Re:アンダンテ
コウジンタウンの近く、8番道路。
『クロワ』という少女を探す途中立ち寄ったその草むらでエイヴァルは運命的な出会いをした。少なくとも、自分以外の誰もが『違う』と言っても彼に取っては『運命』だった。
「まーいーか♪」
「君、最高だよ! その独特のフォルム!! マーイーカっていうんだね、カロスに君ほど刺激的な子はいない!」
「まー♪」
言われていることがわかるのか、まだ捕まえていないのに、マーイーカは悪い気はしない、といった様子だった。どのボールで捕まえよう、と迷っていると不意に後ろから声をかけられた。
「君、その子を捕まえるの?」
振り返るとストライプのスーツを着た男が自分をにこにこと眺めていた。
「そ、そのつもりですけど!」
「ふぅん」
彼は暫くエイヴァルのことをじ、と見ていたが、不意に嫌みな笑いを浮かべた。
「……笑える」
「え」
「マーイーカを奴隷にしたければすればいい」
「プラズマ団みたいなこと言うんですね……」
「あんな低俗な連中と一緒にされては困る。俺はね、運命だとか好きだとか感情が嫌いなんだよ」
「?」
「失礼するよ。結論としてはエゴをポケモンに押し付けるのは、実に愚かな行為だとは思わないかってことだね」
それだけ残すと男はコウジンタウンの方に向かって行った。
マーイーカと残されて、さすがのエイヴァルも面食らってしまったが、ぽつりと呟いた。
「あのお兄さんの言ってることも『俺へのエゴの押し付け』だと思うけど……」
後ろでマーイーカは早く捕まえて、と言わんばかりにうずうずしていた。
同時刻、コウジンタウン、カセキ研究所。
「へーゴクリンってどくタイプだけど案外もちっとしてるんだな」
「めっちゃポケモン捕まえるじゃん」
「そらな。お前こそエリキテルイカしてんじゃん」
「サイホーンで踏んじゃったから……」
「お詫びに? 義理固いなお前」
ノルンはそれだけ言うとゴクリンの入ったボールをしまった。
二人は立ち寄った輝きの洞窟でカセキを発掘してきたばかりだった。エイトがヒレのカセキ、ノルンがアゴのカセキ。それの復元を研究所で復元してもらっている。
「ところであなたたち」
待っていると女性職員が退屈していないか心配したのか話しかけてきた。
「メガシンカって知ってる?」
「なんだそれ」
「の、ノルンちょっと年上の人」
「あははいいのよ。実はポケモンがもう一段階進化する現象がカロスで観測されてるのよね。適応さえすれば他の地方でもできるとは思うのだけれど」
「へえ」
(兄さんがなんか言ってたな……)
「カセキ復元できましたよー」
不意に受付の方から声がかかった。
「こっちが君のアマルス、そっちが君のチゴラス」
「うおー! チゴラス! お前気合い入ったアゴしてるじゃねーか!!」
「ちご!」
「よ、よろしくねアマルス……」
「……っ」
「アマルス?」
アマルスはジト目でエイトを見た後そっぽを向いた。反対にノルンの方のチゴラスはもううノルンに甘えている。
「アマルス気難しい個体だったようですね」
「そ、そんなあ」
「まあまあ。お似合いだって!」
「バトルでお互いの絆を深めてみたらどうかしら?」
「それいいな!」
「そ、そんな!」
「行くぞほら~」
「ああ~」
★★★
「あ、あー負けだよ負け! そりゃそうだよ!」
「荒れるなって」
ポケモンセンターで皆の回復を待っていると先に回復を終えたリザードとフシギソウが二人の足元にすり寄ってくる。先ほどのバトル中に進化したのだ。順調に成長していっているらしい。
「……あの子も出してあげるべきかな」
「なん?」
「いや、昔の友達」
「?」
ピンポーン。
「あ、ほら回復したみたいだよ」
「おー!」
走り去って行くノルンにエイトはす、と視線を動かすと溜息を吐いた。
「知ったら軽蔑すると思うよ」
★★★
「ここがショウヨウシティ……」
クロワは一歩踏み出すと、ジムのある方を見た、しかし、とクロワは顎に手を当てる。
