ルミナスの手記
あの後三人でポケモンセンターに向かった。皆でミケを支えて歩かせている体であった。
「バチンキー、入院らしい……」
エミールが職員から伝えられたことを離すと、ミケは俯いた顔を上げた。その瞳には涙が溜まっていた。ピジョンがその頭に顔を埋め、マッギョは悲しそうに一声鳴き、ルカリオもあわあわとしている。
「僕の……せいだ」
「ミケくん……それなら私だって」
「何が強くなりたいだよっ! ポケモンの一匹も守れないっ!」
「かる!」
シェリーのカルボウがシェリーの足をつついた。シェリーが戸惑っているとベトベターも腕を大振りに上げる。リオルはまだ状況が把握できていないようだ。しかしミケの方は気にしている素振りを見せている。
(そう、こういう時に声をかけなくて、なんのために仲間……)
「ミケ。トレーナーズスクールに行きましょう」
「……シェリー」
「シェリーくん、それは……」
「バチンキーはミケが好きです。その赤いポケモンから守ってくれたんでしょう。それだけでバチンキーは強いです。だから、立ち止まらないで。みんなでバチンキーと胸を張っていられるトレーナーでいましょう」
ミケの瞳から一筋の涙がとうとう零れた。しかしミケはすぐにその目をごしごしと拭く。
「ありがとう……一晩だけ時間をちょうだい。そしたら、ちゃんと」
「はい、別に落ち込んでても気にしませんよ」
「そうだぞ」
エミールは同意した後、はて、とあることに気づいた。
「今、呼び捨てにした? 『ミケ』って……」
「あ!? はわわ」
「無意識かぁ……」
「ごめんなさいミケ! 気合い入り過ぎちゃいました!!」
ミケは泣きながらだが、確かに笑った。
「……そのままでいいよ」
★★★
『謎の赤いポケモン……?』
その少し後、ラジオの休憩に入ったバジーリオがポケバーの着信履歴を見てエミールに電話を送っていた。
「ああ、見たのはミケだけだが、むしタイプかも、らしい」
『ハッサムかな?』
「多分違うと思う。バチンキーがダメージを受けすぎてる」
『……わかった。リーグには報告しとくよ』
「ありがとう」
『今日はもう遅い。子供たちが寝たなら君も寝なさい』
「……わかった」
通話を切ると、同じ部屋で寝ているミケを見る。目は痛痛しく腫れてしまっている。
ああは言われたが、エミールはポケバーのアプリのゴシップピッカーを立ち上げた。
キーワードの入力バーに『ヘリアル 赤いポケモン』と入れる。二つの発言がヒットした。
『夜にヘリアルで赤いマッスルなポケモン見たんだけど、すぐ消えちゃった。誰かの手持ちだったのかな』
『なんかオーラのある赤いポケモン出してるトレーナー見たんだけど、ヘリアルの子供はあんなポケモン出すんだね!?』
「十中、誰かの手持ちか。子供……」
「くん」
考え込んでいるとアブソルが足元で鳴いた。少し不貞腐れている。
「なんだ、ひょっとして……バジーリオの言うこと聞け? とか?」
「きゅん!」
肯定しているように、怒るようにアブソルは足元で跳ねる。
「わかったよ。寝ればいいんだろ、ったく、お母さんかよ……」
悪態はついたが、エミールは少し恥ずかしそうに笑っていた。
★★★
翌日。
ミケとシェリーがトレーナーズスクールに入ると、いつも通り受付にいたバーバラが顔を上げた。
「ミケちゃん! 大丈夫!?」
その言葉と視線を真っ向から受け止め、ミケは静かに頷いた。
「強くなりたくて来てるので。バチンキーは僕が止まることを望みません」
隣のシェリーも静かにミケを見守っていた。
「ミケちゃん……!」
バーバラは感無量と言った様子でハンカチを取り出すと、溢れる涙をぬぐった。
「バーバラ先生!?」
「立派になって……! あたしも自分のできることを精一杯するわ!」
「ありがとうございます……!」
「無駄やと思いますよ」
そんな雰囲気を壊すかのような冷たい声。振り向くと、何回かここで顔を合わせた少年。
「ヨシノくん……」
「大変やったんやってなぁ。バチンキーが可哀想や。さっさとトレーナーを引退することを勧めさせてもらうわ」
「……!」
ミケがなにかを言う前にシェリーが一歩前へ出た。
「今の言葉は撤回してください」
その言葉と同時にシェリーのボールからカルボウが出てきた。
「なんや、自分むしポケモンも殺せません、みたいな顔しといて結構勝気やん」
