ルミナスの手記

 2番道路。
「参った! 君のポッポは強いな!」
「いやこちらこそ、楽しかったよ」
 そこにいたトレーナーとの勝負を終わらせて固い握手をかわる。
 それと同時にポッポが高く鳴いた。
「ピー!」
「ポッポ?」
 ポッポが光に包まれる。これは知っている、進化だ。
「ピーっ」
「ピジョンですね」
「やったおめでとうピジョン! 写真を撮ろう!」
「ピー」
「……なあ」
 エミールが写真を撮るミケに声をかける。
「その様子だと、君の写真フォルダ結構溜まってるんじゃないか?」
「それは……そうですね」
「提案だが、ネットの方にそれを上げてみては?」
「は?」
「ポケバーは気軽に写真をアップできるサービスがあるからね」
 エミールが差し出したポケバーには『お手軽写真品評会』というアプリが表示されている。
「すごいなポケバー」
「まあ気が向いたら覗いてみろ」
「はい!」
 エミールが進行方向を指差す。
「もう少しでタイガシティだ。ちょっと道を逸れるとコップ遺跡という古い遺跡と研究所がある。ヴィットーレはそこに行けと言っていたな」
「はい」
 ミケは貰った石ころを握る。一体何を調べるのだろう。それを察したのかエミールはミケの肩を叩いた。
「さっさと調べてしまおう。では行くぞ!」
 エミールが駆けだした。
「あ、待って! エミールさん!」
「本当に賑やかな方ですね……」
 二人は顔を見合わせ笑うと、エミールの後を追った。

★★★

 懐の深い町、タイガシティ。
「私が教えてもいいが、この町に対して『ゴシップピッカー』を使ってみたらどうかな?」
 エミールの提案に、ミケはハーメルンの森でシェリーがそのアプリを使っていたのを思い出した。
「えーと、起動して。『タイガシティ』っと……」
 ポケバーに皆の発言が表示され始める。

『ジムリーダーのナズナさん、かっこいいよなあ』
『コップ遺跡ですごいいし見つけたんだけどキーストーンだった! 今、ラクライ育ててる』
『テラス石掘ったから早くテラスタルオーブにしたいなあ』
『ダイマックスしたかったからねがいぼし掘れたのよかった!』
『アローラのZ技? 使える奴はないの? そっかぁ……』

「みんななんか掘ってる?」
「ふふ、その通り。コップ遺跡の名物は『すごいいし』掘削にあるのだー!!」
 そう叫んでエミールがアブソルを出す。そして自分のグローブにハマった石を押す。キィィン……と光を集めたそれがエネルギーのようなものを発すとアブソルが紫の繭に包まれた。そして次の瞬間、翼が生えたアブソルのようなものが登場する。
「これは!?」
「メガシンカ、ですね……メガアブソルという形態です」
「よく知ってるなシェリーくん。このアブソルがメガシンカした時に使ったこのキーストーン、並びにアブソル自体が持っているメガストーン! これが揃うことでメガシンカができる」
「へー……」
「因みにキーストーンはコップ遺跡で掘ったものだ」
「へー!」
「他にも、ジムリーダーレオが使ったテラスタルや、君たちはまだ見ていないがダイマックスという現象を可能にするものもコップ遺跡ではランダムに採れる。なにが手に入るかは、お楽しみだ」
「ジムリーダーはいずれかを使ってくると想定すると、一回行っておいた方がいいかもしれないですね……」
 ミケは頷く。何が手に入るかはわからないが、サトルやレオは初心者用のポケモンで戦ってくれたのだ、本当はもっと強いのだろう。早く強くなりたい。
「行こう、コップ遺跡へ!」

★★★

 コップ遺跡研究所。
「これの分析をすればいいんだね?」
 所長を名乗る男は、ミケから石ころを受け取って頷く。
「んー……劣化が酷いな? 何かしらのメガストーンだと思うけど……少し時間がかかるから、遺跡で掘削をしていくといい」
「はぁい」
「あ、それなら僭越ながらあたしが引率を!」
 やってきたのは黒髪に褐色の女性だ。
「レアと申します。この子は相棒のベトベター」
「ヴェ」
 足元でいろんな色が混ざったようなポケモンが鳴く。
「シェリーもベトベター持ってたよね」
「はい、でもこの子はアローラの子ですね」
「え、カントーベトベター持ってるんですか! 見せて見せて! はい、あたしアローラの出身なんです!」
「シェリーです、よろしくお願いします」
 そう言うとシェリーはボールを投げる。中から出てきたのは勿論ベトベター。ベトベターは目をぱちくりさせていたが、ユズのベトベターを見つけるとゆっくりと近づいて行った。
「アローラの子はあくタイプが入ってるんですよ~」
「へぇ。写真撮らせてもらっていいですか?」
「もちろん!」
 ミケは二匹を写真に撮ると、『みんなにシェアする』のボタンを押した。
「お、公開したのか! いいぞ」
「たまには、ね」
「では、可愛いベトベターちゃんたちと遺跡に向かいましょう!」

★★★

「こちらがコップ遺跡になります。掘削は比較的浅いところで行なうので、奥には入っちゃだめですよー」
「はーい」
「ところで、三人はラティスの神話についてどこまで知ってます?」
「そんなに詳しくは……」
「私も……」
「『ばんのうのきょじん すべて を はかいする。

