ルミナスの手記
『いきなりコータスが退場したぁ! しかし次のグレンアルマはかくとうとエスパーでアオイの分が悪いぞ!!』
アオイは暫くグレンアルマを見つめていたが、やがてフッと笑った。
「アネットを読んでたかはわからないけど、そのグレンアルマには泣かされたっけ」
「今回も泣かさせてもらうよ。グレンアルマ、“サイコフィールド”!」
グレンアルマが走りながら足元に紫のステージを展開する。
「エスパー技の威力が上がる上に、先制技が無力化されるね」
「うわー、グソクムシャで相手したくねー……」
バジーリオの解説にラキがぼやいた。
アオイが叫ぶ。
「アネット、食らわせろ、“でんこうそうげき”!!」
電気を帯びたパーモットが、グレンアルマに突っ込む。
「グレンアルマ! “サイコキネシス”!!」
電気と、グレンアルマの念波がぶつかる。双方ダメージを受けるが、最後に立っていたのは。
『グレンアルマ、立っているぅー!! パーモット、善戦虚しく退場です!!』
「ありがとう、アネット」
「アオイ、また強くなったね」
「褒めてもなにも出ないよ。君から勝利を奪うから!」
そう言うとアオイはボールを投げた。
『アオイの二匹目はデンチュラだー!! これは荒れるぞ!』
中から出てきた黄色い蜘蛛のポケモンが戦闘体勢に入る。
「“かみなり”!!」
出てすぐの指示にもデンチュラも対応する。
『ふくがんのとくせい込みのかみなり! グレンアルマ、耐えきれるかー!!』
「耐えるよ」
レオが言うと、グレンアルマは雷を受けながらも技を構える姿勢に入った。
「“ふんえん”!!」
ひでりの恩恵を受けての効果力の炎技。デンチュラも大ダメージである。
「“ねばねばネット”!」
二人のポケモンはよほど戦闘慣れしているのか、ダメージを受けてもすぐ立て直す。蜘蛛の糸がグレンアルマの足元に張り巡らされる。
「すごい……」
ミケが呟くと、エルも笑った。
「いやあの二人えぐいって。こんなんばっかだもんなメジャーリーグ」
「いつか、本気の二人と戦いたいな……」
「いつかはできるかもね」
「悠長に構えてていいの? もう一回“ふんえん”!」
「ならこっちももう一度、“かみなり”だよ!!」
炎と電気が交錯する──……!混じり合い、その眩しさに皆が目を閉じた。
『立っているものは……いないっ! 相討ちだ!! 両者、よく健闘しました!!』
実況の大声に歓声が上がる。
「やるね、レオ」
「そっちもね、アオイ」
ジムリーダー二人はそれぞれを讃え、ボールを構える。
『さあ泣いても笑っても最後のポケモンだ! 一体バトルはどう動くのかっ!』
二人がボールを投げた。
それはレオの方は青い犬のようなポケモン、もう一匹は黄色と青の四足歩行のポケモンだった。
「色違いのヘルガーとライボルトだね」
エルが補足をする。同時に二人は動いた。
「熱く決めるよ、ヘルガー!」
「先まで行くぞ、ライボルト!」
それぞれキーストーンを起動させ、二匹は姿を変える。
「メガヘルガーとメガライボルト……ヘルガーはサンパワーで打点が上がっているね」
「でもメガライボルトは攻撃を下げるけどなあ、レオさんが物理か特殊のどっちに仕上げてきたかで変わるっすね」
「あいつシーズンごとに調整し直すからなぁ……」
先に動いたのはレオだった。
「“かえんほうしゃ”!!」
ヘルガーが炎を吐く。特殊の方で仕上げていたようだ。
「ライボルト、“チャージビーム”!!」
炎と電気がぶつかり合い、相殺して霧散する。
「いいのレオ? チャージビームの効果で打点が上がってるよ! “10まんボルト”!!」
「避けろっ! ヘルガー!」
ヘルガーは指示を聞いて避けようとしたが、つんのめって立ち止まる。
「“ねばねばネット”を忘れてもらっちゃ困るな!」
電撃がヘルガーに当たったかに見えた。
『な、なんとぉ! メガライボルトの圧倒的火力を耐えている!? こ、これは“まもる”だー!!』
「二人ともいやらし」
