ルミナスの手記

「では、そういう手筈で、ペチュニア」
「しくじらないことね、ツユクサ」
「アッファルじゃあるまいし」

★★★

「トリプルバトルか~う~ん」
 ミケはジムのエントランスで自分のボールを見て考え込んでいた。
「トリプルバトルって難しいって聞いたなぁ。本場はイッシュなんだっけ」
「そうだな、ファイトクラブでやってはいるけど。文字遠り三対三だ。端に置くと技が届かなかったりするから厄介なんだよな」
「うーん決めた! マッギョは真ん中に出しましょう。左がゴリランダー、右がルカリオかな!」
 名前を呼ばれたポケモンのボールが元気よく揺れた。
「まあ、無難だな」
「よし、行ってきます!」

 そして、数分後。
「これよりラタジム公式戦を始めます! 挑戦者の名前はミケランジェロ! 戦闘形式はトリプル三対三。全てのポケモンを鎮めた方の勝ちです! それでは、始め!」
 レフェリーがコートで試合開始を宣言する。
「いけっ! みんな!」
 ミケは決めた通りにポケモンを出す。
「頼んだよ!」
 対するアオイはミケ側から見て左からライチュウ、エレザード、シビルドンであった。

「シビルドンって地面効かないんじゃなかったか?」
「そうだな、浮いてるからな……シビルドンの相手はルカリオで適宜行っていく形になるな……」
「早速だけど、君が強いのは知ってるから、最初からフルスロットルで行かせてもらうよ! ライチュウ、メガシンカ!」
 アオイがマフラーの下のキーストーンを起動させる。数秒後、繭から姿の現したのはあのライチュウ。

「メガライチュウXだな」
「アローラのと全然違うな~ライチュウ」
「ラキくん、君割とマイペースだな……」
「?」

「こっちも行くぞ! ルカリオ!」
「くぅんぬ!」
 ミケもキーストーンを起動させる。ルカリオがメガシンカする。
 場は整った。後はぶつかり合うだけ!
「ライチュウ、“ボルテッカー”!」
「ゴリランダー、ライチュウが接触してから“ドラムアタック”!」
 ゴリランダーは言われた通りライチュウの攻撃を体で受け、ドラムの蔦でライチュウを絡めとる。
「“ボルテッカー”が反動技であることと、ゴリランダー自体はでんきを半減するが故のこちらの削りに重きを置いた判断か。さすがだね」
「アオイさんこそ、すぐ僕のしたいことを理解しましたね、さすがです」
「ふふ、でもそれ後悔することになるよ」
「?」
「エレザード、“ハイパーボイス”」
 エレザードがかっと口を開き、音波をミケの場に放った。
「ゴォ!」
「ぶみ」
「ルクン!」
 皆が音波に巻き込まれもんどり打つ。

「え、なんだあれ」
「ああ、全体が攻撃できるからエレザードを真ん中に置いてるんだな」
「トリプルだと威力は下がりますが、アドバンテージでもありますものね」
「でも、今回、アオイは苦しいぜ」
「そう、ですね……ルカリオがいますから」

 観客席の考えはミケも当然わかっていた。
「エレザード、ノーマルですよね、それ故ハイパーボイスは痛いんですが……こちらも! ルカリオ、“はどうだん”だ!」
「くん!」
 起き上がったルカリオが持前の速さで闘気の衝撃波を打す。
 それは確かに、エレザードに向かった。
 しかし。
「ビルル!」
 いつの間に横から飛び出してきたシビルドンの電撃によってそれは緩和される。シビルドンが少しダメージを受けたようだ。
「なんだって……速すぎる!」
「シビルドンはエレザードを継続して使うために置いているからね。弱点くらいカバーできないでなにがジムリーダー! だよ!」
「それならマッギョ、“がんせきふうじ”でシビルドンの足を下げろ!」
「ブミー!」
 マッギョが地面から飛ばした岩がシビルドンに刺さりかける。
「シビルドン、“まもる”!」
 シビルドンはそれを意図も簡単に無効化する。
「おもしろくなってきましたね……」
「うん、そうでしょう。君と俺は一緒だ。ひりつくバトルが好きだろう?」
「それでいて、勝てるバトルが好きですね」
「それも一緒だ」
「マッギョ、“ステルスロック”! ゴリランダー、引き続きライチュウに“ドラムアタック”! ルカリオはシビルドンに“はどうだん”!」
「ライチュウ、体力を温存しろ、ゴリランダーに“メガトンパンチ”! エレザードはさっきと同じく“ハイパーボイス”! シビルドンはルカリオを潰せ! “10まんボルト”!!」
 三匹と三匹が技を撃ち合う。砂埃で暫しフィールドが見えなくなる。そこに立っていたのは二匹だけだった。

