ルミナスの手記

「じゃあ、体験授業は終わり! 明日からは二人とも、通常授業よ」
 一通り自分のポケモンについて知ったミケとシェリーはその言葉に目を見開く。
「え、ででもお金」
「ふふ、あたしはぬかりないわよ。昨日のうちにミケちゃんのお母さんと連絡取ったの。ちゃんと二人分払ってくれるそうよ~!」
「そ、そんな! ミケさんのお母様に払ってもらうなんて、だめです!!」
「いいのよ未来のお嫁さんなんだから~!!」
「ち、違うって!」
「そうですよ!」
 バーバラはうふふと笑ってる。
「冗談冗談。本当に大丈夫よ? 料金元職員ってことで二人で一人分だから。ミケちゃんのお母さんも二人とバトルしたいって言ってるわ」
「あ、ありがとうございます!」
「絶対ボコボコにされる……あ、そうだ!」
 がっくりと項垂れたミケはふと思い直したように顔を上げポケバーを取り出す。
「バーバラさんのポケモン、撮ったことなかったなって」
「あら~そういえばミケくんはポケモンを撮るんだったわね。いいわよ、来て!」
 バーバラは上に手を伸ばしセクシーなポーズを取ると、ボールを投げる。中から青い揺らめく炎を纏ったポケモンを出した。
「わ、ソウブレイズだ!」
「カルボウの、進化先ですね」
「じゃあ早速撮らせてもらおう! シェリーのカルボウも並べようよ!」
「え、えっと」
「お待ち、よミケちゃん! 丁度いい機会だから、シェリーちゃんさえよかったら映え写を取りましょう!」
「?」
 バーバラはソウブレイズに目配せをする。ソウブレイズは頷き、受付のスタッフルームに入って行った。二人が不思議そうに顔を見合わせているとソウブレイズはなにかを持ってきた。黄色い鎧だ。
「これは……」
「『イワイノヨロイ』よ。あたしのカルボウはこれの対の『ノロイノヨロイ』でソウブレイズに進化したの! この鎧を使えばシェリーちゃんのカルボウはグレンアルマというポケモンになるわ! まあ、シェリーちゃんがよかったらなんだけど……」
「え、ええと……」
 シェリーはカルボウが入っているであろうボールを見る。
「気持ちは嬉しいし、バトルには強くなりたいと思っています。ただ、カルボウがなにになりたいかわからないのと、私がまだカルボウと一緒にいたいです……」
 バーバラは口笛を吹く。
「愛情深くてとってもいいわね! ただ選択肢として鎧はシェリーちゃんに預けておくわね!」
「……はい」
 シェリーは鎧は素直に受け取った。彼女も強くなりたいとミケに言った身、択としてはあるのだろう。
「明日は丁度、自分のポケモンと仲良くなる授業をやるのよ。さ、カルボウを出して! 進化前進化後で写真撮りましょ!」
「かっこよく撮るよ、シェリー!」
「ありがとうございます……!」

 そうしてワイワイやっていると誰かがスクールの扉を開いた。
「あ、ヨシノくん」
「……」
 入ってきたヨシノはミケの方をちらりと見ると、奥の教室に消えて行った。
「あ……」
「ごめんなさいね」
「いえ、その……感じ変わりました?」
「え?」
「いや、わかんないですけど」
 ミケは首を傾げたが、バーバラに促され写真撮影に戻った。

(……お前なんかに、絶対負けへん)
 教室の扉を開いて、ヨシノはひとつの青いボールを握った。

★★★

「アップした写真、反応いいよぉ」
「よかった」
「あ、いい写真だねー」
 後ろからポケバーを覗いたバジーリオが笑った。
「でしょ」
「そだ、バジーリオさん今から仕事だから、この後留守にするねー」
「ラジオですか!?」
「そうそう、いい子で待てるよね?」
「はいっ! 待つなと言われても待ちます!!」
「シェリー……」
「そゆ訳で、エミーのことはよく見ててねー今隣で不貞寝してるから」
「最近ずっと調子悪いですね」
 バジーリオは困ったように腕を組んだ。
「そこは確かにね」
 そしてひとつ溜息を吐くと部屋を出て行った。
「バジーリオ様のラジオ配信! チェックです!! 私、部屋で聞いてきます!」
「あ、うん……」
 ばたんとシェリーも部屋を出て行く。ミケはボールを確認すると、手持ちのポケモンたちを出した。
 最初のポケモン、バチンキー。初めて捕まえたポケモン、ピジョン。ソウエンジム対策に捕まえたポケモン、マッギョ。コップ遺跡の研究所で出会ったポケモン、ルカリオ。
「ご飯だよ」
 棚からペレットを出すと四匹は喜んでミケに着いてくる。
 皆に餌を上げて、それを写真に収めている時だった。
 ドオオ……ン。
 地響きと共に建物が揺れた。地震かと慌てて窓を開けると、一匹のポケモンがこちらを見ていた。赤い、筋肉質な見たことのないポケモン。そのポケモンが、至近距離でミケを見つめていた。
「ききぃー!」
 事態をすぐ把握したバチンキーがそのポケモンに掴みかかる。
「だめだっ、バチンキー!!」
「……」
 赤いポケモンは無言で掴みかかられたバチンキーを意図も簡単に払う。それだけでバチンキーは部屋の壁に叩きつけられ、戦闘不能になった。
「バチンキー!」
「……」
 赤いポケモンはス……とゆっくりと夜のヘリアルに消えて行った。
「どうしたミケくん!」
「ミケさん!?」
 事態を察知したのかエミールとシェリーがそれぞれ部屋から出てくる。
「バチンキー!」
 ミケがバチンキーを抱き起こすとぐったりとしている。
「は、早くポケセンに」
「アブソル、ポケモンセンターに頼む! 後で私たちも行く!」
 エミールの指示に、アブソルが一声鳴くとバチンキーを背中に乗せ去って行く。ミケが動揺してるのを見越してか、エミールは足を庇いながらミケの傍に行く。
「大丈夫だ。ポケモンセンターに行けば回復するから。私たちも行こう」
「……ら」
「?」
「死んだら……どうしよう」
 泣きそうなミケの頭をエミールが強めに撫でる。
「大丈夫だ! 大丈夫!」

『次の投稿です。「私はポケモンといい距離感が掴めないのですが、バジルさんはコツなどありますか」。……そうですね、まず全てを曝け出してみては。と言っても、それは簡単ではありません。まずは一緒にいてあげてください。多分そうすれば自ずと答えに辿り着くから』

 シェリーのラジオから流れるバジーリオの声だけが、その場に響いていた。


【260201】
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