Re:アンダンテ
「お見事です。こちらがウォールバッジです」
「ありがとうございます」
バッジを受け取り、クロワはぺこりと礼をした。傍らではゴロンダが満足そうにふんぞり返っている。
「シャラシティは少し遠いですよ。よく準備をしてくださいね」
「はい!」
★★★
「ねぇ~いつまで釣りしてんのさ」
「後ちょっとでなんかかかる気がするんだ」
「だめな時の発言だよ~」
8番道路、ミュライユ海岸で釣りを始めてしまったノルンにエイトは溜息を吐いていた。
早くセヴンを探さないといけないのに。
そう思った時だった。
「よっしゃかかったあ!!」
ノルンが勢いよく釣り竿を引き上げる。それと同時にエイトになにかがぶつかってきた。
……ポケモンだ。
「釣ったポケモン吹っ飛ばないでよ……」
引き上げる力が強過ぎて、エイトの方まで飛ばされてきたらしい。茶色いみずタイプらしい不思議なフォルムのポケモン。
「これ、クズモーだな! よっしゃいけチゴラス!!」
「……ちょっと散歩してくる」
まだ暫くかかりそうだ。
「……はあ」
その辺の草むらを、フシギダネと歩く。
セヴンは自分と違って容量もいい。捕まえられないかもしれない。
それに、捕まえたところで、メイスイの皆の態度が変わるとは思えない。
ロベルトは自分にどうなって欲しいのだろう。
そう思っていると、フシギソウが足元で一声鳴いた。その視線の先をエイトは自然と見やる。
「わ……! ズバット……?」
洞窟などで見慣れている蝙蝠のポケモン。しかしなにか変だ。
「めっちゃ真緑……」
病気なのだろうか、と近づくと、ズバットはこちらに威嚇していくる。見ると羽根に大きな切り傷ができていた。
「痛そう……」
「バッ!!」
「ああ、なにもしないよ。大丈夫だからね」
エイトはなるべく優しい声で語り掛けて、鞄からキズぐすりを出した。まだ警戒心の解けないズバットの傍にひざまずいて、治療を始める。最初は痛がっていたズバットだったが、治療が進むと段々声や様子が穏やかになっていった。
「これでよし!」
治療を終えたエイトは立ち上がる。フシギソウもご機嫌だ。
「バ……」
背を向けたエイトに、ズバットは名残惜しそうな声をかける。エイトは振り返らず言った。
「もう怪我しないようにね、変わった色のズバットさん」
そしてその場を去ったエイトに、ズバットは。
★★★
「おせーぞ! もうクズモーゲットしたわ!!」
「ああ、おめでと。じゃあショウヨウを目指そうか」
「いや、クズモーとチゴラスを育てたいから暫くトレーナーとバトる」
「あのさぁ~……」
ノルンは些か元気過ぎる。振り回されてばかりだ。
「お、丁度いい奴が。おい、そこの眼帯!」
「え、オレ?」
パンクファッションという奴だろうか。刺激的な恰好の少年トレーナーが声をかけられ首を傾げる。外見とは打って変わって優しい声だ。
「他にいねぇだろ。あたしとバトルしな! あたしはコボクタウンのノルニルことノルンだ!」
「いいけどオレ強くないよ。ポケモン、可愛がる方が好きだから」
「そんなん言って、ポケモンは多いじゃねぇか! とにかくあたしとやれ!!」
少年は笑顔で言った。
「わかった。オレはタチワキしティのエイヴァル。よろしくね」
数十分後。
「うあー! 負けた! 強くないって自称する奴に負けたー!!」
「運がよかっただけだよ。ヤナップってドガースと相性いいから」
「再戦だ!」
「いい加減にやめなよノルン」
エイトが声をかけると、ノルンはさすがに待たせ過ぎている自覚があるのか唇を尖らせて腕を組んだ。
「わーってるよショウヨウだろ」
