ルミナスの手記
「これより、ソウエンジム公式戦を始めます! 挑戦者の名前はミケランジェロ! 戦闘形式はダブル二対二。挑戦者のみ一回だけポケモンの交代を許可しています! それでは、始め!」
そのレフェリーの声と同時にミケとレオはボールを二個投げた。
「ブミィ!」
「ぽーっ」
出したのはさっき捕まえたマッギョとポッポ。
「えらいね。ちゃんと対策してきたんだ」
そう言ってレオの目の前にいるのは。白い猫のポケモンと甲羅を持った煙を吐くポケモン。
「あのニャヒートー……色違いだな。コレクターであったとは聞いてるからな……後はコータスか。場を整えてきたな」
コート外でエミールが唸る。
「場を?」
シェリーが訊ねるとエミールは手をひらひらさせた。
「まあ、すぐわかるよ」
そう言った瞬間、吹き抜けの空がさんさんと輝きだした。
「これは……」
「“ひでり”というコータスの特性だ。レオのポケモンアドバンテージの時間だ。ほのおポケモンが強くなる」
対するミケはすぐ技を指示した。
「ポッポ、“ふきとばし”!!」
ハーメルンの森で覚えた技だ。強い風にニャヒートが踏ん張りきれず吹き飛ぶ。しかしレオは冷静に。
「立て直して。……いいこだ、できるよね」
と声をかけた。
「にゃうっ!」
ニャヒートが地面に足をつけ踏ん張り直す。
「よし、そのまま待機だ」
待機? 不思議には思ったが、ミケはマッギョにも指示を出す。
「マッギョ! コータスに“マッドショット”!」
「横に転がれコータス!」
コータスはころんとでんぐり返ってマッギョの技を避けた。当たっていれば効果抜群だったのだが……。
「捕まえたばかりのポケモンで勝てるほど俺は生易しくないよ。ニャヒート、“ニトロチャージ”」
(ニャヒートが待機したのは僕のポケモンが技を出し切らせるためだった!?)
ほのおを纏った一撃がマッギョに決まり、マッギョは一瞬体勢を崩す。ひでりもあり一気に削られてしまった。
「それだけじゃないぞ」
「コータス、“ふんか”」
エミールが苦い顔で言ったのと、レオがコータスの技の指示を出すのは同時だった。
コータスの背中から放たれた火柱がマッギョとポッポを焼き尽くす!
「うわ、すごい」
「相手全体技なんだ。しかも体力が減るごとに威力が上げる。“マッドショット”で仕留めきれなかったが、速いコータスとかなんて変態的な育て方をしてやがるんだ。ニャヒートもさっきの技で速さ上がってるし」
「ぽ~……」
マッギョはまだ戦えるようだが、ポッポは大分よろめいている。
ミケは残りのボールを手に取った。
「ミケランジェロくん!? 正気か君! ほのおの攻撃は上がってるんだぞ!」
「僕はバチンキーを信じます!」
そう言ってボールから出したバチンキーは空を仰ぎ高く吼えた。
「へえ、そういうの嫌いじゃないよ。じゃあどの程度の力か見せてもらおうかな」
「望むところです! お返しですよ、“はっぱカッター”!!」
「!」
バチンキーの出した草の刃がニャヒートとコータスを傷つけて行く。
「なるほど、全体技には全体技か。でも次はこちらの番だよ」
「今だっ! マッギョ!!」
「!?」
ニャヒートが攻撃しようとした時、コータスが足元から崩れた。見るとマッギョがコータスを歯で捕えていた。レオがバチンキーに気を取られている間、ハンドサインかなにかで指示を出していたのだろう。
「今度こそ“マッドショット”!」
マッギョが立てた泥の柱をもろに浴びて、コータスはそのままダウンする。誰が見たって戦闘不能だ。
「コータス、戦闘不能!」
レオはコータスをボールに戻した後、ボールに微笑んだ。
「コータス、お疲れ様」
「うおお、行けるぞミケランジェロくん! 本当にポケモン初心者か!?」
「そう……見えますよね」
「シェリーくん?」
「いえ、なんでもありません……」
わやわやしている外野はともかく、レオは一見追い詰められているように見える。
「うん、強い。君は。俺が本気を出すに値する存在だよ!」
そうキラキラした目で言ったレオは続ける。
「だから、俺の本気のテラスタル、受けてよ!」
「てら……え?」
レオが黒いモンスターボールのようなものをかざす。そこに強い風が加わり、レオのニャヒートを結晶が包み込む。
