Re:アンダンテ
その日、ミアレシティの住居の一角。
「おはようお母さん」
クロワはいつも通り二階の自分の部屋から階段を降りるところだった。しかしその声に応えたのは母親ではなかった。
「デネ!」
「え」
そこにいたのは可愛らしい丸いフォルムの黄色いポケモンだった。大変愛らしい顔でクロワを見つめている。
「かわいー」
「そうでしょ」
「お母さん」
台所から出てきたクロワの母親は、そのポケモンを撫でた。ちゃ〜とポケモンが嬉しそうに鳴いた。
「デデンネっていうのよ。知り合いからよく慣れてる子を頂いたの。今日から貴方がおやよ」
「おや!?」
「ポケモントレーナーってことよ」
「え、ええ……なんで急に?」
「実は貴方にハクダンシティに買い物に行って欲しくて、限定でビオラさんの写真集が出るのよ〜」
「まあ確かに近いけど……」
クロワがデデンネをじっと見ながら言うと母親は言った。
「まあ一番の理由は貴方がトレーナーになりたがってたからだけど……」
「お母さん……」
母親はウインクした。
「そんな訳で、ハクダンまでの旅、楽しんじゃいなさい!」
「……うん! よろしくねデデンネ!」
「チネ〜」
クロワが手を広げると、デデンネはその胸に飛び込んだ。
★★★
「よーし、キズぐすりも持った、行くぞ!」
「デネ!」
4番道路、パルテール街道。頭にデデンネを乗せて剪定された庭の小道を進む。
そんな時だった。
「あれ、可愛い子がいる」
その言葉に振り返ると、一人の少年がモンスターボールを手に、にこにこと笑っていた。
「どなた?」
「僕はリウト。さすらいのポケモントレーナーさ」
前髪を仰々しくかき分けて、リウトと名乗った少年は笑う。
「さすらい……?」
「って言っても、メイスイからミアレくらいまでしか出たことないんだけどね」
「は、はあ……」
何が言いたいのだろう。
「君、初心者トレーナーだろう? なに、僕から選別さ」
そう言うとリウトは一個のタマゴをクロワに渡した。
「え?」
「ポケモンのタマゴは初めてかな、なにのタマゴだかはサプライズで。是非ご活用あれ」
「え、あの、ありがとうございます……」
なにやら今日は怒涛だ。
「あ、私クロワって言います」
「ふふ、覚えていくよ。メイスイに来る際はエイトって奴に気をつけて」
リウトは急に真顔に戻って言った。
「エイト……?」
「ま、こっちの話ってね」
リウトは軽薄そうな笑顔に戻るとクロワに手を振ってハクダンシティの方へ向かって行ってしまった。
「デネ!」
「タマゴは嬉しいね。ちゃんと育てられるかな……」
そうやってクロワは4番道路を進みだした。
★★★
「ラスト一冊だよ! お客さん運いいね~」
「よ、よかったぁ! お母さんがファンで」
出張出版社のブースで本を受け取っていると、売っていた男性はクロワを品定めするかのように見た。
「さてはトレーナーなりたてだね? 仕草でわかるよ」
「えっ、あ」
「よかったらジムリーダーとしてのビオラさんも堪能していったら? いい経験になる筈だよ」
「ジムリーダー……」
ビオラがジムリーダーであることは知っていたが、ジムリーダーがどういったものかは確かに知らない。
「チネ!」
デデンネがクロワの頭をふみふみした。
「デデンネ、戦いたいの?」
「デデ!」
「ポケモンが乗り気ならやらない手はないぜ! ジムはあっちさ!」
「ありがとうございます!」
こうして、クロワはトレーナー一日目にして、ジムリーダーに挑戦することになった。
【251019】
「おはようお母さん」
クロワはいつも通り二階の自分の部屋から階段を降りるところだった。しかしその声に応えたのは母親ではなかった。
「デネ!」
「え」
そこにいたのは可愛らしい丸いフォルムの黄色いポケモンだった。大変愛らしい顔でクロワを見つめている。
「かわいー」
「そうでしょ」
「お母さん」
台所から出てきたクロワの母親は、そのポケモンを撫でた。ちゃ〜とポケモンが嬉しそうに鳴いた。
「デデンネっていうのよ。知り合いからよく慣れてる子を頂いたの。今日から貴方がおやよ」
「おや!?」
「ポケモントレーナーってことよ」
「え、ええ……なんで急に?」
「実は貴方にハクダンシティに買い物に行って欲しくて、限定でビオラさんの写真集が出るのよ〜」
「まあ確かに近いけど……」
クロワがデデンネをじっと見ながら言うと母親は言った。
「まあ一番の理由は貴方がトレーナーになりたがってたからだけど……」
「お母さん……」
母親はウインクした。
「そんな訳で、ハクダンまでの旅、楽しんじゃいなさい!」
「……うん! よろしくねデデンネ!」
「チネ〜」
クロワが手を広げると、デデンネはその胸に飛び込んだ。
★★★
「よーし、キズぐすりも持った、行くぞ!」
「デネ!」
4番道路、パルテール街道。頭にデデンネを乗せて剪定された庭の小道を進む。
そんな時だった。
「あれ、可愛い子がいる」
その言葉に振り返ると、一人の少年がモンスターボールを手に、にこにこと笑っていた。
「どなた?」
「僕はリウト。さすらいのポケモントレーナーさ」
前髪を仰々しくかき分けて、リウトと名乗った少年は笑う。
「さすらい……?」
「って言っても、メイスイからミアレくらいまでしか出たことないんだけどね」
「は、はあ……」
何が言いたいのだろう。
「君、初心者トレーナーだろう? なに、僕から選別さ」
そう言うとリウトは一個のタマゴをクロワに渡した。
「え?」
「ポケモンのタマゴは初めてかな、なにのタマゴだかはサプライズで。是非ご活用あれ」
「え、あの、ありがとうございます……」
なにやら今日は怒涛だ。
「あ、私クロワって言います」
「ふふ、覚えていくよ。メイスイに来る際はエイトって奴に気をつけて」
リウトは急に真顔に戻って言った。
「エイト……?」
「ま、こっちの話ってね」
リウトは軽薄そうな笑顔に戻るとクロワに手を振ってハクダンシティの方へ向かって行ってしまった。
「デネ!」
「タマゴは嬉しいね。ちゃんと育てられるかな……」
そうやってクロワは4番道路を進みだした。
★★★
「ラスト一冊だよ! お客さん運いいね~」
「よ、よかったぁ! お母さんがファンで」
出張出版社のブースで本を受け取っていると、売っていた男性はクロワを品定めするかのように見た。
「さてはトレーナーなりたてだね? 仕草でわかるよ」
「えっ、あ」
「よかったらジムリーダーとしてのビオラさんも堪能していったら? いい経験になる筈だよ」
「ジムリーダー……」
ビオラがジムリーダーであることは知っていたが、ジムリーダーがどういったものかは確かに知らない。
「チネ!」
デデンネがクロワの頭をふみふみした。
「デデンネ、戦いたいの?」
「デデ!」
「ポケモンが乗り気ならやらない手はないぜ! ジムはあっちさ!」
「ありがとうございます!」
こうして、クロワはトレーナー一日目にして、ジムリーダーに挑戦することになった。
【251019】
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