「君たちもショウヨウ行くんだ。ところでこの子知らない?」
エイヴァルがぴくりと反応し、二人に一人の少女の写真。ピンクのツインテールに幼いながら凛とした顔の少女が写っていた。
「クロワっていうらしいんだけど」
「……『らしい』?」
「頼まれたの。いなくなっちゃったから探せって。ジムを巡るみたいだからショウヨウにいるかなって」
「お前知らない奴頼まれたからって探してんの。変わった奴だなぁ」
「ち、ちょっとノルン」
歯に衣着せなさすぎる発言にエイトが慌てるとエイヴァルは豪快に笑った。
「よく言われる」
「ふーん……」
「ところで君はなんて名前なの?」
「え、えええ、エイト!!」
唐突に話を振られ、どもってしまった。
「ついでだから一緒にショウヨウ行こうよ。なんだか楽しくなってきちゃった」
「おう、いいぜ! 仲間なんて何人いてもいいからな!」
「仲間……」
メイスイにいた時は考えられなかったことだ。ずっと『逃げた』と思っていたが、そんなに悪い選択肢でもなかったのかもしれない。
「おいなにしてるんだよエイト! 行くぞ~」
「あ、うん、今行く!」
★★★
「ここが、メンヒルロードね」
クロワはそう言うと周りを見た。石が列を成したなんだから荘厳な道だ。この先にセキタイという町があり、そこから次のジムがあるシャラシティまではそこそこ長いらしい。
「トレーナーもいっぱいる! 強くなろうね、デデンネ」
「ンネ~」
肩ででデデンネが尻尾をはためかせた時だった。
「さっさと荷物を置いていけよ!」
少し石で死角になっている辺りから男性の声が響いてきた。不思議に思い、クロワはそっとそちらに近づき何が起こっているか、覗く。一匹のポケモンが、赤いスーツにサングラスの変わった格好の人間二人に詰められている。ポケモンは傷だらけだが毅然と男たちを睨んで首を振る。
「生意気だぞ!」
「なあ、もうひんしにさせようぜ、楽だって」
「そうだな──」
「デデンネ、“パラボラチャージ”!!」
クロワはデデンネに技を銘じていた。明確に『しかけよう』と思ったのではない。『助けよう』と思った瞬間は体が動いていた。
「うわあ、なんだ、ガキ!?」
「ああもう、黙らせろ!!」
スーツの男たちはボールを手に取る。勝てるかわからないし、怖いが、やるしかない!
「楽しそうなことをやってるじゃん」
そんなとき、どこかで聞いた声が聞こえた。
現れたのは、漆黒。知っている。
「ジル君!」
「また会ったね、クロワ」
「はい! あれ、私名前教えましたっけ」
「そうなんじゃない」
はぐらかすような回答だ。ジルコニアはスーツの男たちに向き直り、ボールを構える。
「言っとくけど、俺強いよ?」
スーツの男たちはハッと笑った。ジルコニアの言うことをp信じていないようだ
「言うじゃねぇかもやし。やれるもんならやってみろよ。来い、ニダンギル!」
「バケッチャ!」
「ジル君」
「下がってろ。お前らみたいな奴ら、本当は相手しないんだけど──……自分の馬鹿さ加減を恨むんだな」
そう言うとジルコニアはボールを投げた。出てきたのは太陽で赤い光沢をあちこちに纏ったポケモン。
「ハッサム、わかるね」
ジルコニアはすぐにはハッサムに技を銘じなかった。目を抑え、呟く。
「──……『メガシンカ』」
ジルコニアの目から光が迸り、ハッサムは眉に包まれ、全く違った姿へと変わる。
スーツの男たちが驚くより早く。
「“バレットパンチ”」
ハッサムだったポケモンが、素早く動き、ニダンギルとバケッチャに同時に拳を叩き込む。それだけで二匹は激しく吹き飛ばされ戦闘不能になった。
「お、おいやべえぞ!」
「に、逃げろォ~!!!