次の瞬間ニャヒートは炎の冠を纏った半透明の結晶体に姿を変えていた。
「まずい、テラスタルだ!」
「最近ラティスに輸入された技術ですよね、テラスタルオーブ」
「ああ、パルデアの特殊現象だ。原料自体は昔からある場所で手に入っていたし、ラティスのテラスタルは本家とは原理ちょっと違うけどな! ひでりもやんでない。ほのおテラスタルは負けたかもな……」
「そんな……」
ミケは客席の反応を聞きながら考えていた。
マッギョも技を受けているし、バチンキーは一撃で落とされるのだろう。
「……そんなの、恐れることじゃない!」
「へえ、いい男だね、君」
「当然じゃないですか。バチンキー!」
「ききゃ!」
「動かせない! ニャヒート、もう一度“ニトロチャージ”!!」
「今だ、バチンキー、バチをニャヒートの進行上に投げろ!!」
「な!」
加速してい時に投げられたバチにニャヒートは引っかかりつんのめる。
「今だ! マッギョ、“マッドショット”! バチンキー、“はたきおとす”!」
そこに二体の攻撃が決まり、結晶が割れる。そこに残された動かないニャヒートにレフェリーは旗を上げた。
「ニャヒート、戦闘不能! よってこのバトル、挑戦者ミケランジェロの勝利!」
「やった……!」
コート際からシェリーとエミールが走ってくる。
「やりましたね!」
「うん、まさかここまでやるとは思わなかった」
レオがニャヒートをボールに戻し、皆のところに歩んできた。
「おめでとう。リーグの規定だから渡すよ。これがフレイムスタンプ」
「ありがとうございます!」
赤い炎が誂えられたスタンプをスタンプ帳に貼る。二個目のスタンプ。大変感慨深いものである。
「やったな!」
「ええ」
「ありがとう!」
ガッツポーズを取るエミールと微笑むシェリーに返した時だった。
「大変だレオさん!」
一人の男性がジムにやってきた。
「どうしました?」
「貿易船が襲われてる! あの中には新品のメガストーンが……!」
「なんだって!? わかりました。ジュカインと一緒に向かいます」
レオはあのパフュートンに向かって行った。
「ホエー、掃除しといてね。もうすぐゆめかわも来るから」
「ぷひ」
ホエーはすぐ様荒れたコートを耕し始めた。
「すごいな……」
「俺のホエーだからね。君たちはもう自由解散で構わないよ」
「いや、同行させてもらおう」
意外にも名乗り出たのはエミールだった。
「メガストーンを狙うとは面の皮が厚すぎる。一枚噛ませてくれ」
レオは視線をエミールのグローブをちらりと見る。左のグローブには綺麗な石がハマっている。
「なるほど。じゃあ着いてきて。ただし君だけだよ。子供たちはなし」
「それは勿論」
「という訳でポケモンセンターで待っててね」
「はい、わかりました」
「……異論はないです」
それに頷き、レオとエミールはジムを後にした。
「あんなやる気なエミールさん初めて見た」
「そうですね……」
子供たちは首を傾げるばかりだった。
★★★
港は大騒ぎだった。
「兄貴ィ! メガストーン取り放題ですぜ!!」
「いいぞ! おい兄弟共、この荷物は全部我々『ヴァルキュリア・ファミリー』が貰った!! 俺たちの糧になること感謝するんだな!」
柄の悪い男二人とその手持ちのズバットとヨーテリーによって封鎖された船に町民は困った顔をする。
「勘弁してくれ……それはしっかり販売元に預けなきゃいけないんだ」
「ああ、なんてこと!」
「野蛮な人たち……」
その言葉に『兄貴』と呼ばれた男は大笑いする。
「野蛮上等よ! 俺たちの正義は理解されねぇ!」
「不義理の間違いじゃないの?」
その言葉と共に現れた青年に皆安心した顔をする。
「き、来てくれたんだな、ジムリーダー!」
「しかもジュカインだ! 本気だぞ!」
「一緒にいるアブソルを連れた美丈夫は誰だい?」
「協力してくれるエミールさんです」
「び、美丈夫? この私が? わ、悪い気はしないな!」
呑気に会話していると男たちが足を踏み荒らした。
「なんの用だ! 邪魔すんなっての!」
「そうだそうだ!」
「……ヴァルキュリア・ファミリー。数年前から略奪を繰り返す困った集団とは聞いていたけど……まさかソウエンシティにまで手を出すなんて、俺の恐ろしさがわからないのかな」
