ルミナスの手記
ヘリアルシティからイチヨウシティまで、そらをとぶタクシーで二時間ほど。
タクシーの中でもカメラを弄る少年、ミケランジェロは案の定、母親に呆れられていた。
「もう、首痛めるわよ」
「最近感度ずっと高くしてたから、そろそろ趣向を変えたくて」
「もう……」
「流して聞かないでよ! 画質に関わるんだから!!」
「わかったわかった。ごめんなさい」
「よし、すみませーん、ピジョット撮らせて大丈夫ですかー?」
「ミケ!」
ミケランジェロこと愛称ミケの申し出に、タクシー運転手は一しきり笑った後、『勿論』と返答した。
「じゃあレンズは絞って……」
ぱしゃりと一枚、大きなデジカメで撮ってミケは満足気に微笑んだ。
「うん、いい写真だ。ありがとう、ピジョット」
「きゅあ!」
ピジョットが返事をした時丁度、街が見えてきた。ヘリアルタウンほど賑やかではないが、高いビルがあちこちに建っている。オフィスがたくさん入っている場所なのだという。経済の発展地ということだ。
「どんなポケモンに会えるかなぁ」
「ミケはトレーナーにはならないの?」
「んー……きっかけないだけだからなぁ」
「そう! ならきっとイチヨウを気に要るわ!」
「?」
「ふふ」
イチヨウシティ。どんな植物も一枚の葉っぱから。
そんな触れ込みの看板を見ながら、ミケは母親と新居に向かいながら道行く人々を観察していた。
忙しそうなサラリーマン、電話するOL、それに着いていくポケモンたち。皆忙しそうにしているので写真は撮れなさそうだ。
「あ、ショップがあるわね。日用品少し足りなかったから。お母さん買い物行ってくるわね。家の場所は教えてたわね? ここをまっすぐの赤い屋根のお家だから」
「わかった」
「写真関連でひと様に迷惑かけないように!」
「わ、わかったよ」
バツが悪そうにミケが言うと、母親は頷き、ショップに入って行った。
「赤い屋根、ね……」
呟き、歩きだした時だった。
「おいおいおい~そりゃねぇぜ兄弟!!」
「!?」
大きな声にびっくりして立ち止まると、一人の女性が一見見えないようになっている路地裏でガラの悪い二人組に絡まれていた。
「兄貴も言ってんじゃねぇか? ちょーっと、資料が欲しいだけなんだからよぉ~」
「あ、あの、えっと……」
「もういいかな!? ポケモンバトルでわからせたらいいかな!?」
「やっちまいましょう兄貴! 二人ならさすがに勝てますよ!!」
「ええ……いいけど……」
(まずい!)
ミケは思わず走り出した。なにも考えていなかった。
「おい! いじめはやめろ!!」
ミケが叫ぶと二人組は厳しい顔で彼を見た。
「なんだぁ? ガキ!?」
「兄貴の邪魔すると痛い目に遭うぜぇ~!?」
しかしミケは怯まなかった。
「いじめはやめろって言ってるだろ!」
「なんだぁ、こりゃあ是が非でも泣かして金取らんとなぁ!」
「うっ……」
「今ビビったな!? もう遅いぜ!!」
「び、ビビッてなんか……」
「あ?」
「子供から金取ろうなんてかっこ悪いぞ!!」
その言葉に『兄貴』と呼ばれてた男の顔から笑顔が消えた。
「お前、言っちまったな~!? ポケモン持ってねぇなら骨の一本や二本覚悟してくれよな!?」
あ、やらかしたかも。
そう思った時だった。
「きゃきゃー!!」
最初に絡まれていた男性の鞄からなにかが飛び出してきた。緑の初めて見るポケモンだ。
「きゃっきゃ」
「なんだぁ!? お前こいつを庇うつもりか? ポケモンの癖に俺たちヴァルキュリア・ファミリーに盾突こうなんて命知らずめ! まとめて鳴かしてやるぜ!!」
そう言うと『兄貴』は蝙蝠のポケモンを出した。確かズバットというポケモンだ。
「あ、あの」
目を丸くしていると絡まれていた女性が近寄って耳打ちした。
「ここは覚悟を決めてサルノリに任せるしかないかも。相性は悪いけどサルノリのやる気を信じてあげて」
「え、貴方が戦うんじゃないですか?」
「私はただの研究者だから、バトル強くないの。アドバイスはするから、お願いできるかな」
「んん」
ミケは一瞬考え込んだが足元の『サルノリ』というらしいポケモンが自分の傍で鼻息を荒くしているのを見ると、わかりました、と伝えるとミケはサルノリに声をかける。
