Re:アンダンテ
『あなたたち、すっごくよかったけど惜しかったわねぇ。また写真撮らせてね!』
「そりゃあ……初バトルだったら負けるよねぇ……」
クロワはどんよりとしながらジムを出た。早くデデンネをポケモンセンターなる場所に連れて行ってやらなければ。そう思った時だった。
「……お前、負けたのか?」
「え!?」
見ると漆黒の髪とスーツを着た赤目の少年がそこにいた。目つきが鋭く大変近寄り固いオーラを放っている。
「えと……よくわかりましたね」
「ジムから落ち込んで出てくる奴なんてそれしかないだろ」
「う……」
「お前、デデンネしか持ってないのか。デデンネでもここのジムリーダーのポケモンは弱点をつけるがヤヤコマ辺りをゲットしておくと安定するかもな」
言い方はぶっきらぼうだがよくよく言葉を聞くと……。
「アドバイスしてくれてます?」
「お前がそう思うならそうかもな」
やはり口調から感じる印象は大分怖い。しかし悪い人じゃない、と思う。
「あの、ありがとうございます!」
「ん」
「お名前をお聞きしてもいいですか?」
「……変わった奴だな。ジルコニア」
「じゃあジル君、ですね」
「略すのかよ」
「へへ、じゃあ私ヤヤコマを探してきますね、たまにミアレでも見かけるので知っているので……」
「ん」
クロワが去った後、ジルコニアのホロキャスターに通信が入った。
「……なんだ、自由にできる時間はないのか?」
『……か?』
「わかったよ。いつものセンスの悪いカフェだな」
『…だろう』
「どうだかね。計画って破綻するものだし」
ホロキャスターの通話を終え、ジルコニアはさっきの桃色髪の少女が去って行った先を見た。
「頑張っても無駄かもよ」
★★★
「ヤヤコマって森では出ないのかな」
ハクダンの森であちこちを探しているが、ヤヤコマはいない。上からキャタピーが落ちてきた時は叫んでしまった。
「デ」
「デデンネ?」
ポケモンセンターで全快したデデンネは暫くクロワの腕に体を預けていたが、痺れを切らしたように飛び出すと樹の上へ電撃を放った。羽音とポケモンが落ちてくる。
「あ、ヤヤコマ……あ、コフキムシまで」
電撃で痺れた二匹は無防備な姿を見せている。クロワとデデンネは顔を見合わせる。
「二匹とも捕まえちゃおう!」
「デネー!」
★★★
再び、ハクダンシティ。
ジルコニアはもう街を出て行ってしまったようだ。残念である。
「でも次は負けないんだから!」
「デネ!」
★★★
「随分早い再戦じゃない、ちゃんとポケモン育ててきた?」
「悪戯にポケモンを増やした訳じゃありません! 行けるところまで行きます!」
「あらそういうのすっごくいいんじゃないの! じゃあ撮影、いや、バトル開始!!」
ヤヤコマの『つばさでうつ』がビビヨンにヒットする。一瞬もんどり打って地面に落ちたビビヨンは目を回してしまった。
「か、勝った……?」
「そうよ! あなたたちすっごく輝いてた! 初めてのジムバッジと記念撮影させてね!!」
そうして受け取ったのはバグバッジ、虫のようなフォルムに二つの石がハマったキラキラとしたバッジ。
「これが……ジムバッジ」
クロワはそのバッジの美しさになにも言えなくなった。綺麗。頑張ってもらったポケモンとの絆。
(ジムバッジを全部なんて数年に一人出たらいいって聞く。それでも私は)
挑戦したい。
クロワの中に湧いた闘争にも似た願い。その横顔をビオラは何を思って撮っていたのか。
★★★
もういやだ、とメイスイタウンを飛び出した。ポケモンも持たずにミアレまで走って、途方に暮れた。
ここには他人だけがいる。居心地は悪いがメイスイも居心地だけで言えば大して変わらない。エイトはそこまで考えてふうと嘆息した。
「お金もないや……お腹すいたな……」
「だねふし」
「そうそうだねふし……どえっ!?」
飛びずさると足元のフシギダネもびっくりしたように後ずさった。
「あ、あーご、ごめん。珍しいね、フシギダネ。誰かのポケモンかい?」
その言葉に対しての反応はなく、フシギダネはつたでエイトの足をつつくとしきりに5番道路の方をまたつるで差す。来いと云ってるのか。
「いや、僕、ポケモンって苦手で……」
「だね!」
……つたではたかれた。
「いたっ、わ、わかったから! 行くから!!」
エイトはフシギダネにはたかれながら5番道路に向かった。
★★★
フシギダネが急いでいた訳がわかった。
「ヤナップ、だよな? ハクダンの森からこっちまで来ちゃったのか……」
ハクダンのポケモンはレベルが低めのポケモンが多い、ポケモンと仲良くできなかったか、いじめられたかで孤立してそのまま飯にありつけなかったのだろう。
「ど、どうしよう。どどどうしよう」
エイトはそれだけで意図も簡単にパニックを起こした。聞いてない、こんな急に重い話。泣き出したくなった時だった。
「どうしたんだ? そんなところで」
後ろからヒトカゲを連れた、パンのバスケットを持ったプラチナイエローの髪の少女が声をかけてきたのは。
【251019】