「撤回してくださいと、聞こえませんでしたか」
「ああ、オレ弱い奴の言葉、耳に入ってこへんねん」
「ミケに負けた癖に」
「あ?」
一触即発の雰囲気の中、不意に外からノックの音と声が聞こえた。返事をする前に言葉が続く。
「ポケモンリーグです、扉を開けてください」
「あら? なにかしら……」
さすがのバーバラも立て続けの出来事に翻弄されているようで、戸惑ったように扉を開ける。アリカと同じ制服、つまりガーディアントレーナーに囲まれた青緑の髪の少女が『ラティスリーグ ラタシティジムリーダー アオイ』と書かれた身分証をバーバラに出した。
「あらあら……隣町から! 話が見えないわ。どうしてうちに?」
「ウルトラビーストの不正使用の報告があったため、対応に来ました」
アオイはそう言うと、歩き出し、ヨシノを見止めると、そちらに向かった。
「特徴の一致を確認。ソメイ・ヨシノだね? 君はマッシブーンを持っているだろう」
ヨシノはアオイを正面から睨んだ。
「知らんわそんなポケモン」
「警備のロトムカメラにマッシブーンを使役している君が映っていた。『ゴシップピッカー』でそれについて書き込んだ二人にも確認したがマッシブーン、及び君の特徴と一致している。リーグ本部に来てもらうよ」
アオイの言っていることはミケたちに取っては『よくわからないこと』で。バーバラだけが、困ったように頬に手を当てていた。
そんな中ヨシノはずっと俯いていたが、やがて、顔を上げた。ミケの目にはその口元が弓型に吊り上がるのが一瞬だけ映った。
「なんや、もうちょっと泳がせてくれや」
「……ヨ、シ」
「でも、捕まってはやらん」
そう言ってヨシノは青い網のような柄の入った奇妙なボールを取り出し、投げた。
『マァアァアァァ!!』
次の瞬間聞こえたのは波動のような鳴き声とトレーナーズスクールの天井をなにかがぶち抜いていく音。
「シェリー!」
瓦礫からシェリーを守り、空を見上げると。
「……あ」
『あの赤いポケモン』がそこにいた。
バチンキーを倒したあのポケモンが。
「マッシブーンだ! 各自、マニュアルBの行動を取れ!!」
アオイの声にガーディアントレーナーたちがボールから様々なポケモンを出す。
「マッシブーン、ド級の“ばかぢから”喰らわせろ!!」
マッシブーンというらしいポケモンがガーディアントレーナーたちのポケモンに技を喰らわす。高火力、広範囲。全てのポケモンが吹き飛ばされ意識を失った。
「あ、アオイさん!」
「騒ぐな。本部に状況を」
トレーナーの一人が困ったように声をかける。アオイは冷静に諭した。
「あっはは! やっぱりオレは強い!!」
狂ったように笑うヨシノは、初めて見た笑顔で。
(こんな笑い方見たくなかったな……)
そこでミケは、あるボールが小刻みに震えていることに気づいた。
「ピジョン……?」
(そうだ、ピジョンはバチンキーと一緒にいた時間が一番長いんだ)
ミケは揺れるボールを取る。
「怒ってるんだね?」
ボールは一層揺れた。
「わかった! 仇を取ろう! ピジョン、頼む!」
ボールから出たピジョンは猛々しい鳴き声を発した。割と温厚なピジョンの初めて見る姿だ。
「カルボウ、ピジョンのサポートを!」
「それならあたしも、ソウブレイズ!」
アオイは戦闘を始めた三人を見て初めて口角を釣り上げた。
「……結晶のバトルを思い出す。よし、いけ、ライチュウ」
アオイのボールからは大柄な橙のポケモンが出てくる。
ヨシノはぎり、と奥歯を噛むような動作をした。イラついているのだ。
「自分ら、ほんとにしつこいわ。このポケモンには自分ら敵わんよ。おとなしくオレのブニャットに負けとけば、バチンキーも入院しなかったのになぁ?」
それは煽りだった。しかしミケは冷静に受け止める。
(負けたら悔しいのだって、勝つために強いポケモンを求めることだって悪いことじゃない)
ただ。
吹き飛ばされたバチンキーを思い出す。ミケは一瞬目を閉じると、その目を開けた。
「……ヨシノ」
「ああん?」
「ケリはバトルでつけよう」
ヨシノの顔が歪んだ。まだ折れないことがいやなのだろう。
だが、こっちだってもう折れることはできない。シェリーも、エミールも、バジーリオも。自分を信じてくれる。
(でも、君のやり方は肯定できない!!)