「サルノリ、俺と一緒に戦ってくれる?」
「うきゃ!」
肯定のようだ。
「うん! 行くよ!!」
男たちは下卑た笑いを浮かべている。
「情報と一緒にこのサルノリ貰ってもいいかもな!」
「させないよ!」
かくしてミケの初めてのバトルが始まった。
★★★
「“つばさでうつ”!!」
「サルノリに『避けて』と指示して!」
「さ、サルノリ! 避けろ!!」
羽根がぶつかる直前、サルノリはローリングして避けた。
「さ、サルノリに技を指示して!」
「え、“えだづき”!!」
サルノリが頭の枝を取る。そしてズバットを思い切り叩いた。
「ズバッ!?」
「そんな攻撃……きゅうしょだと!?」
「チャンスよ畳みかけて!」
「っ、……“ひっかく”!」
サルノリが腕を振り上げ、ズバットの翼をひっかく。
「ずば~……」
羽根も傷ついていいるし目を回してしまったズバットはもう戦えないだろう。
「うそ、だろ……」
「あ、兄貴……」
「てめー完全に俺たち敵にしたな! そこのクソメスもまだお前からあのデータを奪うの諦めた訳じゃないからな!」
「あ、待ってくださいよ兄貴~!!」
そう言と男たちは逃げて行った。
「は、はあ……勝った?」
「きゃ!」
「本当にありがとう、でも……あまり無鉄砲な行動はだめよ」
それは自分でもそう思う。
「ごめんなさい……」
「よろしい。私はイチヨウのハミズ研究所の博士助手のアマダテ。貴方は?」
「今日から引っ越してきたミケランジェロです。ミケって呼ばれることが多いです」
「ミケくんね、突然だけど今時間ある?」
「え、えっと……」
「貴方も無関係じゃないかもしれないから、是非研究所に来て欲しいんだけど……」
「ど、どうしようかな」
「そっか。気が向いたら来てね。こっちの道の突き当りだから。行くよサルノリ」
「きゃ……」
サルノリは名残惜し気にミケを見てはアマダテに着いて行って去っていった。写真、撮りたかったな。
「とりあえず、家行くかあ」
「どしたのあんたまだこんなとこにいたの」
「あ、実は……」
★★★
「まさかそんなヤンチャするとはね」
「すみません……」
「でも人助けをしたのよね。……ミケランジェロ」
「?」
「研究所に行きなさい。実は最初から行かせようとは思ってたの」
「え!?」
「トレーナーになるときは博士からポケモンと便利アイテムを貰えるのよ」
「便利アイテム」
母親は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「行けばわかるから」
★★★
「ここか……ハミズ研究所」
なかなか大きな建物だ。意を決して扉を開けた。
「きゃきゃー!」
「わ!」
途端顔に張り付いた緑のなにか。この鳴き声は知っている。
「なにすんだよサルノリ!」
「どうやら、君のことを酷く気に入ったらしいね」
サルノリをつまみあげていると上から声が聞こえた。バルコニー調のスペースから降りてきたのは黄緑の髪の男性。男性と称したが顔は可愛らしく、やや小柄だ。
「どうも、博士のハミズです。アマダテから話は聞いたよ。サルノリがそんなに懐くならきっとくると思ってた!」
「え、えと。ミケランジェロです……」
「ミケランジェロくん。……そういえば、そのカメラは?」
「あ、これですか……実はポケモンを撮るのが趣味で……」
「へぇ……」
ハミズは暫く考え込む動作をした後、うん、と頷いた。
「ちょっと待っててね」
そう言って奥に引っ込んだハミズに戸惑っていると、別の人物が声をかけてきた。壮年の男性だ。
「ポケバーをご存じですカ」
「え、えと」
「失礼、カルロスと申しマス。アマダテ君と一緒に助手をやっておりマス」
「あ、初めまして……」
「それで、ポケバーは」
「持ってる人がいるのは、見たことがあります」
「実はそれ、ここでポケモンと一緒に貰えるんですよネ」
「へー……」
「そんな訳で、君のポケバーだよ」
「わあ!」
いつの間にかハミズが戻ってきていた。スティックのような端末、さっき言った通りたまにトレーナーが持っている端末だ。