やがて ひかりのかみ が あのよより きかんし、 せかいはうまれかわる』……だったかな」
 首を傾げて暗唱するエミールにレアは大喜びで頷く。
「勉強されてますね! その文はもう一つの遺跡、ロリエ遺跡に記してあるんです。建築形態的にコップ遺跡と同じ時代のものですが、コップ遺跡には文字による記録はないんです」
「ヴェ」
 足元でレアのベトベターが合いの手を入れるように鳴く。シェリーのベトベターは首を傾げている。
「それでは早速始めましょうか! 掘削にはここにあるスコップを行ってください。この辺の土、柔らかいので、なんか硬かったらそれなんで、教えてください!」
「私は遠慮しよ……」
 エミールがスコップを拒否しようとすると、彼のボールからベロバーが出てきた。
「なんだお前! 戻れ!」
「バー!!」
「遺跡掘りしたいんじゃないですか」
「はぁ!? 子供の遊びじゃねーんだぞ!」
「バー……」
 あの『セルフなみだめ』だ。エミールはぐぅと唸ると、スコップを掴んだ。
「あのなぁ! 掘るのは私なんだぞ!!」
「ベロ~♪」

 暫く、雑談をしながらスコップで地面を掘る。最初に変化があったのはシェリーだった。
「硬い、ですね……」
「おや! ちょーっと失礼しますね」
 レアがスコップの先を軽く掘る。
「あ、おめでとうございます! これは多分テラス石ですね!」
「まあ……」
「後でテラスタルオーブにしましょうね」
「あっ」
 そこでエミールが声を上げた。
「なんかかかったな」
「なんと、どれどれ……あ! これはねがいぼしかな~?」
「ダイマックスか……使える場所は限られるんだよな……」
「まあまあ……ベロバーも喜んでいらっしゃいますし……」
「バー!!」
 エミールはベロバーに微笑みかけられフンと顔を逸らす。
 後はミケだけだ。なかなか硬いものに触らない。
(焦っちゃだめだ……よね。必ず見つけなくてもいいんだし)
 エミールは堀りながら今までのことを考えていた。まだ旅立ってそんなに時が経っていないのに、思えば随分と遠くまで来た気がする。なんだか不思議だ。
 カチン。
「……あ! ぶつかった!」
「おめでとうございます! ああ、これきっとキーストーンですね!」
「メガシンカするポケモンはミケランジェロくんはいないが。強いて言えばピジョットに進化した時か? メガストーンをどっかで調達する必要があるな」
 エミールがぶつぶつと言っているが、それを遮るようにレアは言った。
「それでは、研究所に帰りましょー!!」
「ヴェ」

★★★

「ああ、戻ったのか」
 皆が帰ると所長は待っていたというようにミケの方を見た。
「これを受け取りなさい」
 握らされたのはカラフルな石。
「ルカリオナイトZだよ」
「ルカ……」
「ルカリオナイトZ!?」
 エミールが大声を出す。それだけでなく体ものけ反っている。
「おいおい……永らく存在が確認されなかったメガストーンじゃないか……あのヴィットーレって奴、何者だ?」
「さあ……」
 三人で顔を見合わせているといつの間にか研究所の奥に引っ込んでいたらしいレアが三つの箱を持って現れた。
「どうぞ! 加工は済んでおります」
 レアは中からそれを順番に取り出す。
「シェリーさんはこちらの『テラスタルオーブ』、エミールさんはこちらの『ダイマックスリング』。そしてミケランジェロさんにはこちらの『メガネックレス』ですね」
「ねがいぼし、キーストーンの加工方法はランダムなんだ。私のは嵩張らない指輪にしてくれたようだ」
「ネックレス……」
 エミールが持っているものと同じ、石を嵌められた綺麗なネックレス。ミケはそっとそれを手に取った。
「因みにアローラのZ技だけは現地のものでしかできないんですよねー」
「ああ、守り神が離れないと、そうなるだろうな……」
「エミールさん物知り過ぎないですか!?」
「そ、そりゃ、勉強したから……」
 あれ、とミケは思う。こういう時は『当然さ!』というタイプなのに。言葉に一抹の劣等感が見えて、首を傾げてしまう。
「……とにかくっ、折角ミケくんがルカリオナイトZを手に入れたなら、リオルが欲しいところだが……」
 エミールが首をひねった時だった。
「リカっ!」
「そうそうこんな鳴き声の……って、リオル通り越してルカリオ!?」
 エミールがのけ反ると、所長は苦笑している。
「怪我していたところを研究所で保護したポケモンなんですよ。そろそろ野生に返そうかと思っていた頃合いでね」
「リカル!」
 ルカリオはミケのルカリオナイトZに大変興味を示しているようだった。
「どうだろう? このルカリオ、手持ちに入れてみないかい?」
「えっ……」
 いいんですか、と目線で問うと、所長は頷く。
 それと同時にルカリオがミケにすり寄った。
「わ……」
「非常になつっこい個体なんだよ。多分ルカリオだったのは他のポケモンに懐いて進化した結果なんだろう。よかったら連れて行ってやってくれないかい」
「も、勿論!」
「くんぬ♪」
 意味を理解しているかのようにルカリオがミケを抱きしめる。それとボールからバチンキーが出てきたのは同時だった。
「きーっ!!」
「なんでルカリオに威嚇を!?」
「嫉妬だろう」
「きぎーっ!!」
「るん?」
 対するルカリオは全く意味がわかっていないようだ。
 それを見た一同は思わず笑ってしまった。


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