「来いよ、ヨシノ!」
「らしいで! わからせてやろうやマッシブーン!!」
『マブゥゥゥ!!』
こうして、一対四のバトルが始まった。
★★★
「よくないですよ、アッファルさん」
「あー?」
公園のベンチでマメパトに餌を上げていたアッファルは後ろからの声に気がなさそうな返事をした。
「ああ、マメパトに餌は禁止か」
「ああもうマメパト肩から離してください。じゃなくて、なんで『あんな中途半端な個体』をあの子供に渡したんですか?」
「そういう話になるか。だって一回負けたくらいで病むようなメンヘラちゃんだぜ? ウツロイドとかフェローチェだったら食われるじゃん。マッシブーンは筋肉が見せられて暴れられれば比較的扱い易いから。こういうのは適性を見るんだぜー?」
「詭弁ではあります」
後ろから声をかけてきた。白髪に眼帯の青年は考え事をするような動作を取った後、言った。
「まあ、我々の作戦はあれが捕まったところで割れませんしね。逃げることができたら正式に迎え入れましょう。ヨシノ、でしたっけ」
「お前も悪いね、ツユクサ~」
ツユクサと呼ばれた青年は曖昧に暗い笑みを返した。
「意外と彼が手記を見つけるかもしれませんし」
【260204】
「バチンキー、入院らしい……」
エミールが職員から伝えられたことを離すと、ミケは俯いた顔を上げた。その瞳には涙が溜まっていた。ピジョンがその頭に顔を埋め、マッギョは悲しそうに一声鳴き、ルカリオもあわあわとしている。
「僕の……せいだ」
「ミケくん……それなら私だって」
「何が強くなりたいだよっ! ポケモンの一匹も守れないっ!」
「かる!」
シェリーのカルボウがシェリーの足をつついた。シェリーが戸惑っているとベトベターも腕を大振りに上げる。リオルはまだ状況が把握できていないようだ。しかしミケの方は気にしている素振りを見せている。
(そう、こういう時に声をかけなくて、なんのために仲間……)
「ミケ。トレーナーズスクールに行きましょう」
「……シェリー」
「シェリーくん、それは……」
「バチンキーはミケが好きです。その赤いポケモンから守ってくれたんでしょう。それだけでバチンキーは強いです。だから、立ち止まらないで。みんなでバチンキーと胸を張っていられるトレーナーでいましょう」
ミケの瞳から一筋の涙がとうとう零れた。しかしミケはすぐにその目をごしごしと拭く。
「ありがとう……一晩だけ時間をちょうだい。そしたら、ちゃんと」
「はい、別に落ち込んでても気にしませんよ」
「そうだぞ」
エミールは同意した後、はて、とあることに気づいた。
「今、呼び捨てにした? 『ミケ』って……」
「あ!? はわわ」
「無意識かぁ……」
「ごめんなさいミケ! 気合い入り過ぎちゃいました!!」
ミケは泣きながらだが、確かに笑った。
「……そのままでいいよ」
★★★
『謎の赤いポケモン……?』
その少し後、ラジオの休憩に入ったバジーリオがポケバーの着信履歴を見てエミールに電話を送っていた。
「ああ、見たのはミケだけだが、むしタイプかも、らしい」
『ハッサムかな?』
「多分違うと思う。バチンキーがダメージを受けすぎてる」
『……わかった。リーグには報告しとくよ』
「ありがとう」
『今日はもう遅い。子供たちが寝たなら君も寝なさい』
「……わかった」
通話を切ると、同じ部屋で寝ているミケを見る。目は痛痛しく腫れてしまっている。
ああは言われたが、エミールはポケバーのアプリのゴシップピッカーを立ち上げた。
キーワードの入力バーに『ヘリアル 赤いポケモン』と入れる。二つの発言がヒットした。