「でもいわタイプなんだよねー……。ヒノヤコマもコフーライもいわには弱いし……ヤンチャムは捕まえたけど実質二体バトルかぁ」
「なんだお前ジム戦挑戦してたんか」
「えっ、誰」
「少し前洞窟前で会ったろうが」
目の前には確かに意味深なことを行って通り過ぎて行った赤毛の男。
「な、なんでしょ、私、クロワって言います!」
「ヤンチャム持ってんのか」
男は名乗らず言った。
「はい」
「少し貸せ」
ボールを、という意味だろうか。言う通りにヤンチャムのボールを渡すと、彼は引き返し、草むらで何かをしていた。遠巻きに見ていると、彼は引き返してきて、ボールを返してきた。
「とりあえずゴロンダにしてきた」
「え!? 進化!?」
「こいつあくタイプいないと進化できねぇんだよな」
ボールの中を見ると確かに見たことのないポケモンがいる。
「進化系入れば多分行けます! ありがとうございます!」
「あんまり弱点偏らせんなよー」
「あ、お兄さん、名前……」
彼は少し考える仕草をして、答えた。
「セヴン」
「セヴンさんですね!」
「次会う時俺の気分が悪くないことを祈るぜ」
「?」
「とりあえずさっさとジム行けよ。たまにいねぇからなここのジムリーダー」
「あ、はい!」
クロワは走って行く。
「優しいんだね」
現れたストライプスーツの男にセヴンは舌打ちする。
「そう見えるなら病院行った方がいいぜ、頭のな」
「冗談だよ。気まぐれが服着て歩いてるもんね君」
「追加の依頼か、レンゴク」
「いや定期報告みたいなもんだよ。まだ見つからないのかい彼は。ポケモンの提供も引き続きよろしくね」
「ッチ。いちいちうるせぇな」
セヴンは頭をがしがしと掻くと大股で去って行った。
「全く品がない……」
レンゴクと呼ばれた男は溜息を吐くと、ホロキャスターを点けた。
「もしもし、ジルコニア、そっちはどう?」
【251210】
『クロワ』という少女を探す途中立ち寄ったその草むらでエイヴァルは運命的な出会いをした。少なくとも、自分以外の誰もが『違う』と言っても彼に取っては『運命』だった。
「まーいーか♪」
「君、最高だよ! その独特のフォルム!! マーイーカっていうんだね、カロスに君ほど刺激的な子はいない!」
「まー♪」
言われていることがわかるのか、まだ捕まえていないのに、マーイーカは悪い気はしない、といった様子だった。どのボールで捕まえよう、と迷っていると不意に後ろから声をかけられた。
「君、その子を捕まえるの?」
振り返るとストライプのスーツを着た男が自分をにこにこと眺めていた。
「そ、そのつもりですけど!」
「ふぅん」
彼は暫くエイヴァルのことをじ、と見ていたが、不意に嫌みな笑いを浮かべた。
「……笑える」
「え」
「マーイーカを奴隷にしたければすればいい」
「プラズマ団みたいなこと言うんですね……」
「あんな低俗な連中と一緒にされては困る。俺はね、運命だとか好きだとか感情が嫌いなんだよ」
「?」
「失礼するよ。結論としてはエゴをポケモンに押し付けるのは、実に愚かな行為だとは思わないかってことだね」
それだけ残すと男はコウジンタウンの方に向かって行った。
マーイーカと残されて、さすがのエイヴァルも面食らってしまったが、ぽつりと呟いた。
「あのお兄さんの言ってることも『俺へのエゴの押し付け』だと思うけど……」
後ろでマーイーカは早く捕まえて、と言わんばかりにうずうずしていた。
同時刻、コウジンタウン、カセキ研究所。
「へーゴクリンってどくタイプだけど案外もちっとしてるんだな」
「めっちゃポケモン捕まえるじゃん」
「そらな。お前こそエリキテルイカしてんじゃん」
「サイホーンで踏んじゃったから……」
「お詫びに? 義理固いなお前」
ノルンはそれだけ言うとゴクリンの入ったボールをしまった。