バジーリオが毒づいたが、半分は賞賛が込められていた。
「最大パワーだ、“オーバーヒート”!」
「メガライボルト、備えろ!」
ライボルトは受ける姿勢を取ったが、どうあれ。
炎がフィールドの広範囲を焼き尽くす。そして。
『メガライボルト、ダウン! ひりつく勝負を制したのはジムリーダー、レオだ!』
ひでり、サンパワーからの最大打点には耐えきれなかった。
「ちぇー、ここって時はレオに押し負けるなあ」
「でも俺もひやひやしたよ」
二人はポケモンを戻すと、歩み寄り握手をした。
『これでレオは三勝一敗、アオイは一勝三敗だー! アオイには少し厳しいレート戦になるかー!? だがレート戦は始まったばかり! 健闘した二人に拍手をー!!』
会場が拍手と歓声に包まれる。
その時。
パッと。
会場内の電気が落ちた。
皆がどよめいていると、やがて電気が復旧する。
『えーっと、これ届いてるんですかねぇ。あ、届いてるっぽいなぁ』
会場のスクリーンパネルには眼鏡の穏やかそうな男性が映っている。
『ごめんなさいね、バトルの邪魔しちゃって。でも僕らにも譲れないものってあるんですよ』
男は会場を置いて、語り出す。
『僕たちはヴァルキュリア・ファミリー。そして僕は幹部のスカム。簡単に言うと、人間を黄昏に、聖地へ導こう、という思想を持つものです。そのためには、ポケモンが要るんですねぇ』
「黄昏? 聖地……?」
『そう言う訳で、皆さんのポケモン欲しいなー。ええと、無理だったらいいんですけど、欲しいなー』
言葉は優しいが、ミケはなにか、その男の喋り方に寒気がした。心が伴っていない、そんな感覚だ。
『今手放してもらってもいいんですけど、それだとレート戦盛り上がらないので。黄昏まで待ってますねぇ。あ、じゃあそろそろ落ちます。あ、リーグの皆さんは逆探知とかしても無駄なんで。まぁやるんでしょうけど~。んじゃ、またね~』
そう言うと、画面が一瞬ブラックアウトし、また元のトーナメント表に表示が戻った。
『ええ、皆さん、落ち着いてください。今色々調べて確認しているので……! 安全が保障されたらレート戦の続きを行う方針です……』
「なんだったんだ今の」
「えー気色悪い……」
周りは動揺に蠢いている。
「バジル」
「うん、行こう」
バジーリオは残りの三人の方を向く。
「俺たちはリーグの人間だから、行ってくるよ。多分レート戦自体はすぐ始まると思うから。逆探知、あれだけの自信だと本当にできないだろうし、俺たちはマイナーリーグだからね」
「敵の言うこと信じんの?」
「むしろあそこまで啖呵切って顔出しまでして、逆に捕まったらおかしいだろ。もっと本質を見なよ。念のためにはするとして」
「まあ、そうよねー……」
「とにかく行くよ」
二人が去っていくと、ミケはぼんやりと呟いた。
「アッファル、ペチュニア、ツユクサ、スカム……」
「今まで出てきたヴァルキュリア・ファミリー……ひょっとしてみんな幹部なんでしょうか」
「どうだろう。ヨシノは一体どうなってるんだろうね」
「ヨシノって手配されてるウルビ使った奴?」
「ウルビ」
「……うん、まあ」
ラキは頭を掻く。
「俺がまだ……アローラにいた頃、あったんだよね。ウルビの大量襲来。その時はできるトレーナーが収めてくれたんだけど。裏側では、まだ収まってないのかもな」
「そうかもしれませんね……」
「み、ミケ。凹んでるけど、俺なんかした!?」
「い、いっいやそんなことは」
「私は嫌いですけどミケはヨシノが好きなんです」
「……恋敵?」
「違います! バーバラ先生じゃないんですから!」
「バーバラ先生も誰」
『皆さまお待たせしました! 次のサトルVSナズナのレート戦を開始します! アクシデントはありましたがリーグから続行可能と指示が出ました! 引き続き手に汗握るバトルをお楽しみください!!』
戸惑っていた観客は再び興奮に染まる。
「あ、ほら始まりますよ!」
「あ、話題逸らした」
「サトルさんもナズナさんも久しぶりだなぁ」