「うるせぇ! 勝負すんのかしないのか!」
「するよ。丁度ダブルバトルだね、エミールさん」
「そうだな。覚悟しろよ。アホ面。私はこの世で人のものを盗む奴が一番嫌いなんだ!」
「ぎーっ! お前のポケモンもついでに奪ってやる!! いけズバット!」
「ヨーテリー! ゴー!」
襲い掛かってきたポケモン達を確認した時。
レオは指輪、エミールは手袋の煌めく石を押した。
「なっ、メガシンカ!?」
彼らが見たのは姿を変えたジュカインとアブソルだった。
★★★
「あ、おかえりなさい!」
ポケモンセンターのソファに座っているミケとシェリーの元に現れた二人は出迎えられながら苦い顔を見合わせた。
「速かったねぇ逃げるの」
「追いかける暇もなかったな」
「?」
「Hellow! ちょっとそこの君たち!」
不意に陽気な声をかけられ、皆が視線を向けるとシルクハットの青髪の女性が立っていた。
「色々見てたよ。Excellent!!」
「どちら様です?」
レオが警戒心を持って伝えると女性は口元に手を当てた。
「Ooops! 名乗るのを忘れていたよ。私はヴィットーレ。訳あって実力のあるトレーナーを探している流れのトレーナーだよ!」
「はあ……」
「ジムバトルを見てたよ。ミケくん、だっけ。君はとても筋がいい!」
「は、はあ、ありがとうございます……」
「だからこれをあげよう」
「うわ! なに!?」
渡されたのは……石ころ。
「……」
「ただの石じゃないぜ。コップ遺跡の研究所で調べてもらってよ!」
「は、はあ……」
「コップ遺跡……ああ、丁度次の町に隣接してるじゃないか。私も世話になったことある」
エミールが感慨深げに言ったところでレオが『あ!』と声を上げた。
「彼女とデートする時間だ! ヴィットーレさん、異常な行動を取ったらリーグから監視されますからね。残り三人も色々頑張ってねー」
「なら私もはけるとするよ。捕まりたくはないけどね。では、Good-bye!」
レオは手をひらひらさせる。ミケは頭を下げる。ソウエンシティは実に得るものの多い旅であった。……変な人も多いけど。
「よーしさっき出戻った2番道路だな。飛ばしていくぞ!」
「はーい」
「……はい」
【251217】
そのレフェリーの声と同時にミケとレオはボールを二個投げた。
「ブミィ!」
「ぽーっ」
出したのはさっき捕まえたマッギョとポッポ。
「えらいね。ちゃんと対策してきたんだ」
そう言ってレオの目の前にいるのは。白い猫のポケモンと甲羅を持った煙を吐くポケモン。
「あのニャヒートー……色違いだな。コレクターであったとは聞いてるからな……後はコータスか。場を整えてきたな」
コート外でエミールが唸る。
「場を?」
シェリーが訊ねるとエミールは手をひらひらさせた。
「まあ、すぐわかるよ」
そう言った瞬間、吹き抜けの空がさんさんと輝きだした。
「これは……」
「“ひでり”というコータスの特性だ。レオのポケモンアドバンテージの時間だ。ほのおポケモンが強くなる」
対するミケはすぐ技を指示した。
「ポッポ、“ふきとばし”!!」
ハーメルンの森で覚えた技だ。強い風にニャヒートが踏ん張りきれず吹き飛ぶ。しかしレオは冷静に。
「立て直して。……いいこだ、できるよね」
と声をかけた。
「にゃうっ!」
ニャヒートが地面に足をつけ踏ん張り直す。
「よし、そのまま待機だ」
待機? 不思議には思ったが、ミケはマッギョにも指示を出す。
「マッギョ! コータスに“マッドショット”!」
「横に転がれコータス!」
コータスはころんとでんぐり返ってマッギョの技を避けた。当たっていれば効果抜群だったのだが……。
「捕まえたばかりのポケモンで勝てるほど俺は生易しくないよ。ニャヒート、“ニトロチャージ”」
(ニャヒートが待機したのは僕のポケモンが技を出し切らせるためだった!?)
ほのおを纏った一撃がマッギョに決まり、マッギョは一瞬体勢を崩す。ひでりもあり一気に削られてしまった。
「それだけじゃないぞ」
「コータス、“ふんか”」
エミールが苦い顔で言ったのと、レオがコータスの技の指示を出すのは同時だった。
コータスの背中から放たれた火柱がマッギョとポッポを焼き尽くす!
