Re:アンダンテ

 セキタイタウンは様相が大分様変わりしていた。花の繭のような結晶体。それが真ん中に家を押し退けて鎮座している。
「これって……」
「それには構うな。こっちだ」
 ジルコニアが向かう先に着いていくと、以前は開かなかった石の家の門扉が開いていた。
「確認だが。ここからメガシンカポケモンとの連戦になるだろう。これを渡しておく」
 ジルコニアはクロワ以外の三人になにかを渡した。
「うわっ、メガリングだ!!」
「こんな簡単に貰えちゃうんですね……」
「いざとなったら自分の身は自分で守れよ。メガシンカするポケモンがいない奴もいるようだが、それが今回の謝礼だと思ってくれ」
「おう!」
「はい……」
「確かにあって困るものではないですからね」
 三人の反応を見た後、行くぞとジルコニアは呟いて。石の家に入って行った。

 アジトの中は地獄の様相をしていた。メガシンカしたポケモンで溢れ返っている。
「ハッサム!」
 ジルコニアはハッサムを出すと、最初に見た時と同じように目を輝かせてハッサムをメガシンカさせた。
「いつも思うけどジル君って目の中にキーストーンが……?」
「色々あってね」
 そう言うと珍しくお茶目にジルコニアはウインクした。
「君にはやがて話すこともあると思う」
「うん……」
「クロワ、俺たちもメガシンカするぞ!」
 今ジルコニア以外にメガシンカできるのは自分とノルンの二人しかいない。
「わかった!」
 二人はメガリングを起動させる。絆の力が進化の光になる。数秒後、ユキノオーとリザードンはそれぞれの別の形に進化を遂げていた。メガシンカだ。
「突っ切れリザードン!!」
「ユキノオー、“ふぶき”!!」
 指示を出すと彼らは暴れ出す、メガエネルギーが舞い散る。道が開く。
「走るぞ!」
 ジルが叫び、開いた道を走って行く。四人も続いた。
 そして。
「来ると思ったよ」
 ボールを握りながら、呟くように言ったのは待ち構えていたセヴン。
「兄さん」
「今俺の雇い主が大事な話をしている。通す訳にはいかんのよ」
 ジルコニアが前に出る。
「そう言わず、一時期は同僚だったじゃないか」
「んあ」
 セヴンは気がなさそうに答えて、言った。
「お前、よく国際警察なんてハッタリ言えたな」
「!」
「……。え」
 ジルコニアの動きが止まり、クロワは声を漏らした。
「この町に具現化している最終兵器。光を浴びると不老不死になったりするみたいよ」
「なにを言って」
「こっちはその生き証人である男を探していた。見つけたから最終兵器が起動した訳だけど。相当な規模だから、それが一人とは限らないよな?」
「まさか……」
 ジルコニアは目を閉じ、頭を振った。
「君、そこまで頭がよかったのか。隠していたつもりだったんだけどね」
「隠して協力を仰ごうなんてムシがいいぜ」
 セヴンはボールを投げる。出てきたのは青い亀のポケモン。
「勘違いするなよ。黙っていたのは混乱を防ぐためだ。三千年前から生きているなんて非現実的な話をする訳にもいかなかったからね」
「ジル君……」
 きっと嘘じゃない。ジルコニアの瞳を見てクロワは思った。
「それに、ミッション:フレア団自体は続けるつもりだ。みんな、来てくれるかい、こんな僕に」
「いいっすよ」
 とエイヴァル。
「後でちゃんと話しろよな!」
 とノルン。
「兄さんを止めるのは一緒です!」
 とエイト。
 クロワは。
「セヴンさんのこともジル君のことも。全部終わってから色々話そうね!」
 と答え、構えた。
 セヴンは興味なさそうに彼女たちを見ていたが。やがて胸についたピンを触った。キーストーンだ。亀のポケモン、カメックスは光に包まれ──……。
「行くぞ。メガカメックス」
 大砲を背負った姿に変わっていた。
「やっぱり絆はあるんですね」
 クロワはぼやく。メガシンカは信頼しあったポケモンとしか行えないという。クロワのユキノオーは知り合って浅いが状況的に協力してくれているのでメガシンカすることができるのだろう。
「“はどうだん”!!」
「気をつけろ、ユキノオーに当てるな! ハッサム!!」
 メガシンカしたハッサムが腕をクロスさせてユキノオーの前に躍り出て、波動の弾を受ける。
「“バレットパンチ”!!」
 攻撃の勢いが弱くなったところで拳を叩き込もうとすると、カメックスは重そうな姿とは対称的に俊敏にそれを避け、体勢を整えた。ハッサムの体がぐらつく。
「“ハイドロポンプ”!!」
 水の大砲がハッサムに真正面から当たる。その衝撃で飛ばされ、壁まで追い立てられたハッサムはメガシンカを解き崩れ落ちる。
「ハッサム!!」
「リザードン、“フレアドライブ”!!」
「相性を知らねぇのか!? “みずのはどう”!」
 炎と水が拮抗する。推し負けたのは。
「グゥーっ!」
 リザードンに水の弾が直撃する。リザードンもその場に倒れてしまった。
「どうした?」
 強すぎる。クロワの頬を汗が流れる。でも。
「諦めないよ! ファイアロー、デデンネも!」
 この旅で学んだこと。諦めない!
「お前らも行け、チゴラス、マルノーム!!」
「ゴルバット!! 行って!」
「俺たちも出るぞ、ホイーガ!!」
 出てきたポケモンたちはトレーナーの意志が伝わっているかのように吼える。戦意を失わない皆にセヴンが目を見開いた。
「……ぇ」
 セヴンが呟いた。その後、勢いよく足を踏み出す。ドン!という音が鳴った。
「うぜぇ! どうせ負けるんだ! かかってくるな!!」
「諦めないって言いませんでしたか」
「……」
「兄さん」
 エイトも一歩踏み出す。
「僕は貴方を選んでいた」
「……」
「でも、貴方がまだ、人の心が残っているのなら、通して欲しい。個人の主観で剪定される世界なんて間違ってる」
「でも!」
 セヴンは益々声を荒げた。
「お前だって俺のせいで一人だろうが!!」
「……え?」
 予期していなかった言葉にエイトが目を丸くする。
「怨んでるって言えよ! なんで対話しようとすんだよ! 敵のままにしとけよ!!」
「にいさ」
 セヴンは頭をがしがしと掻く。
「うんざりだ……」
 零れた言葉に、エイトは彼に近づく。
「ずっと、苦しかったの?」
「……?」
「フレア団の作戦に乗ったのは、僕のため? 苦しみを終わらせるため?」
「……それだけ、じゃない。俺のためでもあった」
「兄さん」
 セヴンが顔を上げる。この人はこんな顔をする人だったろうか。
「僕、もう、人のせいにはしないよ」
「……」
「だから兄さんも、一緒に来てよ」
 エイトが手を差し出す。セヴンは。
「……ぁ」
 小さく声を漏らし、固まっている。
「兄さん」
「……ん」
 セヴンがエイトに手を伸ばした時だった。

「いけない子たちだ」

 声が響いた。

「貴方は」

「マーイーカの時の?」
「レンゴクさん……」

 エイヴァルとクロワが面識があった。片眼を隠したスーツの男。

「どうも、フレア団幹部のレンゴクです」

 彼は笑顔でそう言った。


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