そうして、レート戦は不穏に染まりながらも再開された。
【260430】
アオイは暫くグレンアルマを見つめていたが、やがてフッと笑った。
「アネットを読んでたかはわからないけど、そのグレンアルマには泣かされたっけ」
「今回も泣かさせてもらうよ。グレンアルマ、“サイコフィールド”!」
グレンアルマが走りながら足元に紫のステージを展開する。
「エスパー技の威力が上がる上に、先制技が無力化されるね」
「うわー、グソクムシャで相手したくねー……」
バジーリオの解説にラキがぼやいた。
アオイが叫ぶ。
「アネット、食らわせろ、“でんこうそうげき”!!」
電気を帯びたパーモットが、グレンアルマに突っ込む。
「グレンアルマ! “サイコキネシス”!!」
電気と、グレンアルマの念波がぶつかる。双方ダメージを受けるが、最後に立っていたのは。
『グレンアルマ、立っているぅー!! パーモット、善戦虚しく退場です!!』
「ありがとう、アネット」
「アオイ、また強くなったね」
「褒めてもなにも出ないよ。君から勝利を奪うから!」
そう言うとアオイはボールを投げた。
『アオイの二匹目はデンチュラだー!! これは荒れるぞ!』
中から出てきた黄色い蜘蛛のポケモンが戦闘体勢に入る。
「“かみなり”!!」
出てすぐの指示にもデンチュラも対応する。
『ふくがんのとくせい込みのかみなり! グレンアルマ、耐えきれるかー!!』
「耐えるよ」
レオが言うと、グレンアルマは雷を受けながらも技を構える姿勢に入った。
「“ふんえん”!!」
ひでりの恩恵を受けての効果力の炎技。デンチュラも大ダメージである。
「“ねばねばネット”!」
二人のポケモンはよほど戦闘慣れしているのか、ダメージを受けてもすぐ立て直す。蜘蛛の糸がグレンアルマの足元に張り巡らされる。
「すごい……」
ミケが呟くと、エルも笑った。
「いやあの二人えぐいって。こんなんばっかだもんなメジャーリーグ」
「いつか、本気の二人と戦いたいな……」
「いつかはできるかもね」
「悠長に構えてていいの? もう一回“ふんえん”!」
「ならこっちももう一度、“かみなり”だよ!!」
炎と電気が交錯する──……!混じり合い、その眩しさに皆が目を閉じた。
『立っているものは……いないっ! 相討ちだ!! 両者、よく健闘しました!!』
実況の大声に歓声が上がる。
「やるね、レオ」
「そっちもね、アオイ」
ジムリーダー二人はそれぞれを讃え、ボールを構える。
『さあ泣いても笑っても最後のポケモンだ! 一体バトルはどう動くのかっ!』
二人がボールを投げた。
それはレオの方は青い犬のようなポケモン、もう一匹は黄色と青の四足歩行のポケモンだった。
「色違いのヘルガーとライボルトだね」
エルが補足をする。同時に二人は動いた。
「熱く決めるよ、ヘルガー!」
「先まで行くぞ、ライボルト!」
それぞれキーストーンを起動させ、二匹は姿を変える。
「メガヘルガーとメガライボルト……ヘルガーはサンパワーで打点が上がっているね」
「でもメガライボルトは攻撃を下げるけどなあ、レオさんが物理か特殊のどっちに仕上げてきたかで変わるっすね」
「あいつシーズンごとに調整し直すからなぁ……」
先に動いたのはレオだった。
「“かえんほうしゃ”!!」
ヘルガーが炎を吐く。特殊の方で仕上げていたようだ。
「ライボルト、“チャージビーム”!!」
炎と電気がぶつかり合い、相殺して霧散する。
「いいのレオ? チャージビームの効果で打点が上がってるよ! “10まんボルト”!!」
「避けろっ! ヘルガー!」
ヘルガーは指示を聞いて避けようとしたが、つんのめって立ち止まる。
「“ねばねばネット”を忘れてもらっちゃ困るな!」
電撃がヘルガーに当たったかに見えた。
『な、なんとぉ! メガライボルトの圧倒的火力を耐えている!? こ、これは“まもる”だー!!』
「二人ともいやらし」
バジーリオが毒づいたが、半分は賞賛が込められていた。
「最大パワーだ、“オーバーヒート”!」