「うわ、すごい」
「相手全体技なんだ。しかも体力が減るごとに威力が上げる。“マッドショット”で仕留めきれなかったが、速いコータスとかなんて変態的な育て方をしてやがるんだ。ニャヒートもさっきの技で速さ上がってるし」
「ぽ~……」
マッギョはまだ戦えるようだが、ポッポは大分よろめいている。
ミケは残りのボールを手に取った。
「ミケランジェロくん!? 正気か君! ほのおの攻撃は上がってるんだぞ!」
「僕はバチンキーを信じます!」
そう言ってボールから出したバチンキーは空を仰ぎ高く吼えた。
「へえ、そういうの嫌いじゃないよ。じゃあどの程度の力か見せてもらおうかな」
「望むところです! お返しですよ、“はっぱカッター”!!」
「!」
バチンキーの出した草の刃がニャヒートとコータスを傷つけて行く。
「なるほど、全体技には全体技か。でも次はこちらの番だよ」
「今だっ! マッギョ!!」
「!?」
ニャヒートが攻撃しようとした時、コータスが足元から崩れた。見るとマッギョがコータスを歯で捕えていた。レオがバチンキーに気を取られている間、ハンドサインかなにかで指示を出していたのだろう。
「今度こそ“マッドショット”!」
マッギョが立てた泥の柱をもろに浴びて、コータスはそのままダウンする。誰が見たって戦闘不能だ。
「コータス、戦闘不能!」
レオはコータスをボールに戻した後、ボールに微笑んだ。
「コータス、お疲れ様」
「うおお、行けるぞミケランジェロくん! 本当にポケモン初心者か!?」
「そう……見えますよね」
「シェリーくん?」
「いえ、なんでもありません……」
わやわやしている外野はともかく、レオは一見追い詰められているように見える。
「うん、強い。君は。俺が本気を出すに値する存在だよ!」
そうキラキラした目で言ったレオは続ける。
「だから、俺の本気のテラスタル、受けてよ!」
「てら……え?」
レオが黒いモンスターボールのようなものをかざす。そこに強い風が加わり、レオのニャヒートを結晶が包み込む。
次の瞬間ニャヒートは炎の冠を纏った半透明の結晶体に姿を変えていた。
「まずい、テラスタルだ!」
「最近ラティスに輸入された技術ですよね、テラスタルオーブ」
「ああ、パルデアの特殊現象だ。原料自体は昔からある場所で手に入っていたし、ラティスのテラスタルは本家とは原理ちょっと違うけどな! ひでりもやんでない。ほのおテラスタルは負けたかもな……」
「そんな……」
ミケは客席の反応を聞きながら考えていた。
マッギョも技を受けているし、バチンキーは一撃で落とされるのだろう。
「……そんなの、恐れることじゃない!」
「へえ、いい男だね、君」
「当然じゃないですか。バチンキー!」
「ききゃ!」
「動かせない! ニャヒート、もう一度“ニトロチャージ”!!」
「今だ、バチンキー、バチをニャヒートの進行上に投げろ!!」
「な!」
加速してい時に投げられたバチにニャヒートは引っかかりつんのめる。
「今だ! マッギョ、“マッドショット”! バチンキー、“はたきおとす”!」
そこに二体の攻撃が決まり、結晶が割れる。そこに残された動かないニャヒートにレフェリーは旗を上げた。
「ニャヒート、戦闘不能! よってこのバトル、挑戦者ミケランジェロの勝利!」
「やった……!」
コート際からシェリーとエミールが走ってくる。
「やりましたね!」
「うん、まさかここまでやるとは思わなかった」
レオがニャヒートをボールに戻し、皆のところに歩んできた。
「おめでとう。リーグの規定だから渡すよ。これがフレイムスタンプ」
「ありがとうございます!」
赤い炎が誂えられたスタンプをスタンプ帳に貼る。二個目のスタンプ。大変感慨深いものである。
「やったな!」
「ええ」
「ありがとう!」
ガッツポーズを取るエミールと微笑むシェリーに返した時だった。
「大変だレオさん!」
一人の男性がジムにやってきた。
「どうしました?」
「貿易船が襲われてる! あの中には新品のメガストーンが……!」
「なんだって!? わかりました。ジュカインと一緒に向かいます」
レオはあのパフュートンに向かって行った。
「ホエー、掃除しといてね。もうすぐゆめかわも来るから」
「ぷひ」
ホエーはすぐ様荒れたコートを耕し始めた。