「機能については追々知って行ってね。着せ替えアイテムとかもあるから。お金がかかるけど」
「あ、はい」
「聞きたいんだけど」
ハミズはしかし、なかなかミケにポケバーを渡さなかった。
「君はポケモンが好き?」
「……はい! この世界の全部のポケモンに会って写真を撮るんです!!」
反射的に個人的な欲望を伝えてしまっていた。『そんなの無理だ』と言われるかも。
「うん、図鑑を全国版にアップデートしてよかったよ」
「図鑑?」
「うん、ポケモン図鑑。知らない訳じゃないだろう。これがあれば、ポケモンに会う喜びが増え、我々研究者はデータが手に入ってwin-winって訳」
「……」
「改めて名乗ります。僕はハミズ、ポケモンと人間がお互いどう関わってきたかの歴史を調べています。君はサルノリと冒険に出て、ポケモン図鑑を完成させる旅に出てくれますか!」
胸がいっぱいだ。そんな、そんなにワクワクすることってない。そもそも、ポケモントレーナーになれるなんて、なんて素敵なことだろう。
「はい! 旅に出ます!」
そう言って腕を差し出すとハミズはとてもいい笑顔でポケバーをミケに渡した。
「今日は家に帰りなさい。旅には明日からだね」
「はい、あ」
「?」
「写真ってポケバーでもできますか? さすがにいつも使ってるカメラ持ってたら咄嗟の時動けないので……」
「安心して、標準装備だよ。インカメもついてる。試しにサルノリを撮影してみたら?」
「そうします、サルノリ~」
「きゃ!」
意図を察したのかポーズを取ったサルノリをミケはポケバーのカメラ機能で撮影した。
「ここから始まる……きっと全部のポケモンに会ってみせる!」
こうして、一人と一匹の旅路は正に今拓かれていた。
【251210】
【251221】追記
タクシーの中でもカメラを弄る少年、ミケランジェロは案の定、母親に呆れられていた。
「もう、首痛めるわよ」
「最近感度ずっと高くしてたから、そろそろ趣向を変えたくて」
「もう……」
「流して聞かないでよ! 画質に関わるんだから!!」
「わかったわかった。ごめんなさい」
「よし、すみませーん、ピジョット撮らせて大丈夫ですかー?」
「ミケ!」
ミケランジェロこと愛称ミケの申し出に、タクシー運転手は一しきり笑った後、『勿論』と返答した。
「じゃあレンズは絞って……」
ぱしゃりと一枚、大きなデジカメで撮ってミケは満足気に微笑んだ。
「うん、いい写真だ。ありがとう、ピジョット」
「きゅあ!」
ピジョットが返事をした時丁度、街が見えてきた。ヘリアルタウンほど賑やかではないが、高いビルがあちこちに建っている。オフィスがたくさん入っている場所なのだという。経済の発展地ということだ。
「どんなポケモンに会えるかなぁ」
「ミケはトレーナーにはならないの?」
「んー……きっかけないだけだからなぁ」
「そう! ならきっとイチヨウを気に要るわ!」
「?」
「ふふ」
イチヨウシティ。どんな植物も一枚の葉っぱから。
そんな触れ込みの看板を見ながら、ミケは母親と新居に向かいながら道行く人々を観察していた。
忙しそうなサラリーマン、電話するOL、それに着いていくポケモンたち。皆忙しそうにしているので写真は撮れなさそうだ。
「あ、ショップがあるわね。日用品少し足りなかったから。お母さん買い物行ってくるわね。家の場所は教えてたわね? ここをまっすぐの赤い屋根のお家だから」
「わかった」
「写真関連でひと様に迷惑かけないように!」
「わ、わかったよ」
バツが悪そうにミケが言うと、母親は頷き、ショップに入って行った。
「赤い屋根、ね……」
呟き、歩きだした時だった。
「おいおいおい~そりゃねぇぜ兄弟!!」
「!?」
大きな声にびっくりして立ち止まると、一人の女性が一見見えないようになっている路地裏でガラの悪い二人組に絡まれていた。
「兄貴も言ってんじゃねぇか? ちょーっと、資料が欲しいだけなんだからよぉ~」
「あ、あの、えっと……」
「もういいかな!? ポケモンバトルでわからせたらいいかな!?」
「やっちまいましょう兄貴! 二人ならさすがに勝てますよ!!」
「ええ……いいけど……」
(まずい!)
