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盲信8

結局、テヨンと2人で行くことになった小旅行は、大変にのんびりとしたものになった。
10月の下旬に行った軽井沢は人気がなく、夏は大変賑わうのだという広い池は、テヨンと悠太のほとんど貸し切りであった。
釣った魚は気が向いたときに塩焼きにして、2人で食べた。

テヨンの所有している別荘は、悠太が想像していた通り、豪勢な造りの庭付き一戸建てであった。
他の別荘群とは少し離れた所にあるそこは、よく手入れされており、一年に一度行くか行かないかといった場所にするにはあまりに勿体無い。

ガラス張りになっているジャグジー付きの大きな浴室には思わず「恥ずかしくて落ちついて入れねーよ!」と悠太は突っ込んだが、実際に入ってみればなんてことはない、中庭に面しているため、外から誰かに見られることは無かったし、美しく手入れされた庭が良く見えて、不思議と落ち着いた気持ちになる贅沢な場所で、すっかり気に入ってしまった。
食べるものは、テヨンが頼んだどこぞのシェフなのか、家政婦なのかが決まった時間にやって来ては広すぎるキッチンで作っていた。流石は資産家一族の嫡男である。いきなり他人が家の中に居ても全く動じない。
悠太なんか、初日は驚いてテヨンに「家の中に知らない人いんだけど」と訴えてしまったが、それを報告されたテヨンは「夕飯作ってくれる人だよ」とのらりくらりと答えた。
作られる食事は確かに美味しかった。
というか、悠太からすれば他人の手で作られたものは、自分の労力がかかっていないというだけで無性に美味く感じられるものだが、テヨンは一口運んでは「うん、普通だね」と言っていた。感謝の念の薄い奴である。

途中でテヨンの携帯にジェヒョンから連絡があった。やはりこちらには来れそうにないという連絡だった。
悠太の方には、「今日は新宿でサイン会」という短い文章と共に書店員と一緒に写っている画像が添付されてきた。

仕事が忙しいのは良いことである。
悠太の方も、柄にもなくテヨンと庭を背景にスマホで写真を撮り、ジェヒョンに送り付けることとした。
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