「すごいな……」
「俺のホエーだからね。君たちはもう自由解散で構わないよ」
「いや、同行させてもらおう」
意外にも名乗り出たのはエミールだった。
「メガストーンを狙うとは面の皮が厚すぎる。一枚噛ませてくれ」
レオは視線をエミールのグローブをちらりと見る。左のグローブには綺麗な石がハマっている。
「なるほど。じゃあ着いてきて。ただし君だけだよ。子供たちはなし」
「それは勿論」
「という訳でポケモンセンターで待っててね」
「はい、わかりました」
「……異論はないです」
それに頷き、レオとエミールはジムを後にした。
「あんなやる気なエミールさん初めて見た」
「そうですね……」
子供たちは首を傾げるばかりだった。
★★★
港は大騒ぎだった。
「兄貴ィ! メガストーン取り放題ですぜ!!」
「いいぞ! おい兄弟共、この荷物は全部我々『ヴァルキュリア・ファミリー』が貰った!! 俺たちの糧になること感謝するんだな!」
柄の悪い男二人とその手持ちのズバットとヨーテリーによって封鎖された船に町民は困った顔をする。
「勘弁してくれ……それはしっかり販売元に預けなきゃいけないんだ」
「ああ、なんてこと!」
「野蛮な人たち……」
その言葉に『兄貴』と呼ばれた男は大笑いする。
「野蛮上等よ! 俺たちの正義は理解されねぇ!」
「不義理の間違いじゃないの?」
その言葉と共に現れた青年に皆安心した顔をする。
「き、来てくれたんだな、ジムリーダー!」
「しかもジュカインだ! 本気だぞ!」
「一緒にいるアブソルを連れた美丈夫は誰だい?」
「協力してくれるエミールさんです」
「び、美丈夫? この私が? わ、悪い気はしないな!」
呑気に会話していると男たちが足を踏み荒らした。
「なんの用だ! 邪魔すんなっての!」
「そうだそうだ!」
「……ヴァルキュリア・ファミリー。数年前から略奪を繰り返す困った集団とは聞いていたけど……まさかソウエンシティにまで手を出すなんて、俺の恐ろしさがわからないのかな」
「うるせぇ! 勝負すんのかしないのか!」
「するよ。丁度ダブルバトルだね、エミールさん」
「そうだな。覚悟しろよ。アホ面。私はこの世で人のものを盗む奴が一番嫌いなんだ!」
「ぎーっ! お前のポケモンもついでに奪ってやる!! いけズバット!」
「ヨーテリー! ゴー!」
襲い掛かってきたポケモン達を確認した時。
レオは指輪、エミールは手袋の煌めく石を押した。
「なっ、メガシンカ!?」
彼らが見たのは姿を変えたジュカインとアブソルだった。
★★★
「あ、おかえりなさい!」
ポケモンセンターのソファに座っているミケとシェリーの元に現れた二人は出迎えられながら苦い顔を見合わせた。
「速かったねぇ逃げるの」
「追いかける暇もなかったな」
「?」
「Hellow! ちょっとそこの君たち!」
不意に陽気な声をかけられ、皆が視線を向けるとシルクハットの青髪の女性が立っていた。
「色々見てたよ。Excellent!!」
「どちら様です?」
レオが警戒心を持って伝えると女性は口元に手を当てた。
「Ooops! 名乗るのを忘れていたよ。私はヴィットーレ。訳あって実力のあるトレーナーを探している流れのトレーナーだよ!」
「はあ……」
「ジムバトルを見てたよ。ミケくん、だっけ。君はとても筋がいい!」
「は、はあ、ありがとうございます……」
「だからこれをあげよう」
「うわ! なに!?」
渡されたのは……石ころ。
「……」
「ただの石じゃないぜ。コップ遺跡の研究所で調べてもらってよ!」
「は、はあ……」
「コップ遺跡……ああ、丁度次の町に隣接してるじゃないか。私も世話になったことある」
エミールが感慨深げに言ったところでレオが『あ!』と声を上げた。
「彼女とデートする時間だ! ヴィットーレさん、異常な行動を取ったらリーグから監視されますからね。残り三人も色々頑張ってねー」
「なら私もはけるとするよ。捕まりたくはないけどね。では、Good-bye!」
レオは手をひらひらさせる。ミケは頭を下げる。ソウエンシティは実に得るものの多い旅であった。……変な人も多いけど。
「よーしさっき出戻った2番道路だな。飛ばしていくぞ!」
「はーい」
「……はい」
【251217】
