うん、ほんとに可愛くて。
付き合ってるんだし、家に遊びにいくことはもちろん、時々泊まらせてもらうこともある。
言っとくけど、ぼくに甲斐性がないわけじゃない。
その子がネコを飼っているんだ。
ネコをひとり(彼女がひとり、って数えるんだよなあ)家に置いて一晩留守にしたくない、と。
まあ、それはしょうがないと思う。
心配する気持ちはわかるから。
幸いぼくはネコアレルギーでもないし、前述したように動物ギライでもない。
ほら、どっちの家に泊まろうと一晩名無しちゃんと一緒に居られるなら大した問題じゃないって思ってた。
そんなことなかったんだけど。
名無しちゃんの家に初めて泊まることになったとき、夕飯をご馳走になって(作ってくれたんだ。とても美味しかった)、お風呂を借りて(どの小物もとても女の子らしくて、ぼくの家の風呂場とは大違いだ)、ベッドに座る名無しちゃんに近づいて(すごくいい匂いがして、頭がくらくらしそうだった)、さあってときに、ひと鳴き。
「にゃあん」
そのたったひと鳴きで名無しちゃんの意識は完全にネコに向いた。
するとすぐさま、またひと鳴き。
「にゃーっ」
マジか、そう思った次は、もはやひと鳴きではすまなくなった。
「にゃあ、にゃあっ!うあーん!」
とうとう名無しちゃんはするりとぼくの脇を抜けてネコの元へ。
「なーん」
「はいはい、どうしたの?」
そして会話を始めてしまう。
なんてことだ。
ぼくはとてつもない敗北感に襲われた。
たったひと鳴きで彼女の意識を全て奪い、これからって時に完全にジャマをされた。
思わず法廷で行き詰まったときかのように頭を抱えてしまう。
「うみゃーん」
「なあに?」
「みゃあ」
「うんうん、ちょっと待っててね」
「にゃわ」
しばらく頭を抱えていたが、ネコとの会話が一段落したところで、名無しちゃんが戻ってきてくれる。
よかった、鳴き止んだみたいだ。
ごめんね、なんて気まずそうに謝る名無しちゃんをベッドに寝かせて。
そこに覆い被さるように手をついて、仕切り直しだ、ってときに、とすんと小さな振動が。
顔をあげるとじいっとこちらを見るネコがいた。
……コイツまさか、とことんぼくのジャマをする気なんだろうか。
名無しちゃんが慌ててネコをベッドから降ろそうとするけれど、びくともしない。
「……ごめん、龍一くん」
「……うん」
ぼくが体を起こすと彼女はネコを抱き上げてベッドを降りる。
今度はせっかく見つけたムジュンを再びなかったことにされたときかのように天を仰いだ。
ネコと和解せよ、とでも言うのか。
ガサガサと音がしたあと、名無しちゃんが再び戻ってくる。
見ると餌をあげたようだ。
お腹が空いていただけだったのか、ネコは夢中で食事をしている。
本当にごめん、と謝る名無しちゃんを今度こそベッドに寝かせて。
今度は肘をつける形で覆い被さって。
名無しちゃんは瞼を閉じる。
三度目の正直だ、と唇を落とした。
……いや、正確には落とそうとした。
二度あることは三度あるらしい。
唇が触れるか触れないかといったとき、突然ガシガシと音がして、名無しちゃんは目を開ける。
一瞬顔の近さに頬を染めるも、すぐに視線は音の方へ。
ぼくもつられて横を向くと、いた。
ネコが彼女の肩を手でひっかくようにしている。
……お前、餌を食べていたんじゃなかったのか……?
「…………ま、誠に申し訳ありません……」
「………………」
完全敗北した瞬間だった。
名無しちゃんいわく、ネコとはいつも一緒に寝ているそうだ。
ネコはもっと一匹でいたい生き物だと思っていたけれど、彼女のネコは違うらしい。
さっきの手でひっかくような仕草も、布団に入れろという意味なのだとか。
そう、それで今は川の字で寝ている。
ぼく、ネコ、彼女の順で。
ぼくとネコの間には少し隙間があって、ネコは彼女にぴったりとくっついている。
つまり、ぼくと彼女はどこも触れていない。
さっきまであんなに鳴いていたネコは、すっかり大人しくなっている。
羨ましいやら恨めしいやら。
本当にぼくのジャマをする気だったんじゃないだろうか。
思わず名無しちゃんにそう伝えると、彼女は「まさか、そんなわけないじゃない」と笑って答えた。
ぼくは真剣に言ってるんだけど。
「でも、結果的にネコにジャマされちゃったよね。ごめんね?」
「…………うん……」
「そ、そんなにしょげないでよ」
「しょげては……ない、けど」
「そうかなあ」
そう言って名無しちゃんは腕を伸ばしてぼくの頬に触れる。
すりすりと撫でる様は、普段から見ているネコを扱う手つきと同じで。
名無しちゃんに撫でられているこのネコは、いつもこんな心地なのかとしみじみと考えてしまった。
今日は仕方なく諦めてやるけれど、次はこうは行かないぞ。
そう思ったぼくはネコに勝つ術を一生懸命考えながら眠りについた。
そして今にいたるまで、前戦全敗だ。
最初に『時々泊まらせてもらうこともある』『初めて泊まることになった』と言っただろう?
泊まったのは1回だけじゃない。
あのあとも何度も試みたけれど毎回同じようにネコにジャマされるんだ。
そして結局川の字で寝ることになる。
今までにもライバルと呼ぶような存在(ぼく自身はそこまで意識してないけど)はいたけど、このネコが一番厄介だと思う。
……実はかくいう今日も、名無しちゃんの家に泊まることになっている。
今日こそはと意気込んだぼくはペットショップに立ち寄り、猫用の新作おやつを持ってレジへと進んだ。
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