盲信6

悠太が朝起きると、すぐ隣には誰もいなかった。

原稿用紙でいっぱいだったはずの部屋の中は、すっきりと片付いており、もはや一枚の紙も置かれていない、ただの和室になっていた。昨夜は青い光を通していた障子は、朝の暖かな色の日差しを部屋の中に満たしていた。
悠太は身を起こすと部屋の中を見回してみた。
裸であることや、腰のだるさ、腹や太腿についているキスマーク、後ろの孔の違和感を伴う痛みが、昨日あったことは夢や幻ではないとダイレクトに伝えてくる。昨日の行為の諸々は、ジェヒョンが拭き取ってくれたのだろうか、綺麗になっていた。

昨日はとんでもなく盛り上がってしまって避妊具を使ったとはいえジェヒョンは数回悠太で達してしまっているのだ。間違いなくこちらの身体に影響があるはずである。
とはいえあんなに昨日情熱的に自分を抱いた彼がすぐそばにいないことが気になった。 
丁寧にハンガーにかけられた自分の服を身に着け、部屋を出る。
トイレには誰もいなかった。風呂場であろうと思われるところに入っていくと、そこにも人影はなかったが、どうやら先程まで使われていたらしく、タイルの上の水が弾かれ切らずに、空間がまだしっとりと水に濡れていた。

ジェヒョンはどこに行ったのだろう。
疑問に思いながら悠太が風呂場から出ると、どこからともなくパチパチと小さな音が聞こえてきた。火が爆ぜるような音だな、と何となく思っていると、その予感に違わず次いでフワリと煙臭い匂いが漂ってきた。とりあえず、そちらに向かうことにする。
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