「そりゃあ……初バトルだったら負けるよねぇ……」
クロワはどんよりとしながらジムを出た。早くデデンネをポケモンセンターなる場所に連れて行ってやらなければ。そう思った時だった。
「……お前、負けたのか?」
「え!?」
見ると漆黒の髪とスーツを着た赤目の少年がそこにいた。目つきが鋭く大変近寄り固いオーラを放っている。
「えと……よくわかりましたね」
「ジムから落ち込んで出てくる奴なんてそれしかないだろ」
「う……」
「お前、デデンネしか持ってないのか。デデンネでもここのジムリーダーのポケモンは弱点をつけるがヤヤコマ辺りをゲットしておくと安定するかもな」
言い方はぶっきらぼうだがよくよく言葉を聞くと……。
「アドバイスしてくれてます?」
「お前がそう思うならそうかもな」
やはり口調から感じる印象は大分怖い。しかし悪い人じゃない、と思う。
「あの、ありがとうございます!」
「ん」
「お名前をお聞きしてもいいですか?」
「……変わった奴だな。ジルコニア」
「じゃあジル君、ですね」
「略すのかよ」
「へへ、じゃあ私ヤヤコマを探してきますね、たまにミアレでも見かけるので知っているので……」
「ん」
クロワが去った後、ジルコニアのホロキャスターに通信が入った。
「……なんだ、自由にできる時間はないのか?」
『……か?』
「わかったよ。いつものセンスの悪いカフェだな」
『…だろう』
「どうだかね。計画って破綻するものだし」
ホロキャスターの通話を終え、ジルコニアはさっきの桃色髪の少女が去って行った先を見た。
「頑張っても無駄かもよ」
★★★
「ヤヤコマって森では出ないのかな」
ハクダンの森であちこちを探しているが、ヤヤコマはいない。上からキャタピーが落ちてきた時は叫んでしまった。
「デ」
「デデンネ?」
ポケモンセンターで全快したデデンネは暫くクロワの腕に体を預けていたが、痺れを切らしたように飛び出すと樹の上へ電撃を放った。羽音とポケモンが落ちてくる。
「あ、ヤヤコマ……あ、コフキムシまで」
電撃で痺れた二匹は無防備な姿を見せている。クロワとデデンネは顔を見合わせる。
「二匹とも捕まえちゃおう!」
「デネー!」
★★★
再び、ハクダンシティ。
ジルコニアはもう街を出て行ってしまったようだ。残念である。
「でも次は負けないんだから!」
「デネ!」
★★★
「随分早い再戦じゃない、ちゃんとポケモン育ててきた?」
「悪戯にポケモンを増やした訳じゃありません! 行けるところまで行きます!」
「あらそういうのすっごくいいんじゃないの! じゃあ撮影、いや、バトル開始!!」
ヤヤコマの『つばさでうつ』がビビヨンにヒットする。一瞬もんどり打って地面に落ちたビビヨンは目を回してしまった。
「か、勝った……?」
「そうよ! あなたたちすっごく輝いてた! 初めてのジムバッジと記念撮影させてね!!」
そうして受け取ったのはバグバッジ、虫のようなフォルムに二つの石がハマったキラキラとしたバッジ。
「これが……ジムバッジ」
クロワはそのバッジの美しさになにも言えなくなった。綺麗。頑張ってもらったポケモンとの絆。
(ジムバッジを全部なんて数年に一人出たらいいって聞く。それでも私は)
挑戦したい。
クロワの中に湧いた闘争にも似た願い。その横顔をビオラは何を思って撮っていたのか。
★★★
もういやだ、とメイスイタウンを飛び出した。ポケモンも持たずにミアレまで走って、途方に暮れた。
ここには他人だけがいる。居心地は悪いがメイスイも居心地だけで言えば大して変わらない。エイトはそこまで考えてふうと嘆息した。
「お金もないや……お腹すいたな……」
「だねふし」
「そうそうだねふし……どえっ!?」
飛びずさると足元のフシギダネもびっくりしたように後ずさった。
「あ、あーご、ごめん。珍しいね、フシギダネ。誰かのポケモンかい?」
その言葉に対しての反応はなく、フシギダネはつたでエイトの足をつつくとしきりに5番道路の方をまたつるで差す。来いと云ってるのか。
「いや、僕、ポケモンって苦手で……」
「だね!」
……つたではたかれた。
「いたっ、わ、わかったから! 行くから!!」
エイトはフシギダネにはたかれながら5番道路に向かった。
★★★
フシギダネが急いでいた訳がわかった。
「ヤナップ、だよな? ハクダンの森からこっちまで来ちゃったのか……」
ハクダンのポケモンはレベルが低めのポケモンが多い、ポケモンと仲良くできなかったか、いじめられたかで孤立してそのまま飯にありつけなかったのだろう。
「ど、どうしよう。どどどうしよう」
エイトはそれだけで意図も簡単にパニックを起こした。聞いてない、こんな急に重い話。泣き出したくなった時だった。
「どうしたんだ? そんなところで」
後ろからヒトカゲを連れた、パンのバスケットを持ったプラチナイエローの髪の少女が声をかけてきたのは。
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