スーツの男たちはポケモンをしまうと、一目散に逃げて行った。
「ジル君……?」
振り返ったジルコニアの右目が、不思議な色を放っている。そのまま、ジルコニアは言った。
「限界を超えた進化、メガシンカだよ」
【260319】
「ありがとうございます」
バッジを受け取り、クロワはぺこりと礼をした。傍らではゴロンダが満足そうにふんぞり返っている。
「シャラシティは少し遠いですよ。よく準備をしてくださいね」
「はい!」
★★★
「ねぇ~いつまで釣りしてんのさ」
「後ちょっとでなんかかかる気がするんだ」
「だめな時の発言だよ~」
8番道路、ミュライユ海岸で釣りを始めてしまったノルンにエイトは溜息を吐いていた。
早くセヴンを探さないといけないのに。
そう思った時だった。
「よっしゃかかったあ!!」
ノルンが勢いよく釣り竿を引き上げる。それと同時にエイトになにかがぶつかってきた。
……ポケモンだ。
「釣ったポケモン吹っ飛ばないでよ……」
引き上げる力が強過ぎて、エイトの方まで飛ばされてきたらしい。茶色いみずタイプらしい不思議なフォルムのポケモン。
「これ、クズモーだな! よっしゃいけチゴラス!!」
「……ちょっと散歩してくる」
まだ暫くかかりそうだ。
「……はあ」
その辺の草むらを、フシギダネと歩く。
セヴンは自分と違って容量もいい。捕まえられないかもしれない。
それに、捕まえたところで、メイスイの皆の態度が変わるとは思えない。
ロベルトは自分にどうなって欲しいのだろう。
そう思っていると、フシギソウが足元で一声鳴いた。その視線の先をエイトは自然と見やる。
「わ……! ズバット……?」
洞窟などで見慣れている蝙蝠のポケモン。しかしなにか変だ。
「めっちゃ真緑……」
病気なのだろうか、と近づくと、ズバットはこちらに威嚇していくる。見ると羽根に大きな切り傷ができていた。
「痛そう……」
「バッ!!」
「ああ、なにもしないよ。大丈夫だからね」
エイトはなるべく優しい声で語り掛けて、鞄からキズぐすりを出した。まだ警戒心の解けないズバットの傍にひざまずいて、治療を始める。最初は痛がっていたズバットだったが、治療が進むと段々声や様子が穏やかになっていった。
「これでよし!」
治療を終えたエイトは立ち上がる。フシギソウもご機嫌だ。
「バ……」
背を向けたエイトに、ズバットは名残惜しそうな声をかける。エイトは振り返らず言った。
「もう怪我しないようにね、変わった色のズバットさん」
そしてその場を去ったエイトに、ズバットは。
★★★
「おせーぞ! もうクズモーゲットしたわ!!」
「ああ、おめでと。じゃあショウヨウを目指そうか」
「いや、クズモーとチゴラスを育てたいから暫くトレーナーとバトる」
「あのさぁ~……」
ノルンは些か元気過ぎる。振り回されてばかりだ。
「お、丁度いい奴が。おい、そこの眼帯!」
「え、オレ?」
パンクファッションという奴だろうか。刺激的な恰好の少年トレーナーが声をかけられ首を傾げる。外見とは打って変わって優しい声だ。
「他にいねぇだろ。あたしとバトルしな! あたしはコボクタウンのノルニルことノルンだ!」
「いいけどオレ強くないよ。ポケモン、可愛がる方が好きだから」
「そんなん言って、ポケモンは多いじゃねぇか! とにかくあたしとやれ!!」
少年は笑顔で言った。
「わかった。オレはタチワキしティのエイヴァル。よろしくね」
数十分後。
「うあー! 負けた! 強くないって自称する奴に負けたー!!」
「運がよかっただけだよ。ヤナップってドガースと相性いいから」
「再戦だ!」
「いい加減にやめなよノルン」
エイトが声をかけると、ノルンはさすがに待たせ過ぎている自覚があるのか唇を尖らせて腕を組んだ。
「わーってるよショウヨウだろ」
「君たちもショウヨウ行くんだ。ところでこの子知らない?」