「メガライボルト、備えろ!」
ライボルトは受ける姿勢を取ったが、どうあれ。
炎がフィールドの広範囲を焼き尽くす。そして。
『メガライボルト、ダウン! ひりつく勝負を制したのはジムリーダー、レオだ!』
ひでり、サンパワーからの最大打点には耐えきれなかった。
「ちぇー、ここって時はレオに押し負けるなあ」
「でも俺もひやひやしたよ」
二人はポケモンを戻すと、歩み寄り握手をした。
『これでレオは三勝一敗、アオイは一勝三敗だー! アオイには少し厳しいレート戦になるかー!? だがレート戦は始まったばかり! 健闘した二人に拍手をー!!』
会場が拍手と歓声に包まれる。
その時。
パッと。
会場内の電気が落ちた。
皆がどよめいていると、やがて電気が復旧する。
『えーっと、これ届いてるんですかねぇ。あ、届いてるっぽいなぁ』
会場のスクリーンパネルには眼鏡の穏やかそうな男性が映っている。
『ごめんなさいね、バトルの邪魔しちゃって。でも僕らにも譲れないものってあるんですよ』
男は会場を置いて、語り出す。
『僕たちはヴァルキュリア・ファミリー。そして僕は幹部のスカム。簡単に言うと、人間を黄昏に、聖地へ導こう、という思想を持つものです。そのためには、ポケモンが要るんですねぇ』
「黄昏? 聖地……?」
『そう言う訳で、皆さんのポケモン欲しいなー。ええと、無理だったらいいんですけど、欲しいなー』
言葉は優しいが、ミケはなにか、その男の喋り方に寒気がした。心が伴っていない、そんな感覚だ。
『今手放してもらってもいいんですけど、それだとレート戦盛り上がらないので。黄昏まで待ってますねぇ。あ、じゃあそろそろ落ちます。あ、リーグの皆さんは逆探知とかしても無駄なんで。まぁやるんでしょうけど~。んじゃ、またね~』
そう言うと、画面が一瞬ブラックアウトし、また元のトーナメント表に表示が戻った。
『ええ、皆さん、落ち着いてください。今色々調べて確認しているので……! 安全が保障されたらレート戦の続きを行う方針です……』
「なんだったんだ今の」
「えー気色悪い……」
周りは動揺に蠢いている。
「バジル」
「うん、行こう」
バジーリオは残りの三人の方を向く。
「俺たちはリーグの人間だから、行ってくるよ。多分レート戦自体はすぐ始まると思うから。逆探知、あれだけの自信だと本当にできないだろうし、俺たちはマイナーリーグだからね」
「敵の言うこと信じんの?」
「むしろあそこまで啖呵切って顔出しまでして、逆に捕まったらおかしいだろ。もっと本質を見なよ。念のためにはするとして」
「まあ、そうよねー……」
「とにかく行くよ」
二人が去っていくと、ミケはぼんやりと呟いた。
「アッファル、ペチュニア、ツユクサ、スカム……」
「今まで出てきたヴァルキュリア・ファミリー……ひょっとしてみんな幹部なんでしょうか」
「どうだろう。ヨシノは一体どうなってるんだろうね」
「ヨシノって手配されてるウルビ使った奴?」
「ウルビ」
「……うん、まあ」
ラキは頭を掻く。
「俺がまだ……アローラにいた頃、あったんだよね。ウルビの大量襲来。その時はできるトレーナーが収めてくれたんだけど。裏側では、まだ収まってないのかもな」
「そうかもしれませんね……」
「み、ミケ。凹んでるけど、俺なんかした!?」
「い、いっいやそんなことは」
「私は嫌いですけどミケはヨシノが好きなんです」
「……恋敵?」
「違います! バーバラ先生じゃないんですから!」
「バーバラ先生も誰」
『皆さまお待たせしました! 次のサトルVSナズナのレート戦を開始します! アクシデントはありましたがリーグから続行可能と指示が出ました! 引き続き手に汗握るバトルをお楽しみください!!』
戸惑っていた観客は再び興奮に染まる。
「あ、ほら始まりますよ!」
「あ、話題逸らした」
「サトルさんもナズナさんも久しぶりだなぁ」
そうして、レート戦は不穏に染まりながらも再開された。
【260430】
