Re:アンダンテ

「そう」
 ミアレの実家に戻り、母親に全て話した。
 きっかけ、今まで頑張ったこと、怖いこともあったが、人に助けられて乗り越えてきたこと。
 全てを真顔で聞いていた母親は『そう』の後言った。
「薄々そうじゃないかと思ってたの。貴方、父さんの娘だから」
「父さん」
 クロワは小さい頃から母親と二人暮らしだ。そして母親は今まで父親の話をしたことがなかった。
「旅の途中失踪だったわ。貴方がお腹の中にいるときね。バッジ集めやポケモンを戦わせることがとにかく好きな人だった……」
 では、娘が同じ人生を辿っていることについては彼女はどう思うのだろう。クロワは声をかけることができなかった。だってこんなの母親を苦しめるだけじゃないか。
 しかし、彼女は息をひとつ吸うと、言った。
「貴方は自由に生きていいのよ。もう大人なんだから。今回みたいなのはもうやめて欲しいけどね」
 弾かれたように顔を上げると、彼女は薄く微笑んでいた。
「言えなかったから、『いってらっしゃい』」
「……! 『いってきます』!」
 ……やっと家族の時間が動き出した。

★★★

「おいコラ! お前の実力はそんなもんか!」
「無理だよぉー!」
「……人の家の前で、なにやってんの」
 クロワがエイヴァルに声をかけるとエイヴァルは苦笑して、戦うノルンとエイトを見ていた。出ているポケモンは生い茂る草のポケモンと黄色いトカゲのポケモンだ。
「ヤナッキーとエレザード?」
「いしやで進化の石がセールしてたからさぁ。進化したらバトルだ! ってノルンが仕掛けに行っちゃって」
「えー! ずるい! 私たちもやろうよー!」
「お、やっちゃう? じゃあホイーガ出しちゃおうかな」
「お母さんの言ったこと、聞かないの?」
「顔見ればわかるよ」
 そう言うとエイヴァルは足元のホイーガをつつく。しまっていることもあるが、クロワの背中が定位置のデデンネのような相棒ポケモンでもあるのだろう。
 二人はバトルを開始し、バトルの終わった二人が観戦を始める。
(賑やかで楽しいなあ。ジル君も、セヴンさんもいい人だったけど)
 そういえば、暫くあの二人に会えていない気がする。
 そう思ったので、デデンネに指示を出すのが遅れた。
「ホイーガ、今の隙、見逃すなよ!!」
「あっ、しまっ」
「“ころがる”!!」
「デネェっ!」
 回転するホイーガに吹き飛ばされ、背中から着地したデデンネが目を回している。
「オレの勝ち!」
「エイヴァルってバトル強かったんだな!?」
「そういえばオレ二人の前で戦ったの初めてだね、バント休む前は用心棒もしてたんだぜオレ」
 ホイーガはのそのそとエイヴァルの方に向かってきたが、その途中で光に包まれた。
「……ホイーガ!?」
 エイヴァルが慌てて呼びかけると、そこにいたのは赤い殻を纏ったポケモン。
「ペンドラーだ! 初めて見た」
「やるじゃねーの。益々戦力になったな。それで俺とクロワを守れよ」
「ノルンを守る……? 必要なくない?」
「表出ろエイト!!」
「もう出てるよ……」
 (一方的に)喧嘩する二人を見てエイヴァルはあははと笑った。
「まあ、よろしくね。これから」
「うん!!」
 これから楽しくなりそうだ。

★★★

 クノエシティ。最近ボール工場がフレア団に襲われ、少し話題になった町だ。
「フレア団ってろくなことしないらしいな。コウジンでも一回やらかしてたみたいだし」
 ノルンが言うとエイトが呟いた。
「鉢合わせなくてよかったよね……」
「逆だ! 俺がやっつけたかった!!」
「ええ……」
「とりあえず私はジム行ってくる。今回はデデンネ同じフェアリータイプだし頑ろっか」
「デネー!」
「こらこら」
 デデンネと戯れながら去っていくクロワを見送って、エイヴァルは言った。
「クノエジムって結構難易度高いジムなんだよね……クロワちゃんは気づいてないけどオレらで一番強いんだろうな」
「きゅる!」
 不満げな声を上げる赤い相棒の頭をエイヴァルは撫でた。
「ペンドラーに不満がある訳じゃないよ。オレたちも自分守れるくらいには強くなろうな」
「きゅるる!」
 もう一度頭を撫でようとした時。
「? なんか今……」
 視線を感じ振り返ると、建物の影になにか転がっているのが見えた。
「これは……」

★★★

 デデンネの電撃がニンフィアを捕える。そのまま、“パラボラチャージ”で体力を吸収すれば、膝を折り、動けなくなる。
「ニンフィア戦闘不能!」
「やった! やったよデデンネ!!」
「デネー!」
 二人で抱き合っていると相手、マーシュは健闘を支え、ジムバッジ、フェアリーバッジを差し出してくる。それを受け取り、人を待たせているからとジムを後にする。ジム前には三人が手持ちたちといた。しかし様子がおかしい。首を傾げた時だった。
「なあ、メガストーンってそんな簡単に転がっているもんなのかな」
「え?」
「建物の影にメガストーンが三個落ちてたんだ」
「ええ!?」
「内訳はリザードナイトX、フシギバナイト、デンリュウナイトなんだけど……」
 エイトがフシギソウを抱えながら言う。
「まるで僕たちに丁度いいように、っていう内訳なんだよね。クロワもユキノオナイト貰ったって言うじゃない。なんかメガシンカをやたらさせようとしてる動きを感じるんだよね……」
「レンゴクさんは優しかったけど……」
「うん……」
「まあまあ! 強くなれるのはいいことだろうがよ!! つってもキーストーンねぇから、最悪クロワに頼むか!」
「貸し出し?」
「まあそれしかないかもな。ていうかオレまだメリープだし。ノルンたちはすぐ条件満たせそうだけどな」
「メェー」
 エイヴァルの足元でメリープが鳴いた。そうだそうだ、と言っているようだ。
「まあうじうじタイム終わり! ポケモンを育てながらヒャッコク向かおうぜ! フロストケイブは寄るんだろ? 急ごう!」
「そうだね、急ごう!」
 一行は足早にクノエシティを後にした。


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