Re:アンダンテ
「あ、お姉ちゃん! 来たってことは、勝ったんだね!」
「タマキちゃん。その方は?」
マスタータワーに入るなり、タマキが自分を呼び留めてきたが、隣にはコルニに雰囲気の似ている老年の男が立っていた。
「ああ、コンコンブル……メガシンカおやじとも呼ばれるが、もっと簡単に言うとコルニの祖父ですな」
「あ、ジルくんが言ってた! ええと、メガシンカについて興味があるなら、貴方を訊ねろって……」
「ジル……ああ、ジルコニアくんか。彼は元気そうでしたか?」
「はい、とても。ハッサムのメガシンカ、かっこよかったなあ」
「そうですか……」
コンコンブルは暫し考える素振りをした後、クロワに尋ねた。それは足元のデデンネやコフーライにも注がれているようだ。
「失礼ですが、タマキやジルコニアくんの言う通り、メガシンカにご興味が?」
「え」
「メガシンカできるリングは貴重。本当にメガシンカと向き合える人に渡したいのです」
「えっと……」
向き合える? そう言われると困ってしまう。
自分がなにがしたいか、明確にわかるのは。クロワが足元の二匹に目をやると、デデンネはぴょんと飛んで、コフーライは飛び跳ねた。
「私、ジムバッジを集めたくて、家出しました」
コンコンブルとタマキは黙って聞いている。
「どうしてか、私、そんな気持ちになって、家にいた方が、危険もないし、フレア団に襲われたりだってしないし、何より」
クロワは息をすう、と吸う。
「なにより、今ここにいるみんなと出会えなかった! デデンネもコフーライもファイアローもゴロンダも、コルニさんたちジムリーダーも、メガシンカおやじさんともタマキちゃんとも」
だから。
「私、もっと色々な人たちと出会うためにメガシンカを、手に入れたい!!」
そう思っていたのか。自分でもびっくりしていた。これが、剥き身の自分の気持ち。誰かに迷惑をかけてまでジム巡りをした理由。
コンコンブルは頷いた。
「そういうことなら、このメガリングを持って行きなさい」
そう言って渡されたのは、綺麗な石のはめ込まれたリング。
「これが、キーストーン。絶対になくしてはいけないよ」
「……はい!」
クロワはリングを左手にはめる。きらりとキーストーンが光った。
「メガシンカおやじさん、ルカリオ貸して!」
「仕方ないのう……」
「クロワお姉ちゃんにも貸してあげて!」
「はいはい」
コンコンブルはタマキとクロワにボールを渡す。
「これは?」
「勿論、メガシンカをして競うんだよ~!」
「ええっ、もう!?」
「もうもだってもないんだから、行くよぉ!!」
「う、うんわかった!」
ボールから出した二匹のかくとうポケモンはお互いを見て吼えた。それと同時に二人が卯にしたメガリングのキーストーンが光った。
「さあ、タマちゃんと一緒に! お姉ちゃん!!」
「うん!」
「メガ──……」
「シンカっ!!」
姿を変えた二匹のルカリオがそこにいた。
「そこまでじゃ、勝者はタマキ!」
「やったー! ありがとうルカリオ!!」
「くやしー、負けちゃったな……」
肩で息をしながらクロワは倒れて普通の姿になったルカリオを労わるように抱きしめると、ルカリオが申し訳なさそうに鳴く。貸し出されているだけあって大分人に慣れているようだ。
「頑張ってくれてありがとう」
ルカリオをボールに戻し、それをコンコンブルに返す。
「ありがとうございました」
「メガシンカするポケモンはまだまだ数いる。君だけの相棒を見つけられるといいな」
「はい!」
「タマちゃんはねー、本当はメガクチートを使うんだよ。でもそれだとフェアじゃないから、同じレベルのルカリオにしたの!」
「くち!」
影から出てきた口の二つあるポケモンがタマキに抱き着いてきた。
クロワはぎょっとする。
「タマちゃんって何者……?」
「ここから少し離れたヒャッコクシティの出身でしてな。彼女の親がベテラントレーナーなのですが、ホウエンに行ってしまわれてな。留守の間預かっているのさ」