『夜にヘリアルで赤いマッスルなポケモン見たんだけど、すぐ消えちゃった。誰かの手持ちだったのかな』
『なんかオーラのある赤いポケモン出してるトレーナー見たんだけど、ヘリアルの子供はあんなポケモン出すんだね!?』
「十中、誰かの手持ちか。子供……」
「くん」
考え込んでいるとアブソルが足元で鳴いた。少し不貞腐れている。
「なんだ、ひょっとして……バジーリオの言うこと聞け? とか?」
「きゅん!」
肯定しているように、怒るようにアブソルは足元で跳ねる。
「わかったよ。寝ればいいんだろ、ったく、お母さんかよ……」
悪態はついたが、エミールは少し恥ずかしそうに笑っていた。
★★★
翌日。
ミケとシェリーがトレーナーズスクールに入ると、いつも通り受付にいたバーバラが顔を上げた。
「ミケちゃん! 大丈夫!?」
その言葉と視線を真っ向から受け止め、ミケは静かに頷いた。
「強くなりたくて来てるので。バチンキーは僕が止まることを望みません」
隣のシェリーも静かにミケを見守っていた。
「ミケちゃん……!」
バーバラは感無量と言った様子でハンカチを取り出すと、溢れる涙をぬぐった。
「バーバラ先生!?」
「立派になって……! あたしも自分のできることを精一杯するわ!」
「ありがとうございます……!」
「無駄やと思いますよ」
そんな雰囲気を壊すかのような冷たい声。振り向くと、何回かここで顔を合わせた少年。
「ヨシノくん……」
「大変やったんやってなぁ。バチンキーが可哀想や。さっさとトレーナーを引退することを勧めさせてもらうわ」
「……!」
ミケがなにかを言う前にシェリーが一歩前へ出た。
「今の言葉は撤回してください」
その言葉と同時にシェリーのボールからカルボウが出てきた。
「なんや、自分むしポケモンも殺せません、みたいな顔しといて結構勝気やん」
「撤回してくださいと、聞こえませんでしたか」
「ああ、オレ弱い奴の言葉、耳に入ってこへんねん」
「ミケに負けた癖に」
「あ?」
一触即発の雰囲気の中、不意に外からノックの音と声が聞こえた。返事をする前に言葉が続く。
「ポケモンリーグです、扉を開けてください」
「あら? なにかしら……」
さすがのバーバラも立て続けの出来事に翻弄されているようで、戸惑ったように扉を開ける。アリカと同じ制服、つまりガーディアントレーナーに囲まれた青緑の髪の少女が『ラティスリーグ ラタシティジムリーダー アオイ』と書かれた身分証をバーバラに出した。
「あらあら……隣町から! 話が見えないわ。どうしてうちに?」
「ウルトラビーストの不正使用の報告があったため、対応に来ました」
アオイはそう言うと、歩き出し、ヨシノを見止めると、そちらに向かった。
「特徴の一致を確認。ソメイ・ヨシノだね? 君はマッシブーンを持っているだろう」
ヨシノはアオイを正面から睨んだ。
「知らんわそんなポケモン」
「警備のロトムカメラにマッシブーンを使役している君が映っていた。『ゴシップピッカー』でそれについて書き込んだ二人にも確認したがマッシブーン、及び君の特徴と一致している。リーグ本部に来てもらうよ」
アオイの言っていることはミケたちに取っては『よくわからないこと』で。バーバラだけが、困ったように頬に手を当てていた。
そんな中ヨシノはずっと俯いていたが、やがて、顔を上げた。ミケの目にはその口元が弓型に吊り上がるのが一瞬だけ映った。
「なんや、もうちょっと泳がせてくれや」
「……ヨ、シ」
「でも、捕まってはやらん」
そう言ってヨシノは青い網のような柄の入った奇妙なボールを取り出し、投げた。
『マァアァアァァ!!』
次の瞬間聞こえたのは波動のような鳴き声とトレーナーズスクールの天井をなにかがぶち抜いていく音。