二人は立ち寄った輝きの洞窟でカセキを発掘してきたばかりだった。エイトがヒレのカセキ、ノルンがアゴのカセキ。それの復元を研究所で復元してもらっている。
「ところであなたたち」
待っていると女性職員が退屈していないか心配したのか話しかけてきた。
「メガシンカって知ってる?」
「なんだそれ」
「の、ノルンちょっと年上の人」
「あははいいのよ。実はポケモンがもう一段階進化する現象がカロスで観測されてるのよね。適応さえすれば他の地方でもできるとは思うのだけれど」
「へえ」
(兄さんがなんか言ってたな……)
「カセキ復元できましたよー」
不意に受付の方から声がかかった。
「こっちが君のアマルス、そっちが君のチゴラス」
「うおー! チゴラス! お前気合い入ったアゴしてるじゃねーか!!」
「ちご!」
「よ、よろしくねアマルス……」
「……っ」
「アマルス?」
アマルスはジト目でエイトを見た後そっぽを向いた。反対にノルンの方のチゴラスはもううノルンに甘えている。
「アマルス気難しい個体だったようですね」
「そ、そんなあ」
「まあまあ。お似合いだって!」
「バトルでお互いの絆を深めてみたらどうかしら?」
「それいいな!」
「そ、そんな!」
「行くぞほら~」
「ああ~」
★★★
「あ、あー負けだよ負け! そりゃそうだよ!」
「荒れるなって」
ポケモンセンターで皆の回復を待っていると先に回復を終えたリザードとフシギソウが二人の足元にすり寄ってくる。先ほどのバトル中に進化したのだ。順調に成長していっているらしい。
「……あの子も出してあげるべきかな」
「なん?」
「いや、昔の友達」
「?」
ピンポーン。
「あ、ほら回復したみたいだよ」
「おー!」
走り去って行くノルンにエイトはす、と視線を動かすと溜息を吐いた。
「知ったら軽蔑すると思うよ」
★★★
「ここがショウヨウシティ……」
クロワは一歩踏み出すと、ジムのある方を見た、しかし、とクロワは顎に手を当てる。
「でもいわタイプなんだよねー……。ヒノヤコマもコフーライもいわには弱いし……ヤンチャムは捕まえたけど実質二体バトルかぁ」
「なんだお前ジム戦挑戦してたんか」
「えっ、誰」
「少し前洞窟前で会ったろうが」
目の前には確かに意味深なことを行って通り過ぎて行った赤毛の男。
「な、なんでしょ、私、クロワって言います!」
「ヤンチャム持ってんのか」
男は名乗らず言った。
「はい」
「少し貸せ」
ボールを、という意味だろうか。言う通りにヤンチャムのボールを渡すと、彼は引き返し、草むらで何かをしていた。遠巻きに見ていると、彼は引き返してきて、ボールを返してきた。
「とりあえずゴロンダにしてきた」
「え!? 進化!?」
「こいつあくタイプいないと進化できねぇんだよな」
ボールの中を見ると確かに見たことのないポケモンがいる。
「進化系入れば多分行けます! ありがとうございます!」
「あんまり弱点偏らせんなよー」
「あ、お兄さん、名前……」
彼は少し考える仕草をして、答えた。
「セヴン」
「セヴンさんですね!」
「次会う時俺の気分が悪くないことを祈るぜ」
「?」
「とりあえずさっさとジム行けよ。たまにいねぇからなここのジムリーダー」
「あ、はい!」
クロワは走って行く。
「優しいんだね」
現れたストライプスーツの男にセヴンは舌打ちする。
「そう見えるなら病院行った方がいいぜ、頭のな」
「冗談だよ。気まぐれが服着て歩いてるもんね君」
「追加の依頼か、レンゴク」
「いや定期報告みたいなもんだよ。まだ見つからないのかい彼は。ポケモンの提供も引き続きよろしくね」
「ッチ。いちいちうるせぇな」
セヴンは頭をがしがしと掻くと大股で去って行った。
「全く品がない……」
レンゴクと呼ばれた男は溜息を吐くと、ホロキャスターを点けた。
「もしもし、ジルコニア、そっちはどう?」
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