「へー」
「タマちゃん、寂しくないよ! クチートがいるから!」
「……しかし、メガリングは残りひとつ。博士の連絡では五人か……」
コンコンブルがぼやいたがクロワとタマキに向き直る。
「それでは、次はヒヨクシティですな」
「はい! ありがとうございます!」
「戻ってみたら話は進んだみたいね」
「コルニさん」
「ええと、クロワちゃん、すっごく言いにくいんだけど……ジムに客が来てね」
「?」
クロワは手を合わせた。
「ごめん! あなたまで共犯にしちゃったかも……!」
「え?」
★★★
「は~水上で飲むサイコソーダは最高だねぇ~」
「は? トレーナーたるもの、ミックスオレだろ?」
ノルン、エイト、エイヴァルの三人は道端で『ラプラスに広い世界を見せてあげたい』という男性からラプラスを貰い、水上を渡っていた。手持ちとしてはノルンの元に収まることになった。
「しかしコルニってジムリーダー曰く、もう次の町に行ったなんて……やっぱり呑気に釣りし過ぎたか?」
「いやー、つながりの洞窟でも迷ったしね……」
「コマかいことは気にしなーい! 追いつけばいいんだからさ!」
エイヴァルの能天気で穏やかなところは大変頼りになるな、とエイトは思った。
「それじゃ、頑張ってヒヨクに行きまっしょい!」
「おー!」
「おー……」
★★★
「私を……追う人が?」
「うん、ひょっとしたら連れ戻されちゃうのかも……って思って。先行ったって伝えたんだ」
「ええと、なんかすみません。後ありがとう!」
「うん?」
「私、まだ旅を続けたいから……」
クロワはそう言うと駆けだした。マスタータワーを出る。
「また、バトルしようねっ! コルニさん! タマキちゃん!!」
その場にいた三人はひたすら走る三人を見送った。
「……セイシュンって奴?」
「あはは、そんな感じかな」
「若い命、あまりにも眩しいな」
【260521】
「タマキちゃん。その方は?」
マスタータワーに入るなり、タマキが自分を呼び留めてきたが、隣にはコルニに雰囲気の似ている老年の男が立っていた。
「ああ、コンコンブル……メガシンカおやじとも呼ばれるが、もっと簡単に言うとコルニの祖父ですな」
「あ、ジルくんが言ってた! ええと、メガシンカについて興味があるなら、貴方を訊ねろって……」
「ジル……ああ、ジルコニアくんか。彼は元気そうでしたか?」
「はい、とても。ハッサムのメガシンカ、かっこよかったなあ」
「そうですか……」
コンコンブルは暫し考える素振りをした後、クロワに尋ねた。それは足元のデデンネやコフーライにも注がれているようだ。
「失礼ですが、タマキやジルコニアくんの言う通り、メガシンカにご興味が?」
「え」
「メガシンカできるリングは貴重。本当にメガシンカと向き合える人に渡したいのです」
「えっと……」
向き合える? そう言われると困ってしまう。
自分がなにがしたいか、明確にわかるのは。クロワが足元の二匹に目をやると、デデンネはぴょんと飛んで、コフーライは飛び跳ねた。
「私、ジムバッジを集めたくて、家出しました」
コンコンブルとタマキは黙って聞いている。
「どうしてか、私、そんな気持ちになって、家にいた方が、危険もないし、フレア団に襲われたりだってしないし、何より」
クロワは息をすう、と吸う。
「なにより、今ここにいるみんなと出会えなかった! デデンネもコフーライもファイアローもゴロンダも、コルニさんたちジムリーダーも、メガシンカおやじさんともタマキちゃんとも」
だから。
「私、もっと色々な人たちと出会うためにメガシンカを、手に入れたい!!」
そう思っていたのか。自分でもびっくりしていた。これが、剥き身の自分の気持ち。誰かに迷惑をかけてまでジム巡りをした理由。
コンコンブルは頷いた。
「そういうことなら、このメガリングを持って行きなさい」