ミケは思わず走り出した。なにも考えていなかった。
「おい! いじめはやめろ!!」
ミケが叫ぶと二人組は厳しい顔で彼を見た。
「なんだぁ? ガキ!?」
「兄貴の邪魔すると痛い目に遭うぜぇ~!?」
しかしミケは怯まなかった。
「いじめはやめろって言ってるだろ!」
「なんだぁ、こりゃあ是が非でも泣かして金取らんとなぁ!」
「うっ……」
「今ビビったな!? もう遅いぜ!!」
「び、ビビッてなんか……」
「あ?」
「子供から金取ろうなんてかっこ悪いぞ!!」
その言葉に『兄貴』と呼ばれてた男の顔から笑顔が消えた。
「お前、言っちまったな~!? ポケモン持ってねぇなら骨の一本や二本覚悟してくれよな!?」
あ、やらかしたかも。
そう思った時だった。
「きゃきゃー!!」
最初に絡まれていた男性の鞄からなにかが飛び出してきた。緑の初めて見るポケモンだ。
「きゃっきゃ」
「なんだぁ!? お前こいつを庇うつもりか? ポケモンの癖に俺たちヴァルキュリア・ファミリーに盾突こうなんて命知らずめ! まとめて鳴かしてやるぜ!!」
そう言うと『兄貴』は蝙蝠のポケモンを出した。確かズバットというポケモンだ。
「あ、あの」
目を丸くしていると絡まれていた女性が近寄って耳打ちした。
「ここは覚悟を決めてサルノリに任せるしかないかも。相性は悪いけどサルノリのやる気を信じてあげて」
「え、貴方が戦うんじゃないですか?」
「私はただの研究者だから、バトル強くないの。アドバイスはするから、お願いできるかな」
「んん」
ミケは一瞬考え込んだが足元の『サルノリ』というらしいポケモンが自分の傍で鼻息を荒くしているのを見ると、わかりました、と伝えるとミケはサルノリに声をかける。
「サルノリ、俺と一緒に戦ってくれる?」
「うきゃ!」
肯定のようだ。
「うん! 行くよ!!」
男たちは下卑た笑いを浮かべている。
「情報と一緒にこのサルノリ貰ってもいいかもな!」
「させないよ!」
かくしてミケの初めてのバトルが始まった。
★★★
「“つばさでうつ”!!」
「サルノリに『避けて』と指示して!」
「さ、サルノリ! 避けろ!!」
羽根がぶつかる直前、サルノリはローリングして避けた。
「さ、サルノリに技を指示して!」
「え、“えだづき”!!」
サルノリが頭の枝を取る。そしてズバットを思い切り叩いた。
「ズバッ!?」
「そんな攻撃……きゅうしょだと!?」
「チャンスよ畳みかけて!」
「っ、……“ひっかく”!」
サルノリが腕を振り上げ、ズバットの翼をひっかく。
「ずば~……」
羽根も傷ついていいるし目を回してしまったズバットはもう戦えないだろう。
「うそ、だろ……」
「あ、兄貴……」
「てめー完全に俺たち敵にしたな! そこのクソメスもまだお前からあのデータを奪うの諦めた訳じゃないからな!」
「あ、待ってくださいよ兄貴~!!」
そう言と男たちは逃げて行った。
「は、はあ……勝った?」
「きゃ!」
「本当にありがとう、でも……あまり無鉄砲な行動はだめよ」
それは自分でもそう思う。
「ごめんなさい……」
「よろしい。私はイチヨウのハミズ研究所の博士助手のアマダテ。貴方は?」
「今日から引っ越してきたミケランジェロです。ミケって呼ばれることが多いです」
「ミケくんね、突然だけど今時間ある?」
「え、えっと……」
「貴方も無関係じゃないかもしれないから、是非研究所に来て欲しいんだけど……」
「ど、どうしようかな」
「そっか。気が向いたら来てね。こっちの道の突き当りだから。行くよサルノリ」
「きゃ……」
サルノリは名残惜し気にミケを見てはアマダテに着いて行って去っていった。写真、撮りたかったな。
「とりあえず、家行くかあ」
「どしたのあんたまだこんなとこにいたの」
「あ、実は……」
★★★
「まさかそんなヤンチャするとはね」
