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盲信9

今日で一週間になる箱根の別荘生活にも随分慣れた。
今日のジェヒョンは忙しいらしく、「夕方には帰る」と先程家を出た。
前作が映画になるらしく、今日はそのプレスリリースに行くのだと言う。悠太も案件の調査に手を付ける予定だったので、丁度良かった。
帰る頃に一度メールをすると言うジェヒョンに快く手を振って送り出す。都心に通えない距離でもないし、自分もこちらで車を買おうか、などと思いながら。 

11月になると、いくら午後とはいえ、少々肌寒い。
山の気温は一度下がり始めるとどんどん夜に向かって冷えていく。このままではジェヒョンが入ってくるまでに、この家の中も若干冷たくなってしまうかもしれない。
まだジェヒョンが家を出てから数分しか経っていなかったが、夜に向けてストーブを弄っておくのも良いだろう。

薪ストーブに近づいて、その中を覗き込む。中は綺麗に掃除されていた。
そういえば変なところで几帳面なジェヒョンは、寝る前になるとまだ少し種火の残っているストーブの中の薪を火鉢に移し、寝室に置いて夜中の暖を取るようにしているのだ。よって、常にストーブの中に毎回新しい炭や薪を使っているのだ。
悠太は勿論、それがどこにあるのかは知らない。

「どーすんねんこれ…」

火かき棒と着火用の器具はそこにあるものの、燃やすものがなければどうしようもない。
こういう時の相場は家の裏だと自信満々で向かってみたものの、特に何もなかった。周辺も見回ってみたが、見当たらない。

「何だよ…」

文句をブツブツと垂れながらぐるりと建物の周りを巡り、悠太は玄関へと戻ってきた。チラリと目を遣ると、悠太はある建物に気付いた。この家のガレージである。
このガレージは脇に物置が付いているタイプのもので、色々と荷物を置いているのだと此処に来た時にジェヒョンは説明していたのを思い出す。もしかしたらあの中にあるのかもしれない、と悠太はその物置の中を調べてみることにした。
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