そう言って渡されたのは、綺麗な石のはめ込まれたリング。
「これが、キーストーン。絶対になくしてはいけないよ」
「……はい!」
クロワはリングを左手にはめる。きらりとキーストーンが光った。
「メガシンカおやじさん、ルカリオ貸して!」
「仕方ないのう……」
「クロワお姉ちゃんにも貸してあげて!」
「はいはい」
コンコンブルはタマキとクロワにボールを渡す。
「これは?」
「勿論、メガシンカをして競うんだよ~!」
「ええっ、もう!?」
「もうもだってもないんだから、行くよぉ!!」
「う、うんわかった!」
ボールから出した二匹のかくとうポケモンはお互いを見て吼えた。それと同時に二人が卯にしたメガリングのキーストーンが光った。
「さあ、タマちゃんと一緒に! お姉ちゃん!!」
「うん!」
「メガ──……」
「シンカっ!!」
姿を変えた二匹のルカリオがそこにいた。
「そこまでじゃ、勝者はタマキ!」
「やったー! ありがとうルカリオ!!」
「くやしー、負けちゃったな……」
肩で息をしながらクロワは倒れて普通の姿になったルカリオを労わるように抱きしめると、ルカリオが申し訳なさそうに鳴く。貸し出されているだけあって大分人に慣れているようだ。
「頑張ってくれてありがとう」
ルカリオをボールに戻し、それをコンコンブルに返す。
「ありがとうございました」
「メガシンカするポケモンはまだまだ数いる。君だけの相棒を見つけられるといいな」
「はい!」
「タマちゃんはねー、本当はメガクチートを使うんだよ。でもそれだとフェアじゃないから、同じレベルのルカリオにしたの!」
「くち!」
影から出てきた口の二つあるポケモンがタマキに抱き着いてきた。
クロワはぎょっとする。
「タマちゃんって何者……?」
「ここから少し離れたヒャッコクシティの出身でしてな。彼女の親がベテラントレーナーなのですが、ホウエンに行ってしまわれてな。留守の間預かっているのさ」
「へー」
「タマちゃん、寂しくないよ! クチートがいるから!」
「……しかし、メガリングは残りひとつ。博士の連絡では五人か……」
コンコンブルがぼやいたがクロワとタマキに向き直る。
「それでは、次はヒヨクシティですな」
「はい! ありがとうございます!」
「戻ってみたら話は進んだみたいね」
「コルニさん」
「ええと、クロワちゃん、すっごく言いにくいんだけど……ジムに客が来てね」
「?」
クロワは手を合わせた。
「ごめん! あなたまで共犯にしちゃったかも……!」
「え?」
★★★
「は~水上で飲むサイコソーダは最高だねぇ~」
「は? トレーナーたるもの、ミックスオレだろ?」
ノルン、エイト、エイヴァルの三人は道端で『ラプラスに広い世界を見せてあげたい』という男性からラプラスを貰い、水上を渡っていた。手持ちとしてはノルンの元に収まることになった。
「しかしコルニってジムリーダー曰く、もう次の町に行ったなんて……やっぱり呑気に釣りし過ぎたか?」
「いやー、つながりの洞窟でも迷ったしね……」
「コマかいことは気にしなーい! 追いつけばいいんだからさ!」
エイヴァルの能天気で穏やかなところは大変頼りになるな、とエイトは思った。
「それじゃ、頑張ってヒヨクに行きまっしょい!」
「おー!」
「おー……」
★★★
「私を……追う人が?」
「うん、ひょっとしたら連れ戻されちゃうのかも……って思って。先行ったって伝えたんだ」
「ええと、なんかすみません。後ありがとう!」
「うん?」
「私、まだ旅を続けたいから……」
クロワはそう言うと駆けだした。マスタータワーを出る。
「また、バトルしようねっ! コルニさん! タマキちゃん!!」
その場にいた三人はひたすら走る三人を見送った。
「……セイシュンって奴?」
「あはは、そんな感じかな」
「若い命、あまりにも眩しいな」
【260521】
9/9ページ