エイヴァルがぴくりと反応し、二人に一人の少女の写真。ピンクのツインテールに幼いながら凛とした顔の少女が写っていた。
「クロワっていうらしいんだけど」
「……『らしい』?」
「頼まれたの。いなくなっちゃったから探せって。ジムを巡るみたいだからショウヨウにいるかなって」
「お前知らない奴頼まれたからって探してんの。変わった奴だなぁ」
「ち、ちょっとノルン」
歯に衣着せなさすぎる発言にエイトが慌てるとエイヴァルは豪快に笑った。
「よく言われる」
「ふーん……」
「ところで君はなんて名前なの?」
「え、えええ、エイト!!」
唐突に話を振られ、どもってしまった。
「ついでだから一緒にショウヨウ行こうよ。なんだか楽しくなってきちゃった」
「おう、いいぜ! 仲間なんて何人いてもいいからな!」
「仲間……」
メイスイにいた時は考えられなかったことだ。ずっと『逃げた』と思っていたが、そんなに悪い選択肢でもなかったのかもしれない。
「おいなにしてるんだよエイト! 行くぞ~」
「あ、うん、今行く!」
★★★
「ここが、メンヒルロードね」
クロワはそう言うと周りを見た。石が列を成したなんだから荘厳な道だ。この先にセキタイという町があり、そこから次のジムがあるシャラシティまではそこそこ長いらしい。
「トレーナーもいっぱいる! 強くなろうね、デデンネ」
「ンネ~」
肩ででデデンネが尻尾をはためかせた時だった。
「さっさと荷物を置いていけよ!」
少し石で死角になっている辺りから男性の声が響いてきた。不思議に思い、クロワはそっとそちらに近づき何が起こっているか、覗く。一匹のポケモンが、赤いスーツにサングラスの変わった格好の人間二人に詰められている。ポケモンは傷だらけだが毅然と男たちを睨んで首を振る。
「生意気だぞ!」
「なあ、もうひんしにさせようぜ、楽だって」
「そうだな──」
「デデンネ、“パラボラチャージ”!!」
クロワはデデンネに技を銘じていた。明確に『しかけよう』と思ったのではない。『助けよう』と思った瞬間は体が動いていた。
「うわあ、なんだ、ガキ!?」
「ああもう、黙らせろ!!」
スーツの男たちはボールを手に取る。勝てるかわからないし、怖いが、やるしかない!
「楽しそうなことをやってるじゃん」
そんなとき、どこかで聞いた声が聞こえた。
現れたのは、漆黒。知っている。
「ジル君!」
「また会ったね、クロワ」
「はい! あれ、私名前教えましたっけ」
「そうなんじゃない」
はぐらかすような回答だ。ジルコニアはスーツの男たちに向き直り、ボールを構える。
「言っとくけど、俺強いよ?」
スーツの男たちはハッと笑った。ジルコニアの言うことをp信じていないようだ
「言うじゃねぇかもやし。やれるもんならやってみろよ。来い、ニダンギル!」
「バケッチャ!」
「ジル君」
「下がってろ。お前らみたいな奴ら、本当は相手しないんだけど──……自分の馬鹿さ加減を恨むんだな」
そう言うとジルコニアはボールを投げた。出てきたのは太陽で赤い光沢をあちこちに纏ったポケモン。
「ハッサム、わかるね」
ジルコニアはすぐにはハッサムに技を銘じなかった。目を抑え、呟く。
「──……『メガシンカ』」
ジルコニアの目から光が迸り、ハッサムは眉に包まれ、全く違った姿へと変わる。
スーツの男たちが驚くより早く。
「“バレットパンチ”」
ハッサムだったポケモンが、素早く動き、ニダンギルとバケッチャに同時に拳を叩き込む。それだけで二匹は激しく吹き飛ばされ戦闘不能になった。
「お、おいやべえぞ!」
「に、逃げろォ~!!!
スーツの男たちはポケモンをしまうと、一目散に逃げて行った。
「ジル君……?」
振り返ったジルコニアの右目が、不思議な色を放っている。そのまま、ジルコニアは言った。
「限界を超えた進化、メガシンカだよ」
【260319】