「シェリー!」
瓦礫からシェリーを守り、空を見上げると。
「……あ」
『あの赤いポケモン』がそこにいた。
バチンキーを倒したあのポケモンが。
「マッシブーンだ! 各自、マニュアルBの行動を取れ!!」
アオイの声にガーディアントレーナーたちがボールから様々なポケモンを出す。
「マッシブーン、ド級の“ばかぢから”喰らわせろ!!」
マッシブーンというらしいポケモンがガーディアントレーナーたちのポケモンに技を喰らわす。高火力、広範囲。全てのポケモンが吹き飛ばされ意識を失った。
「あ、アオイさん!」
「騒ぐな。本部に状況を」
トレーナーの一人が困ったように声をかける。アオイは冷静に諭した。
「あっはは! やっぱりオレは強い!!」
狂ったように笑うヨシノは、初めて見た笑顔で。
(こんな笑い方見たくなかったな……)
そこでミケは、あるボールが小刻みに震えていることに気づいた。
「ピジョン……?」
(そうだ、ピジョンはバチンキーと一緒にいた時間が一番長いんだ)
ミケは揺れるボールを取る。
「怒ってるんだね?」
ボールは一層揺れた。
「わかった! 仇を取ろう! ピジョン、頼む!」
ボールから出たピジョンは猛々しい鳴き声を発した。割と温厚なピジョンの初めて見る姿だ。
「カルボウ、ピジョンのサポートを!」
「それならあたしも、ソウブレイズ!」
アオイは戦闘を始めた三人を見て初めて口角を釣り上げた。
「……結晶のバトルを思い出す。よし、いけ、ライチュウ」
アオイのボールからは大柄な橙のポケモンが出てくる。
ヨシノはぎり、と奥歯を噛むような動作をした。イラついているのだ。
「自分ら、ほんとにしつこいわ。このポケモンには自分ら敵わんよ。おとなしくオレのブニャットに負けとけば、バチンキーも入院しなかったのになぁ?」
それは煽りだった。しかしミケは冷静に受け止める。
(負けたら悔しいのだって、勝つために強いポケモンを求めることだって悪いことじゃない)
ただ。
吹き飛ばされたバチンキーを思い出す。ミケは一瞬目を閉じると、その目を開けた。
「……ヨシノ」
「ああん?」
「ケリはバトルでつけよう」
ヨシノの顔が歪んだ。まだ折れないことがいやなのだろう。
だが、こっちだってもう折れることはできない。シェリーも、エミールも、バジーリオも。自分を信じてくれる。
(でも、君のやり方は肯定できない!!)
「来いよ、ヨシノ!」
「らしいで! わからせてやろうやマッシブーン!!」
『マブゥゥゥ!!』
こうして、一対四のバトルが始まった。
★★★
「よくないですよ、アッファルさん」
「あー?」
公園のベンチでマメパトに餌を上げていたアッファルは後ろからの声に気がなさそうな返事をした。
「ああ、マメパトに餌は禁止か」
「ああもうマメパト肩から離してください。じゃなくて、なんで『あんな中途半端な個体』をあの子供に渡したんですか?」
「そういう話になるか。だって一回負けたくらいで病むようなメンヘラちゃんだぜ? ウツロイドとかフェローチェだったら食われるじゃん。マッシブーンは筋肉が見せられて暴れられれば比較的扱い易いから。こういうのは適性を見るんだぜー?」
「詭弁ではあります」
後ろから声をかけてきた。白髪に眼帯の青年は考え事をするような動作を取った後、言った。
「まあ、我々の作戦はあれが捕まったところで割れませんしね。逃げることができたら正式に迎え入れましょう。ヨシノ、でしたっけ」
「お前も悪いね、ツユクサ~」
ツユクサと呼ばれた青年は曖昧に暗い笑みを返した。
「意外と彼が手記を見つけるかもしれませんし」
【260204】