「すみません……」
「でも人助けをしたのよね。……ミケランジェロ」
「?」
「研究所に行きなさい。実は最初から行かせようとは思ってたの」
「え!?」
「トレーナーになるときは博士からポケモンと便利アイテムを貰えるのよ」
「便利アイテム」
母親は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「行けばわかるから」
★★★
「ここか……ハミズ研究所」
なかなか大きな建物だ。意を決して扉を開けた。
「きゃきゃー!」
「わ!」
途端顔に張り付いた緑のなにか。この鳴き声は知っている。
「なにすんだよサルノリ!」
「どうやら、君のことを酷く気に入ったらしいね」
サルノリをつまみあげていると上から声が聞こえた。バルコニー調のスペースから降りてきたのは黄緑の髪の男性。男性と称したが顔は可愛らしく、やや小柄だ。
「どうも、博士のハミズです。アマダテから話は聞いたよ。サルノリがそんなに懐くならきっとくると思ってた!」
「え、えと。ミケランジェロです……」
「ミケランジェロくん。……そういえば、そのカメラは?」
「あ、これですか……実はポケモンを撮るのが趣味で……」
「へぇ……」
ハミズは暫く考え込む動作をした後、うん、と頷いた。
「ちょっと待っててね」
そう言って奥に引っ込んだハミズに戸惑っていると、別の人物が声をかけてきた。壮年の男性だ。
「ポケバーをご存じですカ」
「え、えと」
「失礼、カルロスと申しマス。アマダテ君と一緒に助手をやっておりマス」
「あ、初めまして……」
「それで、ポケバーは」
「持ってる人がいるのは、見たことがあります」
「実はそれ、ここでポケモンと一緒に貰えるんですよネ」
「へー……」
「そんな訳で、君のポケバーだよ」
「わあ!」
いつの間にかハミズが戻ってきていた。スティックのような端末、さっき言った通りたまにトレーナーが持っている端末だ。
「機能については追々知って行ってね。着せ替えアイテムとかもあるから。お金がかかるけど」
「あ、はい」
「聞きたいんだけど」
ハミズはしかし、なかなかミケにポケバーを渡さなかった。
「君はポケモンが好き?」
「……はい! この世界の全部のポケモンに会って写真を撮るんです!!」
反射的に個人的な欲望を伝えてしまっていた。『そんなの無理だ』と言われるかも。
「うん、図鑑を全国版にアップデートしてよかったよ」
「図鑑?」
「うん、ポケモン図鑑。知らない訳じゃないだろう。これがあれば、ポケモンに会う喜びが増え、我々研究者はデータが手に入ってwin-winって訳」
「……」
「改めて名乗ります。僕はハミズ、ポケモンと人間がお互いどう関わってきたかの歴史を調べています。君はサルノリと冒険に出て、ポケモン図鑑を完成させる旅に出てくれますか!」
胸がいっぱいだ。そんな、そんなにワクワクすることってない。そもそも、ポケモントレーナーになれるなんて、なんて素敵なことだろう。
「はい! 旅に出ます!」
そう言って腕を差し出すとハミズはとてもいい笑顔でポケバーをミケに渡した。
「今日は家に帰りなさい。旅には明日からだね」
「はい、あ」
「?」
「写真ってポケバーでもできますか? さすがにいつも使ってるカメラ持ってたら咄嗟の時動けないので……」
「安心して、標準装備だよ。インカメもついてる。試しにサルノリを撮影してみたら?」
「そうします、サルノリ~」
「きゃ!」
意図を察したのかポーズを取ったサルノリをミケはポケバーのカメラ機能で撮影した。
「ここから始まる……きっと全部のポケモンに会ってみせる!」
こうして、一人と一匹の旅路は正に今拓かれていた。
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