「……ライチュウと、マッギョ」
 ミケが呟いた。

「メガライチュウのステゴロを舐めないでよ! “メガトンパンチ”でフィニッシュだ!」
 ミケはライチュウが技を撃ったのを確認してから叫んだ。
「マッギョ! “マッドショット”でさっき撒いた岩を飛ばせ!!」
「──な」
 一声吼えたマッギョの石を含んだ泥の攻撃がライチュウに突き刺さる。さながら石の入った泥団子。ライチュウは耐えきれずもんどり打って倒れる。起き上がってはこなかった。
「ジムリーダー、アオイの三匹のポケモンの戦闘不能を確認! よって勝者、ミケランジェロ!」
「やったあ! やったよマッギョ! 他のみんなも早くポケモンセンターに連れて行ってあげるからね!」
「ブミー♪」

「すご……勝った……」
「ミケはすごいんですよ」
「逆に勉強にならないな……」
「まあ、それはそう」

 アオイは皆をボールに戻すと、溜息を吐いた。
「君たち、とっても刺激的! うん、君にこそエレキスタンプは相応しい!」
「ありがとうございます!」
 スタンプ帳にスタンプを貼っていると、アオイはうーんと唸った。
「ついでにこれも渡しとくね」
「……メガストーン?」
「俺のメガライチュウXと対のメガライチュウYになのメガストーン。いつかライチュウ使ってよ」
「ありがとうございます」
「あーあ、この後レート戦やるのになぁ~レート下がったらやだなあ」
「アオイさんもレート戦なんですね」
「ああ、今回はメジャーリーグ全員だからね。後続のジムリーダー見るためにトールシティに来てもいいかも」
 そう言うとアオイはじゃあ行くから、とコートを出て行った。

★★★

 数十分後、ミケはポケモンセンターで傷ついたポケモンたちを預けていた。その肩では今回はタイプ相性的に選ばれなかったピジョンが大分くつろいでいる。シェリーのカルボウとラキのグソクムシャはポケモンフードを食べてご機嫌だ。
「いやー本当、どうなることかと思ったよ」
「アオイも強かったけど、ミケくんの方が上手だったな」
「本当にすげーよ。マッドショットでステルスロック弾にするとか、どうしたら思いつくの?」
「えーと、咄嗟に思いついたからとういうか」
「まじすげーそれに比べて俺は……」
 何故かラキが落ち込んだ時だった。
 ドオオ……ン。
 そんな爆発音と共に地面が揺れた。それだけならまだしも、ポケモンセンターの電気が落ちて真っ暗になる。
「なんだ!」
 エミールが眉を潜める。
「た、大変だぁ!」
 その数秒後に一人の男がポケモンセンターに飛び込んでくる。
「高台の発電所が何者かに襲われたみたいだ! ラタの施設が殆どダメになってる!!」

「襲われた!?」
「ミケの三匹はまだ回復できてないのに……」
「でも行くよ。困ってる人とポケモンがいたら、放っておけませんから」
「ミケくん……」
 エミールがふっと笑う。
「それなら、私とシェリーくんとラキくんもいるぞ」
「……俺も!? 冗談きついよ~」
 ラキの反応は予想の範囲内だ。
「行くけどさあ!」
「ありがとう、みんな」
「あ、私足はまだ治ってないから、ゆっくり行くね~」
 エミールが手をひらひらさせると、三人は頷き、それぞれのパートナーと共に走って行った。
 残されたエミールは呟いた。
「ラタの発電所か……偶然ってことないだろうな」


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